『まったく最近の探偵ときたら』は「電撃マオウ」で連載中の漫画です。今や落ちぶれた名探偵のもとへ探偵志望の女子高生が押しかけて、はちゃめちゃなやり方で奇妙な事件を解決していく探偵コメディ。 2025年7月にTVアニメ化が決定している本作の魅力について、原作漫画の内容をご紹介しながら掘り下げていきます。

『まったく最近の探偵ときたら』は月刊誌「電撃マオウ」で連載中のコメディ漫画です。作者は五十嵐正邦。既刊16巻で最新の第16巻は2025年9月27日に発売されました。シリーズ累計発行部数は90万部を突破しています(2024年8月時点)。
本作は落ちぶれた中年探偵のもとへ、探偵志望の女子高生が押しかけ助手として転がり込んで、数々の事件を機転や腕力で解決していく探偵モノです。探偵を題材にしているものの、ミステリー要素よりも主人公を筆頭とする変人をメインとしたコメディ漫画となっています。
2016年の連載開始から安定した人気を誇っており、AnimeJapan主催の「アニメ化してほしいマンガランキング 」では2020年と2021年に2年連続ノミネートされました。人気に推されて、第9巻発売時にはボイスコミック化もされています。
そんな『まったく最近の探偵ときたら』は、2025年7月1日から9月16日にかけてTVアニメ全12話が放送されました。数年越しとなるファン待望のアニメ化です。本作はギャグ作品なので、原作漫画をまったく知らなくても楽しめますが、登場人物の関係や魅力を抑えておくとより面白く見られるはずです。
名雲桂一郎(なぐもけいいちろう)は「いささか刺激が足りなかったかな?」の決め台詞で一世を風靡し、日本で知らぬ者はいない天才高校生探偵――でした。華やかな活躍も今は昔。月日の経過は残酷で、35歳となった名雲はすっかり落ちぶれてしまい、今では自宅兼探偵事務所の家賃を滞納するほど困窮していました。
そんな中、女子高生の中西真白(なかにしましろ)が名雲のもとを訪れます。探偵志望の真白は強引に助手の位置に収まり、寂れていた名雲探偵事務所ににわかに活気が戻ってくるのでした。ところが持ち込まれる依頼は珍事件に怪事件、奇妙な変人(名雲と真白を含む)ばかり……。
本作は既刊16巻なだけあって登場するキャラクターが結構多いです。ここでは主要キャラクターに絞ってご紹介します。
主人公は名雲桂一郎。昔は実力も知名度もある名探偵でしたが、今現在は見る影もない、いわゆる「元天才少年」です。年齢は35歳で世間的には働き盛りの中年ということになりますが、本人曰く若いころの反動が出てしまって、信じられないくらい老いぼれています。
腰痛に老眼、難聴……加齢に伴うありとあらゆる肉体の衰え、おっさん特有の知識・流行の更新について行けずに苦しむ一方、名探偵として名をはせた推理力だけはいまだに健在です。
アニメで名雲を演じるのは、『Fate/stay night』アーチャー役や『呪術廻戦』両面宿儺役で有名な諏訪部順一です。ボイスコミック版からの続投。
中西真白(なかにしましろ)は本作のヒロインです。とある過去の出来事で名雲に憧れを抱いて、押しかけ助手になった女子高生。若いせいか名雲より現代の常識があるものの、探偵志望なわりに頭脳よりフィジカルが目立ちます。
実は作中最強レベルの戦闘能力の持ち主。真白は謎の外国人コーチに10年師事した経験があり、ヒロインにあるまじき顔芸を疲労したり、腕力で犯罪者や事件を物理的に粉砕したりします。
アニメでの真白役は、『鬼滅の刃』甘露寺蜜璃や『五等分の花嫁』中野一花で知られる花澤香菜です。
そして準レギュラーの根津太郎。正式な名雲探偵事務所の一員ではありませんが、真白がヤクザ事務所を壊滅させた際、彼女の強さに惚れ込んで舎弟になりました。それ以来、たまに事務所の仕事の下働きのようなことをさせられています。声優は『鬼滅の刃』時透無一郎で有名な河西健吾です。
アスナロこと、翌檜(あすなろ)ユウは現在人気を博している「アスナロ探偵事務所」の天才高校生探偵。かつて活躍していた名雲に憧れて探偵になった、という逸話があります。一人称は「某(それがし)」で、日常のどうでもいい細かいことを気にして「妙だな……」と呟く癖の強いキャラです。
名雲が落ちぶれたことも知っていますが、今でも非常に尊敬しており、何かと気にかけていて仕事を持ち込むこともあります。アニメで演じるのは山口智広です。
風巻ハナはアスナロを「マスター」と呼ぶアスナロ探偵事務所の助手。さまざまな職業を経験している経験豊富で有能な女性で、その能力の高さは名雲にも一目置かれています。高校生のアスナロや真白に比べると大人なためか、年齢や外見を気にする一面も。アニメでハナを演じるのは平野綾。
星野アズハは名雲探偵事務所の1階下に住んでいる、マッドサイエンティストな女子大生。独特な感性による言動や発明品で名雲たちを助けたり苦しめたりします。実は彼女の母親と名雲は古い知り合いで、物語に深く関係が……。
他には名物というか、変人枠で「ヤベェおじさん四天王」と呼ばれるキャラクターたちが登場します。乳首試食おじさん、十字(クロス)胸毛おじさん、ロープ大好きおじさんの3人に加えて、名雲が厚着挙動不審おじさん扱いされて4人。アニメでは杉田智和が3人兼任で演じます。
漫画『まったく最近の探偵ときたら』は主人公が探偵で、探偵事務所に依頼を持ち込む人々のお話が描かれますが、ミステリー要素はほとんどないギャグ漫画です。事件や依頼人がおかしい場合もありますが、特に目立つのは名雲と真白の漫才みたいなやりとりでしょう。
こういうギャグ作品はボケ役とツッコミ役が固定されがちですが、名雲と真白は一方がボケればもう一方がツッコミに回るという、それこそ熟練の漫才芸人のようにころころ入れ替わります。
2人のボケはある程度傾向があって、名雲はIT音痴や最新の流行に疎いおじさんムーブ、真白は顔芸や理解不能な動きによるシュールなボケをするのが特徴。名雲の無知っぷりはある種のボケ老人レベルですし、真白は状況に応じた偉人の格言とセットで偉人の顔真似をしてくるので思わず吹き出します。
さらにごくまれに2人(あるいはどちらか)が冴えた思考を見せる場面があ出てきますが、大抵はキレキレの推理をだいなしにする大ボケの前振りでしかありません。
主人公格なので2人に注目しましたが、他にもおかしい(面白いという意味で)キャラクターはかなり多いです。ヤベェおじさん四天王をはじめとして、バー「TONTO」の変なマスターと客など、存在が出オチになっている者もいます。
よくギャグ漫画家はホラーが上手いと言われますが、本作のホラー描写もかなり秀逸です。インパクト抜群のハイテンションギャグやシュールギャグに混じって、ゾワッとするタイプのホラー回が混ざっていたりするので、読んでいると落差に驚きます。単独だとかなり精神に来ますが、コミックスでまとめて読むとギャグで中和されるのでご安心ください。
随所にはさまれるギャグと濃いキャラ、たまにあるホラーが本作の魅力です。それと女性キャラクターが真っ当に可愛い(顔芸担当の真白含む)のもポイント。
『まったく最近の探偵ときたら』の魅力が詰まったエピソードをいくつかご紹介していきます。まずはたまにある、ミステリーらしいお膳立てのされたお話です。
とある資産家主催の食事会に招待された名雲。場所は人里離れた別荘「絶叫館」でした。過去に凄惨な大量殺人事件の起きた現場だけに、名雲は探偵の本能(?)で胸のざわめきを覚え、真白は外泊と憧れのミステリー展開に大はしゃぎします。
仮面をしたあやしい使用人、因縁のある各界の著名人たち、2人目の探偵アスナロの合流。そして次々建てられるフラグに事件の予感が高まる中、先走った真白のせいで外界と別荘を繋ぐ吊り橋が破壊され、絶叫館は陸の孤島と化してしまいます。
ベタすぎるミステリーの舞台となった絶叫館で巻き起こる惨劇――とはほど遠いありがちな展開のパロディと、そして予想外すぎる名雲のざわめきの正体に笑わずにはいられません。
- 著者
- 五十嵐 正邦
- 出版日
本作にはラブコメの波動を感じるエピソードもあります。
少し前の依頼でマキが一時的に名雲の助手になって以来、そこはかとなくジェラシーを感じている真白。大人の女の魅力という点で負けているのが悔しくて、せめて名雲と同じブラックコーヒーを飲もうとするものの上手く行きません。
そこで真白は星野アズハの発明品を頼ります。肉体改造の提案を断りつつ、苦みを感じなくなる苦味鈍化薬を都合良く手に入れたところまでは良かったのですが、それには厄介な副作用がありました。近くの異性が魅力的に見える惚れ薬の効果があったのです。
元より名雲に憧れている真白には効果抜群。「恋は盲目」の言葉通り、普段は情けないとしか思えない名雲の中年特有のだらしない仕草までが愛おしく感じてしまい、乙女チックに狼狽える真白の可愛さを楽しめます。
一番の見所は惚れ薬の効果が切れてからの反応でしょう。勢い全振りの天丼ネタでかき消しきれない、淡い感情を想像してニヤニヤしてしまいます。
- 著者
- 五十嵐 正邦
- 出版日
『まったく最近の探偵ときたら』はほぼ1話完結のギャグ作品ですが、シリアスがないわけではありません。名雲と真白の過去に関わる話で断片的に語られる、犯罪者ハーメルンの起こした「ハーメルン事件」および彼の組織「コーシュ」関連のエピソードは比較的真面目なものが多いです。
例えば名雲の過去を知る記者の話。
17年前に名雲を取材していた元記者の東(あずま)は、久しぶりにテレビを通じて名雲の健在を知ってコンタクトを取ります。
東の知る名雲とは、ほんの短い間に閃光のような輝きを放った若き逸材でした。彼は全盛期の名雲と今の名雲を重ね合わせて感慨にふけり、そしておっさん化して頼りがいのなくなった姿に失望するのですが……。
ところどころギャグをはさむことで茶化してきますが、往年の名雲の凄さと過去の事件について非常に興味をそそられるエピソードです。名雲の実力と衰え、くだらなさとシリアスさ加減が見所。
- 著者
- 五十嵐 正邦
- 出版日
最後におぞましい語り口と画力に殴られるホラーエピソードをご紹介しましょう。
ある日、名雲探偵事務所を訪れた由貴と名乗る女性。彼女は自宅で朝目覚めると恋人さとるが死んでおり、彼の幽霊が見えるようになったと語りました。由貴の依頼は名雲に犯人を見つけて欲しいというもの。とはいえ、すでに目星はついていました。
最近インターネット上で炎上中の配信者「Q祖」。動物嫌いの彼は殺鼠剤で野良猫を一斉駆除すると予告して炎上したのですが、ほぼ同時期にさとるは近所で、野良猫に餌を与えるQ祖らしきジャケット姿の男を目撃していたのです。
由貴がQ祖を疑う理由は他にもありました。彼女とさとるは自宅に侵入した何者かに薬を盛られたようなのですが、さとるが倒れた原因は動物の駆除薬でした。現場に変装用と見られるカツラとジャケットが脱ぎ捨てられていたり、ホームセンターで駆除薬を購入するジャケットの人物が目撃されていたり……。数え切れないほどの状況証拠がありました。
流れで由貴の依頼を引き受けることになりますが、実は名雲も真白も幽霊となったさとるが見えていました。恋人の自分を心配し、見守ってくれていると語る由貴の話とは裏腹に、ほとんど悪霊と化して窓に張り付くさとるの姿が……。
「こいつに殺された
許さないゆるさナイ」(『まったく最近の探偵ときたら』14巻より引用)
- 著者
- 五十嵐 正邦
- 出版日
『まったく最近の探偵ときたら』は2024年8月にTVアニメ化が発表され、2025年7月1日から9月16日まで全12話が放送されました。地上波はTOKYO MX、AT-Xなど、ネット配信はABEMAで行われています。
TVアニメの制作を行うのはライデンフィルムです。これまでにアニメ『東京卍リベンジャーズ』シリーズ、2023年版アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』を担当した実力のある制作会社です。
原作漫画は長期連載なこともあって、初期と最近では絵柄が変化しています。アニメ版は比較的最近の絵柄に寄せられているため、初期からの原作読者も新鮮な気持ちで視聴出来るでしょう。
『まったく最近の探偵ときたら』のアニメ化で気になるものと言えば、ハイテンションギャグをどこまで映像に落とし込めるのかというところ。実際に放送されたアニメでは、真白の顔芸も、ちょっと放送コードに引っかかりそうなヤベェおじさん四天王も健在でした。
ちょっと危なそうなのは他作品のパロディですね。『古畑任三郎』や『金田一少年の事件簿』などの特定人物を連想させる顔芸は、穏便な表現に置き換えられるかも知れません。とはいえ、PVに「モンハン」パロディ装備が映っているので、そのままな可能性も充分あります。
公式X(旧Twitter)で告知されていたとおり、アニメは原作の人気回を中心に厳選したエピソードを映像化する構成でした。原作漫画の順番通りではなく、1クール全12話に主要エピソードがまとめられています。第2期の制作は、2026年6月時点で発表されていません。
ストーリー重視ではないギャグ漫画だからこその放送形態になりそうですが、逆に映像化されないエピソードもそこそこ出てきそうです。アニメ『まったく最近の探偵ときたら』がきっかけで本作に興味が出た方は、原作漫画に触れるのもおすすめです。
作者の名前は五十嵐正邦(いがらしまさくに)です。詳しいプロフィールは非公開ですが、北海道釧路市出身であることはわかっています。
獨協大学の卒業生。2007年、大学1年生の時に集英社主催の第67回「赤塚賞」で佳作を受賞し、翌2008年「週刊少年ジャンプ」に読み切り漫画『ダストシューターズ!!』が掲載されて商業デビューしました。
その後は2011年の大学卒業まで少し期間が空き、「週刊少年マガジン」の連載を経て、2016年に「電撃マオウ」で『まったく最近の探偵ときたら』を連載開始。
他の代表作として2019年にTVアニメ化もされた『川柳少女』、2026年のTVアニメ化が予定されている『真夜中ハートチューン』があります。
- 著者
- 五十嵐 正邦
- 出版日
五十嵐正邦が手がけるのは主にコメディ作品ですが、これまでに発表したものはすべてタイプの違うものばかり。『まったく最近の探偵ときたら』はハイテンションギャグ、『川柳少女』はややシュール寄りの4コマコメディで、『真夜中ハートチューン』は正統派のラブコメです。
軽妙なやりとりは共通しているため、『まったく最近の探偵ときたら』が好きなら他の作品も楽しめるでしょう。
『まったく最近の探偵ときたら』はKADOKAWA公式のWebコミック配信サイト「カドコミ」で最新話が無料公開されています。他には漫画アプリ「ピッコマ」で途中まで基本無料で読むことも出来るので、気になった方はどちらか手軽な媒体で読んでみるのをおすすめします。