『ふたりソロキャンプ』は週刊誌「モーニング」およびWeb漫画配信サイト「コミックDAYS」で連載されているキャンプ漫画です。 ソロキャンプに焦点を当てた内容でありながら、主人公とヒロインを導きながら2人それぞれ過ごすという一見奇妙な設定が特徴。豊富な知識に裏打ちされたキャンプ描写の評価も高く、シリーズ累計発行部数は300万部を突破する人気作品です。 2025年にはTVドラマ化、TVアニメ化のメディアミックスがされるなどますます好調な漫画『ふたりソロキャンプ』。なぜそこまでの人気を獲得しているのか、原作漫画から魅力を紹介していきます。

漫画『ふたりソロキャンプ』はソロキャンプ(1人キャンプ)がテーマの日常系ラブコメ漫画です。作者は出端祐大。2018年10月から2023年2月にかけて「イブニング」で第1部が掲載され、2023年12月からは「モーニング」に移籍して第2部が連載中です。単行本は既刊24巻で、最新の第24巻は2026年6月23日に発売されました。Web漫画配信サイト(アプリ)「コミックDAYS」でも配信中。
本作は中年ソロキャンパーの主人公と、初心者ソロキャンパーのヒロインが同じキャンプ場でそれぞれキャンプを楽しみつつ、足りない部分を補い合う物語となっています。
キャンプ歴20年を超える作者の知識に基づいたキャンプ表現がとてもリアルで、同じキャンプ漫画『ゆるキャン△』とは違ったアプローチが魅力。キャンプ経験者や未経験者を問わず人気があり、シリーズ累計発行部数は330万部に達しています(2025年7月時点)。
惜しくも受賞は逃しているものの、2021年の第45回「講談社漫画賞」最終候補作にノミネートされるなど、業界での評価も高いです。
そういった人気と評価に押されて、漫画『ふたりソロキャンプ』は2025年にTVドラマ化&TVアニメ化と2度のメディアミックスが行われました。
生粋のソロキャンパー樹乃倉厳(きのくらげん)。1人静かに時間を過ごせるキャンプを愛していた彼はある時、ソロキャンプに挑もうとする超初心者キャンパーの草野雫(くさのしずく)と出会います。
ろくに知識もないのにキャンプ道具を持たず、挙げ句の果てに受付時間を大幅に遅れて泊まれなくなってしまった雫。常識的に彼女を見捨てられなかった厳は、不本意ながら手助けしますが、その上でソロキャンプをするのはまだ早いと突き放しました。
しかし、同時に厳の垣間見せたソロキャンプの醍醐味が、彼女を魅了します。雫は諦めるどころか厳に迫って、2人でするソロキャンプの約束を強引に押し切ってしまうのでした。そしてそこから奇妙な師弟関係と、2人で行う奇妙なソロキャンプが始まります。
主人公は34歳の樹乃倉巌。独自のキャンプ哲学を持つ生粋のソロキャンパーで、彼の信条は幼少期に亡くした父親の影響を強く受けています。孤独なキャンプを愛していますが、人付き合いが悪いわけではありません(ただし鈍感)。キャンプのやり方や道具に詳しい一方、キャンプ料理の手腕はいまいち。
ヒロインの草野雫は短大に通う料理が得意な女子大生です。基本的に礼儀正しいものの、少し押しが強いです。友人と行ったキャンプからソロキャンプに興味を持ちますが、知識はほぼゼロな初心者。興奮すると出身地・長崎の方言が出る癖があります。
物語は主に厳と雫の2人が中心となって描かれますが、たまに厳の友人の滝川彰人(たきがわあきひと) 、雫の友人である大空さや (おおぞらさや) や火野瑞希 (ひのみずき) が登場することもあります。
他には厳と昔、交際していた芹澤花夏(せりざわかな)なども……。
本作の魅力は主に、詳細なキャンプ描写とキャンプを通して変化する人間関係の2つです。
タイトルからわかる通り、『ふたりソロキャンプ』はキャンプに焦点を当てた作品です。作者自身がキャンプ好きなのもあって、細部にわたるまでこだわり抜かれた描写はとてもリアル。秀逸なのはベテランの厳が初心者の雫にあれこれ知識を伝えるという構成のおかげで、内容は専門的なのにキャンプ経験者でなくともわかりやすくて、なんとなく読んでいるだけで楽しめるのが素晴らしい。
雫が提示したへんてこルール「ふたりソロキャンプルール」も見事で、普通は2人以上になるとグループキャンプになってしまうところが、あくまでソロキャンプの体裁になっているのもポイント。必要なキャンプギア(道具)からテントの張り方、火起こしやマナーまで学べるので、初心者でも真似してキャンプの世界に入りやすくなっています。
- 著者
- ["出端 祐大", "イブニング編集部", "講談社"]
- 出版日
そして「ふたりソロキャンプルール」が育む関係もまた絶妙。つかず離れずな距離感で人間的成長とキャンパーとしての成長がしっかり描かれます。この人間関係の変化は2人だけで完結せず、彼らの友人たちにまで伝播していくのも面白いです。ストーリーが進むと、主人公抜きで友人がキャンプするエピソードも出てきます。
さらにキャンプになくてはならないのがキャンプ飯。キャンプ描写の一環ですが、厳は手の込んだ料理が出来ない設定なので主に担当するのは雫です。師弟(人間)関係に絡めて毎回色々なものが作られますが、限られた材料と調理器具を駆使した、とんでもなく美味しそうなキャンプ飯が登場します。
こういったグルメ要素は大抵作るのが難しいものばかりですが、本作の場合は最小限の持ち物を最大限活かすというキャンプの性質上、意外と再現出来るレシピが多いのも魅力です。キャンプ場でなければ出来ないものも多いですが、だからこそ自分でもやってみたくなるのです。
そのキャンプ場ですが、作中の登場するのはほぼすべて関東にある実在のキャンプ場。見る人が見ればわかる描写になっており、実際に現地に行く、いわゆる聖地巡礼をするファンも少なくありません(そしてキャンプ飯の再現も)。
このように『ふたりソロキャンプ』にはキャンプを軸にした魅力がたっぷり詰まっており、それが多くの読者を惹きつけています。
孤独を好む厳にとって、キャンプとはソロが基本。ソロ以外の楽しさがあるのを認めつつ、あえて荷物が制限される不便な徒歩のキャンプを満喫――したいところですが、雫の強引な約束を律儀に守って初の「ふたりでソロキャンプ」を実行します。
勝手に付いてこいとばかりにあからさまに邪険にする厳に対して、物怖じせず接する雫。何もかも初めてづくしの雫は何かと頼ろうとしますが、厳は最低限のことしか教えず、言外にソロキャンプの醍醐味を諭します。ソロキャンプとは試行錯誤の積み重ねであり、失敗の苦さも成功の喜びも、すべて自分だけのものだと。
認識の食い違いから2人は衝突してしまいますが、自分なりに厳を理解した雫は改めて、2人でそれぞれキャンプを楽しむための「ふたりソロキャンプルール」を提案します。
奇妙な出会いから始まった2人の師弟関係が、このエピソードから本格スタート。独特な距離感とソロキャンプの面白さを楽しめます。
「ふたりソロキャンプルール」の経緯がメインなのでグルメ要素はやや簡素ですが、それでも充分美味しそうですし、簡単な分真似しやすいです。
ちなみにキャンプ場のモデルはおそらく嵐山渓谷月川荘キャンプ場。
厳が雫とのソロキャンプにも慣れてきたころ、偶然キャンプにやってきた友人・滝川彰人と再会します。彰人は彼もまたソロキャンプを愛する男でした。
最初彰人は厳と雫の関係を誤解するものの、事情を聞いて理解。それどころか唐変木の友人と違って雫が厳に惹かれていることを素早く見抜き、厳には内緒でアドバイス役を買って出ます。
彰人は厳とまったく違う伊達男。彼のちょっとうさんくさい登場で雫も読者も思わず警戒してしまいますが、雫に明かした心の内や厳とのやりとりから、本当に友人を思いやっていることがわかります。
彰人が持つ人物像によって改めて厳が不器用ながら優しい男なのがわかる一方、厳と「かな」と呼ばれる女性との過去が匂わされる展開も……。
キャンプ飯は厳が単独ソロキャンプで食す、直火で炙るだけの缶詰グルメと紙コップ炊飯。缶詰はちょい足しだけですがとても美味しそうですし、紙コップとアルミホイルを組み合わせた紙コップ炊飯は、災害時などにも応用出来そうでとても実用的です。
モデルとなったキャンプ場は東京都の山のふるさと村キャンプ場。
- 著者
- 出端 祐大
- 出版日
高校の腐れ縁で大人になってもたまにつるんでいた厳と彰人。彼らはたまたま入った居酒屋で、思いがけず芹澤花夏と再会します。厳には覚えがなかったものの、彼女も同じ高校の同級生でした。
彼らは3人で会うようになり、そしてやがて厳と花夏だけでも会うようになり、いつしか交際する間柄になりました。自分の世界を持つ厳に対して、我の強い花夏にも似た一面があって、2人の仲はある時まで順調だったのですが……。当時まだ頑なだった厳は、ソロキャンプにだけは花夏を連れて行きませんでした。
ここでは厳と花夏は結局、紆余曲折を経て破局したとだけ語られます。彼女へのもう未練はないようですが、厳には心残りが1つだけありました。まだ雫にも明かしていない、密かで遠大な夢。
前後する話で父親との関係にも触れつつ、厳自身について掘り下げられるエピソードです。キャンプとの向き合い方や人生観など、様々なものが見えてくる味わい深さが魅力。
この回では回想のみですが、花夏は第5巻以降に絡んでくるのでそういう意味でも要注目。
キャンプ場のモデルは埼玉県の白岩渓流園キャンプ場です。
- 著者
- 出端 祐大
- 出版日
キャンプに熱中する雫に影響されたさやと瑞希も加わって、3人で初のコテージキャンプに挑みます。
コテージには考えられる限りあらゆる設備が備わっていて、高級な別荘といった雰囲気でした。アウトドアとは思えない快適さに浮かれる初キャンプ2名に反して、厳の指導で不自由なキャンプに慣れた雫はちょっと困惑してしまいます。
とはいえ拠点がテントとコテージという差はあれど、キャンプの本質は変わりません。まだ不慣れな雫が初心者2人と楽しむにはちょうどいいレベルと言えます。厳の指導とはまた違った、アクティビティ中心のコテージキャンプを覗き見出来るのが魅力です。
ほぼ女子会なのでキャンプ飯は普段よりお洒落。お手軽なのに美味しい自家製グリアにおつまみ向きの軽食など、比較的難易度が低いのも嬉しいところです。
最大の見所は大きく進展する厳と雫の2人の関係。友人がそばにいて、しかも厳がその場にいないという特殊な状況だからこそ可能な、本音を打ち明ける展開が見逃せません。
モデルになったコテージのキャンプ場は秋川渓谷リバーティオです。
- 著者
- 出端 祐大
- 出版日
漫画『ふたりソロキャンプ』は2025年に2つのメディアミックスが制作されました。1つは1月に放送されたTVドラマで、もう1つは7月から12月にかけて放送されたTVアニメです。どちらも地上波の放送は同じTOKYO MXですが、ネット配信はTVドラマ版がNetflix独占、TVアニメ版はAmazonプライムビデオなどで見られるという違いがあります。
TVドラマ版の主要キャストは森崎ウィンと本田望結。原作漫画に比べると年齢差を感じにくいキャスティングで、ラブコメ感が強調されています。キャンプ要素やキャンプ飯の再現もしっかり盛り込まれていますが、より初心者向けかつカジュアルな印象です。雫のサービスシーンはカットされているので、そういう点からも一般層を意識した作りと言えます。
キャンプ飯のリアクションをあえて漫画的にしている演出などが面白い一方、TVドラマ版各話が原作の1エピソードをなぞって制作されているため、若干テンポが悪いです。新規視聴者層にはおおむね好評ですが、原作ファンが見ると少し違和感があるかも知れません。
TVアニメ版は連続2クールで、2025年7月10日から12月18日にかけて全24話が放送されました。アニメ制作スタジオはSynergySPで、主要キャストは濱野大輝と新崎瑞季です。
こちらはセリフ回しに多少違う箇所があるものの、原作漫画のイメージが忠実に再現されています。キャンプやグルメ描写が非常に細かく、原作で人気の部分がしっかり映像化されているのが魅力ですが、賛否両論あるお色気要素もそのまま。そのためメディアミックスから入る視聴者にとっては、TVドラマ版より少しとっつきにくくなっています。
逆に原作ファンからの評価は高いので、TVアニメ版は元々『ふたりソロキャンプ』が好きな方にはおすすめです。
TVドラマ版、TVアニメ版それぞれに良さがあるため、自分に合う方を視聴するのが良いでしょう。
漫画『ふたりソロキャンプ』の作者は出端祐大(でばたゆうだい)。1988年生まれの37歳、静岡県出身の漫画家です。
2011年にアミューズメントメディア総合学院マンガ学科を卒業後に上京、漫画『華麗なる食卓』や『土下座で頼んでみた』で有名な漫画家ふなつかずきに師事し、数年間アシスタントを務めました。
出端祐大は専門学校在学中から精力的に活動しており、1年生の時点で美少女系雑誌「E☆2(えつ)」誌上に載った経験もあります。そして2016年、「マガジンSPECIAL」にサバイバルゲーム漫画『殲滅の戦女神(バルキリー)』が掲載されて商業デビューを果たしました。
プライベートでは、幼少期から父親の影響でキャンプをしていたというキャンプ歴20年のアウトドア派。その他にサバイバルゲームも趣味としており、それらの経験が作品に活かされています。『ふたりソロキャンプ』作中のレシピも出端祐大自ら考案したもので、作者監修の公式レシピも販売されています。
- 著者
- ["出端 祐大", "モーニング編集部", "講談社"]
- 出版日
作風は基本的にコメディタッチ。豊富な知識に裏付けられたリアルな描写を得意とし、ふなつかずきの影響を受けた肉感的な女性キャラが特徴です。
出端祐大はデビュー作を除くと、初連載作にして大ヒットとなった漫画『ふたりソロキャンプ』の他に作品はありませんが、実力は間違いないので今後さまざまな活躍を見せてくれることでしょう。筆者の個人的な願望になりますが、いつかサバイバルゲームとキャンプの知識をミックスさせた、極限状態のサバイバル漫画を読んでみたいです。
本作は第1部が2023年に完結したあと、続編の第2部が連載中。「コミックDAYS」では基本無料で公開されているので、気になった方はまずこちらから読んでみるのがおすすめです。