漫画『青のミブロ』は「週刊少年マガジン」で連載中の少年漫画です。ミブロ(壬生浪)のタイトル通り、新撰組の前身・壬生浪士組にフォーカスを当てた歴史作品。歴史的な出来事と並行して隊員の青春も描かれるため、日本史に詳しくなくとも楽しめます。 2024年10月にTVアニメもスタートした本作について、原作漫画の内容をわかりやすく紹介しつつ、作品の魅力をご紹介していきます。

『青のミブロ』は2021年10月から「週刊少年マガジン」で連載されている歴史漫画です。2024年4月には第2部スタートを機に『青のミブロ-新選組編-』と改題しました。第1部全14巻、第2部の既刊は2巻です。作者は青春サッカー漫画『DAYS』で知られる安田剛士(やすだつよし)。
本作はかの新撰組がまだ剣客集団「壬生浪士組(みぶろうしぐみ)」だったころから物語が始まり、主人公「ちりぬにお」の目を通して、激動の時代の理想と現実が描かれていきます。
本作は史実をベースにしつつ、独自キャラクターの関与によって、歴史には残っていない新撰組隊士の人となりや青春を楽しめるのがポイント。キャラクター描写がファンの人気を集めており、2022年には「講談社次世代ヒットまんが大賞」で2位に選ばれました。
『青のミブロ』は人気に後押しされる形で複数のメディアミックスが進行中です。2024年10月からTVアニメが放送されていますし、さらに2025年4月には坪倉康晴主演の舞台化も決定しています。
『青のミブロ』はストーリーも盛り上がりも、今最も熱い歴史漫画と言っても過言ではないでしょう。
文久3年、京都。前年に会津藩藩主が上洛して以来、侍が増えて街には剣呑な空気が満ちていました。そんな中、養母の営む「ちりぬ屋」という団子屋を手伝っていた「ちりぬにお」(以下、わかりやすいように「にお」)は、色々な意味で近頃評判の壬生村の浪士、土方歳三と沖田総司の2人と出会います。
客として2人が通い始めてからしばらく経ったころ、店じまい後の帰り道で「にお」と妹が子供を狙った誘拐犯に襲われる事件が起きました。「にお」の窮地を救ったのは、密かに様子をうかがっていた土方と沖田でした。彼らは誘拐犯の噂を聞きつけ、「にお」らが狙われるのではと当たりをつけていたのです。
捕り物の最中、たぐいまれな能力と勇気を見せた「にお」。土方はそんな彼の才能を見抜き、自分たちの壬生浪士組に誘います。壬生浪士組こそ、のちの新撰組。「にお」は希望を胸に、激動の時代に身を投じていくことになります。
『青のミブロ』は日本史で有名な新撰組をモチーフとした作品ですが、主人公をはじめとしてオリジナルキャラクター(オリキャラ)や史実とは少し違う人物が何人か登場します。
主人公「ちりぬにお」は、本作の特色と言えるオリキャラの1人。「ちりぬ屋」の女将に育てられた孤児の少年で、人並み外れた白髪と青い瞳が特徴です。非常に正義感が強く、理不尽がまかり通っている世の中を変えるため、壬生浪士組に志願します。
誰もが知る土方歳三は、「にお」を誘った張本人。無口で無愛想ですが実際は心優しい人物で、「にお」を高く買っています。農民の出ながら誰よりも武士を体現しており、剣の腕も戦術眼も人一倍。
沖田総司も「にお」が壬生浪士組に参加するきっかけとなった1人。土方とよく行動していますが、彼とは逆に穏やかで人当たりが良く、子供にも好かれています。他の仲間と違って思想らしい思想はなく、普段と変わらない調子で命のやりとりをこなす天才剣士。
そんな土方や沖田らを束ねるのが、近藤勇と芹沢鴨の2人です。天然で何を考えているかわからないが情に篤い近藤、頭がキレすぎて何を考えているかわからないがカリスマ性のある芹沢。それぞれタイプの違うリーダー格で、思想や出身の違いから壬生浪士組はざっくり近藤派と芹沢派に分けられます。
そして「にお」が壬生浪士組で出会う同年代の少年が、斉藤はじめと田中太郎です。
斉藤はじめは他のフィクション作品でも馴染み深い、3番隊組長・斉藤一をモチーフとした人物。武士のセオリーに反して左手の居合い斬りを得意とする、クールそうに見えて実は血の気が多い少年です。はじめは明らかに史実より年齢が若く、名前がひらがななのもあって半分オリキャラと言える存在。
田中太郎は「にお」と同じく、史実にはいないオリキャラです。酷い生い立ちの少年で、壬生浪士組では自身を拾った芹沢の身の回りの世話や雑務を担当しています。同世代の「にお」とはじめとの関わりや、複雑な芹沢との関係で徐々に変化していく太郎は本作の見所の1つ。
以上が主な主要人物ですが、他にも永倉新八や山南敬助といった、有名な新撰組関係者が何人も登場します。
『青のミブロ』はジャンル的には新撰組を題材とした歴史漫画ですが、登場人物の紹介で少し触れたように独自要素が強いです。新撰組の生きた時代と正義のあり方について、「にお」の側から深掘りしつつ、個人個人の青春や成長を描く群像劇と言えるでしょう。
基本的に史実の出来事や人物など要所を押さえながらも、歴史に残っていない当事者の関係性を上手く肉付けしているのが『青のミブロ』の最大の魅力です。幕末の価値観、考え方を上手く現代的にアレンジしてあるので、違和感を覚えることなくストーリーを楽しめます。
例えば新撰組と言えば切っても切り離せないのが、有名な鉄の掟「士道不覚悟」から連想するストイックな剣客集団のイメージ。実際に京都の住民に恐れられ、身内である隊員を粛清しているので間違いではないでしょうが、それはあくまで一側面に過ぎません。
新撰組の人々も生きた人間だったのだから、血の通った側面があるはず……。そうした部分から膨らまされて、『青のミブロ』に登場する新撰組の面々はいい意味で物凄く人間くさいです。
昼間市中を練り歩いて治安維持(時に恫喝まがいにことも)したかと思えば、近所の子供と他愛のない遊びに興じたり、隊員同士で相撲を競ったり飲み比べしたり。ある意味で学生の部活のノリに近いものがあります。
一方で、いざもめ事が起きれば瞬時に武士の顔つきになるのが圧巻。剣客集団なのは伊達ではなく、日本刀と体術を駆使した剣劇アクションはかなりの迫力です。
ところがそうやって民衆を守っても、情報がなかなか伝わらない時代なので武力で鎮圧したことだけが知れ渡り、乱暴な余所者と曲解されるのがつらいところ。理想と現実の板挟みになりつつ、それでももがいて理想を貫く姿に胸を打たれます。
他には隊内の対立や血の粛清も正面から描かれ、綺麗事ではない「正義」の意義を突きつけてくるのもポイントです。京都で巻き起こる事件に明確な「悪」はなく、ただ立場と方向性の違う「別の正義」があるだけ……。
現代の少年漫画として読みやすいだけでなく、歴史的背景も含めた内容が非常に骨太。歴史を知っていなくても楽しめますが、歴史を知っているとより一層楽しめる作品となっています。
普段から不思議な近藤がさらにおかしかったある日、いつも通り鍛錬に励んでいた壬生浪士組一同が芹沢によって集められます。芹沢は上機嫌に会津藩からの支援が正式に決またと明かし、会津本陣・金戒光明寺へ挨拶へ行くことになりました。
しかし、そこで待ったをかけた山南敬助。ピンと来ない「にお」に京都を取り巻く尊皇攘夷の情勢を説明した上で、会津藩の下につく意思を皆に確認します。
尊皇攘夷とは江戸末期の開国に伴う外国人の横暴に反発し、天皇を頂点に団結しようとする思想のこと。ただし尊皇攘夷も、天皇を尊重しつつも江戸幕府を支持する佐幕派、幕府を排除して新政権樹立を目指す倒幕派があるなど、一枚岩ではありませんでした。
倒幕派の筆頭は長州藩ですが、問題は倒幕派の中にいる実力行使をいとわない過激派の存在です。
この時点での壬生浪士組は志しの高さはともかく、ただの浪人たちの集まりでしかありません。佐幕派の会津藩預かりとなれば、最前線で過激派に対処する佐幕派の捨て駒になることと同義。
そんな事情を踏まえた上で、山南は改めて隊員たちに命を賭ける覚悟があるかと問うのですが……。のちの新撰組への繋がりを感じさせる、作中最初の転換点となるエピソードです。
- 著者
- 安田 剛士
- 出版日
正式に会津藩の預かりとなっても、未だ田舎の乱暴者のイメージを拭えない壬生浪士組。彼らは一計を案じて、知名度向上を狙って揃いの隊服を作ることにしますが、図案を依頼する相手は土方の提案で「ちりぬ屋」の女将――つまり「にお」の養母に決まりました。
「にお」は付き添いのはじめと太郎を連れて、我が家とも言える店に帰りますが、抜け目ない女将によって3人ともこき使われてしまいます。ただ、どこか殺伐としている隊の拠点と違って、平和そのものな店の手伝いや寝泊まりを満喫。デザインを依頼するだけのはずが、1泊してしまいました。
翌日、またしても「ちりぬ屋」に駆り出される3人でしたが、そこへ謎の少年が現れます。自らを菊千代と名乗る彼は、額に傷のある大男に狙われていました。3人は連携して追い出したものの、大男と仲間たちに店を囲まれてしまいます。様子を見に来た土方、沖田、藤堂平助が合流しますが、多勢に無勢は変わらず。
突破口を見つけるために事態を整理してみたところ、とんでもない事実が明らかになります。菊千代こそすべての侍の頂点、若くして江戸幕府14代将軍になった徳川家茂(いえもち)その人だったのです……。
家茂を護衛しつつ、過激派と戦う緊迫したエピソード。家茂との交流と彼の置かれた厳しい立場が、「にお」に与えた影響は計り知れません。誰のために、なんのために戦うべきなのか、「にお」の進むべき道が見えてきます。
- 著者
- 安田 剛士
- 出版日
壬生浪士組を運営するため、資金を調達する近藤と芹沢。向いている方向は同じでも、両者のやり方は明らかにかけ離れていました。特に問題だったのは芹沢です。強奪同然に借り入れを行い、悪徳商人を成敗するという名目でわざと火付けをするなど、乱暴狼藉の限りを尽くして壬生浪士組の悪評を高めていきました。
他の面々は芹沢の真意を測りかねていましたが、そうこうしているうちに痺れを切らした会津藩が芹沢排除の指示を下します。ひとまず謹慎という形で穏便に済ませたものの、会津と薩摩による長州藩を追い落とすクーデター「8月18日の政変」の混乱を治める活動で、芹沢の存在感はますます強くなっていきました。
そんな中、幼馴染みとして誰よりも芹沢をよく知っていた新見錦(にいみにしき)は、芹沢に相応しい幕を引くために密かに動き始めます……。
壬生浪士組のクライマックスであり、新撰組設立を描くためには避けられない重要なエピソードです。芹沢と袂を分かつ流れは自体はある種のお決まりですが、本作はあまり知られていない新見にスポットを当て、豪快かつカリスマ性のある芹沢の進退が極めて劇的に語られます。
本作は歴史に書き残されていない空白の部分を上手く創作し、歴史的事実と組み合わせて「本当にこうだったかも」と思わせるのが本当に凄いです。かなり長編ですが、青春と時代劇の良さの詰まったお話は必見。
- 著者
- 安田 剛士
- 出版日
『青のミブロ』は2023年12月にTVアニメ化が決定し、2024年10月から読売テレビ・日本テレビ系の地上波(Amazon Primeビデオなどサブスクでも)で放送中です。昨今のアニメ化作品としては珍しく、深夜アニメではなく土曜夕方枠。
ストーリーは原作に沿って作られており、アニメ独自要素としては原作では冒頭のみだった永倉新八が子供に語るシーンが少し追加されている程度です。
キャラクターデザインは原作をさらに綺麗にした感じですが、実際の作画はそこまで優れてはいません。夕方枠のアニメとしては普通のレベルですし、回を重ねるごとに良くなっている上に、一部決めシーンや重要なエピソードではクオリティが上がるのでさほど気にならないでしょう。
夕方枠なので暴力表現が控えめになるのではないかと思われていましたが、直接的な描写は多少避けつつも、原作のテーマ性を損ねないようにしているのは好印象でした。
動きがつくことで見栄えが向上しており、原作読者にはおおむね好評です。ただし、新選組モチーフとしてはやや異色なためか、新選組を期待してアニメから見た人は違和感がなくなるまで少し時間がかかる様子。
TVアニメ『青のミブロ』は2025年1月現在、第1クール(12話)が終了して第2クールがスタートしています。ストーリーは原作で言うと第5巻の辺りです。
TVアニメ版のスケジュールが不明なのでアニメ化の範囲ははっきりとはわかりませんが、仮に第2クールまでだとすれば、血の立志団編が一段落する第9巻までは進むでしょう。だいたい1クールで原作5巻前後を消化しそうなので、もし第3クールがあるなら、細かい描写を増やした上で第1部が完結する第14巻まで行く可能性もあります。
いずれにせよTVアニメ『青のミブロ』はどんどん気になる部分に突入していくので、これからも目が離せません。
漫画『青のミブロ』の作者は安田剛士(やすだつよし)。1980年6月9日生まれのA型、現在は44歳です。
2001年11月、「第67回週刊少年マガジン新人漫画賞」に読み切り版『Over Drive』が入選、翌年1月「週刊少年マガジン増刊 マガジンFRESH」に同作品が掲載されて商業デビューしました。
その後、ロードレースを題材とした連載版『Over Drive』やサッカー漫画『DAYS』がヒット。両作品ともTVアニメ化され、安田剛士の代表作となりました。
- 著者
- 安田 剛士
- 出版日
- 2013-07-17
作品のジャンルは陸上競技やスポーツ漫画が多く、青春モノを得意としています。漫画とは思えない躍動感ある描写が特徴的で、アシスタントや師弟関係でこそありませんが、作画のタッチに井上雄彦に強い影響を受けているのは間違いないでしょう。
スポーツや青春漫画で知られる安田剛士ですが、『青のミブロ』以前にも沖田総司を主人公とした『黒猫DANCE』を発表しています。実は安田剛士の出身は東京都日野市で、土方歳三ゆかりの地。幼少期から新撰組に親しんできたようで、その原体験が『青のミブロ』で描かれる等身大の隊員に繋がっていると思われます。
漫画『青のミブロ』は第2部に入って新撰組が設立されたばかり。今後さらに大きな事件、歴史の流れが控えており、まだまだ楽しませてもらえそうです。
漫画『青のミブロ』は第2部『青のミブロ-新選組編-』が絶賛連載中です。さらに深みを増した物語は白熱していくばかり。
本作は講談社の公式漫画アプリ「マガジンポケット(マガポケ)」でも基本無料で読めます。TVアニメ化で『青のミブロ』に興味が湧いた方は、まずこちらからどうぞ!