村上もとかのおすすめ漫画ランキングベスト5!名作は『仁』だけじゃない!

更新:2021.12.16

卓越した心理描写で描く人間ドラマが評判を呼び、大ヒットとなった『JIN―仁』。2期にわたって放映された人気ドラマの原作者として、村上もとかの名を知った人も多いのではないでしょうか。しかし、魅力あふれる彼の作品は、まだまだ他にもあるんです。

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真面目でユーモラスな漫画家、村上もとか

1951年、東京に生まれた村上もとかは、今なお活躍し続けるベテラン漫画家のひとり。映画会社の美術部に勤めていたという父親の影響で幼い頃から絵に親しんでいるうち、漫画家を志すようになったそうです。

最も大きく影響を受けたのが、手塚治虫による漫画雑誌「COM」。多くの漫画家の登竜門となったこの雑誌が、村上もとかの青春時代をつくったといっても過言ではないでしょう。

その後、「集英社少年ジャンプ」に掲載された『燃えて走れ』で漫画家デビュー。スポーツやSF、法曹界や美術界、医療ものなど幅広いジャンルで活躍する個性的なキャラクターを、繊細な筆致と人間味ある心理描写で生き生きと描き出し、数多くのヒット作を世に生み出しました。

また、剣道を題材にした『六三四の剣』や『龍』などを長く連載していたため、剣道に精通していると思われがちだそうですが、実はほとんど剣道経験がないとか。のちに『ドラゴン桜』などを連載する三田紀房(剣道経験者)と親交があったことが、迫力ある剣道シーンや心理戦での人間描写を生み出すきっかけになったようですね。

緻密で巧みな心理描写に、ユーモラスなエッセンスを加えた作品は、読み手をドキドキワクワクさせるだけでなく、クスっと笑えてほっこりもできる。『JIN』だけじゃない、村上もとかのおすすめ漫画をご紹介します。

人生とは山であるとは、よく言ったもの

本作は「少年ビッグコミックス」で読み切り短編として不定期連載された8話を収録。「講談社漫画賞少年部門」を受賞した『岳人列伝』は、臨場感あふれる描写で読者を惹きこむ傑作で、山岳漫画の金字塔と評されています。

 

著者
村上 もとか
出版日


各話は独立していますが、登場する人物たちはみんな、遭難したり、ブリザードに見舞われたり、高山病になったり、滑落しかかったり……と不運に共通して見舞われます。

想像を絶するような経験をしてまでも、山頂を目指し、登頂することによろこびを見いだす岳人(クライマー)たち。人はなぜ山に登るのか。バカなのかもしれません。それも山が好きな山バカです。そんな彼らの熱量が窺いしれる言葉が多くあります。

「南西壁」では、シェルパであるアン・プルパが「だんなは、エベレストに恋してる…」と主人公のロニーに述べますが、その言葉はすべての登山家に当てはまるのではないでしょうか。

この物語は、単に山岳漫画に収まりきらない、人間の一生についてのドラマが詰まったもの。山を登っている間にふと感じる孤独な瞬間、仲間がいることの心強さ、美しい大自然への畏敬の念、そのすべてが山の魅力ですが、同時に克服しなければならない壁と同じということに気付きます。

山頂を目指しながら、きれいな景色を眺め、急な山道にへこたれながら、時に猛吹雪に襲われたり、自然の驚異に畏れを抱いたりしながら、人生とは自分とは一体なんだろうと考えることで、人間としての在り方や生き方が見えてくるのです。

山の楽しさだけでなく、厳しく険しい山の恐ろしさ、そして美しさを堪能できる1冊。山を愛する人はもちろん、これから山を始めたい人にぜひ読んでほしい作品です。

ふたりの漫画家が交わる時に生まれる傑作

女性漫画家のパイオニアとして活躍した上田としこの生涯にスポットを当てた伝記的な作品。「少女クラブ」で連載されていた代表作『フイチンさん』をベースに物語が展開。村上もとかのファンはもとより、上田としこのファンからも高い支持を集める人気作です。

 

著者
村上 もとか
出版日
2013-09-30


今作には、村上もとかがその人柄に惚れた、という上田としこの人間的な魅力が満載。笑ったり、怒ったり、悩んだり、時々泣いたり、表情がコロコロと変化する様は見ていて気持ちがいいです。「気に入らない仕事でもやらなくっちゃ生きていけないしな」と、自活能力もばっちり。仕事もバリバリこなして旦那さんを養う。こんな自立した女性は、戦時中には珍しかったことでしょう。

『フイチン再見!』では、関係者への丁寧な取材と、綿密なキャラクター設定で、上田としこの人となりや生活など、その一生涯を描きだしています。悩みながらもイキイキと生きる彼女の姿に、励まされる人も多いはず。

剣道を通じて学ぶ、人としての成長

岩手県を舞台に、少年剣士の成長を描いた正統派のスポーツ少年漫画です。「週刊少年サンデー」において1981年~1985年にかけて連載され、多くの子ども達の間に剣道ブームを巻き起こしました。主人公の六三四が、様々な出来事を乗り越え人間として成長してゆく様子から目が離せません。

 

著者
村上 もとか
出版日


6月3日の4時に生まれたから、六三四(ムサシ)って安直……と、思ってはいけません。ちゃんと、「現代の宮本武蔵に」という両親の思いが込められているのです。

六三四のいちばんの魅力は素直さにあると思います。人の教えを素直に守ることができ、素直に相手の強さを認めることができ、自分の弱さも素直に見つめられる。だからこそ、「剣道が強くなりたい」というまっすぐな思いで努力することができるのではないでしょうか。

落ち込むようなことがあって剣の道を諦めかけても、また剣道へ戻ってくることができたのは、六三四が持つ「剣道が好き」「強くなりたい」という素直な思いがあるからなのだと思います。

さらに、六三四には同世代に素晴らしいライバル達がいます。彼らとの切磋琢磨が、六三四の成長に大きな影響を与えたことは間違いありません。あいつが頑張っているから自分も頑張る、と存在がプラスになる関係って素敵なことです。

六三四の姿を自分と照らしてみると、一生懸命になれていなかったことを反省します。何かに一生懸命打ち込んでいる人の姿は、キラキラと輝いていますから。何かに一生懸命打ち込むことを思い出させてくれる、そんな漫画です。疲れた時に読むと爽快な気分になりますよ。

壮大なスケールの歴史漫画に、恋愛漫画のエッセンス

1991年~2006年までの15年にわたり「ビッグコミックオリジナル」にて連載された長編歴史漫画。京都の押小路財閥の跡取り息子である「龍」を主人公に、日本と中国を舞台に激動する時代に飲み込まれながら懸命に生きる姿を描いています。まさに村上もとかの代表作と呼ぶにふさわしい大河ドラマ的傑作です。

 

著者
村上 もとか
出版日


まず、特筆すべきは魅力的な龍の人柄!財閥の跡取りでありながら、飾らないチャーミングな人物像に親しみを覚えます。剣道に精を出しながらも、しっかり恋愛もする、そんなどこにでもいそうな普通の若者です。気楽に読み進められるほのぼのとした学園物の様相を呈しながら、次第に歴史や運命に翻弄されてゆく主人公の葛藤や生き様が交じりあう骨太なストーリー展開は読み応え抜群。

また、龍の波瀾万丈の人生が本作のメインプロットなのですが、ヒロインである田鶴ていとの恋愛関係も物語のポイントです。明るく聡明で、しかも強い意志を持つていの事を好きになった龍は、周囲の反対をよそに彼女と一緒になる決意をします。

「この女と一緒になる為やったら、オレは何でも捨てられます」(『龍』より引用)

こんな言葉、女性ならば誰でも言われてみたいもの。そして龍にそこまで言わせたていは、やっぱり魅力的な女性です。龍との身分の違いを感じながらも、自分に素直に龍を愛し抜き、正しいことをやろうと遠回りしてしまったり、ふとしたきっかけから身を投じた映画の世界にやりがいを感じ、同時に葛藤したり……。ついつい、頑張れ!とエールを送ってしまうほど、頑張り屋さんです。どうしてもぬけ切らない田舎言葉が、いっそう彼女を魅力的にしています。

さらに、そこに龍の初恋相手である幼なじみの小鈴も加わり、二人の女性と龍を取り巻く関係が、物語にさらなる円熟味を加えているのです。

出生の秘密や国家の秘宝など、ミステリ要素もあり、壮大なスケール感ある物語は、まるで目の前で見ているかのような臨場感をともなって読者を惹きこみます。全42巻と長編ですが、それだけの価値がある漫画なので、ぜひ一度は手にとってみて損はないですよ。

言わずと知れた、村上もとかの代表作

2000年より「スーパージャンプ」で連載がスタート。2010年の連載終了まで10年にわたって紡がれた医療漫画です。タイムスリップ(SF)やヒューマンドラマ、歴史ものなど様々な要素をも盛り込んだ今作で、「手塚治虫文化賞マンガ大賞」を受賞しています。

 

著者
["村上 もとか", "酒井 シヅ", "富田 泰彦", "大庭 邦彦"]
出版日


最先端医療の現場にいた外科医が、まさかのタイムスリップで江戸時代に!という奇想天外なストーリーながら、荒唐無稽な展開にならないのがさすが村上もとかです。

歴史を変えてしまうかもしれない危険性も感じながら、目の前にいる患者を放っておけない南方仁。まさに医者の鑑です。自分のアイデンティティが全くない江戸時代において、これまで培った医療技術と知識だけで、自らの道を切り開いていきます。格好良いです、南方仁。

坂本龍馬・緒方洪庵・勝海舟……など、歴史に名を馳せる登場人物もそれぞれ個性的で、まるで「本当にこんな人だったのでは?」と思えるほどの人物描写が秀逸です。

医療の可能性、歴史背景の的確さ、タイムスリップというSF要素、運命に翻弄されていくスリル。ひとつの物語の中に幅広いジャンルの物語が混在し、なおかつ混じりあっていることで、『JIN』に究極の面白みを生み出しているといえるでしょう。

病気が治ってよかったね、とただ感動するだけじゃないストーリーのある感動がまっています。

村上もとかの作品は、丁寧な心理描写で共感を得やすい作品が多くあります。幅広いジャンルの物語を描いているので、紹介した中から1つでも気になる作品があれば、ぜひ手に取ってみてください。読了後の満足感は折り紙つきです。

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