漫画『鋼の錬金術師』ホムンクルスを徹底考察!生まれた順番で一覧紹介!

更新:2021.12.8

『鋼の錬金術師』において、身体を取り戻すために旅をする兄弟の前に立ちはだかる人造人間「ホムンクルス」。本作におけるキーマンとも言えるホムンクルスについて、徹底考察したいと思います。スマホの無料アプリでも読むことができますので、気になった方は、まずはそちらを読むことをおすすめします!

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『鋼の錬金術師』ホムンクルスとは

『鋼の錬金術師』ホムンクルスとは

出典:『鋼の錬金術師』19巻

ホムンクルスは、主人公エドワードとアルフォンスのエルリック兄弟にとっての敵として登場します。単行本1巻から登場し、その存在自体が伏線ともなっています。合計7人いる彼らは不老不死に近い存在で、何度殺しても生き返る厄介な存在です。

そんな彼らは、「お父様」と呼ぶ存在によって作られた人造人間。彼らは人間の七つの欲求をつかさどり、それぞれの欲求を体現したかのような姿と性格をしています。

そして、彼らは不老不死に近い体をもっています。その核は、多くの人間の命を引き換えに作り出された賢者の石。その賢者の石を破壊すれば死ぬのですが、お父様の力と賢者の石さえあれば、再び同じようなホムンクルスは作られてしまうのです。

その生みの親でもあるお父様の欲望を叶えるためだけに、その計画遂行の道具として、そして息子、娘として彼らは作られました。ここでは、そのお父様と、ホムンクルス一人ひとりについて、生まれた順番にご紹介したいと思います。

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ホムンクルスの傲慢な生みの親【お父様】

傲慢な生みの親【お父様】

出典:『鋼の錬金術師』13巻

7人の生みの親であり、お父様と呼ばれている存在。彼はセントラルの地下深くに潜み、そこから子供であるホムンクルスたちへ指示を出す、統括者的役割を担っている男です。

その姿はエドやアルの父親、ホーエンハイムと瓜二つ。しかしその外見はホーエンハイムを模しただけであって、本体は黒い影のような形のない姿に、無数の目と口がついた姿をしています。その実態は、古代に滅びた王国クセルクセスの錬金術師が、ホーエンハイムの血で錬成したときに偶然生まれた存在でした。

生まれた当初はフラスコの中でしか生きることのできないか弱い存在だった彼。そんな姿から、ホーエンハイムからは「フラスコの中の小人」とも呼ばれています。また、森羅万象の知識を持つ彼が、ホーエンハイムに錬金術を教えた先生でもありました。

お父様は当時のクセルクセス国王の不老不死になりたいという欲望につけこみ、フラスコから抜け出して肉体を得る機会を伺っていました。そしてある日、国王を騙して国全体を巻き込んだ錬成陣を作成させ、自分とホーエンハイム以外の人間全員の命を元手に賢者の石を得るのです。

お父様はさらに完全なる存在になるために、クセルクセス王国と同じようにアメストリスを建国し、その国民を錬成しようと計画していました。その計画遂行のために生み出したのが、ホムンクルス。

彼らはお父様が「七つの大罪」として切り離して作り出したものでした。肉体を得た当時は血を分けられた存在であり、様々なことを教えたホーエンハイムに愛着があったようで、だからこそ賢者の石も半分ずつにしたのだと伺えますが、そこから「大罪」を切り離したゆえに、彼は欲望や感情も薄い性格となり、計画遂行のことしか考えないような人物になってしまいました。

そんなお父様の力は強大。錬金術師をノーモーションで繰り出すことができ、ホーエンハイムですらも簡単にあしらうほどのもの。また、命を奪うこともためらわない性格で、その酷薄さは息子や娘にもあたるホムンクルスにも発露され、己の道とは異なる意志をもったグリードやラースを容赦なく切って捨ててしまうほどです。

そして彼はどんどん変形していきます。フラスコの中にいた時の黒い霧状だった様子から、ホーエンハイムそっくりの姿へ、ホーエンハイムを吸収して目玉だらけの影のような人型に、そこから世界の真理の扉を吸収した若かりし頃のホーエンハイムのような完全体になり、とついに野望を叶えてしまうのです。

強大すぎる力を手に入れたお父様に、エドたちはどう立ち向かうのでしょうか。

【傲慢】始まりのホムンクルス【プライド】

始まりのホムンクルス【プライド】

出典:『鋼の錬金術師』22巻

「傲慢」の名をもち、「始まりのホムンクルス」と自称するプライド。その名の通り、お父様から最初に「傲慢」を切り離して作られました。7人いる彼らのリーダー的存在でもあります。

最初に作られた存在でありながら、その正体が発覚するのは物語の終盤。表向きは、アメストリスの大総統であり、ホムンクルスの一人でもあるラースの息子・セリム・ブラッドレイとして生活していたのでした。一見、可愛らしい子供の姿をしています。

しかし、その子供の姿は仮の姿。本体はお父様と同じような影に、無数の目と口がある姿をしており、お父様に似せて作られたとも言われています。アメストリス建国当初から、同じ子供の姿で要人の近くにいました。

プライドは本体である影のような姿を自由自在に形や硬度まで変えることができる能力を持っています。矛のように攻撃したり、アルの鎧の中に潜み乗っ取ったりと、攻撃のバリエーションは豊富。

影だからこそ、神出鬼没で、「約束の日」が近づいたときには、自分の正体を見破ったホークアイ中尉をどこにいても監視していました。

一方で、影であるため、完全な闇や閃光弾などには弱く、子供の姿をしているので、物理戦ではパワーとスピードに欠けているなど弱点も多くあります。

しかし、その性格はホムンクルスの中でも特にお父様に似ており、傲慢で冷酷。自分以外の者を馬鹿にしており、人間を「下等生物」だとし、他のホムンクルスたちにも高圧的です。

ただし、ラースとの関係は複雑なようで、お互い対等に話しているようにも見えます。おそらく彼の実力を理解し、そこは認めているのではないでしょうか。

そんな性格のプライドはラースや養母であるブラッドレイ夫人との関係も、「家族ごっこ」と称します。しかしブラッドレイ夫人に対しては特別な感情を抱いているようで、彼女の優しさに母性を感じているようです。

「家族ごっこではあったけど、楽しかったし、あれは好きです
これは本当」(『鋼の錬金術師』22巻から引用)

という言葉からは、僅かながらにプライドの感情を見ることができます。

そんな彼は最終決戦で、無理に力を使ってセリムの容れ物をボロボロにしてしまいます。そんな姿になりながらも、お父様を追うエドを足止めしますが、彼に息子がボロボロになっても見向きもしない父親だということを指摘され、怒り狂います。

ここからも分かるように、彼は人間をバカにしながらも、彼らの絆を羨む部分があるようです。

しかしそのあと結局エドに負けてしまい、まるで胎児のような姿にまでなってしまいます。そんな姿の彼を、ブラッドレイ夫人はホムンクルスだという正体を知りながらも、自分とラースの子供として育てていくことを誓うのです。

その後、物語の終わりではプライドとしての記憶を取り戻すことなく、普通の子供として成長していく様子が描かれています。以前から演じていたのと同じように物分かりのいい子だそうで、そんな無垢な姿に複雑な心境になってしまいます。プライドは始まりのホムンクルスであり、彼らの中での唯一の生き残った人物でした。

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著者
荒川 弘
出版日
2012-09-29

【色欲】色気ある知略家【ラスト】

色気ある知略家【ラスト】

出典:『鋼の錬金術師』10巻

物語の冒頭から登場し、唯一女性の姿をしているラスト。「色欲」の名を持ち、胸元にホムンクルスの証であるウロボロスの紋章をもつ女性です。その姿は、ウェーブがかった長い髪に、胸元が広く開いたスレンダーなドレスをまとっており、まさに「色欲」を姿で表しているような存在。

他のホムンクルスと同様、人間に対する冷酷さがあり、簡単に命を奪う様子が描かれることも多い女性です。グラマーな見かけに反し、知略にも長け、冷静沈着な性格。7人のなかではグラトニーと行動を共にすることが多く、2人で実行部隊的な役割を担って動いていました。

また、人間に扮して、マスタング大佐たちをけん制するために、彼の部下のハボック少尉に近づき情報を得ようとするなど、7人のなかでも特に働き者かもしれません。

ちなみにハボックとは清いお付き合いだったようで、肉体関係はなし。しかも意外にもラストはタバコが好きではないようで、彼女の前ではハボックは禁煙していたよう。彼の本気度が伺えます……(涙)

そんな働き者の彼女は戦闘能力も高く、黒い手袋をした指先を伸ばし鋭利な刃物に変えて攻撃する能力を有しています。その鋭利さは、7人のなかで「最強の矛」と呼ばれるほどのもの。

ただ、基本的には俊敏に動くことはなく、再生能力に頼り切っているのか、攻撃を回避するようなことも少ないため、よく致命傷を負わされるシーンを見かけます。

そして物語の冒頭から、敵役として登場していた彼女ですが、最も早くに死んでしまったホムンクルスでもあります。その最後は、セントラルにある第三研究所。

乗り込んできたマスタング大佐との一騎打ちになったものの、焔の錬金術師でもある彼の焔に、賢者の石を使い果たすまで焼き尽くされ、殺されてしまいます。

「完敗よ くやしいけど貴方みたいな男に殺られるのも悪くない
その迷いの無い真っ直ぐな目、好きよ
楽しみね その目が苦悩にゆがむ日は……」(『鋼の錬金術師』10巻から引用)

という最後の言葉は、彼女の性格を表していますね。7人のなかでも特に人気の高いキャラでしたが、単行本全27巻のなかで、10巻で死んでしまうという早い退場となりました。

【強欲】一本筋の通った強欲家【グリード】

一本筋の通った強欲家【グリード】

出典:『鋼の錬金術師』7巻

7人のなかでも、味方キャラとして人気の高いグリード。「強欲」の名を持ち、左手の甲にウロボロスの紋章をもっています。その姿は体格の良い青年で、その名の通り、地位も名声も金も女も全て欲しいという強欲さが特徴です。

ラストの「最強の矛」と対になっている「最強の盾」で、体内の炭素の結合度を変えることができ、全身や体の一部を硬化させることのできます。また、再生の能力も持っていますが、再生と硬化は同時にはできず、多少の時間も要するためその間に攻撃されると危ういという特性も。

また、彼の性格は強欲のためか、かなり真っ直ぐで、嘘をつかないことを貫いています。しかし強欲さゆえに己の渇望を満たすことができないといつも苦しそうな様子も。

そしてここにはないものを求め、お父様のもとを100年以上前に離れて自由自適に暮らしていた変わり種のホムンクルスとなったのです。その強欲さはお父様が欲した「神」を横取りしようと企てるほどのもの。

そしてお父様のもとから離れた後は、軍の実験でキメラとされた人間を集めて徒党を組んでいました。部下は所有物であるとしながらも、強欲ゆえに絶対に手放そうとしないため、部下からは一様に慕われてもいました。

そして彼らに指示し、永遠の命を目的に鎧の体をもつアルを誘拐するのです。そんな一本筋の通ったグリードに、アルは少なからず共感の念を抱きます。

ところがアルの誘拐を理由に彼の部下たちが大総統のキング・ブラッドレイに殺されてしまいます。その結果、ホムンクルスのラースでもあるブラッドレイに捕らえられたグリードは、お父様によって賢者の石へと戻されてしまうのです。

ここでこのグリードは一旦死んでしまうのですが、その性格をそのままに、グリードを宿した賢者の石が再度人間の体に注がれます。その人間がシン国の皇子、リンでした。

リンの中に入ったグリードは、リンの体を借りて新たなグリードとして生きていきます。しかし、完全に意識を消滅させることのなかったリンと同じ体を所有する者同士、リンとグリードは共闘していくのです。ちなみにこの形態のグリードはファンの間でグリリンと呼ばれて親しまれています(笑)

当初はリンの中で記憶を無くしていたグリードですが、かつての部下をグリリンとして殺してしまったことから過去がフラッシュバックします。そしてすべてを思い出した彼はブラッドレイを襲い、そのままお父様にも完全な別れを告げるのでした。

最終決戦では、リンの部下のランファンたちとも共闘して、ラースと戦い、完全に味方サイドになるグリード。リンと共闘するうちに、失った仲間たちをさらに思い出し、その仲間こそが最も自分の欲したものだったのだと気づきます。

最後は、「神」を融合したお父様にリンごと吸収されそうになったところを、彼だけ切り離してひとり犠牲になることを選びました。吸収されながらも、お父様に一矢報いようとする彼の最後に、胸を打たれた読者も多いはず。

「ああ、もう十分だ
なんも要らねぇや がっはっは……
じゃあな 魂の……友よ」(『鋼の錬金術師』27巻から引用)

彼のリンへの最後の言葉は涙を誘うものです。

リンにも強欲な面があり、そこにシンパシーを感じたグリード。グリリンの姿でエドたちと戦うなかで、最後にやっと友、仲間を得られたのかもしれません。

グリードについては以下の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。

漫画『鋼の錬金術師』グリードの魅力を徹底紹介!

漫画『鋼の錬金術師』グリードの魅力を徹底紹介!

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【嫉妬】冷酷で陰惨なホムンクルス【エンヴィー】

冷酷で陰惨なホムンクルス【エンヴィー】

出典:『鋼の錬金術師』12巻

4番目に作られ、「嫉妬」の名をもつのがエンヴィー。左太ももにウロボロスの紋章をもつ彼の姿は、中性的で小柄なもの。少年のような出で立ちですが、下半身は女性のようにすらっとしており、性別はわかりません。

7人のなかでも最も感情豊かで、「チビ」と言われてキレたり、エドたちとコミカルな掛け合いをしたりすることもあるキャラです。

ですが、その本質は彼らの中でも最も残忍で陰険なものとラストが言うほど。人間を「虫けら」「ゴミ虫」と呼び、彼らが争う様子や、死ぬ間際に見せる絶望の表情が好きという一面を持っています。変身の能力に長けており、お父様の計画のために、数々の事件を起こし暗躍する役割を担ってきました。

人間を卑下する性格が強いため、劣勢に陥ったり、人間から侮辱されたりした場合は、すぐに激昂してしまう短慮さもあります。また、本来の姿である化け物のような巨大な姿にコンプレックスを抱いており、人間をバカにしながらも、かえって人間らしさを想起させる人物です。

エンヴィーは、マスタング大佐の旧知の友人であったヒューズ中佐を妻の姿で殺害するという悪趣味なこともしています。そしてその復讐にかられたマスタング大佐によって焼き殺されそうになってしまうのです。

しかし、それをホークアイ中尉やエド、そしてスカーが止めます。そんな彼らを見て、相打ちさせようとそれぞれを罵倒し、挑発しますが、それも叶いませんでした。

劣勢の中で、人間を罵倒する姿はマスタング大佐をして「醜いものだな」と言わしめるもの。しかし、実際のところ、侮蔑している人間が、精神的に自分よりも強いことに嫉妬している、という本質をエドに見抜かれてしまいます。

その本質を見抜かれたことによる悔しさや、喜び。複雑に入りまじった感情に耐えきれず、最後は自分の核である賢者の石を破壊して自死するのです。

「こんなガキに理解されるなんて……っ!!!
屈辱の極みだよ……」(『鋼の錬金術師』23巻から引用)

この言葉には、彼の孤独が裏打ちされていて、エンヴィーをただの陳腐な悪役に終わらせられない余韻が残るものです。

エンヴィーについては以下のの記事でも紹介しています。気になる方はこちらもどうぞ。

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『鋼の錬金術師』リザ・ホークアイの魅力を紹介!背中の秘密とは?

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著者
荒川 弘
出版日
2012-09-29

【怠惰】生きていることすら面倒くさい【スロウス】

生きていることすら面倒くさい【スロウス】

出典:『鋼の錬金術師』17巻

6番目につくられた「怠惰」の名をもつスロウス。作中で、掘り下げて描かれることの多かったホムンクルスのなかでも、あまり出番が多くなかった存在かもしれません。

大柄な男性の姿で、「めんどくせー」という口癖。国土錬成陣を完成させる任を担い、地下で錬成陣のための巨大な円のトンネルを掘っていましたが、怠け者のため100年以上もひとりで掘り続けているという稀有な存在です。

エドたちが北壁のブリッグスに赴いた際に登場したホムンクルスで、ブリッグスの地下を掘り進めていたところを、エドや司令官のオリヴィエ・アームストロング少将に氷漬けにされてしまいます。しかし、そこをお父様の息のかかった中央の中将によって助けられ、錬成陣を完成させます。

いつも「めんどくせー」と言いながら、ほとんど動くこともせず、動作もゆっくりなスロウスですが、その能力は素早さ。自ら「最速のホムンクルス」と言うほどで、本気を出した時のスピードは視界に止めることもできないほど。しかも一瞬でトップスピードになるのだというから驚きです。

トンネルを完成させたあとはお父様の護衛として彼のそばにつき、中央司令部内で反乱をおこした少将たちを鎮圧しにかかります。そしてそのスピードを活かしてどんどん周囲の人間を蹴散らします。

そして兵士たちを追い詰めるのですが、アームストロング姉弟、イズミ夫妻の協力によって形成を逆転されてしまいます。そしてそのあとに賢者の石を使い果たすまで殺されてしまうのです。

最後、

「ああ、生きてるのもめんどくせ」(『鋼の錬金術師』24巻から引用)

と笑って死んでいく姿は、計画のためだけに作られ、ひとりで穴を掘り続けていた彼の悲哀を感じさせるものではないでしょうか。

【暴食】人間を捕食するホムンクルス【グラトニー】

人間を捕食するホムンクルス【グラトニー】

出典:『鋼の錬金術師』21巻

ラストとともに、物語の冒頭から登場していたホムンクルスのひとり、グラトニー。「暴食」の名をもっています。

舌のウロボロスの紋章、そして「暴食」にふさわしい肥満の巨体と丸坊主の頭、そして色のない瞳はどこか可愛らしさと恐ろしさを感じさせる容姿です。

マイペースで子供のような無邪気な性格で、のんびり屋の彼ですが、「食べていい?」という口癖のあとにむさぼるのは人間。ほぼ無限に食べ続けることができ、ラストと行動していた際は、彼女の許可をもらって、人間を食べるシーンが目立っており、その無邪気さと比例して恐ろしさも際立ったキャラでした。

知性に欠け、自分で判断するということがほとんどないため、かなり受動的な性格に見受けられますが、その攻撃力は高いもの。食べる、という目的のために巨漢で襲いかかる様子は、通常の人間はほとんど太刀打ちできません。

また、お父様がつくるのに失敗した真理の扉という存在でもあり、擬似的な真理の扉を解放すると、周囲のものを無機物・有機物問わず全て飲み込んでしまう能力も持っています。

そこに入ってしまうと本物の真理の扉とは異なる無限の謎の空間が広がっており、普通の方法ではそこから出ることは不可能になってしまうのです。

ラストを非常に慕っており、彼女を殺したマスタング大佐に激昂するなど、怒るとかなり性格が変わるのも特徴的。しかも見た目も腹の真ん中から裂けて牙だらけのグロテスクなフォルムになります。

そんなグラトニーの最後は、アルたちと戦った際に劣勢に陥ったプライドが、彼の能力を取り込むために、喰うというものでした。

もういないラストに助けを求めながら、仲間であるはずのプライドに取り込まれ喰われていくシーンは、何とも言いようのない後味の悪さを残すものです。

【憤怒】魅力ある敵【ラース】

魅力ある敵【ラース】

出典:『鋼の錬金術師』24巻

個性豊かなホムンクルスのなかでも、その性格、そして性質からして異質な存在。それが「憤怒」の名をもつラース。その正体は、アメストリス軍の大総統キング・ブラッドレイであり、人間と同じく老いることのできる唯一の存在です。

眼帯の下の左目にウロボロスの紋章を持っており、他のホムンクルスと違い、再生能力もなく、普通の人間。しかし、彼はお父様の計画遂行のために、大総統候補として子供の頃から養成された者のひとり。賢者の石を注入されながらも生き残った人間でもあります。

その賢者の石から彼が得た能力は「最強の眼」。銃の弾道も見極めることもできるその視力は、相手の攻撃を目の届く範囲ですべて見極めることができます。

また軍人としても数多くの武勲をたててきた人物でもあるため、その戦闘能力は強大なもの。ホムンクルス特有の身体能力を活かし、二刀を扱って戦うさまは、エドたちはもちろんのこと、グリードやマスタング大佐の攻撃すらも許さないほどのものです。

そんなラースはもとが人間のためか、それとも人間として生活し老いているからか、他のホムンクルスのように人間を卑下することも少なく、マスタング大佐たちのお父様の計画の邪魔を、かえって楽しむような一面も見せます。

最終決戦では、リンの部下であるフーやアームストロング少将の部下のバッカニアを殺した後グリードに致命傷を負わされますが、再びマスタング大佐のもとにあらわれて壮絶な戦いを繰り広げます。その強さは、人間の体を持ちながらも、他のホムンクルスとは一線を画していると言えるほど。

最後は、自らが大総統として指揮して侵攻したイシュバールの民の生き残り、スカーと対戦して死に至ります。自分の役割を終えて、ただ戦うためだけに戦うことができたこの時の彼は、

「何にも縛られず、誰のためでもなくただ闘う
それが心地良い
ああ……やっと辿りついた……」(『鋼の錬金術師』25巻から引用)

と笑うのです。この姿は、計画のためだけに生きてきた彼の人間としての喜びを表していますね。命尽きるまで闘う姿は、敵ながらにも格好良さがあふれるものでもありました。

しかしそうした彼の中でも、プライドと同様に、家族ごっこのなかで感じるものがあったことが、奥方であるブラッドレイ夫人について語る場面で垣間見ることができます。

選ぶことのできなかった人生のなかでも、伴侶だけは自分で選んだというラース。死の間際、ランファンに妻に遺す言葉はないか、と問われた時、こう答えるのです。

「愛だの悲しみだのとくだらぬ言葉を垂れ流すな小娘
なめるなよ あれは私が選んだ女だ
あれと私の間に余計な遺言などいらぬ」(『鋼の錬金術師』26巻から引用)

この言葉から、彼の覇道の道の険しさと、その連れ合いとして自ら選んだ彼女への底知れぬ信頼と絆が垣間見えますね。

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著者
荒川 弘
出版日
2012-09-29

壮大なスケールで描かれる物語『鋼の錬金術師』。その敵役として、主人公たちの目の前に立ちふさがるホムンクルスですが、彼らもまた、とても魅力的で深いキャラばかり。きっと物語を読んでいくうちに、敵ながらにも共感、あるいは畏怖の念すら抱くことができると思います。

 

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