時代小説『看取り医　独庵　隅田桜』5つのオススメポイント！江戸時代のカッコイイ医者が世の中を斬る！

更新：2022.6.17

「看取り医　独庵シリーズ」第一弾は、2021年啓文堂書店時代小説文庫大賞第1位を獲得した実力派時代小説です。今回、第三弾『看取り医　独庵　隅田桜』が発売となりました。PR担当として多くの作品に携わってきたなかで、ここがオススメ！というポイントなどをご紹介いたします。

【おすすめポイント1】難しくない時代小説、江戸の下町で起こる様々な事件……

「時代小説」というと、言葉遣いが難解だったり、人物相関図を何度も見直したり、歴史を調べながら読むことも……。

だから面白い！とも言えますが、本作品は、江戸時代中期の下町で起こる身近な様々な出来事をテーマにしています。肩肘張らずにサクサク読めてしまうでしょう。

【おすすめポイント2】とにかく主人公の独庵先生がカッコイイ！

もちろんレントゲンやCTなど全くない時代です。京と長崎で漢方と西洋医学を修めた独庵先生は、プロの直感と経験で様々な病を見抜いていきます。医者の本分は患者に希望を与えることだ！とのポリシー。人々からの信頼も厚く理想的な医師と言えるでしょう。

また、それだけではありません。医者でありながら馬庭念流（まにわねんりゅう）という古武道の遣い手でもあり、チャンバラも見どころなんです。ああ、こんなお医者様がいたら！！と惚れ惚れしながら読み進むうちに、難解な事件を見事に一刀両断、非常に痛快な作品に仕上がっています。

【おすすめポイント3】作品は春夏秋冬が舞台の4話構成。四季を感じる情緒ある作品

例えば今回の第二話目は春のお話。隅田川の素晴らしい桜を見せてやりたいという、夫の妻への想いが切ないのです。その切なさが伝わる作品紹介文をご覧ください。

桜を見せたい夫、夫の志を見たかった妻！大川堤の桜のつぼみが、ほころびる様子もなく寒風に耐えていた春の初め、浅草諏訪町にある独庵の診療所に懐かしい男が顔を見せた。

長崎遊学中ともに勉学に励んだ佐田利良だった。早速、診察室に招じ入れると、佐田が土産だと言って差し出したのは、江戸はもとより、日の本でも珍しい葡萄酒だった。故郷の甲州で自ら作ったものだという。

眼科を志していた佐田は、あれこれ事情があって、今は、日本橋で薬種屋を営んでいるとか。葡萄酒の製造も、あくまで薬として売り出すつもりらしい。

しかし、佐田が独庵を訪ねたわけは、もとより葡萄酒を進呈するためではなかった。佐田の内儀・千代は予てより江戸患い（脚気）に苦しみ、その道の名医・道寺の診立てでは、もはや先が長くない。佐田の願いは、この春の桜をひと目見せてやることだったが、白底翳（白内障）で、それも覚束ない。

佐田の来訪は、独庵に江戸きっての眼医者・破風元代に口をきいてもらえないか、ということだった。快諾した独庵は面識のない破風が受けざるを得ないよう策を講じ、佐田を連れて面談を求めたが……。
（作品紹介文より引用）

それにしても、なぜに桜は日本人の心を動かす特別な美しさを持っているのでしょう。その他の夏、秋、冬をテーマにした各話から季節を存分に味わってみてください。

看取り医独庵隅田桜 (小学館文庫 J ね- 1-3 小学館時代小説文庫)

著者

根津潤太郎

出版日

【おすすめポイント4】作者は実は現役医師！～制作裏話～

作者は現役医師でベストセラー作家でもある米山公啓先生。あきる野市で神経内科のクリニックを開業しています。西多摩地区では神経内科が少なく、八王子や隣町からも通ってくる患者さんも多いとか。まさに患者に寄り添う医師、独庵先生と重なります。主な著書は健康関連や医学ミステリーなど300冊以上にも上ります。

しかし今回は時代小説に初挑戦！根津潤太郎というペンネームで挑みました。きっかけは「時代小説に興味はありませんか？」という編集者からの年賀状での一言。編集者とは、有名作家と共に多くの作品を世の中に生み出してきた敏腕編集者、小学館時代小説文庫スタートアップメンバーの一人、米田光良さんです。米山先生はもともと時代小説の構想があったとのことで、即決したそうです。

そして作家と編集者が打ち合わせを始めた矢先、世界は新型コロナという未知の病に翻弄されることに。本作品はコロナ禍で医者の仕事と並行しながら（ワクチン接種会場にも足を運びながら）一気に書き上げたとのこと。医学の知識はさておき、歴史背景や当時の事情、独特な言い回しなどなど・・・それはそれは執筆には苦労したそうです。2021年4月に刊行された第一作目ではコロナを彷彿とさせるはやり風邪の制圧あり、今回の第三作目では江戸時代の医療体制と引き比べて、コロナに翻弄される現代社会を揶揄する展開も見どころになっています。