胸糞悪すぎるおすすめ鬱漫画7選を紹介!トラウマ注意

更新:2021.11.28

鬱漫画とは、読むと気がめいり、欝々としてしまうような作品のこと。鬱な展開となると様々な要因がありますが、理不尽な仕打ちにより、不幸になる姿は、ふつふつと怒りが沸き起こります。そんな、胸糞悪すぎるおすすめ鬱漫画7作品をご紹介いたします。

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BLの枠を超えた問題作!身体中にキズを持った男の抱える闇

皆、それぞれ怖いものがあるでしょう。幽霊や妖怪など、人知を超えた存在、虫や爬虫類といった見た目が受け入れられず、意思疎通ができない生き物など様々。しかし、最終的に何が一番怖いのか、本質的にはわかっているはずです。

『高3限定』は、とある山間にある全寮制の男子高校を舞台とした物語。全3巻の物語ですが、最初と最後では全く違う印象を抱くでしょう。男性同士の恋愛を描いたボーイズラブ(以下BL)というジャンルではあるものの、その枠を超えたメッセージ性の高い作品になっています。

健全な精神を育成する、と山間にある全寮制の男子高校。高校3年生になった小野耕平は、教師のイケダに恋をしていました。イケダには3年生の中から1人だけ、1年間肉体関係を選ぶという噂があり……。

著者
梶本レイカ
出版日
2012-05-24

「高3限定」というまことしやかな噂は、耕平自身が「高3限定」となることで証明されました。

イケダと肉体関係を持つようになり、耕平は彼の身体に数多くの傷があることを発見します。やけどや歯型といった、明らかに人為的な無数の傷を見て、イケダを救うのは自分しかいない、と意気込む耕平。しかし、そんな耕平のイケダへの愛とは裏腹に、2人の関係は徐々に歪んでいきます。

1巻のあらすじだけをみると、痛々しい生徒と教師のラブロマンスのようですが、物語が進むにつれ、とある因習やイケダの過去が絡み、思わぬ方向へ進んでいきます。痛々しさに胸が痛み、どうしようもない理不尽と人間のエゴに、憤りを覚えるでしょう。歪んだ形であっても耕平のイケダへの純然たる愛に、少しだけ救われます。  

少々グロテスクな描写も多いため、苦手な方はご注意ください。BLではありますが、女性だけではなく男性の心にも響く強さを持っています。

不幸な少女を救ったのは魔法?謎のサイトと魔法少女の運命は

童話や昔話など、おとぎ話の類では、不幸な主人公が幸福になる物語が数多存在します。しかし、幸せな物語は本当に幸せのままで終わるのでしょうか。何かを得た者は、対価として大切なものを失うというのが世の常。不幸な人が、ただ誰かの善意だけで幸福になる物語は、奇跡でしかないのです。

何か、どうしようもない不幸な目に遭っている少女の前に、突然現れる謎のサイト。「魔法少女サイト」は、少女たちに不思議な力をもったステッキと、抗うことができない使命を提示します。

著者
佐藤健太郎
出版日
2014-03-07

東大入学確実という、優秀な兄を持つ中学2年生の朝霧彩は、兄と比較され、さらにはその兄から暴力を受け、学校ではいじめられているという、逃げ場のない不幸のどん底にいました。家にも学校にも居場所が無い彩の前に、「魔法少女サイト」というウェブサイトが現れます。

奇妙な話し方をする管理人からもらったのは、銃の形をしたステッキでした。引き金を引く勇気のなかった彩でしたが、エスカレートしたいじめに身の危険を感じ、とっさに引き金を引くと、いじめていた相手が人身事故で亡くなったことを知ります。自分が殺したのかと混乱する彩は、魔法少女と「魔法少女サイト」を巡る戦いに巻き込まれていくのでした。

等価交換という言葉があるように、彩に限らず、魔法少女たちは魔法を使用するごとに、身体に浮かんでいる紋章が消えます。それは寿命を削っていることと同義で、彼女たちの命は、魔法を使い続ける限り減り続けるのです。しかし、魔法少女を狙う存在や、サイトの管理人など、様々な思惑が絡み、魔法少女たちは魔法を使わなければならない状況に追い込まれてしまうのです。

10代の少女たちが主人公ですが、彼女たちの背景や、抱えている問題はかなり重く、誰をとってもハードなもの。幸せになってほしいのに、魔法少女となってしまった彼女たちの戦いを見守らなければならず、読者はやるせなさと焦燥感に駆られるでしょう。なにか裏がありそうなサイトの管理人たちの思惑など、サスペンス要素でも読ませる作品です。

『魔法少女サイト』については<漫画『魔法少女サイト』の魅力を全巻ネタバレ紹介!【2018年アニメ化】>の記事でも紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

少女たちが憧れた名家と劇団の真実

不幸な境遇というのは様々ありますが、生活能力のない子どもたちにとっての不幸は、愛情をかけ、養ってくれる両親がいないという状況でしょう。そんな子どもたちを保護し、育成する施設というのは昔から存在しますが、そのすべてが善意で成り立っているわけではありません。

『ブラッドハーレーの馬車』は、中世ヨーロッパ風の風習を持つ、とある国で起こった出来事が描かれています。オムニバス形式となっており、とある重大な「祭り」を様々な人物の視点、出来事で語っていきます。しかし、この「祭り」が何であるかを知ったとき、読者は多くの少女たちが辿った過酷な運命を知り、苦悩することになるでしょう。

著者
沙村 広明
出版日
2007-12-18

戦争の足音が遠くに聞こえ始めた中世、両親がおらず、孤児院で育つ少女たちのあこがれは、ブラッドハーレー家の養女になることでした。ブラッドハーレー家は資産家の家系で、「ブラッドハーレー聖公女歌劇団」という劇団を運営しており、劇団の構成員はブラッドハーレー家の養女。彼女たちは、全国の孤児院から集められていました。

毎年1人だけ、施設からブラッドハーレー家の養女となります。しかし、公演で見かける少女たちの数と、養女となっているであろう少女の人数は合うことはありません。実はこの少女たちには、彼女たちの誰も想像していなかった、過酷な運命が待ち受けていました。

祭りで何が行われているのか、それを知った時点で読者は胸糞悪い、という言葉を思い浮かべることでしょう。選ばれたという幸せから一転、少女たちは抗いようのない力に、人間の尊厳を踏みにじられます。絶望と純粋な心、その両方を持った少女たちの瞳に、読者も無力感に苛まれることでしょう。トラウマ級の衝撃を受ける作品ですが、理不尽な性暴力シーンが多めなので、苦手な方はご注意ください。

男性と女性は平等なのか?性差の不平等を問いかける

男性と女性は平等である、という建前があります。確かに、社会的な立場としては平等な社会を築こうという試みがなされていますが、性別差というものは、そう簡単に覆せないもの。そもそも身体の作りが違うため、物理的な力で圧倒された場合、女性は抗うことはできません。

互いの立場を想像することはできますが、実際にその立場になってみなければわからないことは山ほどあります。『先生の白い嘘』は、男女の性差から起こった出来事と、そこに関わる人たちを描いた群像劇。性の話、特にレイプを題材として扱っているため、トラウマがある方は注意が必要です。娯楽として描かれているわけではないため、性描写はあまり激しくはありませんが、人間の尊厳を傷つけられるシーンは、性別を超えて痛みを感じることができるでしょう。

著者
鳥飼 茜
出版日
2014-02-21

24歳の高校教師、原美鈴は地味な外見で内向的な性格をしています。日々良き教師であり続けようとする美鈴ですが、実は親友の彼氏にレイプされたという過去を持っていました。しかも、美鈴の立場や性行為の写真を盾に脅され、現在も関係を強要されています。自分にも落ち度があった、と攻め続ける美鈴の前に、1人の少年が現れます。

新妻祐希は美鈴の生徒。セックスに興味を持ち、アルバイト先の社長の妻と関係を持ってしまいました。しかし、その関係も無理やりのもの。最終的に怖気づき、逃げようとした新妻に、ここまで連れ込んだ責任を取れ、と関係を迫ったのでした。そのせいか、EDになってしまった新妻と、美鈴は、思いがけず本音で話し合ったことから、互いの存在を気にかけるようになります。

相手ではなく、自分自身を攻め続ける美鈴の痛々しさに、そっと寄り添いたくなります。作中で最も胸糞悪いのがレイプ犯の早藤ですが、彼の言葉がやけに的を射ているところが腹の立つところ。人間の本質を描いているからこそ、救われてほしいと強く願ってしまう、そんな作品です。

『先生の白い嘘』については<衝撃漫画『先生の白い嘘』をネタバレ考察!現代の隠れた格差、生きづらさ>の記事でも紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

エログロの境地!歪んだ夫婦の愛の果て

年を重ねるごとに、昭和という時代が遠ざかっているように感じられる昨今。現代から見れば昭和、特に昭和初期はレトロな雰囲気があると評されるなど、やはり同じ日本という国でも、感じられる空気感は違うものです。しかし、その空気感だからこそ成立する物語というのも確かにあるのでしょう。

江戸川乱歩は、明治期から昭和期にかけて多くの作品を残した小説家です。日本で最も古い推理小説家とも呼ばれており、探偵として活躍する明智小五郎を生み出した、ヒットメーカーでした。数多くの推理小説を残した江戸川乱歩ですが、グロテスクな作品を残したことでも知られています。

椅子に人間が入り込むという『人間椅子』など、少々気味の悪い作品の多い江戸川乱歩の作品の中でも、発表時の世情もあってか、発禁本となっていた問題作が『芋虫』。文章でも狂気と不気味さがにじみ出てくるような作品ですが、丸尾末広のレトロかつ美麗な絵により、エログロと表現すべき乱歩世界の魅力が、あますことなく表現されています。

著者
["江戸川 乱歩", "丸尾 末広"]
出版日
2009-10-26

戦争により、手足に加え、耳は潰され、声も発することができなくなった須永中尉を夫に持つ須永時子。ほぼすべての五感を失い、眼だけで感情を語る夫を虐げて快感を得ることを楽しみとしていました。しかし、唯一無事だった夫の瞳が、あまりにも純粋な輝きを持っていることに恐れをなし、その目をつぶしてしまいます。

中尉の姿は、戦時中でもそう見ることはないであろうというくらい、様々な障害を持っています。そんな夫の姿に嗜虐心を刺激されている時子なのですが、夫への心境の変化があったからこそ、その純粋な瞳を恐れたのでしょう。その後に待ち受けている悲劇に、歪んだ愛の形を見ることができます。差別的であると感じる方もいるでしょう。しかし、原作の小説が書かれた当時の社会を感じられる一端となるはずです。

ネガティブパワー全開!薄幸の中年息子と母親のシュールギャグ

晩婚どころか結婚しない若者が増え、同時に高齢化が進む日本。年齢は重ねるごとに先が見えることもあり、自分の人生よりも、残していく人がどうなるのか、親の立場では思い悩むことも多いでしょう。しかし、本作を読めば意外と大丈夫かも、と不安が和らぐかもしれません。

『薫の秘話』というタイトルを見ると、どこか耽美な雰囲気が漂っていますが、描かれている内容は、耽美とは対極な存在である中年男性。冴えない息子とその母親が主人公の、ちょっとシュールな日常が、コミカルに描かれています。

著者
松田 洋子
出版日
2010-04-24

橘薫は、その雅やかな名前に反し、薄い頭髪、控えめに言ってもふくよかすぎる体型、ついでに同性愛者という中年男性。日々好みの男性を眺めては、乙女のように溜息を吐いています。そんな薫を可愛がっているのは、母のちね。夢見がちで冴えない薫にやきもきしながら日々を過ごしていました。

中年ニート漫画の先駆けともいえる本作、とにかく夢見がちで意外と現実が見えていない薫のコミカルかつシュールな日常が笑えるのですが、時折イラッとすることもあるでしょう。

悪い人間ではないものの、なんだかとってもどうしようもない人間である薫。しかし、彼が背負っている小さな不幸は、読者を少しだけ暗い気持ちにさせます。息子だからこそ、見捨てず慈しむちねの深い愛情を随所に感じ、笑いながらホロッとする場面もあります。薄幸ではあるけれど、不幸ではない、そんな家族の少しだけ薄暗い日常をお楽しみください。

読後感は最悪!動画配信サイトと現代の闇

SNSや動画など、誰でも発信者になれる時代となりました。動画配信サイトを利用し、人気となった「ユーチューバ―」といった存在も珍しくはなく、アイディア次第では多大な影響力を持ち、巨額の富を稼ぐことも出来ます。しかし、成功者となれるのは、ほんの一握り。1つの動画にも、様々な人の思惑が複雑に絡んでいるのです。

『奈落の羊』は、そんな動画配信を題材とした作品。匿名性の高いインターネットを駆使し、人間の闇を描いているという、より現代的な内容となっています。本当にヤバイものはネット上から削除されるという安心感があるせいか、本作に描かれた内容はリアルと感じられない部分もあるでしょう。しかし、実は現実にあるかもしれないと考えると、醜悪さに心がざわつきます。

著者
["きづき あきら", "サトウナンキ"]
出版日
2016-03-28

動画サイトに趣味で投稿し、小遣い稼ぎをしている大学生の修二は、まともに学校に通わず、家族と疎遠となるなど、少々気まずい立場となっていました。将来は、動画をリアルタイムで配信する「生配信」で生活しようと考えています。ある日、修二はメイという少女と出会いました。ネットカフェに住み、援助交際で生計を立てるメイを利用し、修二は番組を作成して金儲けをしようと企みます。

修二にとってメイは、金もうけをしようとするツールで、そこには人間として扱うという意思はみじんも感じられません。修二の作成した動画を見るリスナーも同様で、そんな誰でも持つ人間の闇を現実に突きつけられたことで、読者は思わぬダメージを負うことでしょう。人間の汚さ、浅はかさに、メイだけではなく読者も打ちのめされます。

物語が進むにつれ、子どもたちが関わる物語が展開されるのですが、こちらのエピソードは胸糞悪いという表現を通り越しているといってよいでしょう。レイプなど、性的暴行を加えるシーンもあるため、苦手な方は注意が必要です。修二がクズであるというのは間違いありませんが、どうやら配信サイトにも謎の黒幕の存在がある様子、サスペンス的な要素も多くありますが、スッキリよりもモヤっとした重い気持ちが胸に残りそうです。

『奈落の羊』が気になる方は<『奈落の羊』の見所を全巻ネタバレ紹介!読むのが辛すぎる!>の記事をご覧ください。

こちらで紹介した作品は、過激な描写が多い作品が多く、読む人を選ぶでしょう。胸糞悪いということは、不快と感じる表現もあるということ。しかし、悪も人間の一部であることは間違いありません。間接的に悪に触れることができる作品ばかり、手に取る時にはお覚悟を。ぜひ心が元気な時に作品を堪能してください。

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