勇者なのにブサイク⁉魔王を倒したのに容姿の醜さから功績を認められなかった主人公。人間に愛想が尽きた彼が新たに歩み出す道にあるものとは……?これまでの勇者のイメージを裏切り、人間の善悪や正義についても考えさせられる冒険ファンタジー漫画のあらすじと見所をネタバレ紹介します!
漫画『最強勇者はお払い箱→魔王になったらずっと俺の無双ターン』は、澄守彩によるライトノベルを原作としたコミカライズ作品。2018年から「マンガUP!」で連載がスタートし、2020年12月現在でコミックスが3巻まで発売されています。
物語は魔王を倒した勇者・ガリウスが人間の王国へ戻ったところからスタート。
王は彼の働きを讃えますが、その功績を息子である王子に譲ってほしいと頼みます。理由はガリウスが「勇者を名乗るには不細工すぎるから」。その仕打ちにガリウスは落胆し、王都を去ろうとするのですが……。
「なろう系」作品が人気を博している昨今、既存の物語のステレオタイプにとらわれない自由な発想の設定やストーリーが注目されています。
たとえば、『転生したらスライムだった件』では最弱モンスターの代名詞であるスライムが主人公として活躍。『盾の勇者の成り上がり』では、勇者として召喚されたはずの主人公は攻撃ができず、さらに裏切られて落ちぶれるという意外な展開で始まります。
これらの作品は「主人公といえば勇者」「勇者といえば剣を武器に戦う」というイメージを取り払った新鮮な設定が人気の理由の一つです。
本作も同様に「不細工な勇者」というこれまでになかった主人公が読者の目を引く要素になっています。
作品のタイトルからガリウスが勇者から魔王という正反対の存在に転身することが予想できますが、いったいどんな経緯で彼が魔王になっていくのかが気になりますよね。
この記事では、そんな本作のあらすじや見所を、ネタバレを交えつつ紹介していきます!
醜い容姿を理由に功績を奪われた勇者ガリウスは、ひょんなことからワーキャットという猫の亜人のリッピと出会います。
リッピは仲間を殺された恨みから、勇者に復讐しようと凱旋式を襲撃したものの失敗。怪我をしたところをガリウスに助けられるのです。
じつはその襲撃事件も、王国の乗っ取りを狙う王妃と将軍の策略によるものでした。
どこまでも利己的な人間たちに嫌気がさしたガリウスは、リッピとともに亜人たちの新天地「最果ての森」を目指すことに。その後、さまざまな亜人たちと出会っていくのです。
最強勇者はお払い箱→魔王になったらずっと俺の無双ターン(1)(ガンガンコミックスUP!)
2019/4/12
本作の見所の一つが、醜悪な人間たちが破滅していく展開です。勝手な理由でガリウスや亜人たちをないがしろにしてきた人間たちが、天罰を受けるかの如く破滅していく姿は見ていてスカッとします。
もう一つの見所が、ガリウスと亜人たちの心温まる交流。人間の社会では蔑まれてきたガリウスが亜人たちに受け入れられ、仲良くなっていく様子は読んでいてほっこりします。
人間の醜悪さと亜人たちの善良さという2つの見所のが対照的なところも面白いですね。
本作は冒険ものが好きな人はもちろん、斬新な勇者に出会いたい人におすすめです。
ガリウスは亜人たちとの出会いのなかで、過去の自分の戦いを見つめ直し、新たな人生を歩き始めます。その過程で「勇者=善」「魔王=悪」というイメージが覆されていくので、読者自身がこれまで信じていた正義を見つめ直すきっかけにもなるでしょう。
ここからは主要なキャラクターや、その設定に関わる世界観を紹介していきましょう。
本作の世界では、魔物の血を引くさまざまな「亜人(魔族)」と、その特徴をもたない「人間(人族)」が存在しています。魔物の能力を受け継いでいない人間は、その代わりに12歳になると「ギフト」と呼ばれる特殊能力を神から授かるのです。
主人公のガリウスは、あらゆる武器を操る「アイテムマスター」というギフトを授かり、勇者として魔王を討伐。
しかし幼いころから醜い容姿を疎まれてきた彼は、勇者としての功績も奪われ、人間不信になってしまいます。
最初は無愛想な印象を受けますが、じつは頭が良くて情に厚い性格。たしかに見た目は不細工ですが、仲間を大切にし、彼らのために剣を振る姿はカッコよく感じられるでしょう。
そんな彼の大切な仲間第一号がワーキャットのリッピ。
亜人や魔王の仇である勇者のことを恨んでいましたが、ガリウスに助けられたことで考えが変わり、彼と信頼関係を築いていきます。猫が好きなガリウスによく撫でられているところも可愛い、癒しキャラです。
エルフの族長の娘・リリアネアは、旅の途中で人間に襲われていたところをガリウスに救われます。
初めはガリウスのことを認めていませんでしたが、しだいに打ち解け、ツンデレな一面を見せるようになるところが可愛いヒロインです。
その他にも、本作にはさまざまな種族の亜人が登場します。次にどんな亜人が活躍するのか、そのバラエティの豊かさも楽しい見所の一つです。
ここからは各巻のあらすじや見所を紹介していきます。
1巻では勇者としての功績を奪われ、リッピと出会ったガリウスが新天地を求めて旅に出発。目指すのは「最果ての森」にあるという亜人たちの楽園です。
その道中で出会ったのは、同じく「最果ての森」を目指すエルフの集団。人間に追われているところをガリウスに助けられ、一緒に旅をすることになります。
多くのエルフがガリウスを歓迎する中、リリアネアは自分たちが故郷を失った原因であるガリウスに反発して……?
この巻ではガリウスが人間の社会を見限り、亜人たちと行動するようになった経緯が描かれています。
王族や将軍だけでなく、亜人を捕らえて高値で売ろうとする傭兵団など、読者の嫌悪感を煽る人間たちが登場するので、ガリウスが人間に嫌気がさしていく様子に共感できるでしょう。
一方で、リッピやエルフたちは勇者を憎く思っていたにもかかわらず、ガリウスのひととなりを知ると彼を受け入れてくれます。人間社会では疎まれていたガリウスが、彼らとの出会いによって新たな居場所を得ていく様子は、心があたたかくなる見所です。
2巻ではガリウスたちが「最果ての森」に到着。そこには亜人たちの新しい国「リムルレスタ」が作られていました。
ここではさまざまな亜人たちが共存していますが、彼らがこの国に逃げ延びてきたのは元はといえばガリウスが亜人たちの故郷を滅ぼしたことが原因。ガリウスは複雑な心境です。
リムルレスタに定住することを決めたガリウスは、まずは自立し、少しずつ亜人たちの社会に溶けこんでいきたいと町外れで一人暮らしを始めますが……。
この巻では、ガリウスの新しい生活と亜人たちの交流がメインに描かれています。あらゆる種族が混ざり合いながら、平和な社会を築いているリムルレスタの様子には驚かされるでしょう。
能力を活かして何でも屋として働くことにしたガリウスは、自分の働きに素直にお礼を言われ、亜人たちに受け入れられていくことに喜びを感じていきます。読者も新たな仲間たちに親しみが湧いていくでしょう。
特に注目したいのはオーク族の男性・ゼパルとのエピソード。
彼はガリウスと一緒に畑仕事をし、まるで父と息子のような関係を築いていきます。普段から気のいい性格のゼパルですが、じつは内心ではガリウスに複雑な想いを抱えていて……。
彼の胸の内が明らかになるシーンは、ゼパルとガリウスが本当の意味で絆を結ぶ感動的な場面です。ぜひお見逃しなく!
最強勇者はお払い箱→魔王になったらずっと俺の無双ターン(2)(ガンガンコミックスUP!)
2019/10/12
3巻では、ガリウスの故郷・ミッドテリア王国が新興のバランハルト帝国に滅ぼされたという知らせが舞い込みます。
今後の国の動向が気になることもあり、ガリウスは情報収集のために人間の町に潜入。そこで奴隷として使役されている亜人たちの実情を知ることになるのです。
ガリウスは1000人規模の奴隷を解放し、救い出す作戦にリムルレスタの仲間達とともに挑みますが……。
この巻では、ガリウス自身がこれまでよりも積極的に人間に戦いを挑んでいくことになります。
武器や魔法を使った戦闘シーンも迫力があり、見応え十分。さらに、綿密な準備に基づいて作戦を展開していくので、ガリウスの知略に優れた一面も見ることができますよ。人間たちの裏をかきながら次々と作戦を成功させていく展開には爽快感も得られるでしょう。
また、第15話ではひとときの休息としてみんなで温泉を楽しむシーンもあります。ほのぼのとした穏やかさや、ガリウスとリリアネアの微笑ましい雰囲気に思わず頬が緩んでしまうことでしょう。
奴隷を解放する戦いの緊迫感が続く中でホッとと一息つけるエピソードが挟まり、全体の緩急のバランスがよくなっているのもこの巻の魅力です。
最強勇者はお払い箱→魔王になったらずっと俺の無双ターン(3)(ガンガンコミックスUP!)
2020/11/7
3巻での戦いの中で、ガリウスは人間たちから新たな「魔王」として恐れられるようになっていきます。
一度は魔王を打倒し平和が訪れたはずの人間の社会。しかし、亜人たちを蔑み奴隷として使役するその暮らしは、ガリウスによって壊されていくでしょう。
また、ガリウスの故郷・ミッドテリア王国を滅した「バランハルト帝国」と、その皇帝の秘密も気になります。短期間で帝国の領土を拡大した皇帝のギフト(特殊能力)については謎に包まれているのです。
いつかガリウスが彼と対決する日が来るのでしょうか?
今後のガリウスと人間たちの戦いがどのように展開していくのかは目が離せない見所ですね。
原作小説を手がける澄森彩は、2011年に第1回講談社ラノベ文庫新人賞大賞を受賞し、『魔法使いなら味噌を喰え!』でデビューした期待のライトノベル作家。異世界ファンタジーものの作品を多く発表しており、本作もその一つです。
投稿サイト「小説家になろう」でも、本作の原作小説を含む多くの作品を公開しているので、気軽に読むことができますよ。
また、本作の他にも『俺の『鑑定』スキルがチートすぎて ~伝説の勇者を読み〝盗り〟最強へ~』『実は俺、最強でした?』など複数の作品がコミカライズされています。読者の心を惹きつける設定や物語を生み出す、シャープな着眼点を持つ作家です。
俺の『鑑定』スキルがチートすぎて ~伝説の勇者を読み“盗り”最強へ~ (Kラノベブックス)
2017/6/29
実は俺、最強でした? (Kラノベブックス)
2019/5/31
漫画を担当しているまさゆみは、商業作家としては本作がデビュー作。投稿サイトpixivなどでもイラストや漫画を多数発表しています。本作とはまた違った作風のものもあり、作品に合わせて柔軟に絵柄を変えられる能力に優れているようです。
本作ではシンプルな線でありながら、戦闘シーンなどでは勢いや迫力が感じられ、メリハリのある画面が魅力的。猫やトカゲ、牛や豚などの動物に似た特徴を持つ亜人や、ファンタジーらしさたっぷりなドラゴンなど、さまざまなキャラクターを違和感なく共存させられるところに高い画力が感じられます。
勇者から魔王へ……意外なジョブチェンジを遂げたガリウスはこれからどんな道を歩んでいくのでしょうか?
先の展開が気になり、どんどん引きこまれていく作品です。ぜひ一度手に取ってみてください!