5分でわかる音楽療法士!国家資格化の検討で年収・就職が安定する?仕事内容を解説!

更新:2021.12.5

介護や福祉、医療の現場などで活躍することのできる音楽療法士。患者さんに楽器を演奏してもらったり、また演奏を聴いてもらったりしながら、心の回復や向上を図る専門職です。現在は民間資格のため年収が安定していない実情がありますが、今後国家資格化が検討されているため、それにともない就職・転職も安定してくるのではないでしょうか。 音楽療法士は、音楽を習っていた、音楽が好きという方にとって音楽を仕事にできるため魅力的な職業です。今回は音楽療法士という仕事、そして音楽療法士にまつわる読んでいただきたい書籍をご紹介していきます。

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医療、福祉、教育の現場で働く音楽療法士の仕事

音楽療法士とはどんな職業?

音楽療法士の資格は民間資格です。認定は日本音楽療法学会と全国音楽療法士養成協議会などの団体がおこなっており、実は明確な定義はありません。一般的には音楽の持つ力を生かして対象者の身体や心をケアしていく資格とされています。
 

音楽療法の歴史は古代ギリシャ・ローマ時代から

音楽療法自体の歴史は非常に古く、古代ギリシャ・ローマ時代に心理療法として使われてきました。音楽の特性をいかした治療法として、音楽の分析、精神的・身体的作用の研究もされるようになりました。そうしてアメリカで治療法としての効用が認められました。第二次世界大戦によって、音楽療法が治療法の1つとして発展していったのです。

日本では1960年代より認知症高齢者や自閉症の方へ用いられてきました。ですが、アメリカのように治療としての位置づけはされていない上に、無資格の方でも音楽療法をおこなってもよしとしていることが現状です。

音楽療法には2つのアプローチ方法がある

音楽療法の方法は対象にあわせておこないますが、主に2つのアプローチ方法があります。

 

  • 受動的な治療法
  • 能動的な治療法

▶︎受動的な治療法

ピアノや打楽器などを鳴らして演奏を聴かせ、精神のケアをします。

▶︎能動的な治療法

即興演奏や歌を歌ったり、音楽をつくったりと、音楽とともに体を動かすことでケアをする方法です。またそれぞれグループでおこなうのか個人でおこなうのか、その点も対象者にあわせていく必要があります。

音楽療法士は医療、福祉、教育関係に就職する

音楽療法士は、名前の通り音楽療法をおこなう職業です。治療は、音楽療法を求める方のさまざまなニーズにこたえる形でおこなっていきます。

そのため、働き方や働ける場所が多数あることが特徴です。

 

  • 医療
  • 福祉
  • 教育

これらの現場で働く音楽療法士の姿は多くみられます。特に近年では病院の緩和ケア病棟、いわゆるホスピスにおいて音楽療法士の需要が高まっています。

これらの現場においてリハビリやリラクゼーション目的でおこなわれるほか、認知症の症状の進行を緩やかにしたり、痛みの緩和をさせたりする目的でも音楽療法がおこなわれています。

正規雇用が少ないため転職倍率は高い

音楽療法士の資格は国家資格ではありません。そのため収入が不安定で、正規雇用である方の離職率が低いために就職や転職は厳しいのが現状です。

派遣や契約であれば未経験の求人なども多いので、無資格でも音楽療法の仕事に就くことは可能でしょう。しかし賃金が低いため、音楽療法の仕事だけではなく他の仕事と掛け持ちをして働く可能性があることは最初に考えておかなければなりません。

ただ音楽療法士の資格は今後、国家資格化が検討されています。国家資格化にどれくらいの時間がかかるかは分かりませんが、国家資格となれば職としての安定、収入の安定も確保されると考えられます。

音楽療法士の年収は。兼務で働いている場合が多い

音楽療法士は兼務で働いている場合が多い

音楽療法士という資格だけで就職するということはかなり難しく、多くの方が兼務で働いているのが現状です。

病院や介護施設の職員として働きながら音楽療法士として音楽療法をおこなっていたり、保育園で保育士をしたり、リトミック講師、ピアノ教室などで働きながらアルバイトとして音楽療法士の仕事に従事するという働き方が多いようです。

音楽療法士だけでの月給は15万円前後

そのため、兼務で働いている職業によって収入には差が出てきます。音楽療法士だけで雇用を得られた場合の月給は初任給で15万円前後とされていますが、この値段も雇用される施設などによって大きく異なります。民間資格なので資格手当などはなく、年収は300万〜400万円が多いようです。

しかし音楽療法士の資格は現在、国家資格化も検討されています。国家資格となれば認知度も高まるため働ける場所も増えるかもしれないため、今後の動向に注目が集まっています。

音楽療法士の資格は難しい?

音楽療法士の資格には3つの民間資格がある

音楽療法士は民間資格です。そのためさまざまな団体が音楽療法士という資格を提唱しています。現在日本で音楽療法士の資格を取り扱っているのは下記の3つです。

 

  • 自治体が認定する資格
  • 全国音楽療法士養成協議会が認定する資格
  • 日本音楽療法学会が認定する資格

▶︎自治体が認定する資格

1つ目は自治体が主体となる音楽療法士です。これは奈良県、岐阜県、兵庫県の3県に存在しています。それぞれ独自の資格取得のための規定を設けています。自治体独自の基準をクリアすることが条件のため初回の資格取得がしやすい一方で、更新の時の条件は厳しいという特徴があります。

▶︎全国音楽療法士養成協議会が認定する資格

2つ目は音楽療法士1種、2種で、全国音楽療法士養成協議会が認定する資格です。この協議会が認める音楽療法士養成課程のある大学や短大に入学し、必要なカリキュラムを履修することで資格を取得できます。試験はないため卒業と同時に資格が取得できることが特徴です。ちなみに1種は大学卒業者、2種は短期大学の卒業者となります。

▶︎日本音楽療法学会が認定する資格

3つ目は日本音楽療法学会が認定する音楽療法士の資格です。この資格は音楽療法士が国家試験化されるまでの暫定的な資格として位置づけられています。

他の資格よりも取得のための難易度が高いことが特徴で、先ほどの自治体主体となる音楽療法士の更新の時の条件はこの日本音楽療法学会の基準に則るため難易度が高くなるのです。

▶︎受験資格の条件

日本音楽療法学会が認定する音楽療法士の資格を取得する場合には、いくつかの条件が設定されています。

 

  • 日本音楽療法学会正会員となり、養成課程のある専門学校・高等専門学校・短期大学・大学いずれかを修了すること
  • 臨床経験が5年以上、音楽を用いた臨床経験が2年以上あること
  • 学会活動に参加してポイントをためるという方法も

▶︎試験内容

 

  • 筆記試験
  • 認定試験
  • ピアノの実技試験
  • 面接試験

試験は筆記試験と年1回おこなわれる認定試験を受けなければなりません。

学会が認定する音楽療法士は音楽の知識だけでは受かることが難しく、医療の知識も求められます。そのため養成校では医学的な知識を学ぶ授業もあります。また、ピアノ演奏に合わせて治療をおこなうため、ピアノの実技試験もあります。ピアノが弾けることが資格取得には必須です。
 

また、面接試験もあります。老若男女に接する機会のある資格ですので、老若男女とのコミュニケーション能力も問われてきます。

音楽療法士試験は合格率が高い

音楽療法士の合格率は、どの認定資格においても公表されていません。ですが、日本音楽療法学会の資格は資格取得までの年月が長いこともあり、受験資格を得られれば合格する可能性が高いと言われています。

音楽療法士の資格には専修、1種、2種の3つがありますが、1種と2種については資格試験がなく、資格の取得のしやすさもあり、受験者は年々増加傾向となっています。

資格を取得した団体によって、働き方や働ける場所に現在のところ差が出てくることはないとしています。ですが、日本音楽療法学会の資格が国家資格化されるまでの暫定的な資格となっているため、今後は日本音楽療法学会の資格が優位になるということもあるかもしれません。

それでは、ここからは音楽療法士の道を検討しているという方に読んでいただきたいおすすめな書籍をご紹介していきます。

音楽療法士になりたい方にまず読んでいただきたい1冊

著者
村井 靖児
出版日

こちらの『音楽療法の基礎』は、音楽療法士を志す方を対象として書かれています。そのため、わかりやすい言葉で音楽療法士がどういった職業であるのか、どういったことを学ぶのかが綴られている1冊です。

著者は音楽療法士として学び、実践をしてきた方なので、経験者の目線で教育内容や現場の様子が書かれていてわかりやすく、自分が働く際のイメージもつかみやすいことがポイントです。

これから音楽療法士を目指す方だけでなく、現在音楽療法士として学ばれている方にも活用していただきたい1冊です。

音楽療法士の働き方について知りたい方におすすめの1冊

著者
佐藤 由美子
出版日

ホスピスで1200人以上の患者さんを看取ってきた、米国認定音楽療法士が語るノンフィクション小説です。

千の風になってなどの皆さんもよく知っている名曲とともに患者さんの思い出を紡いでいくという内容で、10編の短編小説が収録されています。どのお話も心温まるお話ばかりです。

音楽療法士の働き方が知れるだけでなく、音楽療法が患者さんにとってどのような影響を与えるのかを知ることができます。

音楽療法士が扱うラストソングに患者さんの生命がからみ合い、音楽療法士が素敵な仕事であることが分かる1冊です。

音楽療法士の与える影響を知ることができる1冊

著者
池田 文春
出版日

音楽療法士の仕事を漫画で知りたい人には、こちらの本がおすすめです。天才ピアニストがとあることをきっかけに音楽療法士となり、音楽で人々の心をケアしていくお話が書かれています。

天才ピアニストが人々の心に音楽を使って介入していく過程を見ることができ、音楽療法士が音楽を用いて多くの人とコミュニケーションを取る職業であるということが分かります。

この本の作者はヒューマンドラマを描くのが非常に上手な方です。音楽療法士としての人とのかかわり方や治療方法を知ることができるため、これから音楽療法士を目指す方には一度読んでいただきたい1冊といえるでしょう。

音楽療法士が音楽を扱ってどのように人に介入し、人の人生を救っていくのか、この本を通して見届けていただきたいです。

現時点では、音楽療法士の仕事のみで生計を立てていくことは難しいことが現状です。ですが、時代の変遷によって需要は高まりつつあり、国家資格化も検討されていますので今後認知度も高まり、音楽療法士だけで生計を立てていける日が来る可能性も十分にあります。 
あなたが人生のどこかで音楽に救われたことがあるように、音楽療法士は人の心に多大な影響を与える職種です。音楽を続けていきたい、音楽で人に影響を与えたいという方はここで紹介した本を読んでいただき、この資格に挑戦していただきたいです。

 

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