「マザー・グース」は本当は怖い?名言や有名な歌を解説、おすすめ本も紹介!

更新:2021.11.18

イギリス生まれの童謡「マザー・グース」。その数は1000を超えるともいわれていて、実は日本で親しまれているものも多いのです。今回は、有名な歌やちょっと怖い話、名言などを解説していきます。おすすめの関連書籍も紹介するので、あわせてお楽しみください。

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「マザー・グース」とは。意味や歴史など概要を解説

 

イギリスを中心に伝承されている童謡「マザー・グース」。イギリスもしくはアメリカで発祥したもので、子どもたちの教養の礎となっています。

名前の由来には諸説ありますが、1780年にイギリスの児童書出版業者ジョン・ニューベリーが『マザー・グースのメロディ』というタイトルの童謡集を刊行したのがきっかけだそうです。以降、童謡を扱う出版物に「マザー・グース」と名付けることが一般化していきました。

「グース」は日本語で「ガチョウ」を意味する単語です。イギリスにおいてガチョウは、家畜として馴染み深い存在でした。穏やかな性格をしていて手間がかからないことから、ガチョウのお世話は家族のなかでもおばあさんに任されることが多いのだとか。やがて童謡や童話の語り手であるおばあさんと、ガチョウが結び付けられていったと考えられています。

日本でも親しまれている「きらきら星」や「メリーさんの羊」「ロンドン橋が落ちた」も、「マザー・グース」のひとつです。

「マザー・グース」で有名な歌、詩を紹介!「ハンプティ・ダンプティ」や「クック・ロビン」など

 

多くの歌をもつ「マザー・グース」。英語の教科書で紹介されているものもあり、実は日本人にとって馴染み深いものもあるのです。代表的なものをいくつかご紹介しましょう。


「ハンプティ・ダンプティ」(Humpty Dumpty)

Humpty Dumpty sat on a wall,(ハンプティ・ダンプティが塀に座った)

Humpty Dumpty had a great fall.(ハンプティ・ダンプティが落っこちた)

All the king's horses and all the king's men(王様の馬や家来が全員でかかっても)

Couldn't put Humpty together again.(ハンプティを元には戻せない)

ハンプティ・ダンプティとは「ずんぐりむっくり」を意味するスラングです。この歌はなぞなぞという一面をもっていて、「王様の家来たちにも元に戻せなかったのは何かな?」と問いかけるスタイルが一般的。模範的な解答は「卵」だとされています。擬人化された卵が塀に座っているイラストを見たことがある方も多いでしょう。

イギリスの作家ルイス・キャロルが執筆した『鏡の国のアリス』に登場することでも有名です。


「クック・ロビン」(Who Killed Cock Robin?)

Who killed Cock Robin?(だれがコマドリを殺したの?)

I, said the Sparrow,(それは私だと、スズメが言った)

with my bow and arrow,(私の弓で、私の矢羽で)

I killed Cock Robin.(私がコマドリを殺したの)

こんなフレーズから始まる「クック・ロビン」。「マザー・グース」にしては比較的長い14連で構成されていて、この後にも続いています。「コマドリを殺したのは私だ」とさまざまな生き物が名乗り出て、最後にはコマドリを葬送するシーンが描かれているのです。

この歌の解釈については、「ロビン」という言葉からロビン・フッドと関連させる説や、狩猟中に射られて死亡したイングランド王・ウイリアム2世の事件を暗喩するものだという説などさまざま。真相は明らかになっていませんが、いろいろな想像をめぐらせることができるのも、長い歴史をもつ「マザー・グース」ならではの楽しみ方だといえるでしょう。

「マザー・グース」には怖い話も

 

子ども向けの童謡である「マザー・グース」ですが、なかにはぞっとしてしまうような怖い歌やエピソードもあります。


「お母さんがわたしを殺した」(My mother has killed me)

My mother has killed me,(お母さんがわたしを殺して)

My father is eating me,(お父さんがわたしを食べている)

My brothers and sisters sit under the table,(兄弟たちはテーブルの下)

Picking up bury them under the cold marble stones.(わたしの骨を拾って床下に埋めた)

「悪いことをすると食べられてしまう」という教訓として伝承されてきた歌です。お母さんに殺されてお父さんに食べられるというのは大げさかもしれませんが、子どもたちにとっては効果があるのかもしれません。

こちらはあくまでも教訓ですが、なんと実際の事件をもとにした歌もあるのです。


「リジー・ボーデン」(Lizzie Borden)
 

Lizzie Borden took an axe,(リジー・ボーデンは斧を取り)
 

And gave her mother forty whacks.(お母さんを40回打った)
 

And when she saw what she had done,(そして自分のしたことに気づき)
 

She gave her father forty-one.(お父さんを41回打った)

1892年のアメリカ、マサチューセッツ州。ボーデン夫妻が斧で殺害される事件が起こりました。リジーは彼らの娘で、この事件の容疑者として逮捕されます。状況証拠はそろっていたものの物証がなかったため、リジーは後に無罪となりますが、真犯人はいまだ不明のままです……。

不可解なこの事件は、「なわとび唄」として子どもたちに歌われることになりました。40回、41回という数字は誤っていて、実際のところ夫妻は十数回斧で殴られているそうです。

意味を知ると怖いものもたくさんある「マザー・グース」。背筋をぞくぞくさせながら口ずさんでみるのも新鮮かもしれません。

「マザー・グース」の名言、格言を紹介!

 

童謡には、さまざまな教訓が込められています。「マザー・グース」にはどのようなメッセージがあるのでしょうか。

「ばらは赤い」(Roses are red)

Roses are red, Violets are blue, sugar is sweet, And so are you.

「ばらは赤く、すみれは青い、砂糖は甘くて、あなたは素敵だ」

女性へのプレゼントに添えられることも多いというこの詩。「マザー・グース」に収録されています。大切な人へ思いを伝える言葉でもありますが、それだけでなく、「あらゆるものにはそれぞれの魅力がある」という意味としても受け取ることができるでしょう。

「マザー・グース」の歴史を知る一冊

著者
平野 敬一
出版日
1972-01-25

 

大切な教養として、イギリス人の生活に深く根ざしている「マザー・グース」。本書ではいくつかの歌を取りあげて、それらがどんな教訓を含んでいるのか、文化のなかでどのような役割を果たしてきたのかを解説します。

「マザー・グース」を知ることは、イギリス人の潜在的なものの考え方を知ることにも繋がります。異文化理解にはもちろん、慣用句になっている言葉も数多くあるので、イディオムを学びたい方にもおすすめです。

谷川俊太郎の翻訳で読む

著者
出版日
1975-07-23

 

1975年に発表された、谷川俊太郎翻訳の作品。当時の「マザー・グース」ブームのきっかけとなりました。英語で読んだ時の語感を重視して書かれた歌であるはずなのに、日本語にしても美しい言葉の連なりになっているのは、さすがとしか言いようがありません。

堀内誠一のイラストも、カラフルなのにあたたかく、本書の世界観にマッチしています。難しい言葉は使っていないので、小さい子どもへの読み聞かせにもぴったりです。

日本語と英語で楽しめる「マザー・グース」

著者
出版日
1981-07-13

 

星新一作品の挿絵でおなじみの和田誠がイラストを担当しています。表紙のハンプティ・ダンプティからもわかるとおり、気軽に「マザー・グース」を楽しむことができるでしょう。

巻末には原典となる英語詩も収録されているので、比較しながら読むと、より一層理解を深めることができます。

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