2016年、除夜の鐘の音がもうすぐそこまで迫って来ました。本年も多くのBL作品が刊行され、トキメキに満ちたBLライフを満喫。作者および出版社ほか関係者の皆様、ありがとうございます。年末進行は、もう、終わったでしょうか?来年もどうぞよろしくお願いいたします。 さて、年の瀬の総まとめとして、今回は、2016年のBL漫画おすすめランキングをお送りいたします。 ※便宜上順位はつけましたが、作品の優劣ではなく、私の好みのストライク具合ということで、どうか一つ、お許しいただければと思います。
- 著者
- 紅蓮 ナオミ
- 出版日
- 2016-07-30
ここまで振り切ったのは、すごいとしか言いようがない!ギャグBL漫画の金字塔。
若き病院院長・夜久(やく)は、誰でも受けに開花させてしまう”スーパー攻め様”。そんな彼の元に、ある日極上の美人研修医・朝倉がやってくる。もちろん彼を口説こうとする夜久だが、朝倉は拒絶。その上、夜久が手を付けていた院内の受け達が、次々と朝倉に寝取られ攻めにされてしまう。なんと朝倉は”誰でも攻めに開花させてしまう”スーパー受け様だったのだ!
もうあらすじだけでツッコミどころがありすぎだ!
キャラクター達が9割ぐらい終始真面目に多様なセックスをしているのですが、まぁそれがシュールすぎて腹がぞうきん絞り、笑いすぎて苦しいって久々です。「勃ったぁ!!」「入ったぁーーーっ!」「二本目いったーーーっ!!」どうですか、これが野球漫画じゃなくてBL漫画なんですよ。
双方お医者さんなので、舞台は病院。真面目な職場で急におっぱじめたりしますが、真面目なBLではそのまましんみりしたモノローグで「…好き」とかにつなげるところを、ネクタイ白衣着用+下半身素っ裸でベッドの上に仁王立ちして真面目に話し始めますからね。SO COOL!俺たちはセックスを見てるんじゃない、BLの新しい可能性を見てるんだ……。一緒に収録されている短編「アンアン安藤」も同じテンション。
つらいときに読むとすべてがどうでもよくなる力があるので、人生の安定剤として本棚必携の書です。
- 著者
- 高崎ぼすこ
- 出版日
- 2016-11-25
王道をど真ん中に攻められて胸キュンしたいときに。
要領が悪くて人付き合いも苦手な大学の助教・秋月(あきづき)は、痴漢に会っているところを同じ大学の学生・北村に助けられる。北村は、同じ大学の学生で、モデルをしているハーフのキラキラ男子。そんな北村が痴漢から守る手っ取り早い方法として秋月の「暫定彼氏」に立候補!!?どういうことなんだ!!?
年下攻めの北村のキャラが素晴らしい。デフォルトがヘッドフォンして、眼鏡。中身も普段はイイひと王子なのに、実は腹黒で強引に迫っちゃう。しかも要領が良くて、慌てがちな秋月をスマートにフォロー。スパダリと出来る嫁のハイブリッドです。そんなニュータイプに惚れられたら掘られても仕方ないよね。地味な秋月の弱気っぷりと混乱っぷり、さらに自分の好意を自覚してない鈍感さと押しに弱くて流されちゃうのもゲロかわ。ときめくBL漫画といえばこれです。
更に読んで行くと2人の性格の新たな一面も見えてきて、恋をしてる醍醐味を横から見ているようになれます。
- 著者
- 上田 アキ
- 出版日
- 2016-12-15
胃袋を掴まれたとき、相手もまたお前に心を掴まれているのだ……。
人に喜んでもらえるって嬉しいよね!という根本的な暖かさが冬に沁みます。
スーパーの惣菜売り場で働く名切(なぎり)。売り場で見かけるサラリーマンの高野が買っていく総菜が、自分が作ったものばかりだということに気がつく。ひょんなきっかけから、名切は高野に料理を作り、一緒にご飯を食べる仲になる。そして名切は、人生で初めて「もっと知りたい」と思うようになっていき……。
「肉団子と野菜の甘酢和え」「やわらか豚ヒレカツ」「チキンと野菜の黒胡椒炒め」ああ、このスーパーを全国に作ってくれ……。ついでに名切のようなイケメン(ヒゲ)も……。と思わざるを得ないリアルな食と登場人物。一目惚れではなくて、じんわりじんわり好きが積み重なっていく様に身悶えします。これがほんとのおいしい生活。
2人ともなかなか一歩を踏み出せないのも、またじれったくてくすぐったい。
- 著者
- 座裏屋 蘭丸
- 出版日
- 2016-12-22
ファンタジーBLに、またも素晴らしい作品が登場しました!
街は混乱に陥っていた。今月3体目の殺人事件が発生し、老人達は「ヴァラヴォルフ(人狼)」の仕業とほのめかす。そんな中、バーのピアニスト・マレーネは、気になる人・リリーと、ようやく一杯酌み交わすことに成功していた。しかし突然リリーは席を外し……。
海外映画のような美しく重厚な舞台を背景に、マフィアとヴァラヴォルフの抗争と、マレーネ×リリーのラブストーリーが複雑に絡み合って進んでいきます。マレーネもリリーも偽名で、2人はただのラブストーリーの登場人物ではないことが分かるのですが、果たしてどうなるのか。目が離せません。
- 著者
- はらだ
- 出版日
- 2016-03-01
読み終わったあとに震えること間違いなし。
真面目がすぎて、無口で愛想がないスタイリストの笑吉。嫌みでお調子者だけど、愛想がよくておしゃべりで前の店からも客を沢山持ってきた福介。水と油のような2人、ある日居残りで技術チェックをすることになったが……。
夏目漱石が『草枕』で「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」って言ってますが、この智に働けば角が立つ、のが笑吉くんです。まじめに働いてるのですが、周りがついていけなくて摘まれちゃう。でもこれが世間やねん……がんば……!と不器用に働く若い男がかわいくてしょうがないです(私の性癖)。
BL界では清純派はもちろんなんですが、それ以上に異常者を描くのがすごく上手い作者の方が沢山いて、そのうちトップグループの一人が作者のはらだ先生です。今回もその異常者っぷりが惜しみなく発揮されて、他の追随を許しません。
カット練習とかの居残り後、福介が終電逃してやや強引に笑吉の家におしかけ、二人で寝る→夜中になんか気配を感じて起きたら馬乗りになられて顔前にチンコ丸出し、マジで顔射の5秒前だった……とか、油断してたら急にエロルートに突入します。しかもこんなの序の口です。
あとエロシーンがむっちゃ……むっちゃエロい……。根底に相手に対する確固たる愛(と書いて執着と読む)があるので異常性癖もなんか許しちゃうんですよね……だってコイツ、コイツのことむっちゃ好きじゃん……?というDV旦那を持つ嫁みたいになってしまう作品。
バロックをマンガで表現したらきっとこんな感じ。ゆがみ、なれど美しく。
- 著者
- おげれつ たなか
- 出版日
- 2016-03-24
発売後たちまち10万部突破!もう説明がいらないほど売れてます。書店でも、ものすごく目立ってました。
遠野は山奥の全寮制男子高校に転入したて。部活必修のため、「楽そう」という理由で写真部に入部を決めるも、そこは写真部とは名ばかり、学校内で性欲を発散させる通称「ヤリチンビッチ部」で……!
ああ、クレイジーここに極まれり。なにせ作中の登場人物紹介で「彼は若干潔癖で気難しいとこもあるけど、セックスに関しては寛大だよ!」「玩具を使ったプレイが得意」「頭のネジが殆ど外れちゃってるから会話が成立しないことが多いけどフェラがうまいよ!」などなど。2016年のキャラクター紹介文で一番衝撃的だと思います。
そんなぶっとんだ設定に目がくらくらしてしまいがちですが、そこはおげれつたなか先生の真骨頂として、信じられないほどのピュアさも併せ持っています。間接キスにほほを染めたり、好きな子がスポーツに興じる姿を見守ったり……ああ、青春ですね。
エロと青春の見事なマリアージュ、こちらも続刊が楽しみです。いや、本当にどうなるんでしょうか。
こうして並べるとBLのバリエーションの広さに改めて驚きます。
2017年もどんな作品がでるのか楽しみ。