今村翔吾のおすすめ作品4選!『童の神』だけじゃない、直木賞候補作家の書籍

更新:2021.11.17

京都府出身の作家、今村翔吾。2017年に発表した『火喰鳥』で本格的にデビューをすると、翌2018年には『童の神』で「直木賞」にノミネート。一躍注目を集めている、勢いのある作家です。この記事では、そんな彼の書籍のなかからおすすめのものを紹介していきます。

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今村翔吾のプロフィール

 

1984年生まれ、京都府出身の今村翔吾。ダンスインストラクターや作曲家、埋蔵文化財調査員などを務めるかたわらで、戦国武将今川氏真の生涯を描いた『蹴れ、彦五郎』、北条氏規の視点から豊臣秀吉の小田原征伐を描いた『狐の城』を執筆。両作はともに文学賞を受賞し、2017年に発表した『火喰鳥』で本格的に作家デビューしました。

翌2018年に発表した『童の神』は「角川春樹小説賞」を受賞、さらに「直木賞」にもノミネートされ、話題を集めています。

今村翔吾の作品の魅力は、ストーリー展開の疾走感と、登場人物たちが生き生きと描かれていること。勢いのある注目の若手作家だといえるでしょう。

 

今村翔吾の直木賞候補になったおすすめ小説『童の神』

 

平安時代中期を舞台にした長編時代小説です。本作には人間と、鬼や土蜘蛛、滝夜叉などの総称である「童」という2つの種族が登場し、人間は童を忌み嫌っていました。

そんななか、越後で生まれた桜暁丸(おうぎまる)は、体格や目、髪の毛の色が周囲の人間と異なっていたため、蔑まれてしまいます。

人も童も流れる血は同じ赤なのに、なぜ童だけが虐げられなければならないのか……父親と故郷を奪われた桜暁丸は、京の人間を恨みながら育ち、復讐のため他の童たちとともに朝廷軍へ戦いを挑むのです。

 

著者
今村翔吾
出版日
2018-09-28

 

「角川春樹小説賞」を受賞し、「直木賞」にもノミネートされ、今村翔吾の代表作となった作品です。

安倍晴明や源頼光など、実在した人物のエピソードを交えつつ、人間と童の戦いに焦点をあてています。前編をとおして鬼たちの視点で進行し、人に名付けられた「童」という蔑みの言葉を無くしたいという叫びが描かれています。

個性あふれる登場人物たちが生き生きと動き、手に汗握る戦いのシーンは臨場感たっぷり。今村翔吾ならではの疾走感も味わえる一冊です。

 

今村翔吾のデビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』

 

江戸随一の火消で、「火喰鳥」という異名をもっていた松永源吾。しかしとある出来事がきっかけで、5年前から妻の深雪と貧乏浪人暮らしをしていました。

そんなある日、源吾のもとに、壊滅してしまった火消組織を再建してほしいと、仕官の誘いが舞い込みます。トラウマを抱え、かつての凛々しい姿はなく「ぼろ鳶」といわれるほど落ちぶれてしまった火消たちを、同じく過去にトラウマを抱えた源吾が再生していく物語です。

 

著者
今村 翔吾
出版日
2017-03-15

 

本書は、今村翔吾が本格的に作家として活動を始めてから発表した最初の作品。後にシリーズ化され、たくさんのファンに愛されることとなりました。時代小説特有の表現は最小限に抑えられ、初心者でも読みやすくなっています。

物語の前半は、源吾が仲間を増やしていく過程が、後半では火事との対峙が描かれるという定番の構成ながら、個性的な登場人物それぞれの心の動きが豊かに表現され、感情移入をしやすいのが魅力でしょう。

それぞれが過去のトラウマを克服し、心身ともに成長しがら再び立ちあがる展開には、やはり胸がアツくなります。今村翔吾の作品を知るうえでも欠かせない一冊だといえるでしょう。

 

勧善懲悪の人気時代小説シリーズ『くらまし屋稼業』

 

浅草界隈を牛耳っている香具師の子分だった万次と喜八は、稼業から足を洗うため、集金した金を持って逃亡します。しかし刺客に追い詰められ、絶体絶命に。高輪に住む大親分・禄兵衛のもとへ逃げ込みました。

2人は禄兵衛から、「金さえ出せば必ず逃がしてくれる男」を紹介すると言われます。その名も「くらまし屋」と呼ばれる人物で、人生をリセットしようと江戸からの逃走を望む者たちを助けてくれるそうなのです。

 

著者
今村翔吾
出版日
2018-07-12

 

「くらまし屋稼業」シリーズの第1作目です。時代小説ながら、現代小説にも通じるライトな世界観は、初心者でも手に取りやすく、スムーズに読み進めることができるでしょう。

主人公は、「くらまし屋」のひとり、平九郎。普段は飴細工屋を営み、一般人に紛れています。寡黙な性格ながら子どもには優しく接し、戦いでは無敵状態。愛着が湧く人物です。その他のメンバーも知能や人心掌握などそれぞれに武器といえるものをもっていて、特技を駆使しながら人々を助けていく姿が爽快です。

人を困らせる悪人たちが成敗される、勧善懲悪の物語。人情ドラマと殺陣などの戦いも楽しめる、エンターテインメント作品です。

 

今村翔吾は青春小説も面白くておすすめ『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』

 

主人公は、生け花に魅了されている高校2年生の大塚春乃。「花いけバトル」という全国大会の決勝を見て以来、この大会に出ることを目標としていました。大好きな祖父を亡くしてふさぎ込んでいる祖母が住む香川県で開催されるとのことで、彼女を元気付けたいと考えたのです。

しかしこの大会では、2人1組で出場することが決められていて、春乃は一緒に生け花をやってくれる友人を探すところから躓いてしまいます。

そんななか、大衆演劇の座長を父にもち、修行の一環で華道を習っているという転校生が現れて……。

 

著者
今村 翔吾
出版日
2018-10-19

 

時代小説を多く執筆している今村翔吾が、現代を舞台にした少年少女の青春物語を発表。執筆ジャンルの幅広さを体感できる一冊です。

春乃が目標としている「花いけバトル」は、実在する大会。全国の高校生が参加することができ、制限時間内に即興で花をいける内容になっています。

春乃の花に対する想いや、転校生である貴音との甘酸っぱい青春、大会に出場するまでに立ちふさがる壁などの展開が読者を楽しませてくれるでしょう。

初めて今村翔吾の作品を読む方でも楽しめる一冊。また「羽州ぼろ鳶組」シリーズファンにはたまらないサプライズも仕掛けられているので、時代小説じゃないからと足踏みをしている方にもおすすです。

 

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