突然のアニメ化に衝撃!ジャンプラ発の限界4コマ漫画『限界OL霧切ギリ子』の魅力を紹介

更新:2025.8.24

『限界OL霧切ギリ子』は「少年ジャンプ+」のインディーズ枠で連載されている4コマ漫画です。超手抜きの限界メシを軸とした、OLたちのどこかシュールでおかしな日常が特徴。 独特な作風で人気を集めていますが、2025年5月に突然アニメ化発表とインターネット上での公開がスタートしました。 アニメ化まで突拍子のない『限界OL霧切ギリ子』のどこがどう面白いのか、作品の内容に触れながら魅力をご紹介していきます。

小説も漫画も映画も基本雑食な、しがない物書き。温故知新で古典作品にもよく触れるようにしています。
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3行でわかる作品と記事の内容

  • 漫画アプリ「少年ジャンプ+」で連載中のインディーズ漫画
  • 公私ともに限界なOLたちの手抜き限界メシやシュールな日常が描かれる
  • 正式連載作品ではないのにアニメ化決定&即公開

インディーズを突っ走る限界4コマ漫画『限界OL霧切ギリ子』

『限界OL霧切ギリ子』は漫画アプリ「少年ジャンプ+」で連載されているインディーズ作品です。作者はミートスパ土本(つちもと)。

元々は集英社運営の漫画サイト「ジャンプルーキー!」に投稿されていましたが、2024年4月期に連載争奪ランキングで1位を獲得して、2024年9月からインディーズ連載がスタートしました。初期は縦読みでしたが、横読みに移行したため、「少年ジャンプ+」で検索すると『限界OL霧切ギリ子』が2つ出てくる状況になっています(初期のものは縦読み版として区別)。

本作は公私ともに忙殺されて生活がカツカツな限界OL主人公が、とにかく食べるためだけに超手抜き限界メシに手を染めるギャグ4コマ漫画です。主人公以外にもアクの強いキャラクターが多く、たった4コマで繰り広げられるキレのある内容が癖になります。

そんな『限界OL霧切ギリ子』ですが、2025年5月28日からショートアニメのネット配信が始まりました。各話1分という短い動画ながらキャスティングが非常に豪華、良くも悪くも原作そのままのテイストで注目されています。

漫画『限界OL霧切ギリ子』は軽妙なテイストが癖になる限界コメディ漫画!【あらすじ】

仕事に疲れた(疲れてなくても)霧切ギリ子や同僚OLたちによる、限界トークと超手抜きな限界メシが披露されるシュールな日常系ギャグ漫画。調味料を合わせただけ、なんなら素材のみ、アルコールがあればそれでいい酒クズ……それらのいずれか、もしくは全部を引っくるめたある意味ギリギリな生活が描かれます。

漫画『限界OL霧切ギリ子』登場人物紹介

本作は主人公の身の回りがメインの日常コメディながら、登場人物が結構多いです。なんなら主人公と直接絡まない準レギュラーがいるほど。そして1人残らずクセ強なのが凄いです。

とりわけ印象的なのが主人公の霧切ギリ子。メガネをかけた33歳のOLで、本来はちゃんとした料理を作れるものの、劇中は常に限界状態でやる気が出ないため限界メシばかり食べています。サブカル趣味があるらしく、アニメや漫画ネタを口走ることがしばしば。

ギリ子に勝るとも劣らないのが同僚の市川アヤと姫草ユリの2人。

市川アヤは一見すると有能そうな34歳美人OLです。まともに料理を出来る腕前があって限界メシは作りませんが、隙あらば常に飲酒する酒クズ。勤務中であろうと、白湯に見せかけた酒(?)を水筒で持ち込んでこっそり飲んでいます。

姫草ユリは少し年下で29歳。体育会系出身で豪快な性格をしており、まともに料理を作ることが出来ない、いわゆるメシマズです。本人も自覚があるため、自炊らしき行為はご飯を炊く以外しません。好きなふりかけさえあれば満足する大雑把な人物。

鶴原ヒメは途中から登場する新人OL。母親がフィンランド人な影響か190cmの高身長で、可愛いからという理由で「ヒメ」と呼ばれることを好んでいます。自炊の腕前は即席麺を作れるくらい。プライベートではバンドのドラムを担当しています。

OLたちの日常とはまったく関係なく出てくるのがバンド「毒マグロ」の妻木トシと音丸キュウ。彼らはヒメのバンド仲間でもあります。

妻木トシは音丸とはルームシェアしており、担当はベースと料理と洗濯。料理がかなり上手いだけでなく凝り性なため、限られた食費と食材をやりくりしつつ、美味しくかつバラエティに富んだメニューを見せてくれます。彼が作中で一番まともに料理していると言って良いでしょう。

音丸キュウはボーカルと掃除、洗い物担当。言動と食の好みがほぼ男子学生な人物です。それでも妻木とはいいコンビ。

漫画『限界OL霧切ギリ子』の魅力

本作は限界OLの食生活にフォーカスを当てた4コマ漫画です。調理手順やレシピらしきものも出てくるので、ジャンル的にはグルメ漫画と言えないこともないかも知れません。が、あまりにも限界1人飯すぎるので、「美食」要素のないこの作品をグルメ漫画と呼ぶのはなんらかの冒涜に当たるような気がします。しかし、それが面白いのです。

食パンに塩と味の素をかけただけのものを食う。チンしたご飯に炒飯の調味料をぶち込んで混ぜただけのものを「生チャーハン」と呼ぶ(ただの塩系の卵かけご飯)。ホカホカご飯に天かすをふりかけ、うなぎのタレをかけた天丼の下位互換「天かす丼」などなど……。

意識が低いにもほどがあるものの、疲れ切った社会人なら共感出来る限界メシの解像度に共感し、思わずくすりと笑ってしまいます。全然グルメじゃないグルメ漫画なのが本作の魅力なのです。

その一方でたまに出てくる実用的なお手軽アレンジレシピや料理系の雑学、考察が意外と興味深いので、実は料理要素も侮れません。後述しますが、作者の本職がお酒の専門家だからかアルコールの描写がガチです。

またちょくちょく挟まれるサブカルネタも見逃せないところ。『ジョジョの奇妙な冒険』や「バキ」シリーズは序の口で、異端の料理漫画『鉄鍋のジャン!』なんかも飛び出します。

というか、そもそも登場人物の名前の由来がかなりマニアック。作者が夢野久作好きらしく、例えば市川アヤは『瓶詰地獄』の市川アヤ子、姫草ユリは『少女地獄』の姫草ユリ子……。

ちょっと調べるだけで、名前がほぼそのままなことがわかります。他に『あやかしの鼓』や『空を飛ぶパラソル』にも元ネタがあるので、気になった方はぜひ調べてみてください。ちなみにこれらの作品は、著作権が失効した作品を公開するサービス「青空文庫」で読めます。

この他にも同性愛者や男の娘が出てくるなど、単なる4コマグルメ漫画に留まらない手広くてディープな作風が読者の心に突き刺さり、インディーズらしからぬ人気を集める結果となっているのです。

漫画『限界OL霧切ギリ子』おすすめエピソード:食パンの大トロ【第1話ネタバレ注意】

ギリ子の限界メシのお供は大抵ご飯か食パンです(なければないでどうにかしますが)。そんな中で、「言われてみればそうかも知れない」と思えるうんちく(?)をご紹介しましょう。

閉店ギリギリでスーパーに駆け込んだギリ子。時間が遅すぎて半額惣菜すらないのを見た彼女は、主食や副菜に出来る食パンや卵、納豆などとりあえずあれば何かと誤魔化しの利く食品(本人曰く、思考停止セット)を買い求めます。

その流れで登場するのが「食パンの大トロ」概念。カット済みで包装されたごく普通の一斤の食パンですが、ギリ子はその食パンの真ん中にある2枚を大トロと呼びます。内側は乾燥しづらく、水分量が保持されているというのが理由。適度に水分を含んでジューシーなため、他より美味しい希少部位の大トロと表現しているのです。

市販の食パンがしっとりふわふわしているのは、ほど良く水分を含んでいるからです。水分は空気に触れた部分から失われていくので、同じパンでも中心に近い方が柔らかいのは充分あり得る話。ただ、市販品でそこまで差が出るとは思えませんが……。

ちなみにギリ子というか作者がおすすめするのは、8枚切りの食パンだそうです。

漫画『限界OL霧切ギリ子』おすすめエピソード:回転寿司のこだわり【第5話ネタバレ注意】

うんちくとはまた別に、グルメ漫画らしく食へのこだわりが語られる場面もまれに出てきます。例えば第5話で、同僚同士で回転寿司に出かけた時の一幕。

ひとしきり食べた様子のアヤとユリを前に、ギリ子は突然1人で語り始めます。ちなみにこの話の1コマ目をよく見ると、アヤが平常運転でビールをジョッキで煽り、お米大好きユリはたらふく寿司を食べて思い思いに過ごしている様子が見て取れます。

ギリ子が話のネタに選んだのはエビ天握り。握りのうち1つは塩をかけ、残りは穴子用のタレをかけて1皿で2通りの味を楽しむのだと熱弁します。寿司といえば醤油がお決まりですが、ネタが天ぷらなら塩かタレの方が合うというのはちょっと納得。

ギリ子の持論はさらに白熱し、いくら軍艦巻きととろサーモンのライフハックまで展開されます。

特にいくら軍艦巻きは必見。いくらに付きもののきゅうりの薄切りで満足感が削がれているとして、いくらを片方にまとめた上できゅうりオンリーの方にガリを追加し、ガリ軍艦巻きに仕立て上げるのは目から鱗が落ちました。

そしてこの話で面白いのは、同席者がいるのにギリ子が一方的に話し続けているところだったりします。

漫画『限界OL霧切ギリ子』おすすめエピソード:やべー女【第9話ネタバレ注意】

本作の登場人物はだいたいおかしいですが、頭一つ抜きん出ているのが殿宮アイです。彼女はやばさの方向性が他とは一線を画しています。

ギリ子は話の構成の都合でいつも限界ですが、本当に常に限界なわけではありません。出かける気分になったギリ子は第9話では馴染み……というかアパートの1階にあるバーに繰り出すのですが、常連客のアイがそこで初登場します。

アイがどれくらいやばいかと言うと、偶然を装ってギリ子に会うためだけに、週5でバーに通い詰めているくらいやばいです。さらに1つ前のエピソードでギリ子に怪文書を送りつけたことが発覚、ギリ子へ一方的かつ重すぎる愛を抱いていることがわかります。

「一緒におばあちゃんになって一緒のお墓に入ろうよ!」(『限界OL霧切ギリ子』第9話より引用)

片想い(しかもギリ子は拒否)の時点でここまで覚悟が決まってる辺りからも、アイのぶっ飛び加減がおわかりいただけるでしょう。

この回の限界メシ要素は控えめ。バーのおつまみで出される、とんがりコーンのクリームチーズ詰めは手軽ながら絶対に美味しいやつです。おそらく本職の知識。他にも「毒マグロ」妻木が手抜き気味に作る豚バラ肉巻きピーマンは、簡単に真似出来るおすすめレシピです。

漫画『限界OL霧切ギリ子』おすすめエピソード:水割り【第10話ネタバレ注意】

作者が本職なだけあって、本作のアルコール描写はとても正確です。力の入れようはかなりのもので、本作では4コマ1つで1ネタ消化するのが基本なのに、水割りを語るだけで4つも費やしているほど。バーテンダー折戸にいなのコメントに関しては、十中八九作者が普段から思っていることでしょう。

水割り(に限りませんが)で大事なのはまず氷。家庭用の製氷機では不純物が混じって溶けやすいのはよく知られていますが、そこに差し挟まれるプロならではの経験談が秀逸です。コンビニか専門店の板氷を買えば解決……にはならず、巨大な氷塊を板状に切る行程があるため、板氷が中心寄りなのか外側寄りなのかで当たり外れ(不純物の多さ)が発生するとか。

氷を溶けにくくする表面処理にグラスへ詰める氷の量や水の種類、ステア(バースプーンでの混ぜ方)の好みなど、情報量が適当すぎる限界メシとは雲泥の差です。これだけでも情報過多なのに、興が乗ったにいなはさらに畳みかけてくるのですから驚きます。

ちなみに美味しい水割りの作り方を聞いたところから始まるのに、結論が「目の前で人に作ってもらうから美味しく感じる」というのがたまりません(最初に結論を言ってるのですが)。

異例のアニメ化を果たした『限界OL霧切ギリ子』

「少年ジャンプ+」で順調に人気を集めていた『限界OL霧切ギリ子』ですが、2025年5月27日に突然アニメ化が発表されました。しかも公開は翌28日からという前代未聞のスピード感。そもそも正式連載ではないインディーズ作品のアニメは異例中の異例です。

公開媒体はXアカウント(@giriko_offical)とTiktokアカウント(@genkaiolgiriko_offical)の「「限界OL霧切ギリ子【ショートアニメ公式】」、YouTube「ジャンプラチャンネル」で、各話1分のショートアニメ形式となっています。火曜日を除く平日(火曜は総集編)の19時更新、全32話予定。

制作を担当するのは大日本印刷株式会社。いわゆる一般的なアニメとは違って、原作のコマを動かす独自手法「ライトアニメ」で映像化されています。

ライトアニメは動きの少なさがネックですが、『限界OL霧切ギリ子』はそもそも大きく動く作品ではないので問題なし。一部エピソードのカット以外はほぼ原作通りで、フルカラーで声が当てられたことによって、より一層面白さが増しています。グルメ作品とは口が裂けても言えない限界メシも、アレすぎるキャラクターの言動も良くも悪くもそのまま。

声優は霧切ギリ子役が清水香里、市川アヤ役は柚木涼香、姫草ユリ役を小若和郁那が担当しています。諸々の事情で他の名物キャラクターが出て来ないのは残念ですが、3人のキャスティングがぴったりハマっているのでファンなら必見です。特にボイスが付いたアヤの酒カスっぷりと艶っぽさの破壊力は尋常ではありません。キュッ。

作者「ミートスパ土本」について

『限界OL霧切ギリ子』の作者はミートスパ土本です。

詳しい経歴は非公開ですが、インディーズ漫画を執筆しながら、愛知県で「barGENESIS」というバーを経営しています(見る人が見れば看板の意味がわかります)。レトロゲームをテーマとした店作りが特徴です。バーがオープンしたのは2011年6月で、ミートスパ土本は経営と並行して、遅くとも2018年頃には同人活動を行っていました。

ミートスパ土本のアカウントを遡っていくと、『限界OL霧切ギリ子』の作風はほぼ本人の趣味嗜好の延長のようです。作中の限界メシも普段から作っていたかはわからないものの、作っていたこと自体は事実。

漫画なのでギリ子たちは当然フィクションですが、作者の経験を踏まえていると思うと味わいがまた変わります。なお、バーエピソードに登場するアルコールやおつまみ類は、「barGENESIS」に行くと出してもらえることがあるようです。

ちなみにミートスパ土本はスマホゲーム『メギド72』の大ファン。特にフルカスというキャラクターがお気に入りで、ペンネームはフルカスのスキル「ミートスパイク」が由来です。そのフルカスの声優はショートアニメ版でギリ子役の清水香里だったりしますが、指名したわけではないとか。

ミートスパ土本の連載経験は「ジャンプルーキー!」時代から数えても1年そこそこです。『限界OL霧切ギリ子』はまだまだ続くでしょうし、本業との兼ね合いも関係しそうですが、いずれ正式連載への昇格や別作品の展開もあるでしょう。今後の活動が楽しみです。


『限界OL霧切ギリ子』は現在も連載中。「少年ジャンプ+」で全話無料公開されているので、アニメで興味を引かれた方は、ぜひそちらから原作漫画も読んでみてください。

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