インターネット小説から人気に火が付き、アニメ化もされた『オーバーロード』。冴えないサラリーマンがゲームの世界から戻れなくなり、魔王として異世界で君臨するライトノベルです。本来悪役である魔王を主役に据え、王道から大きく外れたストーリーは必見です!
『オーバーロード』は、インターネット小説サイト「Arcadia」で発表されて話題となり、書籍化されました。書籍版は、Web版とは異なる展開も相まって人気を博し、すでに3度テレビアニメ化され、4期の制作も発表されています。
また、「このライトノベルがすごい!」2017年版では単行本・ノベルズ部門第1位を獲得、2018年版・2019年版でも第4位に入るなど、連載開始から6年が経過した2021年でもその勢いは衰えていません。
本作は、VRMMO「ユグドラシル」で遊んでいた主人公が、ゲーム類似の異世界へトリップし圧倒的な力を持って世界を制覇する物語です。この見慣れない言葉「VRMMO」とは、仮想現実大規模多人数オンライン(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)の略称です。まるでゲームの世界に入っているかのように行動し、五官を働かせることができる仮想のネットゲームシステムを意味します。
『オーバーロード』では、主人公がオンラインゲームからログアウトできなくなったと思いきや、実は異世界へ転移していたと判明するところから物語が始まります。
実は本作、コミックスでも出版されています。漫画版が気になる方はこちらの記事をご覧ください。
本格ファンタジー漫画『オーバーロード』の魅力を徹底紹介
主人公が、ログインしていたRPGゲームの終了とともに、RPGの設定のまま異世界に転移してしまったことから始まる、重厚な本格ファンタジー。そんな『オーバーロード』の魅力とともに、コミック版ならではの魅力も紹介していきます。
主人公は、孤独でさえない日本のサラリーマンです。彼の楽しみはVRMMO「ユグドラシル」で遊ぶことでしたが、そのゲームがサービスを終了することになってしまいます。
ともに戦い、ギルド(チーム)を組んでいたゲーム仲間はもうおらず、周りにいるのはゲームの中のキャラクターたちだけです。ギルドの王としてキャラクターたちにかしずかれる主人公は、「ユグドラシル」のサービス終了にともなう強制ログアウトで、ゲームから離れるはずでした。
しかし、異変が起きたのです。
- 著者
- 丸山くがね
- 出版日
- 2012-07-30
なんと、ゲームのサービスが終了したはずなのにログアウトされなかったのです。その上、本来は話せないはずのNPC(ノンプレイヤーキャラクター)たちが意思を持って行動し始め、主人公に忠誠を示すようになります。しかも、主人公が元いた場所から出ると、「ユグドラシル」とは若干違う見知らぬ世界が広がっています。主人公は自分がネットゲームの世界に似た別の世界へ転移してしまったことを知ります。
ゲームの設定そのままにアンデッドとして不死の肉体を得た主人公は、日本での名前を捨て、アインズと名乗ってこの世界の絶対者となることを決めます。そんな1巻の魅力はなんといっても、主人公がゲームの設定そのままで異世界へ迷い込むところでしょう。
現実ではさえないサラリーマンが、異世界で化け物として活躍する姿には突き抜けた残虐さがあると同時に、どこか爽快感もあります。
主人公を絶対者とあがめる臣下たちが全て悪魔や昆虫の種族で、周りに人間がいません。また、臣下たちは人間を下等生物として見下し、人間を捕食することさえあります。そんな状況で、アインズは自分が本当は人間だと言い出せません。
また、異世界転生モノならではの設定も光ります。本来は人間であるアインズが、異世界人への対応にサラリーマン時代の社会マナーを活用するところは、転生モノならではの描写といえるでしょう。
ゲーム類似の異世界にやってきて一週間、アインズは戦闘メイドとともに冒険者を装い、人間たちの住む城塞都市へ潜入します。
この世界の情報収集をし、城塞都市で名声を得るために動き回るアインズたち。しかし同時に、邪悪な秘密教団も城塞都市へやってきていたのです。立ちふさがる戦士たちを前に、アインズの魔法が炸裂します。
- 著者
- 丸山くがね
- 出版日
- 2012-11-30
2巻の見どころは、主人公であるアインズの人間性が失われていくところです。
1巻では臣下たちを落胆させないために理想的な絶対者を演じていたはずのアインズ。しかし時間の経過とともに、アインズは骸骨姿のキャラクターに性格を乗っ取られるようにして、感情を失くし、残虐性を増していきます。
主人公であるはずのアインズが次第に人間性を失っていく姿には、アンチヒーローらしいぞくりとする魅力を感じられます。もちろん、戦闘シーンも迫力満点。管理職だった元サラリーマンが最強のモンスターとして暴れる姿のギャップが刺激的です。
見た目年齢14歳の少女、シャルティア。吸血鬼である彼女はアインズに絶対服従を誓っていました。彼女はオンラインゲーム「ユグドラシル」においてペロロンチーノに創造されたキャラクターだったのですが、なぜか彼を盲目的に愛しているのです。
しかし、アインズが城塞都市に潜入している間にシャルティアが反逆を起こします。自分が創りあげた強すぎる少女に、アインズは勝つことが出来るのでしょうか?
- 著者
- 丸山くがね
- 出版日
- 2013-03-30
3巻では、色白で美しく、アインズに偏執的な愛を捧げる少女シャルティアの存在にスポットライトが当たります。それと同時に、彼女に対するアインズの家族愛や、シャルティアや他のキャラクターたちを生み出したかつてのゲーム仲間との友情が大切に語られます。
2巻で失いかけてきていたアインズの人間らしさが復活することで、安心感とともに物語に情緒と深みが出てきたのは大きな魅力です。これまでは余裕を演出し、絶対的王者を演じていたアインズが、全身全霊で戦う姿に興奮が止まりません。
蜥蜴人であるリザードマンたちは、集落をつくって平和に暮らしていました。それぞれが自分の人生を生き、恋人もいれば、家族もいます。
しかし、そこへアインズたちの軍が無慈悲にも攻め入って行きます。恐ろしいアンデッド集団との圧倒的戦力差を前に、リザードマン達は絶望しつつも立ち上がり続けます。リザードマンたちを襲うアインズたちの目的とはなんなのでしょうか?
- 著者
- 丸山くがね
- 出版日
- 2013-07-31
これまで、アインズやその仲間たちの視点から物語は語られてきました。4巻では部外者であるリザードマンたちから見たアインズたちが描かれるのです。
アインズたちは世界の中で圧倒的な力を誇り、異世界の住人達の命をあまりにも軽く扱います。それまで平和に暮らしてきたリザードマンたちからみれば、アインズたちは完全に悪役なのです。
絶対的な正義など存在せず、ただ強さだけがものをいう異世界を多方向から掘り下げる4巻。対立していたリザードマンたちが一つにまとまった場面にグッときます。
アインズ陣営でアインズたちの生活面を支える執事、セバス・チャン。彼は白髪白髭のいかにもな老執事です。
しかし、実は「竜人」と呼ばれる種族である彼の目は猛禽のように鋭く、格闘術を強みとしています。そんなセバスはアインズの命令により王都での魔法・科学技術の情報収集へ向かいました。残虐非道なアインズ陣営において、セバスは珍しく善良なキャラクターです。
しかしその善良さが仇となり、人助けをしたはずのセバスは裏社会を牛耳る巨大組織「八本指」と癒着する役人から、脅迫を受けることになってしまいます。
- 著者
- 丸山くがね
- 出版日
- 2013-12-28
5巻は王都が舞台ということで、中世ヨーロッパをイメージしたような世界で貴族が登場し、貴族独特の生活や世界観が展開されます。
これまでの戦闘一色だったストーリーとは異なり、貴族らしい遠まわしな言葉づかい、そして闇の取引などの駆け引きが面白い一冊です。今回、アインズは陣営の資金調達に苦しんでいる様子が少し出てくるだけで登場はほとんどありません。
また、アインズを慕い忠誠を誓っているセバスが裏切りの疑いを向けられて怯える姿など、臣下とアインズの関係性について描かれます。今回の話は上下巻と続き、下巻である6巻が気になる終わり方になっています。
王国の裏組織「八本指」が繰り出す最強の戦闘集団「六腕」。八本指は王国とアインズ陣営に戦を仕掛け、それに巻き込まれる中で、アインズたちも王国と戦うことになります。
混乱を極める戦いの中、王都は業火に包まれてしまいました。しかし、アインズはこれまでと変わらず勝利を重ねることで、より支配者としての影響力を強めていきます。
アインズの悲愴な努力と、アインズに気に入られようと残虐非道に殺戮を続けるアインズの臣下たち。八本指との戦いはどう決着するのでしょうか?
- 著者
- 丸山くがね
- 出版日
- 2014-01-31
ゲーム上のキャラクターは感情がないという前提があるにもかかわらず、セバスはあまりに善良で人間らしく動きます。しかしそのせいで、セバスが危うくアインズに裏切り者扱いされそうになるのです。
裏切りに敏感なアインズの周囲。それは、3巻でシャルティアが罠にはまってアインズに反旗を翻してしまったことが影響しています。そんなセバスですが、アインズへの忠誠を示すことで無事に誅殺を免れます。そして、八本指との戦いに挑むのです。
6巻の魅力は、シリアスで真面目な展開なのにギャグとして読めるところです。
王国で人間の冒険者として動いていたアインズが、アインズ陣営をうまく動かすことで王国の英雄として活躍する様子は、その裏事情を知らないでみるとシリアスなのですが、事情を知ってしまえば出来レースそのもの。いたって真面目に役を演じ切るアインズと、鮮やかなまでに壊滅状態に追いやられる八本指が爽快感と笑いをもたらします。
期待と欲望に目を輝かせる裏稼業者「ワーカー」。彼らはまだ探検がされていない遺跡、地下墳墓へ足を踏み入れます。
しかしその地下墳墓はアインズたちの本拠地「ナザリック」だったのです。「ナザリック」陣営のキャラクターたちは全員世界最強クラス。ワーカーたちは果たして生きて地下墳墓を出ることが出来るのでしょうか……。
- 著者
- 丸山 くがね
- 出版日
- 2014-08-30
7巻では、冒険者崩れの何でも屋であるワーカーたちがチームを組み、調査という名の盗掘に訪れます。前半ではワーカーたちのそれぞれの日常や夢、人間関係などを描き、一人ひとりに愛着が湧くような展開です。
しかし、読者がワーカーたちに感情移入した頃合いを見計らって、アインズの臣下たちが登場し、彼らを完膚なきまでに叩きのめすのです。アインズは侵入者をナザリックの防衛力テストのために利用しました。その残虐性から、すでにかつての人間性が消えかかっていることが伺えます。
人間を実験モルモット扱いするアインズは、かつての仲間たちと作り上げたギルドチーム「アインズ・ウール・ゴウン」を普遍の伝説とするという目的のためならどんな手も厭いません。そんなアインズの人間らしさが再び失われた7巻。アインズ側に感情移入することで、圧倒的戦力差で敵を蹂躙する爽快感を味わうことが出来ます。
8巻はアナザーストーリー2本立てとなっています。
一本目は「エンリの激動かつ慌ただしい日々」。過去にアインズに窮地を救われた村娘エンリは、ゴブリンたちにまもられるカルネ村でたくましく生きていました。しかしカルネ村への襲撃により状況は一変します。
二本目は「ナザリックの一日」。ナザリックに住むキャラクターたちから絶対忠誠を誓われているアインズの、支配者であるがゆえの苦悩を描きます。
- 著者
- 丸山 くがね
- 出版日
- 2014-12-26
今作はこれまでと比べて残虐さの少ない一冊となっています。さらに恋愛模様にスポットが当たるため、『オーバーロード』の中では異色の話となっているのが「エンリの激動かつ慌ただしい日々」です。
エンリはアインズに与えられたアイテムにより、ゴブリンを率いる能力を持っています。ただの村娘でありながら後に村長となり、ゴブリンたちから将軍と呼ばれることとなるエンリ。色気とは縁遠い彼女が一人の少女として想い人と心を通じ合わせる姿は、『オーバーロード』らしからぬ、とても微笑ましいストーリーとなっています。
一方、アインズの日常を描く「ナザリックの一日」では、アインズが部下たちを叱ってみたり怒ってみたりと、単なる創造者で王様という雰囲気ではなく、親しみやすさのある上司といった様相です。意外と苦労しているアインズの姿は必見ですよ。
近年、冷戦状態にあった王国と帝国。しかし、帝国の支配者たる鮮血帝ジルクニフがナザリックを訪れたことをきっかけに、アインズ陣営が参戦を表明します。
これまで裏舞台で糸を引いていたアインズ陣営が、ついに世界の表舞台に姿を現すのです。アインズは暴走しがちな臣下たちに威厳のある王たる姿を見せながら戦闘指揮を執ります。実は内心焦ったり困ったりツッコミ疲れに悩まされたりしているアインズのダークヒーローファンタジー、第9巻です。
- 著者
- 丸山 くがね
- 出版日
- 2015-06-29
今作は、アインズが王国に強烈な一撃をお見舞いするところから始まります。それは作中にあるとおり「大虐殺」そのものです。
その恐怖が王国民や帝国民の一般人としての感覚で描写されることで、単に弱者を蹴散らして楽しめる話ではなく、ほの暗い愉悦を感じさせるような話となっています。そんな9巻では、王国戦士長ガゼフの男前さが魅力的です。
ガゼフは王国最強と呼ばれる戦士ですが、平民出身であることから、国民のために危地に飛び込むことも畏れない勇敢な男。彼は、アインズから勧誘を受けても王への忠誠を理由に断るなど、生真面目な心意気をみせます。そして最後は、王国の大敗北によって国民の恨みが王に向かわないよう、自分が犠牲になることを選ぶのです。
その一方、8巻で登場したカルネ村のエンリが将軍となってゴブリン軍を率いて王国王子と戦うなど、エンリの覚醒も楽しめます。
かつて、まだゲーム「ユグドラシル」が運営され、アインズがモモンガという名前でゲームプレイヤーをしていたころ、彼にはゲームをともに遊ぶ仲間がいました。
その仲間たちと作り上げたギルドチーム「アインズ・ウール・ゴウン」は、地下墳墓ナザリックを拠点としてエルフや悪魔、吸血鬼といったキャラクターを創造して冒険をしていたチームです。彼は今でもその時の楽しさや友情を忘れていません。
そんな思い出をこれからも忘れないために、彼は自らのゲームプレイヤー名を捨て、ギルド名「アインズ」を名乗っています。そんな彼は、アインズの名を永遠不滅の伝説とするため、不滅の王となるべく動き始めます。
- 著者
- 丸山 くがね
- 出版日
- 2016-05-30
10巻の魅力は、なんといっても勘違い臣下たちのこれまでにない暴走っぷりだといえます。
これまでにも、アインズの冗談やぽろりと漏らした一言を拡大解釈して虐殺と破壊を繰り返してきた臣下たち。その臣下たちの忖度に重なる忖度により、暴走とも取れる行動のすべてが不滅の理想郷創造へと収束してゆきます。
そして、それはアインズの運の良さや周囲が抱く恐怖心も相まって、無血開城による帝国属国化につながるのです。もしも、ナザリック陣営が単に残虐行為を好むならず者の集まりであったならば、こうはまとまっていないでしょう。
メンバー全員がそれぞれアインズの目標を理解し、目標達成にむけて動いたゆえの結果です。そんな魔導国の建国および地盤固めの10巻は、歴史好きが読んでも楽しめる一冊となっています。
10巻でうっかり帝国を属国化してしまったアインズは、「そこまでやるつもりはなかった……」という思いを抱えてドワーフ(山小人)の王国へと旅立ちます。
ギルドメンバーとの冒険を思い出しつつ旅路を楽しむアインズでしたが、ドワーフ王国はドラゴンに支配されていました。おまけに、敵対種族クアゴアの侵攻の危機にあったのです。
ドワーフ王国に眠る財宝と、ドワーフたちのもつルーン技術を得たいアインズ。クアゴアとドラゴンにとっての悪夢が幕を開けます。
- 著者
- 丸山 くがね
- 出版日
- 2016-09-30
11巻の魅力は、3巻で反逆騒動を起こし謹慎状態にあったシャルティアの汚名返上シーンにあります。シャルティアは普段、胸パッドを一生懸命に盛り込んでいるため、パッドがずれないように極力歩くことを避けていました。
そんな彼女がアインズの護衛としてドワーフ王国への同行を命じられ、ずり落ちる胸パッドをものともせず敵を捕縛し処分していく姿は、思わず応援したくなります。
一方、アインズ自身の活躍も、これまで通り圧倒的です。ドラゴンを指先一つでダウンさせるアインズに勝てる存在はいないと言ってよいでしょう。
そんな状況にあっても、アインズはゲーム「ユグドラシル」のプレイヤーが自分と同じようにこの異世界に移動してきた可能性も捨ててはいません。
彼はもし自分と同じようなプレイヤーがいれば、魔導国を気に入ってもらいたいと考えているのです。着々と魔導国の地盤固めが成功していくなか、「ユグドラシル」のシステムにはなかった現象が現れるなど、今後の波乱が予想される展開となっています。
亜人連合軍に突然の襲撃を受けた聖王国。襲撃してきた連合軍を率いるのは、残虐非道な魔皇ヤルダバオトでした。
彼により国家存亡の危機に立たされた聖王国は、魔導王アインズが率いる魔導国へ救いを求めます。魔皇ヤルダバオトを倒すべく立ち上がった、アインズの戦いが幕を開けます。
- 著者
- 丸山 くがね
- 出版日
- 2017-09-30
上下巻構成となる「聖王国の聖騎士」の上巻となる本巻。上巻ということで、起承転結の起・承に当たる部分です。
魔皇ヤルダバオトによって苦難に立たされている聖王国を救うために動き出したアインズですが、どちらかというと亜人連合は彼よりも格下のため、戦いによる緊迫感はあまりないかもしれません。むしろ魔皇ヤルダバオトが残虐非道に弱者を蹂躙するシーンのほうが、手に汗握ることが多いでしょう。
そんな本巻では、メインの視点人物は、ネイアという聖王国の訓練生の少女になります。理不尽な扱いを受ける彼女がアインズと行動するうちに、彼に強い信頼を寄せていくようになるのです。
彼女の動向を含め、聖王国を救う救国物語は次巻へと続いていきます。
亜人連合の圧倒的な兵力を前に、成すすべもない聖王国。四方を囲まれ絶体絶命のなか、魔導王アインズは単身、魔皇ヤルダバオトの前へと立ちました。
しかし、聖王国を救うという約束を守るために動いたアインズに待ち受けていたのは、死という結末だったのです。
- 著者
- 丸山 くがね
- 出版日
- 2018-04-27
前巻の上巻に続き、聖王国編の下巻となる本巻。前巻では、アインズの戦いをめぐる展開では緊迫感はあまりなかったのですが、本巻では一変。魔皇ヤルダバオトと対峙するアインズなど、ドキドキする展開が続きます。
そして、アインズを待ち受けているのは、死。しかし、もちろん本シリーズの主人公である彼がそう簡単に死ぬわけもなく、そこにはある仕掛けが隠されているのです。読者も、彼が本当に死んだと思う方はそう多くないでしょう。
その点では驚きは少ないのですが、ネイアにはかなりドキドキとさせられる展開があります。この聖王国編が彼女の物語だと感じさせてくれるものになっています。
下巻ということで、全てがクライマックスのような本巻は、最初から最後まで怒涛の展開。最後まで一気に読むことができるはずです。
ある日、魔導国の馬車が王国の貴族に奪われてしまいます。これが偶然か謀略かはわからないものの、アインズは王国が魔導国と正面から戦うことを選択したと判断し、王国に宣戦布告します。そんな王国への侵攻では、アインズと互角に渡り合う強敵も登場して……。
- 著者
- ["丸山 くがね", "so-bin"]
- 出版日
14巻では、オーバーロード開始時から主な舞台となっていた王国の滅亡が描かれます。
しかし、そのきっかけが謀略などではなく、たった一人の考えなしの人間の行動にあるところが、面白いポイントです。
初期から登場していた王国の滅亡を描くだけあって、登場人物一人ひとりの生きざまが描かれているのが14巻の魅力といえます。王国に忠誠を誓い魔導国の侵攻に抗うもの、敗北を予感し逃げ出すものなど破滅に至る国におけるさまざまな人間ドラマが展開されます。
また、これまでは絶対的な存在であったアインズに対抗し得る強敵「ツァインドルクス=ヴァイシオン」も登場します。アインズとツァインドルクスの勝負は決着せず、今後の展開から目が離せません。
絶対的強者の無双小説『オーバーロード』。王道展開に食傷気味の方でも、アンチヒーローが活躍するストーリーであれば新鮮な気持ちで楽しめるでしょう。ブラックな爽快感を味わえる本作を、ぜひ一度読んでみてください。
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