5分でわかる『雪国』!あらすじから結末、作者などから魅力をネタバレ解説!

更新:2021.11.15

今まで何度もいろいろな所で目にし、耳にしているはずの名作『雪国』。しかし、意外と中身は知らないという人も多いのではないでしょうか。難しそう、暗そうというイメージを持たれやすいこの手の作品ですが、想像と違ってテンポもよく、読みやすいのです。 ドラマを見ているような美しい場面が浮かぶ、本作の魅力をご紹介します。

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小説『雪国』のあらすじの内容を、冒頭の書き出しとともに紹介!

 

冬、列車でトンネルに入るとつい口にしてしまう言葉がありませんか?それが「雪国」の冒頭の一節です。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
 (『雪国』より引用)

物語の始まりを告げるあまりにも有名なこの言葉の主は、定期的に雪国を訪れる男性「島村」。『雪国』は、この島村の視点で描かれています。もう1人の主人公といえるのが芸者「駒子」。物語のほとんどが、この2人の会話のやりとりです。そして、その周りで起こる出来事を映してゆきます。

 

著者
川端 康成
出版日

ではあらすじを簡単に追ってみましょう。

雪国に向かう島村は、列車の中で病人の男と、甲斐甲斐しく付き添う若い娘に興味を引かれます。彼らは島村と同じ駅で下車。彼には懇意にしている芸者・駒子がいますが、電車の中で見かけた病人は、彼女の踊りの師匠の息子・行男で、余命わずかだと知らされます。

付き添っていた娘は「葉子」という女性で、彼女も駒子の知り合いでした。ひょんなことから島村は、駒子が行男の元いいなずけであり、彼の療養費を稼ぐために芸者になったと耳にします。しかし、彼女はそれを否定するのです。

翌年、再び彼が雪国を訪れると、すでに行男は亡くなっていました。駒子との縁で、葉子とも言葉を交わすようになった島村は、彼女の人柄に魅力を覚えます。しかし、彼女は行男のことをまだ忘れられないようで……。

『雪国』は長編として構想された小説ではないらしく、よって起承転結というものがはっきりしていません。場面場面の情景ややりとりが続いていく物語といった感じなのです。ですから会話文が多く、ドラマを見ているような印象を受けます。

本作の魅力は駒子の魅力、といっても過言ではありません。ストーリーの展開が地味なのにスイスイと物語のなかに吸い込まれていくのは、ひとえに彼女の奔放で、つかみどころのない人物の魅力ゆえではないでしょうか。読者も島村と同じように、彼女の言動に振り回されて惹かれていってしまいます。

本作は映画化されていますが、やはり主役はなんといっても駒子ということで、当時の個性派女優が演じています。1957年に岸恵子、1965年に岩下志麻がそれぞれ駒子を演じているのです。映像の美しさと、原作では時に難しいと感じる登場人物たちの情念が、映画では理解しやすいと評価の高い作品になっています。

ところで、 有名な冒頭文の1番最初に出てくる言葉「国境」ですが、これを何と読むかという論争があります。現在は「こっきょう」と読むのが一般的ですが、「くにざかい」と読むという説もあるのです。

時代や場所(トンネルが県境を超えるので)などから、どちらの言い分ももっともらしいのですが、作者の川端康成がはっきりと明言していないことから、今だに謎とされています。

作者・川端康成とは?

 

大正から昭和にかけて活躍した、日本の代表的な作家。たくさんの作品を残していますが、どれも日本独自の美意識を感じさせるものとして、海外からも評価されています。

19歳の時に伊豆を旅した体験を元に書いた『伊豆の踊り子』が有名。生き別れになった姉妹の運命を描いた『古都』などは京都の魅力もふんだんに盛り込まれていて、人気の代表作です。

一方で新人発掘の名人でもあり、たくさんの有名作家を世に送り出しました。 1968年日本人初のノーベル文学賞を受賞。その華々しい活躍の後、1972年、自殺によって72歳の生涯を終えます。遺書もなく謎の自殺といわれているのです。

 

『雪国』の舞台となったのは?

 

本作の舞台となった土地は、新潟県の湯沢温泉です。冒頭列車が抜けるトンネルは、群馬県と新潟県の間にある清水トンネル。『雪国』も『伊豆の踊り子』と同様に、川端康成本人の旅の経験を元に書かれているのです。

作品のなかで書かれているわけではありませんが、随筆のなかで滞在した際のことを述べています。旅館の方たちとも懇意にしていたようで、地元の風習や芸者のことなど、いろいろと話をしていたといいます。 

駒子にもモデルとなる芸者さんがいますが、島村のモデルはいないとのこと。川端いわく、自分ではないそうです。

 

駒子、葉子……女性を中心に登場人物を紹介!

 

上記でも書きましたが、『雪国』の魅力は登場人物であり、特に駒子や葉子、2人のまったく異なる性格の女性が印象的となっています。

島村と駒子の会話に重きが置かれているといってもいいくらいのこの作品のなかで、駒子の性格や、人となりがうかがい知れる部分がいくつかあります。本作の名言としてよく取り上げられる、人気のある、あの言葉です。

「なんとなく好きで、
その時は好きだとも言わなかった人のほうが、
いつまでもなつかしいのね。忘れないのね。
別れたあとってそうらしいわ」
(『雪国』より引用)

彼女はストレートに愛情を表現する、激しい面を持っている性格として描かれているようです。それに反して島村は実家には妻子もあり、彼女からの愛情を冷静に受け止めている印象を与えています。

そんな彼女と対照的に描かれているのが、葉子です。彼女が登場する場面は駒子に比べてずいぶんと少ないですが、かなり神経質で繊細な印象です。同じように恋愛に対して一途であるのに、まったく違う感性を持つ女性として描かれています。

 

駒子の聞き間違いを考察!「いい女」の解釈の違い

 

島村が彼女に言った「いい女だね」という言葉を、彼女が違った解釈をして怒ってしまい、泣き出すという場面があります。いったいどういうこと?というのが読者の疑問としてよく取りあげられていますが、なぜ彼女はなぜ怒ったのでしょう。

褒め言葉であるはずの「いい女」を彼女はどう解釈したのでしょうか。それは、自分が相手をどう思っているか、どう思われているか、または2人の関係性によっても違ってきます。

「いい女」の「いい」とは、性格がいい、生き方がいい、人間ができているという意味を込めた言葉であるとも考えられますし、性的な意味であるというふうにもとれます。

島村は、きっと前者の意味で言ったのでしょう。誉め言葉だった可能性の方が高いように思われます。それに反し彼女は、後者として受け取ったのではないでしょうか。彼女が怒り、泣き出しのは、都合のいい女的な解釈としてとらえてしまったからだと考えられるのです。

 

『雪国』の結末をネタバレ解説!

著者
川端 康成
出版日

 

妻子を残したまま滞在を続ける島村と、通い続ける駒子の間には、微妙な愛情を思わせる日々が流れていきます。

そんなある日、町で火事が起きます。天の川がよく見える、美しい夜でした。野次馬根性の駒子に誘われて現場を訪れた2人が見た、その光景とは……。

本作ははっきりとした起承転結を持たない物語ですので、ラストの曖昧さもかなり話題の作品ではあります。どんなふうにでも解釈できる最後ですが、何かの決意の象徴のようにも受け取ることができるのではないでしょうか。

美しく描かれた抽象的な内容であるために、結末の解釈は、読む人によって異なるでしょう。しかし、そこも含めて、この作品の魅力であるといえるのです。

 

『雪国』は一言で言ってしまえば、大人の恋愛物語。しかし川端康成ならではの美しい描写と物語世界が、読者を魅了します。ストーリーよりも場面場面の雰囲気を堪能したい、極上の恋愛小説です。

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