『猫と竜』は人語と魔法を自在に操る火竜や猫と、人間との関わりを描いたファンタジー作品です。短編連作形式でさまざまなキャラクターが登場し、多彩なストーリーを楽しめるのが人気。 元はライトノベルですが原作に忠実な漫画版、独自性の強いスピンオフなどのメディアミックスが豊富です。2026年7月からはテレビアニメもスタートします。 この記事ではそんな『猫と竜』ついて、原作小説や漫画の内容から作品の魅力をご紹介していきます。

自認:猫の竜が登場する異色のファンタジー
童話のようなほのぼのした内容で大人気
2026年夏アニメ枠でテレビアニメ化
人とも獣とも違う危険な魔獣が徘徊するとある森で、「森の猫」ケットシーの母猫に育てられた1匹の竜がいました。成長した彼はやがて巨大な竜となって、「森の猫」たちの家族であり、師であり、守護者たる「猫竜」を名乗り、種としての猫や人間との関わりを見守るようになるのでした――。
『猫と竜』は小説家アマラが発表する同名ライトノベルを中心としてメディアミックス作品です。
本作の初出は2013年9月に公開された「小説家になろう」の短編小説。現在は商業化され、短編連作の単行本がリリースされています。既刊は9巻で、最新巻は2025年11月に発売されました。ナンバリングがされていないので順番がわかりづらいですが、『猫と竜』が第1巻に相当し、第2巻『猫と竜と冒険王子とぐうたら少女』を除くと続編はおおむね『猫と竜 ○○と△△』のタイトルとなっています。
同名のコミカライズが2017年9月から行われており、そちらは現在既刊12巻。スピンオフ漫画『猫と竜 ミケミケのねこねこギルド』も2025年11月から始まりました。
本作は「自認が猫な竜」というユニークな存在、個性が豊かで愛らしい猫と人間の交流、時に大胆な冒険はあるものの基本的に平和……と、誰も傷つかないハートウォーミングな内容で非常に人気が高いです。現在シリーズの累計発行部数は140万部を越え、2026年7月からはアニメ版の放送も控えています。
ある時、森の洞窟に1匹の火竜が卵を産み落としました。そこは猛獣や魔物が出没する森の中では比較的安全な場所で、まだ若い火竜は卵を埋めて安全を確保すると、獲物を狩りに出かけ……そして二度と戻ることはありませんでした。竜を狙った人間に狩られたのです。
いくら地上有数の存在であろうとも、生まれる前は無力。守る者がいなった火竜の卵は、孵ることなく朽ちる運命にありました。
ところが、なんの運命のいたずらか。若い火竜と同じように、安全な場所を求めて1匹の猫が洞窟にやって来ました。身ごもっていた猫は、偶然にも卵のある地面の上に巣を定め、知らずに卵を温めながら3匹の仔猫を産んだのです。
そして数日後、我が子たちに卵から孵った竜の子が混じっているのを見つけて、母猫は驚きます。しかし、熟練の母猫には魔獣の子を育てた経験があり、気にせず竜の子を受け入れ――やがて大きく成長した竜は、猫を大切な家族と思うようになり、森の猫たちの守護者となりました。
『猫と竜』を一言で表すなら、「安心して読めるほのぼのファンタジー」でしょう。
竜……つまりドラゴンは、ファンタジーのジャンルではお馴染みの強大なモンスター。そんな竜が主要キャラクターなのに、ほのぼのと書くと意外に感じる方もいるかもしれません。
元々「小説家になろう」で発表された本作は、エピソードごとに視点が変わる短編連作形式です。基本的には猫たちの関係を描いたコミカルかつハートウォーミングな話ばかりで、陰鬱なサスペンス要素やホラー展開、人死にの出るバトルなどはありません。
イメージ的には、いい意味で童話やおとぎ話といった児童書に近い感覚です。大人はもちろん、小学校低学年くらいのお子さんでも安心して楽しめます。
商業化された『猫と竜』は現在、原作小説と並行して漫画版も出ています。漫画版のストーリーは原作に準拠しつつ、漫画ならではの表現で補完がなされており、原作小説既読でも問題なく楽しめます。
では漫画版だけ読めば『猫と竜』のすべてを堪能出来るかというと、そうではありません。原作小説は地の文に含まれる情報が多く、登場人物の内面や背景の掘り下げが豊富です。独特な世界観に浸るためには原作小説は不可欠。
とっつきやすいのはやはり漫画版ですが、ちょうど相互補完の関係にあるので、個人的には両方読むのがおすすめです。原作は非常に読みやすく、普段小説を読んでなくても大丈夫ですし、どちらもテンポ良く進むので気楽に楽しめます。
1つ気をつけるところがあるとすれば、時系列がバラバラという点ですね。エピソードごとに違う時代、時には過去が舞台になることも珍しくなく、時間の流れが一定だと思っていると混乱するかもしれません。
とはいえ、時代が変わると言っても数年から数十年単位で、話の軸になるレギュラーキャラクターはある程度固定されているのですぐに慣れます。レギュラーキャラクターは短編エピソードの主人公になるだけでなく、別のお話で関係してくることもあって、意外な繋がりによって作品世界の広がりを感じられるところが素晴らしいです。
ほのぼのファンタジーの雰囲気と同時に、大河ドラマにも通じるキャラクターの繋がりと時間の流れを感じられるのが本作ならではの魅力と言えます。
『猫と竜』には猫竜を始めとして、さまざまなキャラクターが登場します。みんなとても個性的で、短編連作という作品の形式上、全員が主人公と言っても過言ではありません。
まずは猫竜。「森の猫」とも呼ばれるケットシーに育てられた火吹き竜です。自分が猫であるという意識が強く、どこかへ出向く際は竜の翼が生えた猫の姿になります。生みの親については原作小説で少し触れられていますが詳細不明。猫たちからは敬意と親愛を込めて、「羽の子」や「羽のおじちゃん」と呼ばれています。
猫竜は『猫と竜』を代表する重要キャラクターですが、ほとんど出て来ないエピソードもあり、作品全体の主人公というよりはある種の狂言回しや進行役に近いです。
そんな猫竜の育ての親が「ママにゃん」。彼女は経験豊富な母猫で、自分が産んだ子だけでなく、森で拾ってきた魔物の子だろうと分け隔てなく育てる肝っ玉母ちゃん。その性格から猫だけでなく、別の種族からも慕われています。猫竜の頭が上がらない唯一の存在。
短編の合間に語られる「冒険王子」シリーズの主人公と言えるのがスタンです。元はとある王国の王子でしたが、魔王軍を討伐した冒険者たちに憧れ、家出同然で国を飛び出した少年。ヤンチャで無鉄砲かと思えば、王族らしい礼節や配慮を弁えている不思議なところがあります。
スタンの師匠兼相棒を務めるのがクロバネ。見た目は左目に傷跡のある黒猫ですが、単独で凶暴な魔獣を倒せるケットシーの英雄です。幼少期のスタンに懐かれ、そのまま猫と人間の橋渡しとなる王子付きの世話役になりました。
ガリーは「ぐうたら少女」シリーズの主人公。孤児院出身の少女で、人間の魔法より猫(ケットシー)の魔法が得意という希有な才能の持ち主ですが、非常に面倒くさがりで周囲をやきもきさせています。
ガリーにやる気を出させようと奮闘するのが、白猫のシロタエです。冒険に憧れて森を出たものの、偶然出会ったガリーの才能を惜しんで猫の魔法を教えて、自分の旅そっちのけで世話を焼いています。
そしてスタンやガリーほどではありませんが、しばしばスポットライトを当てられるアンネロッサ。ママちゃんを召喚した縁で色々と助言を受け、徐々に成長していく魔法学校の生徒です。のちの大魔法使い。
魔法学校繋がりで忘れてはいけないのが、グレーターデーモンです。本物の魔界の悪魔ですが、ママにゃんに育てられたことから彼女には頭が上がりません。猫竜にとっては兄。魔法学校で働いており、生徒からは「悪魔先生」、猫たちからは「角のおじちゃん」などと呼ばれています。ある意味で本作一番の苦労人。
猫竜の存在によって、人間と森の猫が良い関係で暮らすとある王国。そこではいつのころからか、子供が生まれると猫が挨拶に行って、気が合ったら生涯の友達になるという習慣が出来ていました。
そしてある時、人間の王に子供が生まれました。国王の世継ぎだけに、下手な者を向かわせるわけにはいかない。困った猫竜は街住みの猫たちの顔を立てるため、森で英雄と慕われるクロバネに表敬訪問を任せます。
クロバネはまだ赤子の王子が生涯の友人に相応しいか見極め――るつもりが、気付けば数年が経過し、所作から魔法や戦い方まで指南する師匠と化していました。
- 著者
- アマラ
- 出版日
さらに数年後、王子は立派な青年に成長しました。次期国王に相応しい逸材になっていましたが、実のところ中身は冒険に憧れる無邪気な男の子のまま。彼は計画を練り、現国王誕生日の警備の隙を突いて勝手に国を飛び出してしまいます……。
身分を隠した王子が、駆け出し冒険者スタンとしてさまざまな出来事に立ち待っていく「冒険王子」シリーズ。やや世間知らずなスタンと経験豊富なクロバネのコンビニよる、王道のファンタジーを楽しめる連作となっています。
スタンは育ちが良くて品行方正な反面、意外とやんちゃで突っ走りがち。歴戦の猛者であるクロバネが良き導き手兼抑え役になっており、「冒険王子」シリーズはそんな2人の絶妙なバランスの冒険譚が楽しめます。
- 著者
- ["アマラ", "佐々木 泉", "大熊まい"]
- 出版日
森の猫は一人前になると、それぞれ別々の道に旅立ちます。つがいを求める者、人間の街に住む者、遙かなる冒険に思いを馳せる者……。好奇心の強い白猫のシロタエは、未知の縄張りを求め、猫竜の許しを得て森を出ました。
シロタエは人間の国とは違う方角にある険しい山を目指し、その手前で狩りに奔走する少女ガリーと出会います。ガリーは孤児院では司祭を除くと1番年上で、小さい子たちの世話をしていました。
しっかりしているかと思いきや、面倒くさがりでやることがいちいち適当なガリー。シロタエはそんな彼女に、特異な魔法の才能を見出します。人のいい司祭の頼みもあり、彼は孤児院に滞在して猫の魔法を教えつつ、なんとかガリーを魔法学校へ行かせようとあれこれ手を打ちます。
- 著者
- アマラ
- 出版日
「冒険王子」シリーズが冒険ファンタジーなら、ガリーが主人公の「ぐうたら少女」シリーズは、凸凹コンビのファンタジーコメディといった感じです。
ガリーは普段は何事にもやる気を見せないものの、やるとなったらとことん突き進み、どちらにせよ周り(主にシロタエ)を振り回すトラブルメーカー気質。やることがいちいち豪快ですが、不思議と上手く行くのが面白いところ。気苦労の絶えないシロタエには同情しますが、なんだかんだいいコンビなのが微笑ましいです。
そんな1人と1匹の物語……なんと話が進むと、同じ時代の出来事である「冒険王子」シリーズと合流します。この例に限りませんが、意外なところで思わぬ既出キャラクターが関わってくるのも本作の見所です。ガリーとシロタエ、スタンとクロバネがどんな出会いを果たし、いかなる冒険に出くわすかはぜひ実際に作品をご覧ください。
- 著者
- ["アマラ", "佐々木 泉", "大熊 まい"]
- 出版日
「母猫」シリーズは猫竜の育てのである、ママにゃんが登場する一連のエピソードとなっています。ママにゃんはアンネロッサの使い魔なので、たいていはアンネロッサの動向に焦点が当たりますが、ママにゃんがメインとなるエピソードも少なくありません。特におすすめなのは「母猫の帰還」です。
ママにゃんが召喚され、猫竜たちのもとを離れて長い年月が経過したころ。すっかり魔法学校の重鎮となった彼女は、偶然「しょしんしゃのもり」と呼ばれる森の話を耳にします。ママにゃんも噂程度には、猫竜と名乗る強大な竜が猫の森を守護していることを知っていましたが、まさかそれが成長した我が子とは思いもしませんでした。
彼女はふと懐かしさを覚えて、自分がかつて過ごした場所かどうか、翼の子がまだ健在なのかを確かめるべく「しょしんしゃのもり」を目指します……。
「母猫の帰還」は『猫と竜』でも屈指の感動的エピソードです。子供の成長に親の老い。喜びも悲しみも、あらゆる意味で時の流れを感じさせる珠玉の一編です。
- 著者
- アマラ
- 出版日
一方で母――というか、オカンらしさが炸裂する話もあります。
元々お節介なママにゃんが、身内のために最大限の大きなお世話を焼いて、西へ東へと奔走する「母猫とアンネロッサのお見合い大作戦」。いつまで経っても身を固めないグレーターデーモンと猫竜を(勝手に)思いやって、それぞれのお嫁さん候補を探しまくるお話です。
こちらはいい意味で馬鹿馬鹿しくて、笑いが止まらない爆笑必至のエピソードとなっています。
- 著者
- ["アマラ", "佐々木 泉", "大熊 まい"]
- 出版日
Web小説からスタートし、商業化後にコミカライズとスピンオフが発表された『猫と竜』。そのさらなるメディアミックスとして、まもなくテレビアニメの放送が始まります。
ちなみにアニメ化が正式発表されたのは2025年2月22日。「猫の日」にちなんで告知が行われたことから、ネットを中心として大きな話題を呼びました。
開始日は2026年7月4日です。最速は土曜日放送のTOKYO MXで、数日遅れでBS日テレや読売テレビなどでも放送されます。ネット配信ではdアニメストアとABEMAプレミアムが先行配信が行われ、Amazonプライムビデオなどでも順次配信予定です。
アニメの制作を担当するのは株式会社OLM。『ポケットモンスター』シリーズのテレビアニメや劇場版を手がけてきた老舗で、近年は『薬屋のひとりごと』の共同制作も行っています。2025年には人間がゾンビではなく猫に変異するアニメ『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』にも携わっており、猫のクオリティには期待して良いはずです。
アニメ『猫と竜』の主要キャストは猫竜役・子安武人、ママにゃん役・井上喜久子、クロバネ役・速水奨といった説明不要のレジェンド級声優がずらり。もちろんそのほかの顔ぶれも凄く、スタン役は『呪術廻戦』虎杖悠仁で知られる榎木淳弥、ガリー役は『SPY×FAMILY』アーニャで有名な種﨑敦美などl人気の実力派声優がキャスティングされています。
アニメの放送期間は未発表ですが、おそらく1クールでしょう。
1クールだと漫画単行本換算で4~5巻分のストーリーが描かれるのが一般的。ただし『猫と竜』は短編連作なので、通常よりエピソードの消化が早く進んで、6巻の範囲まで含まれるかもしれません。短編形式を活かして、主要エピソードを抜き出して映像化される可能性もあります。
従ってアニメ版でどこまで描かれるのかを予想するのは難しいですが、PVからすると少なくとも漫画版5巻の「悪魔と竜と母の日」が描かれそうなので、キリが良くて主要キャストが一堂に会する「冒険王子はぐうたら少女を振り回す」辺りで終わるのではないでしょうか。
『猫と竜』の原作者はライトノベル作家のアマラです。
2014年、「小説家になろう」に投稿していた小説『地方騎士ハンスの受難』が書籍化されて商業デビューしました。以後、『神様は異世界にお引越ししました』や『猫と竜』も同様に商業化されて、現在に至ります。
アマラの手がける作品は主にファンタジーですが、異世界モノにせよ令嬢モノにせよ、少し視点をずらした一風変わったものが多いです。
- 著者
- ["アマラ", "乃希"]
- 出版日
『猫と竜』のイラストとシリーズのキャラクターデザインは、イラストレーターの大熊まいが行っています。2008年ごろからRF.ロイグ名義で活動を開始、一時ゲーム会社に勤めてフリーに転向しました。ライトノベルやカードゲームのイラストを手がけており、他の代表作は『フシノカミ ~辺境から始める文明再生記~』など。
コミカライズ担当は漫画家の佐々木泉です。1999年に「アフタヌーン四季賞・冬」に準入選。商業デビュー後は『墨戯王べいふつ』、『江南行』といった歴史モノを発表しています。
- 著者
- ["ノブヨシ侍", "アマラ", "大熊 まい", "佐々木 泉"]
- 出版日
スピンオフ漫画『猫と竜 ミケミケのねこねこギルド』を担当するのはノブヨシ侍。2005年にデビューした漫画家で、ほのぼのした日常系コメディを得意としています。代表作は『とりきっさ!』。近年は『小林さんちのメイドラゴン お篭りぐらしのファフニール』、『異世界居酒屋「のぶ」 エーファとまかないおやつ』などスピンオフを多く手がけています。
『猫と竜』は原作小説、漫画版ともに継続中です。漫画版は「このマンガがすごい!WEB」で序盤と最新話が読めるので、気になった方はまずそちらから読んでみてはいかがでしょうか。