Loading 81b424ebf5b28b6979c5bfbadb4fe3d86654abdce81e3c0259cc91c3ecd00497

松下省伍(バンド「モノブライト」Gt)

年齢によって味わいが異なる、熟成を楽しむ4冊

年齢によって味わいが異なる、熟成を楽しむ4冊

はじめまして、モノブライトのギター、松下省伍です。今月からこちらで連載をさせていただくことになりました。今年もまた当たり前に「一つ歳を重ねる」ということで、初回は読む年齢で色味が違うと言いますか、本自体も歳をとって成長しているんじゃないか?と感じる4冊を取り上げます。
2016.01.26

お気に入り
6

コメント
0

閲覧
21663

年齢によって味わいが異なる、熟成を楽しむ4冊
日本人らしい「渋い飲み方探検隊」の自分は、時に本を酒の肴にすることもあります。例えば、ミステリーやサスペンスを読む時の僕の変なクセがありまして。ラストに近づいたら必ず一人で落ち着ける場所で晩酌をし、そして読了するのです。

ある時は家で焼酎とともに、ある時はツアー先のホテルでたこ焼き&ハイボールとともに。本を閉じてから、あれこれ想像を巡らせる、物語の世界に浸る時間がたまらなく好きだったりします。

そんな一人遊びが大好きな私ではありますが、僭越ながらあれこれご紹介させていただければと思います。どうぞご贔屓に。初回は「熟成を楽しむ4冊」を取り上げます。

文字を飛び越え映画化されたり、さらにそれがリメイクされたりするベストセラーな超大作も素晴らしいですが、今回ご紹介するものは、個人のミクロな感情にリンクしていくような側面を持っている4冊です。個人の人生の中で、近くに感じる時期もあれば急に遠くに感じる時期もあります。そんな不思議な距離感で本棚に居続ける。なんかそれだけで一つの芸術のごとし!
まさに自分の本棚にずっと置いておきたい本なのです。

群青の夜の羽毛布

群青の夜の羽毛布 (文春文庫)
群青の夜の羽毛布 (文春文庫)
作者 山本 文緒
出版社 文藝春秋
出版日 情報なし
あなたさえいれば何もいらない!と中高生の時に一度は異性にそう思ったことはありませんか? それは疑いもなく本気で、純粋にそうだったのだ、と。でも、それはいつからか言えなくなりますよね。当然のように。好きや嫌いの感情だけではなく、恋から「愛」になってまたその中に恋を求めるような、大人の恋愛の光から闇、そして人間の内面までをも描いたような小説だと思います。

山本文緒さんの小説は、登場人物の感情を説明していないようで、実は説明しているなと思うところが多くて好きです。そのあたりも年齢とともに(実経験を積むことで、作品に対する理解が深まる)わかってきて楽しめます。ただ、低血圧に淡々と進む文が少し怖い……。

女優

女優 (文春文庫)
女優 (文春文庫)
作者 筒井 ともみ
出版社 文藝春秋
出版日 2008年02月08日
『失楽園』『ベロニカは死ぬことにした』などの脚本家である筒井ともみさんの小説。人気絶頂の時に突然失踪した女優の人生を、その姪が紐解いていくといった流れのお話です。最初に読んだ時は、ちょうど自分がメジャーデビューした2007年頃でした。夢の実現のために生き方を丸ごと変えていくべきだと思っていた自分と勝手にリンクさせた記憶があります。

誰しも、自分でも理解できない感覚を持っていると思います。それが年齢を重ねることで、もしかして少しわかってきたんじゃないかという瞬間が訪れる。もし、そこからさらに踏み込んで本質を知ろうとすると、最後の最後は自分自身と向き合うことになる。

それは、自分でも気づかない自分だったりするから信じられないこともあるし、辛い痛みを伴ったりする。でも、それが「自分を知る力」になるんだなと思ったのは、最近読み返した後の私。

レイクサイド

レイクサイド (文春文庫)
レイクサイド (文春文庫)
作者 東野 圭吾
出版社 文藝春秋
出版日 情報なし
最初に読んだのは2009年くらいだったと思います。この物語は両親と子供という関係が物話の軸です。ミステリーにハマっていた時期でした。謎解きといったものの、ラストの展開(?)に飽き始めていたのですが、この時は巧妙な伏線にまんまと絡め取られてしばらく痛快に混乱しました。ミステリーなので、あれこれと詳細は書けませんが、読み終えた爽快感の後、「あれ?」と思うかもしれません。

この物語の真意はミステリーではない、別のところにあるような気がしてなりません。最初読んだ時は「あれ? これで終わり?」という感想で、読み返した三十路の時は「あれ?」じゃなくて「ゾクッ!」に変わってました。

終末のフール

終末のフール (集英社文庫)
終末のフール (集英社文庫)
作者 伊坂 幸太郎
出版社 集英社
出版日 2009年06月26日
伊坂幸太郎さんの小説は、ストーリーの進め方に独特なテンポ感があって好きです。
隕石が落ちてきて全世界が終わろうとしている。そのくせに終末まで持て余す時間。そこにいる老若男女の登場人物たちが、複数の題名のついたストーリーでそれぞれ書かれています。

嫌でもシリアスな設定のはずなのに登場人物のセリフが妙に明るい時があったり、その変な違和感が心地よいです。初めて読んだのはデビュー時、2007年あたりでした。その時は「籠城のビール」という、滅亡の前に復讐をする物語が好きでした。最近では「太陽のシール」で、子供が生まれるかもしれない状況にある、未来がなくとも未来を考える男女の話が好きです。

余談ですが、巻末の謝辞にある「フィクションは嘘が多くても、楽しい」といった伊坂幸太郎さんの考え方。敢えて騙される楽しさを、僕の場合は年齢を重ねるごとに分かってきたような気もしています。
本でも音楽でも娯楽という部分とそうでない部分はあるとは思いますが、そのバランス感覚こそ面白いのだと思います。題材の危うさとか、皮肉な言い回しの怖さとか毒気とか、いい話だけじゃないところに笑いではないオモシロサが詰まっていたりするのでしょうか。

手前味噌で恐縮ですが、僕も物作りをする立場として、そんな風に聴き手と作品が繋がっていられる楽曲に携わりたい。そして、少しでも多くの方に届けていけたらと日々考えたりしています。
本と音楽一覧 本まとめ記事一覧 このユーザーの記事

キーワード・タグ

このまとめ記事の作者について

1672

年齢によって味わいが異なる、熟成を楽しむ4冊

松下省伍
%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%82%b3%e3%83%b3

関連記事

このまとめの作者について

週間ランキング

月間ランキング