楽曲シリーズ「カゲロウプロジェクト」の漫画「カゲロウデイズ」。不思議な超能力を持つ少年少女たちの物語の漫画版を全巻ネタバレ紹介します!
漫画『カゲロウデイズ』の一番の特徴は、ほとんどの主要キャラクターたちが「赤い目」の能力を持っていることです。一人につきひとつ、超能力が宿っていると考えると分かりやすいでしょう。
「赤い目」を持つ少年少女たちは、大事な人とともに死にかけ、生還した後に不思議な能力が使えるようになりました。そんな「赤い目」を持つ少年少女たちが結成し、秘密基地で過ごしたり、目の力を使ってちょっと危ない任務をしたりする組織がメカクシ団です。
例えば、団長のキドは「目を隠す」能力で、存在感を極限にまで薄くします。厳密には違いますが、透明人間になれる、くらいの認識で問題ありません。まさしく超能力と呼ぶに相応しいですが、制御できないといきなり消えたり現れたりと、「化け物」扱いされてしまいますよね。
メカクシ団は、そのように「赤い目」の力に振り回され、居場所を失くして独りぼっちだった少年少女たちが集まった組織なのです。
ヒキニート歴2年の少年・如月シンタローは、1年前から電脳少女・エネのいたずらに頭を悩ませつつも、それなりの引きこもり生活を謳歌していました。
そんなシンタローが8月14日、壊れたマウスとキーボードを買いに行くためにとうとう2年ぶりに外に出る決意をします。辿り着いたショッピングモールでシンタローを待ち受けていたのは、銃と爆弾を持ったテロリスト集団で……!?
- 著者
- 佐藤 まひろ
- 出版日
- 2012-11-22
第1巻の前半は、エネとシンタローを主役にテンポ良く展開していき、まだ「赤い目」のことには触れられません。エネとシンタロー視点のときに読者が「?」を浮かべるシーンは、後半の、シンタローの妹・モモと、彼女が出会った「メカクシ団」のメンバーたちの視点を読むと意味が分かる仕掛けとなっています。
「電脳少女」や「ヒキニート」、さらには「怪しげな団体」や「能力」……ネット世代の心をくすぐるワードや設定がたくさん出てきますし、クセのあるキャラクター同士のテンポの良い会話も面白く、興味を惹かれる第1巻となっています。
モモの携帯を買いにショッピングモールへと来たモモ達「メカクシ団」は無事能力を使ってテロリストたちを倒し、さらにエネ、シンタローを団に加えることに。
クールな団長のキド、大らかで天然気味のセト、胡散臭い笑みを絶やさないカノ、ドジっ娘のマリーと続いて、モモとエネ、シンタローを加えたメカクシ団は、エネの希望を叶えるべく遊園地に遊びに行くことになります。
- 著者
- 佐藤 まひろ
- 出版日
- 2013-03-22
第2巻の見どころは、とにかくわちゃわちゃ楽しんでいるメカクシ団です。これ以後、彼らには悲劇が降りかかることになりますから、実質これがシンタローやモモがメカクシ団と共有した最後の楽しい時間ということになります。第5巻以降を読んだ後、振り返って読みたくなる巻ともいえるでしょう。
相変わらずキャラクター同士のやりとりは面白いですし、前半は第1巻のシンタロー視点の事件をモモ視点から描いたもの、後半はメカクシ団が遊園地で遊ぶ話になっているので、さらっと読める巻になっています。
エネの回想から始まる第3巻の舞台は数年前。榎本貴音と九ノ瀬遥は、養護学級に通うふたりきりのクラスメート同士。文化祭でオリジナルのゲームを作り、対戦方式の出し物をやることになった彼らは、それに向け生き生きと日々を送っていきます。
迎えた文化祭当日。客の対戦相手をしていた貴音ですが、とあるグロゲーの全国2位プレイヤーだということが客にバレてしまい、貴音たちのブースはゲームオタクばかりが集う異様な事態に……!?
- 著者
- 佐藤 まひろ
- 出版日
- 2013-08-23
第3巻の見どころは、新たに登場した遥と貴音です。天然で能天気、ほんわかとした雰囲気を持つ遥と、ツンデレだけど何だかんだ言って遥を放っておけない貴音……ふたりの掛け合いもさることながら、遥の天然っぷりや貴音の中二病全開の黒歴史など、普通の「文化祭」モノとは違った面白さがあります。
数年前が舞台ということで、第1巻、第2巻に登場するカノやキド、シンタローの数年前の姿もちらっと登場するので、ファンには嬉しいですね。特にシンタローは、第1巻、第2巻の印象とはかなり異なった雰囲気で登場するので、同一人物なのかと疑ってしまうほどです。
遥に惹かれながらも、その想いを素直に伝えることができない貴音……そんな彼女をあざ笑うかのように、遥と貴音は「死」を迎えることになってしまいます。
そして時は再び現在へ。長い長い回想を終えたエネは、メカクシ団に囲まれて笑顔を見せるシンタローを見つめ、「こんな日々がもう少し続けばいい」と願います。しかし、その願いを踏みにじるがごとく現れた男によって、メカクシ団は全員殺されてしまい……!?
- 著者
- ["佐藤 まひろ", "じん(自然の敵P)", "しづ"]
- 出版日
- 2014-03-27
4巻の見どころは前半の貴音の切ない想いと、後半の過去編明けの急展開です。
遥の命が本当に明日どうなるかも分からないのだと改めて気づいた貴音が、ようやく気付いた自分の気持ち。しかし、最終的に貴音はそれを遥に伝えることは叶いませんでした。
「言わなきゃ 早くあいつに伝えなきゃ」
「こんな簡単なことなのに時間かけすぎだよ 私のバカ…」
「―――遥、大好き」(『カゲロウデイズ』第4巻より引用)
これを最後に「貴音」は消え、その意識だけが電子世界を漂う「エネ」が誕生します。一体どうして貴音が「エネ」になってしまったのか……それには黒幕がいるのですが、その正体もかなり意外な人物なので、ぜひ読んでみてください。
後半になって、メカクシ団全員が殺されてしまうという悲劇が起こります。メカクシ団の全員も事態を把握することができず、当然読者も何が起こっているのか分からないままに、次々と謎の男の凶弾に倒れていくメカクシ団。
そして次のカットは、シンタローが自宅で目覚めるところから始まり、シンタローとモモ、エネが中心となった新たな「8月14日」が幕を開けることになるのです。「ループもの」である『カゲロウデイズ』の醍醐味ともいえる第4巻です。
ヒヨリとヒビヤと仲良くなったシンタローとモモですが、ヒヨリ達はその後行方不明に。ふたりを探すモモとシンタローですが、モモはヒビヤを抱え「秘密組織」を名乗る謎の男たち「カノ」と「コノハ」に出会います。一方シンタローは、同じくヒヨリとヒビヤを探しているという「キド」と名乗る人物と出会っていて……。
- 著者
- ["佐藤 まひろ", "じん(自然の敵P)", "しづ"]
- 出版日
- 2014-06-27
メカクシ団が再び登場する第5巻。第1巻で友好的な出会い方をしていたモモですが、今回は敵意をもってメカクシ団と初接触することとなります。
「初対面」のキドとシンタローの会話や、以前よりも比較的仲の良い(?)シンタローとモモとのやりとりは面白く、第1巻、第2巻までの日々とはまた違った魅力。さらに第5巻からは新キャラクター「コノハ」も登場します。遥のゲームのキャラだったはずの彼が、なぜメカクシ団とともにいるのか……読者をますます考えさせることになります。
人の心が読み取れる「目を盗む」能力が暴走し、森に迷い込んだ幼き日のセト。彼を待ち受けていたのは、母を亡くし、「外」に憧れを持ちながら「外」に恐怖する少女・マリーでした。「外」を怖がるマリーに、セトがとった行動とは……。
- 著者
- ["佐藤 まひろ", "じん(自然の敵P)"]
- 出版日
- 2014-12-27
第6巻は、ほとんどセトの過去編とそれに組み込まれる形で明かされるマリーの過去で構成されています。第1巻、第2巻でドジっ娘かつ天然で、だけどアクティブな姿も見せていたマリーの悲しい過去には涙腺崩壊必至です。そんな過去から「外」を怖がるマリーに自身を重ね、マリーとともに一歩踏み出そうとする少年セトの姿に続けて感動させられることでしょう。
また、幼い頃のセトは、マリーの笑顔にいちいち赤面しています。かわいらしい、小さい子の恋愛は読んでいるだけでキュンキュンしてしまいますね。
ヒビヤが出会った赤いマフラーを巻いた少女は、記憶と思いを直接脳に伝えることのできる「目をかける」能力の持ち主でした。彼女はそれを使って、「赤い目」を持つ者たちの不思議な力を生み出した張本人・メデューサ「アザミ」の記憶をヒビヤに伝えます。
化け物であり、人間に絶望しながら生きてきたアザミ。そんな彼女が「ひとりで生きていこう」と辿り着いた森で出会ったひとりの青年とは……。
- 著者
- ["佐藤 まひろ", "じん(自然の敵P)"]
- 出版日
- 2015-06-27
第7巻は、マリーの祖母にしてメデューサ、メカクシ団やモモなどが持つすべての能力の源泉、アザミの物語です。とうとう能力や、第2巻で貴音を「エネ」にした張本人、第4巻でメカクシ団を殺害した黒幕について明らかになる序章といったところでしょうか。
見どころは、アザミと人間・ツキヒコの純愛ですね。『カゲロウデイズ』の中でも恋愛色が特に強い巻となっています。ツンデレで自分の気持ちに鈍いアザミと、素直すぎるツキヒコ……ふたりが結ばれるシーンは必見です。
寿命の差に不安を覚え始めたアザミに話しかけるのは、彼女の中に存在する蛇でした。蛇が提案した老いや死さえも超越する「終わらない世界」を作り、家族みんなでそこへ行こうと考えるアザミですが……。
そして舞台は再び現在へ。シンタローがヒビヤを見つけ、「目をかける」少女・アヤノと出会います。一方、コノハを見かけ追いかけてきたモモとエネ、そしてコノハと一緒にいたカノが見つけたものとは……!?
- 著者
- 佐藤 まひろ
- 出版日
- 2016-03-26
とうとう黒幕の正体が明かされ、なぜキドたちに能力が付与されたのかも分かる重要な第8巻。それらについてはぜひコミックスで読んでいただくとして、さらに衝撃の展開が第8巻には待ち受けています。ヒヨリの身体を乗っ取った黒幕によって、キドが殺されてしまうのです。
キドの死体を見つけたカノの口から語られる、キド、セト、カノ、そして姉のアヤノの温かい日の思い出には、胸が締めつけられるような思いにさせられます。死体となったキドに送られる、カノからのやさしい目線と言葉に、彼ら家族の愛を感じる巻となっています。
キド、カノ、セト、そして3人の「お姉ちゃん」であるアヤノの仲睦まじい幼少期を語るカノ。そんなカノのもとにシンタローとともに現れたアヤノをカノはなぜか冷たい目で見つめます。果たして彼らきょうだいに何があったのでしょうか?
そして、キドを殺した黒幕による第二の犠牲者が……!?
- 著者
- 佐藤 まひろ
- 出版日
- 2017-03-27
アヤノとキド、セト、カノとの確執が語られる第9巻。アヤノの気持ちも分かるし、3人の気持ちも分かるし、といった具合でどうしようもないやるせなさを感じさせます。マリーの存在が鍵であると改めて重要づけられる巻でもありますね。
また、第9巻のラストは衝撃の展開となっています。この衝撃はぜひとも読んで味わっていただきたいもの。楽曲や小説で「カゲロウプロジェクト」を味わっている方は二重の意味で驚かされることでしょう。「やられた!」という感じですので、ぜひ読んでみてください。
キドが死んだことを知らされたセトとコノハ。コノハはこれ以上友達を殺させないため動き出します。コノハと会ったエネは「遥」と呼び掛けますが、コノハは何のことか分からない様子。その言葉を聞いて悲しげなエネに蘇る、エネとコノハの過去とは……。
- 著者
- 佐藤 まひろ
- 出版日
- 2017-10-27
まさかの貴音と遥の過去編第二弾が収録されている第10巻。『カゲロウデイズ』はループものなので、第2巻とはまったく別の出会い方、距離の縮め方をしているふたりを見ることができます。第2巻が貴音中心だったのに対して、第10巻では遥を中心にしているので、遥というキャラクターをより身近に感じさせます。
また、シンタローも関わってくるので、第2巻、第3巻を読んでいる人はそこにアヤノがいないことに寂しさを覚えるのではないでしょうか。改めて、「前」との違いを痛切に実感させるのが第10巻です。
そしていよいよ、アヤノと黒幕の直接対決!というところで幕を閉じる第10巻。止まらない絶望に、少年少女たちはどう立ち向かっていくのか、第11巻も必見です。
ついに、ヒビヤに憑依した冴える蛇とアヤノの直接対決となった11巻。そこでさまざまなことが明かされます。
そもそも蛇という存在はかつてメデューサによって「願い」を叶えるために生み出された存在。本能として願いを叶えることがインプットされており、その間は自我を保っていられるものの、願いが叶ってしまうと消え去ってしまうのでした。
そしてそれを理不尽だと思った冴える蛇は、願いを終わらせないことを考えるのです。そのすべての源流である絶望を絶やし続けなければ、自分も存在し続けられると考え……。
- 著者
- 佐藤 まひろ
- 出版日
- 2018-03-27
さらに冴える蛇は、それと同時に、願いを求める主を必要としています。その器たるものは、生まれながらに世界から嫌われ、大きな絶望を持っている人物でなくてはならないと語ります。そしてそれこそが、マリーなのです。
そこからの展開は、冴える蛇の手のひらの上。彼の思い通りにことが運んでしまいます。
しかし、やられてばかりもいられません。一行は、マリーをメデューサとして目覚めさせることを考え始めるのです。主である彼女からの命令で、冴える蛇をおびき寄せるという寸法です。
また、その一方でシンタローが何やら不安な動きを見せて……。
『カゲロウデイズ』はループものなので、同じキャラクターでも違う背景や違う過去を持っています。漫画における2回目のループはどのように収束するのか、注目どころです。