5分でわかる鳶!危険な仕事なの?体力に自信がないとだめ?などの疑問を全部解決

更新:2021.12.5

工事現場や建設現場を見上げると軽快に作業をしている鳶職人。「すごいな」という思いを抱く人も、「大丈夫かな」と心配な気持ちになる人もいるのではないでしょうか。 本記事ではそんな格好いいけど危険性も忘れてはいけない鳶について紹介します。就業のために必要な資格の有無や仕事内容のほか、やりがいや将来性についても解説するので、鳶を目指したい方や興味のある方は最後まで目を通してみてください。もしかしたらあなたには鳶として活躍する適性が備わっているかもしれませんよ。

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危険な仕事であることをまず知っておこう

鳶は危険と隣り合わせの仕事です。高所での作業は落下事故の可能性がありますし、地上での作業も重量のある資材を落として足を怪我することだってあります。

また、資材や工具を落として下の人に直撃したら大ごとです。組み立てに欠陥があり、もし足場が崩れるなんてことがあれば大事故が起こることは避けられません。

危険性をあおるような内容になりましたが、鳶はそれぐらい注意深く進めなければならない仕事です。

鳶は「鳶職に始まり、鳶職に終わる」と呼ばれ、建設・工事現場の華型です。その名に恥じぬよう責任をもって仕事に取り組んでいるプロフェッショナルな職業なのです。
 

鳶仕事の「知りたい」に答えます。資格の有無、給与、将来性など

資格は必要なの?

結論から言うと資格は必要ありません。鳶職人は学歴・職歴不問のケースが多く、中学校や高等学校卒業後に土木工事専門の建設会社に入社し、見習いの作業員としてスタートするのが一般的です。

ただし、18歳未満は高所作業が労働基準法の安全上の有害な業務の就業制限で禁止されていますので、最初は資材運搬などのサポート業務が中心となります。

キャリアをスタートする際の資格は不要でも、キャリアップのために必要になる場合があります。それらについては「ステップアップするには?」の段落で後述します。

どんな鳶職がある?

一口に「鳶職」といっても、一般的には4つに分類されています。

■足場鳶

鉄やパイプ、足場板などの仮設材料を用い、高所作業に欠かせない足場を設置します。使われ方は内部工事用、外部工事用、補修工事用などさまざま。このほかコンサートステージの足場組み立てなどもあります。

■鉄骨鳶

ビルやマンションの基礎となる鉄骨を組み立てます。高層ビルなどでは鉄骨部材を運ぶためにタワークレーンを組んだり、 工事用エレベーターを組み立てたりもします。

■橋梁鳶

高速道路や橋、鉄塔、ダムなどの鉄骨工事をおこなう専門性の高い職種です。その他にも球場やドームなど特殊な鉄鋼工事なども多いため、建造物の複雑な構造を理解しながら作業を進められる能力が求められます。

■重量鳶

建物内部での重量物の搬入、設置をします。 プラントや電気設備工事の大型機械などを扱うことが多く、こちらも専門的な知識と技術が求められます。ほかの鳶職とは異なり高所作業をはあまりありません。

ステップアップするには?

鳶には「職長」と呼ばれるポジションがあります。職長とは職人に指示を出したり、作業手順などの計画・工程管理をおこなったりするリーダーのことです。多くの鳶職人はまずこのポジションを目指します。

ちなみに職長になるにはいくつかの国家資格が必要となります。

 

  • 足場の組立て等作業主任者
  • 鉄骨組立て等作業主任者
  • 玉掛(たまかけ)作業者

 

さらに「職長・安全衛生責任者教育」という講習を受けることも義務づけられています。

また「親方として独立」というキャリアアップも選択肢の1つ。そしてこちらも「とび技能士」という国家検定の資格が必要です。技能士の試験は1級・2級・3級とあり1級取得が条件となります。

鳶職はどれぐらい稼げる?

鳶職人の給与については日給制を採用しているところがほとんどです。見習いで7000円~1万円程度、見習いから昇格すると1万円~1万4000円程度となります。もちろん職級が上がるにつれ給与はアップします。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のよれば、平成27年度の「とび工」の平均給与額は28万5000円でした。その他、特別給与額が平均33万円程度ありますから、年収の場合は普通の鳶職人で300万~400万円台となるでしょう。

若い職長クラスで400万~500万円台、熟練の職長クラスで500万~600万円程度になるようです。

将来性はどうなの?

土木建築業界は職人の高齢化が課題となっており、慢性的な人手不足です。そのため人材の入れ替わりがなく、ベテランの鳶職人が退職するとそのまま会社をたたむ中小企業も少なくありません。また市場規模も縮小傾向にあります。

しかし、新築建築工事がなくなることはなく、鳶は建築工事にかかせない職種のため仕事自体は今後も需要はあり続けると考えられます。

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鳶職のやりがいとは?適性のある人の特徴

鳶職にはどんなやりがいがある?

鳶の仕事にはクリエイティブな要素があります。足場の設置は建築物の図面を見ながらおこなうのですが、ここで想像力を働かせるのです。職人やほかのスタッフが安全かつ効率よく働くためにはどうすればいいのかを常に考えながら作業します。

また職長クラスになるとその図面を起こすため、「建物本体と足場の距離をどう設定するか」「資材を運びやすくするためにどのエリアで下ろすか」などを計算して、頭の中で完成形をイメージする必要がでてきます。

足場の完成度を高め作業効率がアップすれば、発注先からの信頼を得られ仕事も増える可能性があるので、収入アップにもつながります。

どんな人が向いている?

1.体力のある人

先の段落でクリエイティブ面の話をしましたが、鳶の仕事の基本は体力です。時には重い資材を担いで高所に上がらなければならないこともあります。このような作業を繰り返しおこなえる強い肉体があれば仕事をスムーズにこなせるでしょう。

2.細かく安全を確認できる人

また、建設現場は安全第一です。安全確認を怠ることなく、確実に作業を遂行する慎重派の人が向いているでしょう。

3.協調性のある人

協調性も大切な要素。鳶の仕事はチームワークで進めていきます。自分が担当するエリアの作業が早く完了したなら、遅れが出ているところにはヘルプにいきますし、その逆もしかりです。安全に作業を進めるためには声かけなども重要です。

そのため仲間とのコミュニケーションが苦手な人は仕事に支障が出ないように改善していく必要があるでしょう。

鳶のすごさを知りたいならまずこの1冊

著者
多湖 弘明
出版日

東京スカイツリーの建築をはじめ、鳶職人として各地の高層ビル建築の現場で活躍している著者が鳶のリアルな現場を写真と語りでレポート。命をかけて働く、鳶職人の実態に迫まります。

また「足場の組立て等作業主任者」「鉄骨組立て等作業主任者」「玉掛(たまかけ)作業者」といった資格の必要性や、ゴト着(鳶装束)の機能性やブランド、地域ごとの違いなどについても語られています。 

高層ビルだけでもいつでも命がけ。常に危険と隣あわせで作業にあたる鳶の人がどんな想いで仕事をしているのかをリアルに知ることのできる1冊です。

危険と隣り合わせの高所作業。責任者を目指す人に知っておいてもらいたいこと

著者
洋一, 中野
出版日

あらゆる産業の安全指導に長年従事した著者が、高所作業に関わるノウハウについて教えてくれます。高所作業にこそ鳶の魅力が詰まっていますが、危険と隣り合わせの現場です。

本書ではイラストと文章をリンクさせた理解しやすい内容で高所作業の災害予防について解説。職長を目指す人は必読・必携の1冊です。

2018年に出版された本なので比較的、新しい情報が載っていますが、建築の現場では法律などが日々更新されています。ですので本書の内容を確認しつつ、さらに最新の情報を知っておく必要があるでしょう。

「仲間と一緒に仕事をするのは最高だ」と教えてくれる

著者
五島 学
出版日

鳶はチームワークが大切な職業。本書は「武州鳶」という会社の社長が仲間と一緒に仕事をすることの喜びを伝えてくれる1冊です。  

実体験をもとに書かれており、会社の倒産の危機にも仲間を守ることを最優先したは話など、胸が熱くなるエピソードが盛りだくさん。鳶の仕事に誇りを持てるマインドも植え付けてくれます。 

また足場鳶の仕事についても紹介しているので、作業内容を知りたい方もチェックです。

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鳶の仕事は危険と隣り合わせで、体力も忍耐力も必要。注意を怠った状態で仕事をしていると怪我をします。しかし、仲間と一緒に仕事をする喜びを感じられ、責任感も育めます。クリエイティブ要素もあってやりがいは十分。悪い面だけではなく、よい面も数多くある職業です。 
今回紹介した本のうち上2冊はやりがいや楽しさについて触れ、鳶になるモチベーションを高めてくれます。もう1冊は安全に仕事に取り組むために覚えておきたい知識が詰まっています。3冊とも良書なのでしっかり読み込んで、鳶職人の世界へ飛びこんでみませんか。

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