近年よく耳にするようになった「SDGs」という言葉。小中学校の教科書にも登場し、若年層への認知も広げようとしていますが、どのようなものか知っているでしょうか。この記事では、SDGsの概要と基本の17項目、そして小学生でも理解できるおすすめ本を紹介していきます。SDGsは聞いたことがあるけれど内容はちっともわからない……という大人の方も、この機会に手に取ってみませんか。
SDGs(エスディージーズ)とは、「Sustainable Development Goals」の頭文字を略したもの。日本語訳は「持続可能な開発目標」で、「世界中の人々がずっと地球で暮らしていける社会を創るための目標」という意味が込められています。
現在、世界には多くの課題があります。このまま放っておくと人間はいずれ地球に住むことができなくなってしまうのではと危ぶまれていて、2015年の国連総会にて、2030年までに達成する目標として17のゴールと169のターゲットが決められました。
ここでは5つの「P」を使って、17のゴール、世界的目標を紹介していきます。
Peaple(人に関わる目標)
誰もが尊厳と平等、健康な環境にあり、持てる能力を発揮することができる世界の実現を目指す6項目です。
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
Prosperity(世界の繁栄に関わる目標)
格差がなく豊かさや安心安全を実感して暮らせる世界であること、そして自然環境を損なうことなく経済の発展や技術の進歩が続く世界の実現を目指す5項目です。
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
Planet(地球に関わる目標)
大量生産や消費の社会から脱し、自然から資源や食糧などの恵みを受け続けることができる世界の実現を目指す4項目です。
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
Peace(平和に関わる目標)
貧困、飢餓、人権侵害、環境破壊など、目標の達成を阻む紛争を無くし、平和で公正な世界を実現することを目指した1項目です。
16.平和と公正をすべての人に
Partnership(協力体制に関わる目標)
世界で抱える課題を、世界中の人が参加し、協力し合うことで解決していくことを目指した1項目です。
17.パートナーシップで目標を達成しよう
すべての項目を達成するには、世界中の人々がSDGsに取り組むことが大切です。そのため共通の認識をもてるよう、視認性の高いアイコンも作られています。
- 著者
- ["佐藤真久", "NPO法人ETIC."]
- 出版日
2020年に刊行された作品。東京都市大学大学院教授の佐藤真久が監修しました。
4人の主人公がSDGsを学び、生き方を模索しながら成長していく物語を、漫画を用いて描いているのが特徴。後半ではSDGsに取り組む自治体やNPO、企業の具体的な取り組みが紹介され、進学や就職だけでなくライフキャリアを考えるきっかけになる情報が掲載されています。
身近な課題からSDGsを掘り下げていく構成が魅力的で、子どもが読んでもSDGsを自分事として捉えられるよう工夫されています。探求心をくすぐるヒントもあるので、学校や家庭でのコミュニケーションにも活用できるでしょう。
多様化する社会において、自分の役割や周囲との関わり方に自然と意識が向くおすすめの一冊です。
- 著者
- ["バウンド", "秋山宏次郎"]
- 出版日
こども食堂支援機構の代表理事を務める秋山宏次郎の作品。2020年に刊行されました。
世界には絶滅の恐れがある野生動物が約3万1000種もいます。動物園で親しみのあるジャイアントパンダやアフリカゾウも含まれているのですが、なぜこのような事態になってしまっているのでしょうか。
身近な具体例からSDGsについて考えらえる構成になっていて、世界が直面している解決するべき問題と私たちの生活との関連性がよくわかるでしょう。未来の地球に暮らすのは、まぎれもなく子どもたちの世代。より良い世界にするために、SDGsに無関係な人はいないということもわかるはずです。
また本文にはルビがふられていて、耳慣れない用語は別枠で解説がつくなど、子どもがひとりで読んでも理解できるよう工夫されている点もおすすめです。
- 著者
- ["原琴乃", "原琴乃", "山田基靖", "MAKOオケスタジオ"]
- 出版日
外務省でSDGsの推進を担当してきた原琴乃の作品。2020年に刊行されました。
世界には、学校にいけない子どもがいる一方で、学校がつまらないと思っている子どももいます。貧しくてご飯が食べられない人もいますが、食べ物がどんどん捨てられている事実もあります。持続可能な社会の担い手である子どもたちは、未来に向けてどのような行動をとってけばよいのでしょうか。
何よりも絵の訴求力が抜群です。本を縦に使って貧富の差を階段で表したり、天秤の両皿に現在と未来の地球を置くことで持続可能を表したり……SDGsの概念は子どもにとっては難しい部分もありますが、資格で理解できるよう考慮されています。後半では、ひとりひとりの取り組みが大きな成果を生むことを、完成していくパズルや地球に向かって走る子どもたちの絵で表現。
各ページごとにどんな狙いがあるかも記されているので、読み聞かせをする際の参考にもなるでしょう。
- 著者
- 彰, 池上
- 出版日
「世界一わかりやすいSDGs本」を目指したという本書。「週刊こどもニュース」で人気を博した池上彰が監修し、2020年に刊行されました。
たとえばジェンダーの問題。一部の国では、本人の意志に関係なく幼い女性が嫁ぎにいかなければいけない事例が報告されています。では日本はどうでしょう。海外のような実態は無いにせよ、女性が社会で活躍するためのサポートが不十分だったり、夫婦で家事や育児を分担する文化は浸透しているとはいえません。日本もけっしてSDGs先進国とはいえないのです。
SDGsを自分事として捉えられる漫画を各章の冒頭に置き、世界の状況を理解すると同時に自分たちの暮らしと照らしあわせながら解説ページへと繋いでいきます。
また多くの学習参考書を手掛けてきた老舗出版社のノウハウも光ります。イラストを効果的に使うことで目で楽しめるよう工夫され、文章も短く簡潔にまとめられているのが特徴。小学生でも問題なく理解できるおすすめの一冊です。
- 著者
- Think the Earth
- 出版日
- 2018-05-08
慶応技術大学大学院教授の蟹江憲史の作品。2018年に刊行されました。
2002年、世界銀行が定めた国際貧困ラインである1日1.9ドル未満で生活しなればならない人々が、世界には16億1900万人もいました。2012年には7億6800万人に減っていて素晴らしい改善に見えますが、それでも10人に1人が貧困であることを示しています。困窮する人々を支援するために、「足りないものを届ける」だけでない、何か他のアイディアはあるでしょうか。
本書のこだわりともいえるのが、「アイディア」です。先端テクノロジーを活用したり、子どもの考えが活かされた取り組みを紹介し、読者の考える力を刺激することを試みています。
また作中のコラムを執筆しているのは、環境問題や金融、テクノロジーなどの分野で活躍する第一人者ばかり。SDGsの学びが暗記するものにならないよう、さまざまな角度からスポットを当て、理解をサポートしています。
SDGsが目標を達成する期限として定められている2030年は、子どもたちにとってひとつの通過点に過ぎません。2030年のその先も持続可能な未来を作るために、考え、具体的なアイディアとともにアクションしようと思える一冊です。