BL愛!三浦しをんのおすすめエッセイランキング10!【2021最新】

更新:2021.12.11

『まほろ駅前多田便利軒』や『舟を編む』など、数々のヒット作を生み出した人気作家・三浦しをんは、優れたエッセイストでもあります。BLをこよなく愛する作者らしく、BLについてとことん綴った作品も。独特な視点が魅力的な、おすすめのエッセイをランキングにしてご紹介していきましょう。

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オリジナリティー溢れる感性を発揮する作家・三浦しをん

1976年、東京都に生まれた三浦しをんは、小さい頃から本の好きな子供だったそうです。主に海外の作家が書いた児童書を好んで読み、小学校低学年になって、日本人作家の作品を読むようになったのだとか。大学4年の就職活動中、出版社の入社試験で書いた作文が編集者の目に止まり、小説を書くことを強く勧められたそうで、それがデビューするきっかけになった、という珍しい経歴を持っています。

2006年、『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を受賞。2012年、『舟を編む』で本屋大賞を受賞。さらに2015年『あの家に暮らす4人の女』で織田作之助賞を受賞するなど、小説には定評が。独特のユーモアを読みやすい文体でテンポよく綴り、小説家としてもエッセイストとしても大人気の作家です。

1位:構想5年!三浦しをんが趣味へとひた走るエッセイ『のっけから失礼します』

あらまし

ファッション誌で連載されていたエッセイをまとめた1冊ですが、作者・三浦しをんの言葉を借りれば「アホエッセイ」。しかし「アホ」だなんて粗野な言葉で片付けらないほどに濃く、抱腹絶倒の日々が綴られています。

ただ笑えるだけでなく、なぜ読書をするのかを真剣に考えてみたりと時には真面目な話題に触れ、振り幅の大きさも特徴の一つとして楽しめるエッセイ。三浦しをんのことがよくわかる作品である点で1位といえるでしょう。

著者
三浦 しをん
出版日

ここが見所

三浦しをんといえば漫画愛にあふれることで有名ですが、このエッセイではそれが控えめ。いえいえ、漫画が好きなことにはまったく変わりはありません。しかしこのエッセイでは漫画以外のものへの愛がたくさんあふれています。

たとえばアニメ。たとえば三代目J SOUL BROTHERS。

パソコンでアニメをレンタルしてひたすら見続けることに心血を注いだかと思えば、三代目J SOUL BROTHERSのコンサートチケットの入手にも無心になります。

好きになるとその度合いがどんどん大きくなり、心を占める割合が増えるのが三浦しをんの特徴。三浦しをん自身は代わり映えのない生活を送っているように書いていますが、その日々はとにかく自分の「好き」にあふれています。

その様子に、もっと自分の好きなものに素直になっても大丈夫だよ、と言われているような気分になれます。嫌なことなんかに心を砕くのがばかばかしいと思わせてくれるでしょう。

間違い電話の相手にときめいたりしたことも、日常の潤いへと変えられるようにしたいものです。

2位:こんなのはおかしい!と世間にもの申すエッセイ『極め道 爆裂エッセイ』

あらまし

中学生の頃、見ず知らずの男性から通りすがりに「ブス」と言われたことから始まり、三浦しをんの心の叫びが詰まったエッセイです。

女性が化粧をするのは男性に「見られる」ことを意識しているからであるという視線に対する理論にはじまり、日々の心の機微をつぶさに記録しています。他人には通じない「自分語」、台湾での食い倒れや本に対する感想なども綴られます、

著者
三浦 しをん
出版日

ここが見所

三浦しをんというペンネームはほぼ本名だということをご存知でしょうか。本名は「しをん」ではなく「しおん」という可愛らしい発音で、由来は「紫苑」という花の名前からきているそうです。ご両親が「紫苑の花の咲く季節の秋に生まれたから」とつけたそう。

一見響きの可愛らしい名前に思えますが、そんな自分の名前の由来となった花が残酷な物語の中に登場していたり、さらに紫苑の花には「鬼の醜草」というまったく美しくない別名があるという悲壮な嘆きが笑いを禁じえません。

このエッセイにはたくさんの三浦しをん流の論理が詰まっています。その考え方を押し付けずに、面白く、けれど真面目に語っています。もちろん読者の性別や境遇や生きている環境が違うので、一概に賛成できないかもしれません。それでも頷けてしまう意見や言葉が詰まっています。

たとえば女性が化粧をするのは男性よりも圧倒的に「見られる」機会が多いからとか、だからこそ男性も女性もその「見られている」という視線におびやかされるようになってほしくないとか。三浦しをんが考えていることは、世間一般にとっても考えるべきことが多いといえそうです。

3位:三浦しをんの生活をのぞき見できるエッセイ『ビロウな話で恐縮です日記』

あらまし

インターネット上で公開されていた日記形式のエッセイで、センテンスが短く分かれているのが特徴です。友達同士でくり広げられるオタク的な会話や好きな漫画のことなど、三浦しをんの生活に密着した日記が読めます。作家の生態日記と言ってもいいかもしれません。

また、日記とは別に作者が見たおかしな夢の内容も綴られており、くすりと笑える物語としても読むことができます。

著者
しをん, 三浦
出版日

ここが見所

「ビロウ」とは漢字で「尾籠」と書き、意味は「人前では失礼に当たること」。つまり「ビロウな話で恐縮です日記」とは「人前では失礼な話になるかもしれない内容の日記です。恐れ入ります」という前置きがされているということなのです。しかし、まったくそんな前置きも必要としないような抱腹絶倒の毎日が綴られています。

三浦しをんは好きなことにとても真っすぐで、オタク気質を隠そうともしません。「好きなものは好き」という考え方もとても大事にしているように思え、漫画や小説や映画のいいと思う部分を素直に伝えてくれる文章にはとても好感が持てます。

三浦しをん自身もかなり楽しい人間の部類に入る方だと思うのですが、三浦しをんの周りにいる人も負けず劣らずユニークです。

たとえば嵐の日にかかってきたおばさんからの電話が、意味が分からないのに笑いを誘います。

「おばさん、ふと思ったんだけどね、しをんあんた、前歯を治したほうがいい!」
(『ビロウな話で恐縮です日記』「嵐の電話」から引用)

虫歯ではないのにこんなことを言われて困惑する作者ですが、一緒に困惑できて、一緒に笑うことができる楽しいエッセイです。

4位:妄想するには日々の努力が必要だと感じさせてくれる『妄想炸裂』

あらまし

古本屋でバイトをしつつ作家活動をする三浦しをんの妄想が炸裂するエッセイ。

アルバイト先の古本屋でくり広げられる不毛な会話に笑いを誘われますが、本人は至って通常運転というふうに過ごすのでさらにお腹を抱えて爆笑できます。

妄想という名の旅行にも行きますし、実際にいろんな場所へと出かけられているので、ある意味旅行記としても読むことができます。またたくさんの漫画や小説が紹介されているので三浦しをんが普段どんなものを読んでいるか気になる人にもおすすめです。

著者
["三浦 しをん", "羽海野 チカ"]
出版日

ここが見所

リンパ腺にしこりを見つけ絶望的な気分になり、勝手に余命を決め込むあたりが共感を呼ぶはずです。癌かもしれない、もっと悪い病気かもしれない……と勝手に悪い方向へと考えが及ぶのはだれしも経験があること。

しかし、本当に余命を宣告されたことを考えた時、三浦しをんのブレない姿を垣間見ることができます。つまり、残された命が1年と言われたところで、やることは漫画と本を読むことだけという部分に笑ってしまいます。同時に、オタクの本質を見ることができます。

また俳優のルトガー・ハウアーに対して小説家の力をフルに使い妄想を炸裂。その内容はまるで本格的な戦争小説のようでかなり読みごたえがあります。三浦しをんのエッセイは単純におもしろいと思うのですが、それ以上に三浦しをんが書く物語というものの力を感じることができます。

「男は風に揺れる街路樹の葉と、そこから抜ける清明な青空を見た」
(『妄想炸裂』「男もすなるハードボイルドといふものを」より引用)

こんな小説的文章を妄想を織り交ぜて書くエッセイが読める、とても贅沢な1冊です。

5位:日本の伝統芸能を三浦しをんと一緒に楽しく学ぶエッセイ『あやつられ文楽鑑賞』

あらまし

文楽の虜になった三浦しをんが、その魅力を余すことなく語ります。日本に古くから伝わる、伝統芸能の1つである文楽について、いろいろと解説。文楽とは、なんとも敷居が高いそうなイメージですが、三浦しをんの軽快で親しみやすい説明により、文楽を鑑賞してみたい思いがこみ上げてきます。

著者
三浦 しをん
出版日
2011-09-15

ここが見所

文楽とは、物語を語る太夫と三味線の音に合わせ、人形たちが物語を演じる芸術作品。文化遺産にも登録された、時代を超えて語り継がれている伝統芸能です。文楽を深く愛し、『仏果を得ず』という小説も発表した三浦しをんが、独自の視点から文楽作品の解説や、それを楽しむコツを教えてくれます。

面白いのは独特のツッコミ。「忠臣蔵」を鑑賞しながら、センスのよいツッコミを連発する姿は、思わず吹き出してしまいます。文楽に対するハードルを下げ、親しみやすいものにして私たちに面白さを伝えてくれます。

文楽についてだけでなく、歌舞伎や落語など、日本の古き良き文化について、楽しく笑いながら学ぶことができます。三浦しをんの文楽に対する熱い思いが伝わってくる、良質なエッセイ。皆さんにぜひおすすめしたい1冊です。日本人に生まれたからには、1度は文楽に触れてみたいものですね。

6位:悶えることが多すぎる三浦しをんの日常エッセイ『悶絶スパイラル』

あらまし

家族や友人とのやりとり、身近な出来事について綴ったエッセイです。

三浦しをん本人は日常エッセイと言っていますが、外部から「日常エッセイ」のようなレッテルを貼られるのがお嫌いだそうです。

妄想が炸裂する日常と一緒に、三浦しをんの個人的すぎるランキングも読めます。しかし、本当はランキングもお嫌いだそう。ランキングを書いてほしい編集者と、書きたくないと抵抗する作者とのやり取りがユーモラスに書かれています。

著者
三浦 しをん
出版日

ここが見所

三浦しをんの漫画愛が突き抜けているエピソードを、自分が何かしらのオタクだったときに見習いたくなること間違いなしです。

なんと、漫画を読む時間を確保するために鍋いっぱいに大根の煮物を作り、ひたすらにそれだけを食べるというエピソードも。米は時間がもったいないから炊かないという徹底ぶりに驚かされます。好きなものに対する愛と、それを行動で表す三浦しをんの日常が頭一つ飛び抜けていてかっこよさすら感じます。

また家族とのやりとりは、微笑ましを超えてまるで喧嘩のような、本能をさらけ出すような応酬です。

特に母親とのやり取りは、

「どう頑張っても勝てやしない」
(『悶絶スパイラル』「革命を我に!」より引用)

と諦めながらも、会っても、電話でもバトルは止められないようです。他人事のように読めてしまいますが、読者も自らの親子関係に重ね合わせると笑っていられないかもしれません。

タイトルのようにまさに、漫画に、友人に、家族に「悶絶する」三浦しをんの様子を楽しく読むことができます。

7位:三浦しをんの本に対する愛が凝縮されたエッセイ『三四郎はそれから門を出た』

あらまし

生粋の活字中毒者である三浦しをんが、様々な本を紹介するエッセイです。新聞や雑誌に連載された内容を1冊にまとめたもので、書評や、本に関するあれこれが書かれた、本が好きな方にはたまらない作品になっています。

また、温泉や盆栽、歌舞伎など様々なことについて書かれていて、三浦しをんのものに対する考えをいろいろな切り口で読むことができます。

著者
三浦 しをん
出版日
2010-04-05

ここが見所

「読書が好き、生活に密着している」という三浦しをんは、1日の大半を読書に費やしているそうで、その膨大な読書量には驚くばかり。これまでに読んだ様々な本についての感想が書かれていますが、着眼点がとても面白く、本の紹介がされているだけなのに笑いがこみ上げてきてしまいます。本にまつわるエピソードなどもコミカルに語られ、他にはない魅力的なブックガイドになっています。

紹介されている全ての本がとても面白そうに思え、読書好きの方は読みたくてうずうずしてしまうことでしょう。これまで読んだことのないジャンルを、開拓できるチャンスになるかもしれませんね。

三浦しをんの本への愛に溢れた1冊である本作は、読みやすく軽いタッチで綴られます。著者のファンの方、本が好きな方はもちろん普段本を読まない方でも楽しく読むことができるでしょう。

8位:三浦しをんを知ろう!「よそゆき仕様」の痛快エッセイ『お友だちからお願いします』

あらまし

三浦しをんという人物が、どんな人なのかを知りたいなら、このエッセイを読むのがよいかもしれません。著者の日常を綴る『お友達からお願いします』は、新聞に掲載されたエッセイをまとめた1冊ということで、本人いわく「よそゆき仕様」なのだそう。少しだけ妄想が抑えられているとは言え、そこは三浦しをん。軽快でコミカルな文体は健在で、あちこちにユーモアを織り交ぜた、笑いのこみ上げる素敵なエッセイになっています。

著者
三浦 しをん
出版日
2012-08-11

ここが見所

電車をよく利用するらしい三浦しをんは、いかにスムーズに改札を抜けるかを考え、その準備はいつも万端。駅弁を食べるタイミングに本気で悩んだり、他の乗客の話に聞き耳を立てるのが好きだったりと、読んでいて興味をそそられる彼女の日常が描かれています。家族についても度々語られ、母の理不尽な態度に本気の殺意を感じる、と語る場面では、自分の感情にとことん向き合っている姿が印象的です。

様々な日々の出来事を、軽い調子で面白おかしく語っていますが、亡くなった祖母との思い出にはほろりとさせられる場面も。

「生きて死ぬ。生き物はそれだけで充分なのであり、『何かをしなければいけない』という考えからは完全に自由なのであり、だからこそひとつひとつの生命は尊い」
(『お友達からお願いします』から引用)

という三浦しをんの言葉が、心にしみ込みます。

読者を引き込む文章のうまさは折紙付き。三浦しをんの自由な人となりを知ることができ、ぜひともお友達になりたい!と思わせてくれるエッセイ。とても読みやすいので、三浦しをんのエッセイ入門編としておすすめです。

9位:三浦しをんが大好きなBLの世界をとことん語る『シュミじゃないんだ』

あらまし

BLについて熱く語るエッセイです。意外と奥の深いBLの世界について、楽しく知ることができ、三浦しをんの妄想も全開。第1作目からハイテンションでBLについて熱く語っています。

著者
三浦 しをん
出版日

ここが見所

BLとは「ボーイズラブ」の略で、主に少年や青年同士の愛を描いた作品のこと。昔から、濃密な人間関係を描いたBLマンガや小説が好きだった、という三浦しをんが、独自の視点からBLの世界を深く探究しています。一言にBLと言っても、そのジャンルはいろいろ細分化することができるらしく、それぞれのジャンルについての奥深い説明を、面白おかしく読むことができます。

三浦しをん曰く、BLの魅力は、重厚な人間ドラマにあるのだそう。BL好きの方にはもちろんですが、本作は、興味はあるけどその世界に踏み込んだことはないという方にも自信を持っておすすめできるものです。BLガイドブックとして、かなり質の高いエッセイとなっています。また、著者独特の痛快な語り口は、BLにまったく興味がない方でも楽しく読むことができるのではないでしょうか。

章の合間に挟み込まれる、今は亡きあとり硅子の素敵なイラストが、作品に彩りと柔らかい印象を与えています。三浦しをんに秘密の花園・BLの手ほどきを受けてみませんか。

10位:日常の妄想をさらけ出すおもしろエッセイ『乙女なげやり』

あらまし

三浦しをんが真骨頂である妄想も含め、これでもかと日常をさらけ出している痛快エッセイ。家族や友人たちと過ごす日々を赤裸々に語り、直木賞作家であることを忘れそうになるほど、親近感を抱きます。

著者
三浦 しをん
出版日
2008-08-28

ここが見所

『白い巨塔』にはまっていたという三浦しをん。物語の世界にどっぷりとはまり込み、どちらの男がタイプか、付き合ったらどうなるかなどと妄想を膨らませる姿は、とても女性らしいのではないか、とすら感じます。それが2次元でなければ。

驚くほど奥深いキャラ分析を見せる、直木賞作家の本気の妄想は読みごたえ充分。その内容は人々のツボをついたもので、共感できる女性も多いのではないでしょうか。妄想は自身の弟にまでおよび、弟とその友人との関係(妄想)に、女性読者はドキドキしてしまうことでしょう。

愉快な友人たちと、ああでもないこうでもないと、妄想を語りあう姿がなんだか微笑ましく、母との確執さえも自分のエネルギーに変えてしまう柔軟さには、とてつもないたくましさを感じます。

「人生は愛と欲望と思い込みだ!」と、自身の内面を包み隠さずさらけ出し、持ち前のコミカルな文章で爆笑を誘う、爽快なエッセイになっています。元気をもらいたいときにぜひ読んでみてください。


三浦しをんのエッセイをランキングにしてご紹介しました。BLから伝統芸能まで、そのジャンルの幅の広さには本当に驚かされます。心が明るくなるエッセイばかりですから、気になるものがあれば、ぜひ気軽に読んでみてくださいね。

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