小説『君たちはどう生きるか』大人の心に響く6つの魅力!あらすじ、名言など

更新:2021.11.16

80年以上の時を経て、大ベストセラーになった歴史的名著、『君たちはどう生きるか。15歳の通称コペル君は、体験したさまざまな出来事、そしてこれからのことについて、叔父さんからアドバイスをもらいます。読者も、彼をとおして人生について考えさせられる。そんな内容の一冊です。 この記事では、そんな本作のあらすじから結末まで詳しく解説。ぜひ、最後までご覧ください。

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小説『君たちはどう生きるか』詳しいあらすじ、登場人物を紹介!なぜ売れた?

 

本作は、中学生であるコペル君の成長を描いた物語です。世の中の仕組みや、いじめ、貧困、偉大さなどといったものを、彼は実際に体験しながら、また叔父さんに教わりながら、学び、そして成長していきます。

この小説は、コペル君をとおして、自分たちはどうのように生きていくのかを問われているように感じる作品です。彼に起こった出来事を、自分に起きたものと置き換えて読み進めることで、現状の自分自身の考えと比較できます。本作を通じて、新しい価値観を見つけてみてはいかがでしょうか。

君たちはどう生きるか

2017年08月24日
吉野源三郎
マガジンハウス

 

岩波文庫や新潮社から出版されている本作の著者は、吉野源三郎。1899年、東京都で生まれ。東京帝国大学を卒業しています。大学卒業後、陸軍に入隊。除隊後、東京大学図書館に就職しました。

本作は、彼が明治大学の講師に就任している最中に刊行。その他にも代表作として、『人間の尊さを守ろう』や『エイブ・リンカーン』などがあります。

著者
吉野 源三郎
出版日

『君たちはどう生きるか』は、一旦引退を宣言した宮崎駿が、次に撮る作品は『君たちはどう生きるか』だと宣言して引退を取り消したことから、たちまち人気に火がつきました。

また、コピーライターである糸井重里がテレビ番組で紹介したこともあり、累計発行部数が200万部を超える大ヒット作品となっています。

本作で書かれていることは、普遍的なことばかりです。コペル君が感じた人との繋がりや、直面する悩みは、いつの時代も変わることがありません。だからこそ、時代を超えてもなお、多くの人に共感される名著となったのではないでしょうか。

魅力1:『君たちはどう生きるか』叔父さんのノートの内容が胸に刺さる!詳しく解説

 

本作では、主人公であるコペル君が叔父さんからのノートを通じて、いろいろなことを教わっていきます。彼が興味を持ったとき、悩んだとき、嬉しいときなどさまざまな場面で、叔父さんは彼に伝えたいこと、伝えるべきことをノートに書き留めていくのです。

その内容が、とても考えさせられるもので、コペル君をとおして読者自身にも多くのものを投げかけてきます。

人間が人間同志、お互いに、行為をつくし、
それを喜びとしているほど美しいことは、ほかにありはしない。
(『君たちはどう生きるか』より引用)

コペル君が、人間はどこかでみんな繋がっているという「人間分子」の関係を発見したと報告した時に、叔父さんがノートに書き記した言葉。コペル君の発見を喜び、人間の素晴らしいところは、繋がり、支え合いながら生きていることだと伝えようとしています。

人間の本当の値打ちは、いうまでもなく、
その人の着物や住居や食物にあるわけじゃあない。
(『君たちはどう生きるか』より引用)

コペル君が、貧乏である浦川君の家を訪ねたときに、叔父さんがノートにメモをしたこと。たとえ貧乏であったとしても、高潔な心と立派な見識を持っているのであれば、尊敬に値する偉い人だと伝えたかったのです。

 

魅力2:『君たちはどう生きるか』油揚げ事件!いじめ問題を考察

 

コペル君のクラスには、よくいじめられている浦川君という子がいました。

彼らのクラスは医者や弁護士など、いわゆるお金持ちの家の子が多いのですが、浦川君の家は豆腐屋。家族でなんとか切り盛りしているような家であったため、周りより貧乏であると、クラスのみんなは感じていました。

そんな彼のお弁当は、毎日、油揚げ。そのためクラスのいじめっ子である山口君たちのグループは、彼のことを、影で「あぶらあげ」と呼んでいたのです。

あるとき、それを許せない北見君が、山口君に殴りかかります。その際、いじめられている側の浦川君は、なぜか山口君をかばったのです。そして彼を許してやってほしい、と北見君に頼み込みます。そんな彼の姿を見たコペル君は、胸を打たれました。浦川君の言動から本当の優しや心の強さを知り、たとえ不利な状況になったとしても何かが会った時に自分自身の気持ちを決してごまかしてはいけないと学んだのです。

 

魅力3:粉ミルクから考える生産関係!当たり前のことに気付かされる

 

コペル君は自宅にある日、粉ミルクを見て、それがどんな風に出来上がって、今この場にあるのかという過程を想像しました。牛がいて、それの世話をする人がいて、乳をしぼる人がいて、工場に運んで、工場で加工して、トラックで運んで……1つの商品には多くの工程があり、その1つひとつに多くの人が関わっています。

彼がなぜこんな想像をしたのかというと、叔父さんからアイザック・ニュートンの話を聞いたからです。彼は、林檎が木から落ちたのを見て、万有引力を発見した人物。その話をヒントに、世の中の経済の当たり前の仕組みに気づくことができました。

最初は単なる思い付きでも、突き詰めていったら偉大な発見である場合もある。ニュートンの話でこう気付いたコペル君は、粉ミルクについて考えを巡らせ、上で書いたような事実に行き着いたのです。

人間は分子のようにいろいろなところで結びつき、この世の中は回っています。そのことに気づいた彼は、また一歩成長することができました。

 

魅力4:『君たちはどう生きるか』雪の日の出来事!弱気な自分を変える決意

 

北見君と喧嘩になった山口君は、上級生である兄に、このことを言いつけてしまいます。そのためコペル君たちは、上級生から睨まれることになってしまいました。そんなある時、上級生に捕まった彼らは、北見君を先頭に勇気を持って立ち向かうことに。

彼らは一致団結を約束していました。しかし、そんななか、コペル君だけが裏切ってしまったのです。彼は力のある上級生を目の前にして、どうしても勇気が出ませんでした。そして彼の友達は、上級生にボコボコにされてしまったのです。

このことで、彼は自分のことを攻め続けます。そしてずっと家に閉じこもり、つらい現実から逃げてしまったのです。その結果、珍しく叔父さんから叱責を受けるのでした。

彼はこの出来事をとおして、とても大事なことを学びます。それは、自分の気持ちを隠したままにしたら、後悔が残るということ。そして彼のお母さんは、そのことについて実体験を踏まえて彼に話すのです。

それは、あるおばあさんが大きな荷物を担いで、石段を登っていたときのこと。心の中では荷物を持ってあげようと思っていたものの、なかなか行動に移すことができず、遂に手伝ってあげることができなかったのです。お母さんはこのことを、とても後悔したのでした。

叔父さんとお母さんの話を聞いた、コペル君が出した決断とは……。
 

 

魅力5:漫画もおすすめ!ベストセラー作品

『君たちはどう生きるか』は、漫画版も出版されています。もちろん、こちらも大人気な作品。書店でインパクトのある表示を見かけた方も多いのではないでしょうか。羽賀翔一がイラストを担当しています。

漫画 君たちはどう生きるか

2017年08月24日
吉野源三郎
マガジンハウス

 

漫画版では、「水仙の芽とガンダーラの仏像」という項目が省略されています。この話は、インドのガンダーラ地方の仏像は、インド人が作ったのではなくてギリシャ人が作成していると、叔父さんがコペル君に伝える内容です。
 

そして、それは日本にも同じように流れてきており、奈良の大仏も歴史をたどっていけば、ギリシャ人にたどり着くと話しています。歴史は繋がっており、同時に文明も繋がっている。そのことを知ったコペル君は胸をときめかせ、美しい歴史と文化に感動したという内容です。

この話が収録されていない漫画も、十分に作者が伝えたいことを感じることができます。でも、できればこちらも、そして小説版も読んでほしいところです。

ただ、漫画版は小説版と違い、叔父さんもコペル君とともに成長していくような姿が描かれているのが見所でもあります。変わっていくコペルくんを見て、いろいろと考える叔父さんの姿に、読んでいて思わず共感してしまう部分もあるのではないでしょうか。

 

魅力6:『君たちはどう生きるか』は名言も魅力的!ランキングベスト5を紹介

 

本作には、素晴らしい名言が数多く登場します。ここでは、そのなかで心に残るベスト5をご紹介させていただきます。

第5位

人間て、叔父さん、ほんとに分子だね
(『君たちはどういきるか』より引用)

コペル君が口にした言葉です。叔父さんはこの言葉に感動し、ノートに残しました。人間は本当に分子のように、皆が結びつきあい、世の中を形成しているということに、コペル君は気づいたのです。

第4位

もしも君が、学校でこう教えられ、
世間でもそれが立派なこととして通っているからといって、
ただそれだけで、いわれたとおりに行動し、
教えられたとおりに生きてゆこうとするならば、
―コペル君、いいか、
それじゃあ、君はいつまでたっても、一人前の人間にはなれないんだ。
(『君たちはどういきるか』より引用)

油揚げ事件を報告した際に、叔父さんがノートに書き記した名言です。彼はコペル君に、自分の頭できちんと物事を考えてほしいと説いています。そして、それを魂で知ることにより、立派な人間へと近づいていくと説いています。

第3位

本当に人類の役に立ち、
万人から尊敬されるだけの発見というものは、
どんなものか、ということだ。
(『君たちはどういきるか』より引用)

コペル君が人間の生産関係に気づいたときに、叔父さんがノートに書き記した名言。いったい万人から尊敬される発見とは、どんなものなのでしょうか。それは苦労をして突き詰めたうえで、さらに苦労をして、人類の発展に貢献するようなもの、と叔父さんは説明しています。

第2位

尊敬せずにはいられない美しい心根や、
やさしい気持ちのあることを知ったのは、
君にとって、本当によい経験だった。
(『君たちはどういきるか』より引用)

貧乏によっていじめられていた浦川君の家を訪れ、友達になったコペル君。そんな彼に対して、叔父さんが書き記した名言です。人の価値はお金ではなく、心であるとコペル君に説明しています。

第1位

実行力といい、活動力といい、すばらしい精力といっても、
それはいったいなんなんだろう。
それは、人間が何かあることを成し遂げていく力ではないか。
(『君たちはどういきるか』より引用)

ナポレオンに崇拝したコペル君に対して、叔父さんがノートに書き記した名言。ナポレオンがなぜすごいのかを、具体例を持って説明したうえで、目的を果たすまでの行動力を賞賛しています。

 

『君たちはどう生きるか』結末をネタバレ解説!テーマを考察

コペル君はさまざまな出来事をとおして、そして叔父さんの教えをとおして、着実に成長という階段を登っていきました。彼は亡くなったお父さんが望んでいたような立派な人となり、より成長することを心に誓います。

君たちはどう生きるか

2017年08月24日
吉野源三郎
マガジンハウス

 

コペル君がどう生きるかは彼の自由であり、そこにはいろいろな選択肢があります。しかし、そこでどんな選択をするのであっても、人間にとって決して忘れてはならない部分があると、本作をとおして感じることができるでしょう。
 

「君たちはどう生きているのか」と問われた時、私たちはなんと答えるのでしょうか。普段滅多に考えないそのようなことに思いを巡らせてくれるのが、本作なのです。

叔父さんやお母さんの話を受けて、コペル君はつらい現実から逃げず、友達に謝ることを決めます。そんな彼に、叔父さんはここまで書き連ねたノートを渡すのでした。

そのノートの内容とは、どんなものだったのでしょう。そしてコペル君は、友達にしっかりと謝り、仲直りすることができるたのでしょうか。この物語の結末が気になる方は、ぜひ本編をお確かめください。

 

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