マイケル・クライトンのおすすめ本5選!『ジュラシック・パーク』の作者

更新:2021.12.15

ハーヴァード大学出身の作家マイケル・クライトンは大学での経験と熱心なリサーチ能力を活かして、多くの知識と教訓を教えてくれるSF作家です。時にミステリーであったり、時に大冒険であったりとそのジャンルは幅広いです。

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高い知能と造詣を持った至極のSF作家

マイケル・クライトン(早川書房表記では:マイクル・クライトン)は幅広い科学知識に精通しているSF作家です。クライトンはただのSF小説だけにとどまらず、サスペンス、冒険、アクションなどを得意としています。その専門的知識とスリル満点のストーリー展開でマイケル・クライトンはベストセラー作家となり、多くの原作が映画化されました。

そんなクライトンの作家人生は大学時代から始まります。1967年、ハーヴァード大学医学部の二年生だったマイケル・クライトンは休暇を利用して小説を書き、その原稿料を学費に充てていました。大学時代は自分の正体を隠すため、ジョン・ラングやジェフリイ・ハドスンなどのペン・ネームで作家として活動しています。医学博士号を取得してハーヴァード大学を卒業後は、本名のマイケル・クライトンで作家として本格的に活動を始めました。

小説家としての活動の他にもテレビドラマ『ER』や映画『ツイスター』などの脚本を執筆したり、自ら映画を監督したりと、エンターテイナーとしてマルチな才能を発揮しています。
 

恐竜映画の金字塔となった原作小説

マイケル・クライトンの代表作で、最も成功した作品といえば『ジュラシック・パーク』でしょう。スティーブン・スピルバーグ監督による映画化は世界中で大ヒットしました。現代によみがえる恐竜というテーマと、リアリティを追求する高い特撮技術。それらが見せる映像はまさに圧巻で、続編やリブート作品まで作られるほどの人気ぶりです。
 

著者
マイクル クライトン
出版日

映画版と小説版のあらすじは同じです。琥珀の中にいる蚊から採取されたDNAを用いて恐竜を現代に蘇らせるプロジェクトにまつわる物語。そのプロジェクトの一環としてコスタリカの孤島にテーマパークを作ることになりました。そして視察のために特別顧問団が送られます。しかし研究者のひとりの裏切りによって、パーク内の電源が一時的に停止。電源が再起動したころには時すでに遅く、多くの肉食恐竜たちが逃げ出したあとでした。

2時間という尺の都合により、映画版では表現されなかった魅力がマイケル・クライトンの原作にはたくさん詰まっています。恐竜の再生に関する科学的背景や知識は、小説版の方がより深く、豊富です。パーク内に飼われているという15種類の恐竜も、映画版では7種類しか登場しません。マイケル・クライトンによる小説版では登場する種類も多く、恐竜好きや映画版ファンも満足させる内容になっています。

宇宙から伝来し広がる恐怖の細菌

映像化という点で『ジュラシック・パーク』に次いで成功したマイケル・クライトンの作品は『アンドロメダ病原体』でしょう。宇宙からやってきた病原体をテーマとして作品で、1971年にロバート・ワイズ監督により映画化されています。2008年にはトニー・スコットとリドリー・スコットの兄弟によって、テレビシリーズ化もされました。

物語はアリゾナ州の小さな町ピードモントに軍の人工衛星が墜落するところから始まります。その事件の直後、ピードモントの町民48人すべてが死滅。これにより「地球外生命体の存在が確認された場合、それを調査し地球上での伝播を防ぐ」ためのワイルドファイア計画が発令されます。発案者である細菌学者のジェレミー・ストーンら5人が、宇宙からもたらされた病原体による被害を防ぐために奔走するのでした。

著者
マイクル・クライトン
出版日
2012-04-06

マイケル・クライトンの本書は報告書という体裁をもっているので、人間関係によるドラマなどはほとんどないです。その代わりに、宇宙からの病原体によるパニックにリアリティと説得力を生み出されています。さらにこの報告書という形のおかげで、読者は本当に起こった出来事を読んでいるという錯覚に陥り、小説の中のできごとを身近に感じることができるのです。これによりリアルな怖さを体験でき、本書最大の魅力となっています。

犯罪計画は一世一代の大勝負

『大列車強盗』ではマイケル・クライトンが歴史小説に初挑戦したにも関わらず、本書はベストセラーとなりました。1855年にイギリスで起きた事件を基にしていますが、非常にエンターテイメント性の高い娯楽作品となっています。原作者のマイケル・クライトン自身が脚本・監督した映画も成功をおさめました。
 

著者
["マイクル・クライトン", "乾 信一郎"]
出版日

内容は、英国紳士エドワード・ピアースが列車で運ばれる金塊を強奪することを計画し、それを仲間と共に実行する物語です。ピーアスはまず、錠前破りのロバート・エイガーに共犯を持ち掛けます。そして名のあるゴロツキどもを次々と仲間にし、警察、銀行、鉄道会社を相手に大胆不敵な計画が実行に移されることに。一世一代の大勝負は果たして成功するのでしょうか。

本書の特筆すべき点は、マイケル・クライトンにとって初めての歴史小説であることでしょう。そして自身が調査した知識(本作の場合は歴史的事実)を活かして大冒険を書くというのも初めての試みでした。映画『コンゴ』の原作にもなった『失われた黄金都市』やタイムスリップを扱った『タイムライン』でもやはり、知識と大冒険を絡めて成功を収めています。本書はマイケル・クライトンが単に知識を披露するだけの作家ではなく、読者が望む者を提供してくれるベストセラー作家であることを認識できる作品です。
 

マイケル・クライトン渾身の本格医療ミステリー

ハーヴァード在籍時代のマイケル・クライトンにとって大きな転機となったのが『緊急の場合は』です。医大生だったクライントンが本格的に作家としての人生を歩むきっかけとなり、以降の作風に大きく影響しています。

大学生だったマイケル・クライトンが初めて扱った専門知識は当時アメリカでは多くの州で違法だった中絶手術でした。その妊娠中絶手術後に女子高生が死亡する事件が発生することで物語は始まります。違法に妊娠中絶を行っていた産科医のアーサー・リーが逮捕されてしまったのです。この件に関して自分は関わっていないと主張するアーサー。友人で病理医のジョン・ベリーはその言葉を信じて事件の真相解明に身を乗り出しますが、意外な圧力がかかるのでした。

著者
マイクル クライトン
出版日
1993-03-30

1968年にジェフリイ・ハドスンの名義で執筆された本作。妊娠中絶に対する自身の意見を取り入れ、病理医というあまり知られていないポストを描くことで、医療知識に精通した本格医療ミステリーの体裁を成しています。これは手直しの必要なく即原稿を買ってもらうため、オリジナリティを完全に排除してスパイものなど人気ジャンルだけを書いていたマイケル・クライトンにとっては転機となりました。初めて学術的知識満載で自身の科学に対する意見を盛んだ小説を書き、以降のクライトンの作風を形作る第一歩となったからです。ファン一読必至のマイケル・クライトン作品です。

遺伝子工学をテーマにしたマイケル・クライトンの傑作

クライトンの死後、自宅のパソコンから見つかった完成された原稿。それが『NEXT―ネクスト』です。これまで現代の科学に対する批判的な姿勢で警鐘を鳴らしてきたクライトン。『プレイ -獲物-』ではナノマシーンの危険性を、『恐怖の存在』では科学と政治の癒着をテーマにしてきました。今回扱ったテーマは遺伝子工学です。

物語はBioGen社に関する複数の物語によって紡がれます。発端は自分の細胞が不正に売買されているとして、フランク・バーネットという男がBioGen社を相手に起訴するところからはじまります。一方で創業者は資金繰りを巡ってハゲタカのような男に悩まされていました。そして研究員のジョシュ・ウィンクラーは遺伝子による薬を誤投与する事件を起こしてしまう。人知れず完成された人語を操るチンパンジーやオウム。それらすべてがひとつに繋がり、世界を震撼させる事件へと発展するのでした。
 

著者
マイクル クライトン
出版日
2009-11-10

本作の魅力はなんといっても、遺伝子工学という現実に発達している技術に作者の空想を盛りこんでいることです。これによりリアリティの高さと共に、遠くない未来に起こりうる出来事として恐怖を与えることができます。マイケルクライトンが遺作として残した集大成を本書に見ることができるのです。

マイケル・クライトンは娯楽小説の域を越えて、新たな発見や知識を読者に授けてくれます。彼が取り入れる技術は一般にとっては聞きなれないものや、常識だとされるものを覆すものが多いです。そういった意味ではその時代を反映するSF作家と言えるでしょう。

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