知略を頼りに1人の女性がモンゴル帝国に挑む!漫画『天幕のジャードゥーガル』の魅力をネタバレ紹介

更新:2026.6.13

漫画『天幕のジャードゥーガル』はWebコミックサイト「Souffle」で連載中の歴史漫画です。実在した人物ファーティマの人生をベースに、一個人がモンゴル後宮を舞台に知略を駆使して立ち回る復讐譚。 2023年「このマンガがすごい! オンナ編」第1位に輝いた本作について、あらすじや魅力をご紹介していきます。

小説も漫画も映画も基本雑食な、しがない物書き。温故知新で古典作品にもよく触れるようにしています。
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3行でわかる漫画『天幕のジャードゥーガル』

  • 復讐を心に誓った女性が大帝国に知略で挑む物語
  • 実際のモンゴル史を元にした歴史漫画
  • 絵柄が可愛くて親しみやすい

漫画『天幕のジャードゥーガル』はちっぽけな女性が大帝国に挑む物語

漫画『天幕のジャードゥーガル』はちっぽけな女性が大帝国に挑む物語

『天幕のジャードゥーガル』は、Webコミックサイト「Souffle」で2021年9月から連載中の歴史漫画です。既刊5巻(2026年5月現在)。最新の第6巻は2026年7月15日発売予定となっています。

舞台は13世紀のユーラシア大陸です。モンゴル帝国の侵略で居場所を奪われた元奴隷の少女が、亡き主人の仇を討つべく名前を偽り、単身で帝国後宮に潜り込んで数奇な運命を辿る物語となっています。

作者は『ダンピアのおいしい冒険』で知られる漫画家トマトスープ。キャッチーな絵柄とは裏腹に繰り広げられる本格的な大河ドラマが評判となって、『このマンガがすごい!2023』オンナ編の第1位や『マンガ大賞2023』第5位など、複数の賞を受賞しています。

『天幕のジャードゥーガル』は細部こそ脚色されているものの、実際に13世紀で起きた出来事をベースとしたお話です。現代日本人にはあまり馴染みのない時代と地域ながら、やがて希代の魔女として知られる少女の波乱万丈の人生に引き込まれ、一度読み始めると止まらなくなります。

漫画『天幕のジャードゥーガル』あらすじ

漫画『天幕のジャードゥーガル』あらすじ

13世紀、イラン東部。器量のいい奴隷少女シタラは、商品価値を高めるべく、奴隷商によって学者一家のファーティマ夫人に預けられることになります。まだ年端もいかないシタラは当初反発したものの、ファーティマ夫人の息子ムハンマドから勉強の重要性を学び、下女として働きつつ知識を身につけていきました。

時は過ぎ、聡明な娘に育ったシタラ。8年前に知識を求めて旅に出たムハンマドを待ちながら、ファーティマ夫人の下で平和に暮らしていました。

ところが、穏やかな日々は突如現れたモンゴル帝国の軍によって崩されました。街は蹂躙され、ファーティマ夫人は殺され、そしてムハンマドも……。辛くも生き延びたシタラは「ファーティマ」と名乗り、復讐のために帝国後宮へと潜り込みます。そしてそこで、のちに自信が側仕えすることになる皇后ドレゲネと出会うのでした。

漫画『天幕のジャードゥーガル』登場人物紹介

漫画『天幕のジャードゥーガル』登場人物紹介

『天幕のジャードゥーガル』の中で特に重要人物は2人です。1人は主人公のファーティマ(シタラ)、もう1人はドレゲネ。

ファーティマは高等教育を受けた、当時のイランとしては珍しい才女です。元々は「星」を意味するシタラという名前の奴隷でしたが、家族同然に扱ってくれたファーティマ夫人の死後、モンゴル帝国に潜入しやすいよう主人の名前を借りることに……。

彼女は「魔女」と呼ばれた実在の人物、ファーティマ・ハトゥンがモデルです。史実では皇后ドレゲネの側近として活躍しました。

ちなみに本作のタイトル『天幕のジャードゥーガル』ですが、「ジャードゥーガル」はアラビア語で「魔女」を意味する言葉。遊牧民国家たるモンゴル帝国の住居は基本的にはテントであり、宿営地の後宮=天幕と解釈可能です。つまり『天幕のジャードゥーガル』とは、後宮で暗躍する魔女――ファーティマ自身を示唆しているのがわかります。

ドレゲネはモンゴル帝国初代皇帝チンギス・カンの三男、オゴタイ(オゴデイ)の6番目の妃です。夫がモンゴル帝国に殺され、その後自分も後宮に入れられたことから、オゴタイを敵視しています。ファーティマと同じくモンゴル帝国を憎んでいる人物。

こちらも実在した同名人物、第6皇后ドレゲネがモデル。史実のドレゲネは第2代皇帝オゴデイ・カアンの死後、ファーティマの助言で政争を行い、息子グユクを後継者に擁立しました。

漫画『天幕のジャードゥーガル』魅力1:強大な軍事国家に「知」で立ち向かう

漫画『天幕のジャードゥーガル』魅力1:強大な軍事国家に「知」で立ち向かう

『天幕のジャードゥーガル』は1人の女性が、モンゴル帝国と戦う物語です。

主人公のファーティマは身体的には普通の女性なので、もちろんまともにやっては歯が立ちません。地上最強のモンゴル帝国に比べれば、一個人などちっぽけな存在です。地位も財産もないファーティマが唯一持つのは、高等教育によって培われた知識のみ。知略によって大帝国の牙城を崩すのが、本作の面白いところ。

ただし、序盤のファーティマはまだ運命に翻弄されるか弱い少女に過ぎません。天涯孤独の身になった彼女は復讐を誓い、モンゴル内部に潜り込むのですが、それはあくまで偶然のチャンスを掴んだだけ。本格的にファーティマが知略を巡らせるようになるのは、2巻以降のお話となります。

ところで、史実のファーティマ・ハトゥンは政敵を陥れる狡猾な女傑だったそうです。現時点で本作のファーティマの人生はかなり脚色されているので、歴史と同じ道を辿るかはわかりません。ただ、作者トマトスープは歴史の時代性を尊重する漫画家なので、おそらくモデルとなったファーティマ・ハトゥンの生涯をある程度なぞることになるでしょう。

ムハンマドに「知」を啓蒙された本作のファーティマが、それをどのように駆使して行くのか……その辺りが『天幕のジャードゥーガル』の魅力であり、最大の見所となります。

漫画『天幕のジャードゥーガル』魅力2:史実を知らなくても楽しめる

漫画『天幕のジャードゥーガル』魅力2:史実を知らなくても楽しめる

『天幕のジャードゥーガル』は史実に基づいた部分が非常に興味深いです。歴史と聞くと気後れする方が多いかと思いますが、ご安心ください。知識がなくても大丈夫です。

物語には多分に脚色が含まれますが、ベースにあるのは歴史的事実。モンゴル帝国による侵略行為や、現在とはまったく異なる文化の価値観が生々しく描写され、ファーティマの復讐の物語に深い奥行きを持たせています。

当時のチンギス・カン率いるモンゴル帝国はまさしく破竹の勢いで版図を広げ、数え切れないほどの血を流しました。

本作ではファーティマの体験を通して圧倒的な暴力と恐怖が描かれるわけですが、それに屈することなく、むしろ怒りのバネとして強大な帝国へ挑む彼女の姿勢に共感せずにはいられません。

歴史を前提としていますが、復讐という動機が明確なので、モンゴル史をまったく知らなくても楽しめるのが魅力。いわば判官贔屓的な面白さ、成り上がりモノの面白さです。

漫画『天幕のジャードゥーガル』魅力3:とっつきやすい可愛らしい絵柄

漫画『天幕のジャードゥーガル』魅力3:とっつきやすい可愛らしい絵柄

『天幕のジャードゥーガル』の登場人物は、全員がデフォルメされた3~4頭身くらいのキャラです。全体的に丸みを帯びたポップな絵柄は、子供向けの絵本やアメリカのカートゥンアニメを想起させます。

この可愛らしさも本作を語る上で重要なポイント。

本作は復讐や政争に焦点の当たるハードな作品です(序盤の時点で政争の要素は薄いですが)。時には凄惨な人死にも描かれますが、愛らしい絵柄のおかげでかなり中和されていて、年齢性別を問わず読みやすくなっています。ただ、あまりにもショッキングなシーンは、ポップな筆致とのギャップでより深く心が動かされることも。

作者トマトスープの作画はキュートさに目が行きがちですが、服飾品の細かさにも驚かされます。登場人物それぞれの立場できちんと描き分けているようなので、物語の進行状況と合わせてチェックすると、さらに楽しめるでしょう。

復讐を軸とした骨太のストーリーと、誰にでも受け入れられやすいポップな絵柄が、『天幕のジャードゥーガル』の人気の一翼を担っているのは間違いありません。

話の展開やタッチはまったく異なりますが、19世紀中央アジアの婚姻事情を描いた森薫の『乙嫁語り』が好きな方は、『天幕のジャードゥーガル』を受け入れやすいと思います。

『天幕のジャードゥーガル』第1巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

『天幕のジャードゥーガル』第1巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

トゥース市での生活は、幼いシタラにとってかけがえのない日々でした。奴隷にも理解ある優しい人々、温かい家族……モンゴル帝国の襲来で、それらがすべて失われてしまいます。

モンゴル帝国第4皇子トルイは、逆らう者は女子供でも容赦なく殺す冷徹な指揮官でした。彼はファーティマ夫人の命だけでなく、彼女が大切にしていた亡き夫の蔵書、エウクレイデス『原論』の写本まで持ち去りました。

著者
トマトスープ
出版日

生き残った避難民らとともに捕虜となり、何もかも奪われて自暴自棄になりかけるシタラ。そんな時、彼女は『原論』を欲しがったのはトルイの妃ソルコクタニだということを知ります。そしてそのソルコクタニが、外国語で書かれた『原論』を教示してくれる専門家を求めていることも……。

このままラブコメでも始まるのではないかという冒頭から、理不尽な暴力に晒されるトゥース市壊滅まで、第1巻では非常に落差の大きい壮絶なストーリーが描かれます。あまりの展開の激しさに、最初は愕然としてしまうでしょう。

悲劇の塗り重ねによって克明になるシタラの絶望感。ふつふつと湧き上がる理不尽な仕打ちへの怒りは、歴史をよく知らなくても共感できます。

唯一の希望は、ソルコクタニへ近づいて『原論』写本を取り戻し、モンゴル帝国へ復讐を果たすこと。そのために使われるシタラの武器である「知」が、ムハンマドにより良く生きるために啓蒙されたというのが皮肉。

一連の流れの中でファーティマへと名前を変え、偽りの笑顔を見せるシタラがとにかく印象的です。

『天幕のジャードゥーガル』第2巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

『天幕のジャードゥーガル』第2巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

トルイの妃ソルコクタニの側仕えになって8年。復讐の糸口が見えないまま漫然と生きるうち、いつしかファーティマの心から憎しみが薄れつつありました。

そんな時、モンゴル帝国を震撼させる一大事件が起こります。皇帝チンギス・カンの崩御。相続の習わしでは末子トルイが次の皇帝になるはずでしたが、チンギス・カンの特別の遺言により、オゴタイが新皇帝に即位することになりました。

著者
トマトスープ
出版日

帝位継承はつつがなく終わったものの、この一件で氏族間のパワーバランスにねじれが生まれてしまいました。皇帝としての権力を持つオゴタイ、帝位は継がなかったものの帝国の軍事力の大半を保有するトルイ、それを取り巻く兄弟たち……。

聡明なソルコクタニは、このねじれがやがてモンゴル帝国の結束を乱すと考え、信頼の置けるファーティマを他の兄弟の密偵に仕立て上げようとします。

いよいよ劇的な動きが起きる第2巻。水面下に火種を抱える帝国の危機的状況は、ファーティマにとって千載一遇のチャンスです。彼女はチャガタイの属民になりすます予定でしたが、紆余曲折を経てオゴタイの第6皇后ドレゲネの側近になります。

それはまさしく運命の出会いでした。ドレゲネは最初に嫁いだ夫と一族をオゴタイに滅ぼされており、ファーティマと同じくモンゴル帝国を激しく憎悪していたのです。

立場は違えど、帝国への憎しみは同じ。皇后の立場からある程度自由に動けるドレゲネの協力を得て、いよいよ発揮されるファーティマの知略が見所。しかし、一筋縄ではいきません。オゴタイの第1皇后ボラクチンが、ソルコクタニとは別に帝国の危難を察し、密かに手を回し始めます。

戦いに明け暮れる男たちを尻目に、水面下で行われる女たちの政争の行方に注目。

『天幕のジャードゥーガル』第3巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

『天幕のジャードゥーガル』第3巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

2代目皇帝に即位したオゴタイは、モンゴル帝国の宿敵たる金国への遠征を開始しました。それは帝国の威光と同時に、各氏族の力を誇示する絶好の機会でした。一方、属領(ウルス)に残ったファーティマは思いも寄らぬ好機を得て、第1皇后ボラクチンへ接近することに成功します。

オゴタイによる帝国の勢力拡大と、帝国を内部から崩壊させる策略。表裏の出来事がそれぞれ順調に進むかに思われましたが……。

著者
トマトスープ
出版日

物語の転機となる第3巻。

氏族同士の危うい均衡を崩すために、ファーティマが目を付けたのはオゴタイと近しいチャガタイでした。ところが巡り合わせの妙で、接点が出来たのはあろうことかボラクチン――憎きモンゴル帝国そのものと言える、オゴタイの第1皇后。

本来はチャガタイ家を通して、間接的にオゴタイ家にトルイへ不信感を植え付ける算段でしたが、ボラクチンに近づけるなら話は変わってきます。なぜなら、彼女の立場ならより直接的にオゴタイに働きかけることが可能だからです。

出来過ぎなくらいトントン拍子に進み、モンゴル瓦解が現実的になっていきますが――もちろん、そのまますんなりとは行きません。

さして若くもなく、見た目もさほど良くないボラクチンが、どうしてオゴタイの第1皇后なのか。頭の切れる女性が、ファーティマ1人とは限らない……。また、ここに来てオゴタイ自身の異質さもクローズアップされます。

人の上に立つ者の視座、遠大なスケールにあてられて、翻弄されそうになるファーティマ。ますます深化する物語から目が離せません。

『天幕のジャードゥーガル』第4巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

『天幕のジャードゥーガル』第4巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

病に見舞われた皇帝オゴタイ、帝国最大勢力を誇ったトルイの急死……。国の根幹を揺るがしかねない事態が相次ぎますが、幸いオゴタイは回復し、家長を失ったトルイ家が衰退したことで結果的に帝国の基盤は強固なものとなりました。

混乱の中、皇帝に毒を盛った疑いで拘束されたドレゲネ。ファーティマはそんなドレゲネの行方を追う途上で、一連の事態がオゴタイ支配体制を盤石のものとするため、ボラクチンによって仕組まれた謀略だったことを知ります。

著者
トマトスープ
出版日

政治的駆け引きが本格化してくる第4巻。話の軸になるのは、第1皇后ボラクチンです。

ボラクチンは立場で言えばモンゴル帝国の中枢。オゴタイと同じくらい広い視野を持つ彼女は、彼のためにどんな手を使ってでも――例え彼自身に危ない橋を渡らせることになっても、皇帝のもとに権力を集約させようと画策します。

当初は第1皇后を扱いやすいと感じていたファーティマですが、考えを一転させて、まるで「魔女」のようと評するのが印象的。いずれ彼女が「魔女」と呼ばれるようになることから、ボラクチンとファーティマは意図的に対比されているように思えてなりません。

すでに自らの手を血に染めている者と、まだ迷いを抱いている者。現時点で最大の障害であるボラクチンをファーティマがどう越えるかで、今後の行く末が決まるのではないでしょうか。

もちろん皇帝も侮れません。オゴタイはドレゲネの素性と憎しみを承知の上で妃に据えており、ファーティマも彼女と同じだと見抜いて、ある賭けを挑んできます。極めて先進的で手強いオゴタイとボラクチンを相手に、どう立ち回るのか見所です。

強大な帝国の中で味方はドレゲネだけですが、トルイの死とファーティマの影響から、少し変化したソルコクタニが今後関わって来るかも……。

『天幕のジャードゥーガル』第5巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

『天幕のジャードゥーガル』第5巻あらすじと見所をネタバレ紹介【ネタバレ注意】

オゴタイとボラクチンによる表裏の支配によって、揺るぎない平穏と繁栄の時代になったかに見えたモンゴル。その裏で密かに起きたイルケ将軍の子イルチダイの不義、オイラト族の間でまことしやかに囁かれる不審な噂……。私的ないざこざと根拠のない噂から、不穏な空気が漂い始めます。

臣下の不始末も噂も、放っておけば皇帝の威信を傷つけることになりかねませんでした。オゴタイは有能な家臣を失いたくないとして、イルケ将軍らを不問にしたいと考えるものの、それでは周囲に示しが付きません。そこでボラクチンは、オイラト族の噂を利用することを思いつきます。

著者
トマトスープ
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オイラト族の噂とは、「一族の女たちが宮廷に召し上げられる」というものでした。それ自体は事実無根でしたが、ファーティマは密かに噂を煽って、トルイ家と近しいオイラト族の間に不安の種を植え付けます。

穏やかではないとはいえ、所詮は噂。具体的な犯人もいなければ実害が出ているわけでもなく、下手に処罰すればかえって悪感情が高まるだけ。見て見ぬ振りをするのが得策なため、無関係な者を誰も傷つけずに火種を生める――はずでした。

計算外の事態にファーティマは動揺すると同時に、自分自身が茨の道を歩いていたことを改めて自覚します。モンゴルを倒すためには、モンゴルと同じことをしなければならない。自分たちの恨みを晴らすために、自分たちと似た境遇の者たちを迫害することを厭わない。

ボラクチンがそうであるように、ファーティマは自身も「魔女」となる覚悟を決めました。そして感化されたドレゲネも、行き場をなくした元奴隷のアルグンを言葉巧みに手駒とするなど、非情に徹しようとします。

大帝国にたった2人で挑むには手段を選べないとはいえ、ここに来て魔女の片鱗を見せる姿には、複雑なものを感じてしまいます。

ファーティマたちのアドバンテージは、モンゴル打倒の本心を誰にも悟られていないこと。ボラクチンは2人の不穏な行動を分不相応な野心と読み違えているので、その誤解が今後の命運を分けるかもしれません。

『天幕のジャードゥーガル』TVアニメ化への期待

漫画『天幕のジャードゥーガル』は2025年4月14日、TVアニメ化が発表されました。地上波の放送は2026年7月4日からスタートし、毎週土曜のテレビ朝日系深夜アニメ枠「IMAnimation」で行われる予定です。

アニメ版の制作を担当するのはクオリティの高さに定評のある『映像研には手を出すな!』、『ダンダダン』で世界的に評価されているサイエンスSARUです。総監督は『けいおん!』や『たまこまーけっと』で知られる山田尚子。

サイエンスSARUはアニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』の放送も控えていて、今最も熱いアニメスタジトと言えるでしょう。

主要人物のキャスティングも発表されており、主人公のシタラ/ファーティマを演じるのは『ロックは淑女の嗜みでして』鈴ノ宮りりさ役などの関根明良、ドレゲネは『狼と香辛料』ホロ役などの小清水亜美です。他にはオゴタイ役の下野紘を始め、豪華声優陣が揃えられています。主題歌はSEKAI NO OWARIの「Stella」。

放送に先駆けて公開されたPVは絵柄が原作に忠実であると同時に、色使いがどことなく2Dアニメ時代のディズニーを彷彿とさせるものになっており、筆者個人としては良い意味で日本アニメらしくないと感じました。映像にちらっと映る写本の記述も非常に精密で、丁寧に製作されていることが窺えます。

7月4日に始まるアニメ『天幕のジャードゥーガル』の初回放送は、本放送の夜11時30分から30分繰り上げた夜11時で、2話連続放送の特別編成。PVから伝わるクオリティの高さもさることながら、いきなり1時間枠という特別扱いには、テレビ局側からもかなり期待されていることが窺えます。

近年の似た例で言うとアニメ『葬送のフリーレン』第1期が初回2時間スペシャルでした。作品のジャンルも方向性も違いますが、アニメ『天幕のジャードゥーガル』も同作に迫る大ヒットとなる可能性は充分あると思います。

アニメ『天幕のジャードゥーガル』の正確な放送期間は現時点(2026年5月末現在)で未発表ですが、「IMAnimation」枠は10月から『#ゾンビさがしてます』が始まることが発表されています。分割2期の可能性もありますが、同枠ではひとまず1クールで終了するようです。

おそらくアニメのストーリーは時系列が入れ替えられない限り、ファーティマがドレゲネと出会って、モンゴルへの復讐を決意する第2巻ラストまでになるでしょう。もし分割2期だった場合は、2期目でキリが良く終われるのは第5巻の第30幕(話)辺りだと思われます。

いずれにせよ重厚なモンゴル後宮譚を見られるのは間違いないため、まだ連載の続く原作漫画ともどもアニメ版もとても楽しみです。

作者・トマトスープ解説

漫画『天幕のジャードゥーガル』の作者は、多摩美術大学出身の漫画家トマトスープです。詳しいプロフィールは非公開。

2019年4月、商業デビュー作にして代表作である漫画『ダンピアのおいしい冒険』をWebメディア「マトグロッソ」で発表、一躍注目を集めました。同作は「WEBマンガ総選挙2020」、「このマンガがすごい!2021」オトコ編など数々の漫画賞で高く評価されています。

トマトスープは中世から近世の世界史を得意とする漫画家です。創作表現としてわかりやすいアレンジを加える一方、当時の価値観・倫理観や習俗を安易に改変せず、できる限り尊重して物語に織り込んでくるのが特徴。

現在は『天幕のジャードゥーガル』と並行して、2023年8月から少女漫画誌「ウィングス10月号」で歴史漫画『奸臣スムバト』も連載中(既刊1巻)です。

『奸臣スムバト』の舞台は中世グルジア(現在のジョージア)。モンゴル帝国に侵略されるジョージア王国貴族オルベリアン家のスムバトが、母国を見限って敵方に寝返ろうとする……というお話です。時代的には『天幕のジャードゥーガル』の少し後ですが、外側からモンゴル帝国を見られるので、合わせて読むとより楽しめるでしょう。

著者
トマトスープ
出版日

なお、『奸臣スムバト』は元々同人誌で発表されていた作品がベースになっています。作者トマトスープが新書館のYoutube「クリエイターズラジオ」にゲスト出演した際、同人誌版をクライマックスとして、そこに向かってストーリーが進んでいくことが語られていました。

歴史・人間ドラマだけでなく、恋愛がテーマにもなっているという『奸臣スムバト』。これまでの作品とはまた違ったテイストになりそうですが、『天幕のジャードゥーガル』にハマった方は、ぜひこちらの作品も読んでみてください。


漫画『天幕のジャードゥーガル』は第2巻の時点で、まだ復讐の糸口に辿りついたばかり。史実に照らし合わせると、ファーティマの本当の活躍はここから始まります。第3巻が2023年9月14日に発売されるので、気になった方は忘れずチェックしておきましょう。

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