5話からストーリー性が驚くほど変わる!『ドキュンサーガ』をどう読む?考察

更新:2021.12.12

性悪な勇者がくり広げる少しグロめなRPGと思わせておいて、商業版では5話(Web連載版だと9話)からストーリーが激変する漫画『ドキュンサーガ』。そんな2つの側面を備えた本作の面白さを、考察を交えて本記事で紹介。読めば読むほど味が出てくる本作の放つ、魅力に迫りたいと思います。

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途中からガラリと物語が変わる!漫画『ドキュンサーガ』とは

KADOKAWAの無料コミックポータルサイト「ComicWalker」にて2021年1月から連載をスタートした漫画『ドキュンサーガ』は、2021年7月より「Webcomicアパンダ」に移籍し2021年9月現在も連載中のファンタジー漫画。

次にくるマンガ大賞2021Webマンガ部門にノミネートされ、今後注目度がアップしていく可能性の高い作品です。Twitterで作者・いとまんが作品の一部を公開し、大きな反響もありました。

国王の命を受け、魔王討伐の旅へと出発する勇者モッコス。物語の序盤は圧倒的な強さを誇る魔王と、腐れ外道でバケモノじみた勇者の攻防戦がくり広げられます。

ちょっと邪道なRPG風の作品なのかと思いきや、商業版の5話(Web連載版では9話)からストーリー性が激変

意外性が秘められた、壮大なスケールのダーク・ファンタジー作品です。

『ドキュンサーガ』1巻

 

ゲスすぎる勇者の、魔王討伐任務から始まる物語!

勇者と魔王が登場する『ドキュンサーガ』は、RPGのように勇者が国王に呼び出される場面から始まります。

しかしこの勇者モッコスは主人公のはずなのに、あまりにもゲス。いきなり王様を殴り飛ばす、護衛騎士に魔法を浴びせるなど乱暴狼藉ざんまい。

発言も行動も外道の連続で、魔王が眠る島に到着してもその酷さは健在。何者に対しても、容赦ありません。

もはや誰が本当の悪人かわからないと思わせるほどの、勇者がおこなう非道の数々。勇者の戦いを応援する意欲が、失われていく可能性があります。読み進めていくうちに魔王の方が、筋の通った常識人に思えてくるほど。

この勇者と魔王の対比が、実は後のストーリー展開で意表を突かれる導火線となっていきます

『ドキュンサーガ』1巻
著者
いとまん
出版日

 

漫画『ドキュンサーガ』は、5話から始まる過去編が面白い!

勇者の愚行は数あれど、テンポよく話が進んでいく魔王討伐編。ここまでの展開に、「続きを読むか迷う」と思った方、この漫画はここからを読んでください!

勇者と魔王の戦いに区切りがつき、商業版5話(Web連載版だと9話)から魔王が語る過去編が始まります。これまでの勇者の目に余る蛮行や、イマイチ真意が汲み取れない魔王との戦いから過去編ではストーリー性が一変。

時は942年前に遡り、人類に生き抜くための超能力が芽生え始めた時代へと物語の舞台が移行。人類にとっての日常と、非日常。普通であることと、普通ではないこと。

相容れない存在に対して、抱いた敵意から生まれる戦いの日々。新人類として生まれた異形の者たちが選択する未来など、グロさを感じさせるシーンは引き続きありつつも壮大なスケールのSF漫画へと変化していきます。

気がついたら世界観の変わりっぷりが放つ、面白さの虜になっているかも?!

 

人類は、なぜ新人類である異形を疎むのか【考察】

過去編の鍵を握るのは、人類と新人類の関係です。

一般的な発火や発電にあたる超能力が使え、能力の強さが人生の成否に繋がる人類の世界。一方新人類にはひとつの分野に特化した強力な能力があり、見た目も普通の人類と異なるため異形と呼ばれ蔑まれた生活を送っています

異形は人類から迫害され、凄惨な実験道具に使われることも。

なぜ人類は、新人類である異形の存在を受け入れないのか?そこには以下のような思いが、秘められていると推察します。

  • 人類は自分たちが、普通であると思いたい
  • 新人類に居場所を奪われるのが怖い
  • 人類にとっての非常識を、常識として受け止められない

得体のしれない不安から自分を守るため、新人類を迫害しているように思われる人類の行為。

人類と同じように、新人類にも常識や日常があります。互いの基準点や価値観に相違があるなかで、人類側が新人類も同じように生きる「人」だという事実から目を背けたことにより関係が悪化。最悪の事態へと向かっていきます。

実は遠い世界の話ではない、人類vs新人類。この物語が描く人類と新人類の争いを、立場を置き換えて考えてみるとグッと身近に感じるかもしれません。イジメの概念にも、繋がっていくのではないでしょうか。

 

人類vs新人類が行き着く、恐るべき未来とは【考察】

漫画『ドキュンサーガ』では人類が迫害を続けた結果、ともに手を取り合った新人類たちは仲間になっていきます。

最初は人類の中で、ひっそりと身を隠し耐え忍んでいた異形たち。しかし1人が3人に増え、同じように迫害されて苦しんでいる異形を救っていくうちに仲間が増え人類に対抗しうる戦力を身に着けていきます

人類が新人類を蔑み続けたことで、新人類が抱く憎悪の念は引き返せないほど膨れ上がることに。

互いに一歩も譲らず、争いは激化。やがて領土の奪い合いへと、発展していきます。異形たちの方が持っている超能力が圧倒的に強いため、集団が膨れ上がるごとに劣勢になる人類。

長い膠着状態を打開し、星を守るため異形側は人類と共存する妥協案を提示。しかし追い詰められた人類は、放射性物質を用いて愚行といえる最悪の決断をします

汚染された大地に人が住める場所はなく、新人類たちは核シェルターでの生活を余儀なくされることに。

このストーリー展開は、種族間闘争や戦争が続いた場合に起こりうる未来を連想させます

互いの存在を理解しようと思えば、そのチャンスは幾度もあったはず。もう戻れないところまで行き着く前に、争いを止める手立てはないのか?と考えるきっかけを与えてくれているように感じます。

 

魔王・真央(まお)は、どうして魔王になったのか

単行本1巻の表紙にもなっている魔王の真央。少女のような見た目をしていますが本作の魔王です。過去編がスタートすると明らかになりますが、魔王・真央は最初から魔王だったわけではありません

新人類のなかでも耳の形以外は、ほぼ人類と変わらない外見を持つ真央。異形のなかで最も強い力を持っているため、増え続けていく仲間を率いるリーダー的存在になっていきます。

そんな真央は、なぜ魔王になったのか?

仲間の子孫たちが幸せに暮らせる場所を守るため、400年ぶりに地上に戻った真央は箱庭計画を立てます。

箱庭計画によって真央たちの管理化で生活する人類のなかから、人類を滅ぼせるほどの力を持つ子どもが産まれることを望む真央。

管理化で生活する人類のリーダーが、真央(まお)を魔王と聞き間違えたことから魔王と認識されるようになります。新人類を守るための箱庭計画から、真央の魔王人生は始まるのです。

『ドキュンサーガ』1巻

 

自然の摂理に沿った、アリバタの生き方

触れたものを増殖させる能力を持つ、真央の仲間のひとりアリバタについて紹介します。

地球が汚染され地下生活を余儀なくされた真央たちに、子孫の弱体化問題が浮上。

この問題を踏まえ再び人類と戦う日のため、幹部陣が400年先まで生き永らえるように転生機を作成した仲間のメンザ。幹部のほとんどが転生機の使用を受け入れるなか、アリバタは摂理に反していると転生機の使用を拒否します。

精一杯生き、老いて死ぬ。生物とはそういうもの。作中でアリバタは寿命を拒絶することは、冒涜だと言い放ちます。自然の摂理に沿って生きたアリバタの言葉は、後々メンザの心に深く響いていくことになります。

摂理を捻じ曲げられるほど強力な力を手にした時、人間が見失ってはいけない本質を説くアリバタの台詞。アリバタが訴えていることは、忘れてはいけない大切なことなのです。

『ドキュンサーガ』2巻

 

高知能能力を持つ、メンザが残したもの

アリバタに傲慢だと称されたメンザは、高知能能力の持ち主。その驚異的な頭脳で、新人類チーム幹部陣の参謀的な役割を請け負っています。

人類の動向から、あらゆる可能性を想定し仲間を牽引。地上に住めなくなった際も地下シェルター内に、地上での生活と遜色のない生活空間のためのインフラを構築します。

再び地上に戻るため、汚染された土壌を洗浄する機械も造成。さらに新人類が生き残るための手段として、肉体を分解し再構築して生き永らえる転生機まで生み出してしまいます。

仲間たちと過ごす長い長い時の中で、幕引きのタイミングを自分で決めるメンザ。

ブレーンとして仲間たちの精神的支柱だったメンザの内に秘められた、脆さが読者に訴えかけるもの。それは生きていく上で、絶対的な存在はいないということなのかもしれません。

『ドキュンサーガ』2巻

 

最期まで信念を貫き通す、日村の生きざまから感じること

肉体変化の能力を持つ日村は、新人類チーム幹部陣の中で最も粗暴なキャラです。

人類を憎む気持ちが人一倍強く、何事も武力行使で片付けようとする所があります。人類を根絶やしにしたい気持ちが強く、戦争行為に肯定的な日村。

自分たちの功績によって今の生活があるにも関わらず、敬意を持とうとしない若者世代に苛立ち暴走してしまいます。日村の横暴さが致命的な事態を招き、壮絶な最期を迎えることに。

「どうして?なぜ?」「もっと別の選択はできなかったのか?」と思わせてしまう、日村の生きざま。彼が進んでいく選択の数々は、納得できないことが多いかもしれません。

しかし日村という人物の人生は、人類と戦って勝つこと。人類が自分たちにしてきた仕打ちを、決して許さないこと。そんな思いを貫き通した、ブレない人生だったと感じさせます。

『ドキュンサーガ』2巻

 

理想と現実の間で思い悩む、桐生の選択

桐生は日村の親友で、酸性雨の能力の持ち主。好戦的な人物で、日村と同様に人類を根絶やしにしたいと考えています

真央と桐生の力があれば、人類に勝てるだろうと言われるほどの強さを誇る桐生。再び人類と戦うため仲間とともに、転生機を使って400年もの時を生き永らえていきます。

400年の時を経て念願の地上に戻った際、桐生の目に映ったのはかつての強さを微塵も感じさせない人類の姿でした。

宿敵たちと再び戦って勝利を手にすることを生きる糧にしてきた桐生は、理想と現実の狭間で生きる目的を見失ってしまいます。転生を今回限りで辞めると決め無気力な毎日を過ごしますが、日村の子孫の思いに触れ残りの人生をどう生きるか模索する桐生。

生きる糧を失った時、人は道を見失う。桐生の人生は生きる意味を探す迷路があると、示しているのではないでしょうか。

『ドキュンサーガ』2巻

 

柔軟な思想で、新しい選択を生み出した飛(フェイ)

新人類幹部チームの中で、最も広い視野を持っている飛。空間移動の能力があり、地上に人類の災厄がもたらされた時には飛の能力が仲間を救う一端を担います。

飛の特筆ポイントはなんと言っても、柔軟な思考。飛は他の仲間たち同様に人類を憎む気持ちはあるものの、認めるべきところは認める良識の持ち主です。

たとえば人類が生み出した文化等から参考例を模索し、次世代たちのことも考えて新人類向けの歴史書を編纂。戦いだけではなく教養も身につけ、今までとは違う生き方の選択肢を作ろうとするのです。

現状に満足せず、他にも何かできることがあるのではないか。人は今からでも、違った生き方ができるのだ。飛がおこなう行動の数々は、そういったことを伝えようとしているように感じます。

『ドキュンサーガ』3巻

 

人の想いは十人十色!世代や思想の違いから起こる対立

真央たち新人類幹部は、人類に迫害された痛みを持っています。その辛く悲しい過去が、人類を憎むという共通認識になり仲間意識が芽生えるきっかけになりました。

しかし地下生活で生まれた新人類の子孫たちは、人類と直接関わったことがありません。生まれ育った環境が変わり、増え続けてゆく仲間たち。

見て聞いて感じるものが異なると、思想も変わってきます。人の想いは十人十色。仲間が増えていくに連れ、その思いも無数に膨れ上がることに。

やがて考え方が近い者たちは集い、派閥が誕生。相反する思想だとわかると、諍いが生じ始めます。新人類も例外ではなく、派閥間の考えはどこまでいっても平行線に

一度同じ方向を向いても、時の流れとともに人の思いも変わっていく。人類が行った過ちは、自分たちも例外ではない。本作は新人類同士のいさかいを通して、そのようなメッセージを投げかけているのではないでしょうか。

 

漫画『ドキュンサーガ』には、様々なテーマを感じさせる魅力がある

漫画『ドキュンサーガ』には、各キャラの思想から様々なテーマを感じさせる魅力があります。ここでは、そんな本作の魅力に迫りたいと思います。

1.正しさの形

勇者がいる世界から見ると、魔王は悪者。しかし魔王側には、魔王側の事情が存在します。

人類vs新人類も、新人類の目線で見ると人類の行いは残虐非道そのもの。しかし人類側にも譲れないものや、守りたいものがあります。

正しさの形は、人それぞれ。その様を本作で、感じることができます。

2.信念と変化

それぞれ異なった信念を持つ、新人類幹部たち。

自然の流れを受け入れる、家族を重んじる、プライドを守る、新しい道を切り開く……。各自が重んじるものは様々。どれも間違いではない。だけど、方向転換できるチャンスもあることを示しています。

3.遠い世界の話ではない

本作は、遠い世界の話ではありません。作中には忌むべき人類の思考へ、新人類が近づいているフシが描かれます。思想の違いから、派閥が生まれ相容れなくなる。これは人類が異形を迫害した思考と、類似しているように思われます。

登場人物たちの人生や行いを通して、何を感じどう考えるのか?それがこの作品が放つ、最も深いテーマなのではないでしょうか。

 

ゲスすぎる勇者が旅立つ『ドキュンサーガ』第1巻あらすじ

勇者vs魔王が描かれる第1巻。2人がくり広げる、規格外の戦いが見どころです。

王都ザイダーマの国王は、勇者モッコスに魔王討伐を依頼。旅の支度金を国王から受け取り、ヤクザかチンピラかのような振る舞いをしながら準備を進めていきます。

出発前も出発後も、外道行為を繰り返す勇者モッコス。正義の味方らしさを微塵も感じさせないまま、魔王の配下たちと戦いをくり広げていきます。

なぜコイツが勇者なの?と思わせるほどの、ゲスすぎるモッコスの行動。いよいよ目を覚まし勇者の前に現れた魔王は、淡々と戦い圧倒的な強さを見せつけていくことに。

胸クソ悪い勇者のモッコスがバケモノじみた強さで魔王に挑み、ストーリーは戦いの行く末に向かって展開していきます。

『ドキュンサーガ』1巻
著者
いとまん
出版日

 

物語は魔王の過去へ!『ドキュンサーガ』第2巻あらすじ

勇者vs魔王が一段落し、魔王が過去を語り始める第2巻。切なさや苦しさをはらんだ、魔王の生い立ちから目が離せません。

魔王が勇者モッコスに語る過去は、942年前からスタート。母の言いつけを守って、他人と関わらず生きた魔王・真央の幼少期。1人の少女との出会いを通して、裏切りや絶望・深い悲しみを経験します。

自分と同じように異形や強い能力を持つものと出会い、初めて友と呼べる存在を得る真央。人類の行いに深く絶望し、人類と敵対していく新人類の異形たち。人類との戦いが激化していくなかで、人類は最悪の選択を決断。

いつか来る未来のため、新人類たちは地下シェルターでの生活をスタートさせます。地下での生活模様や、仲間たちが抱く思いが明かされていきます。

『ドキュンサーガ』2巻
著者
いとまん
出版日

 

仲間の葛藤や選択が描かれる『ドキュンサーガ』第3巻あらすじ

地上に戻る日が訪れる第3巻。幹部と次世代の考えの相違や、箱庭計画がはじまる経緯が描かれています。

新人類幹部のメンザが、選択した驚きの決断。メンザが残していったものを用いて、来たるべき未来へ向けての地下生活は続きます。

ついに地上に帰れる日が訪れ、次世代たちを伴って地上に帰還する新人類。忌むべき人類も、一足先に地上での生活を始めていました。

地下に降りる前とは、様子が異なる人類。思想や意見が割れていく、新人類の次世代。それぞれが様々な問題や悩みを抱え自分なりの決断をしていくなか、真央は箱庭計画を発案します。

箱庭計画のスタート過程、それぞれが選ぶ決断。異形たちの中にある悩みや苦しみ、純粋さや内に潜む醜悪な心を垣間見ることができます。

『ドキュンサーガ』3巻
著者
いとまん
出版日

 

勇者・モッコスが選ぶ未来は?漫画『ドキュンサーガ』の結末予想!

次々と明かされていく、1000年近い魔王・真央の過去。全ての真実が明かされた時、この物語はどんな結末に向かっていくのでしょうか?

 

真央が語る過去は、やがて勇者モッコスと対峙する未来へと繋がっていきます。自らの思惑があってモッコスに、自身が送ってきた人生を明かした真央。

おそらく箱庭計画の行く末が、モッコスの存在に繋がっていくと予想されます。

『ドキュンサーガ』という1000年近くに及ぶ壮大な物語は、真央の過去を聞いたモッコスが下す決断。という結末に、向かっていくのではないでしょうか。

果たしてモッコスは真央に共感するのか?それともまったく違う思いを抱くのか。現在の世界が、どういった道に向かうのか今から楽しみですね。

 

まとめ

一風変わったRPG風漫画と思いきや、驚きの展開を見せる漫画『ドキュンサーガ』。最初の読み始めと読み味が変わる、壮大な過去編。読み進めていくうちに、その世界観に惹き込まれてしまうかもしれません。そんな本作が放つ不思議な魅力に触れ、様々なテーマに触れてみてはいかがでしょう。

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