頭を使って道を切り開いていく物語って良いですよね。 そんな頭脳戦が面白さの1つとなっている物語は数ありますが、そんな中でもイチオシの頭脳戦メイン軍師ものラノベを紹介します。
- 著者
- 銅大(あかがね・だい)
- 出版日
- 2013-09-09
宇宙戦艦ものであり、激しいバトルが繰り広げれられる物語でありながら、その主体は思考と思考のぶつかり合う頭脳戦です。
宇宙艦隊による武力で物事を進める提督派、それに反抗する諸勢力が入り乱れての内戦状態にある銀河帝国。その戦火を逃れた者たちが、ローザ皇女を中心に据え、皇女派リーン星系に正統銀河帝国政府を作り、その政府が建造したのが新型宇宙戦艦・ポケット戦艦マイティローザ。マイティローザと提督派との戦いをスペースオペラとして描き出します。
戦艦であるマイティローザを動かすのは頭脳体ローザであり、戦艦自体に女性の人格が宿っているというわけです。そんな少女型頭脳体と新米戦術士官がコンビを組み、強敵の敵戦艦に挑みます。火力が物を言う戦艦同士の戦いは、計算に計算を重ねて繰り広げられる頭脳戦。
戦艦に搭載されたAIの分身である萌えキャラが新米軍人と同乗し、知恵を使い、思考を読み合う理詰めの戦闘がこの作品の見所です。ただただ頭を使い、戦って戦って戦うラノベだと理解していただければいいと思います。
宇宙戦艦にはそれぞれ個性があり、それをうまく活用したり、弱点として突かれたりと、戦争はただ戦うだけじゃなく戦略的撤退や戦闘回避などありとあらゆる策を用いることなのだと教えてくれますよ。
実はこの作品TRPGである『スターレジェンド』というゲームのスピンオフ小説なんです。本書を読んで面白いと感じたのならゲームも買ってみるのもいいかもしれません。
本の最後には、物語上の戦闘図解が掲載されており、戦闘情景などをいまいち理解できない人にはおすすめ。でもネタバレが嫌なら読み終わってからにしましょう。
可愛らしいイラストが表紙になっているため、ジャケ買いしてみるのもいいかも。続編が待ち遠しい作品です。
- 著者
- むらさき ゆきや
- 出版日
- 2012-10-29
軍人なのにも関わらず剣も弓も苦手な読書狂な主人公・レジスは敗戦の責任をとらされて辺境に左遷されてしまいます。しかしそこで運命を変える少女との出会いを果たす、という物語です。
少女は赤い髪と紅い瞳を持ち、覇者の大剣を有する皇姫アルティーナ。辺境軍の司令官という不遇な任務を強いられていた彼女は、ある壮大な願望を抱いていました。レジスは自分を信じるという彼女とともに困難な戦況に立ち向かっていくことになります。無理難題な命令にもその知識と知恵を駆使し、戦っていくというのがこの作品の特徴です。
軍人としてはあまり才能がなく本ばかり読んでいたレジスは知識が豊富であったため、アルティーナのもとでは軍師として頭脳戦を繰り広げることになります。頭脳戦や軍団の指揮で力を発揮するレジスは様々な不利な戦況を覆し打破していきます。
しかし頭脳戦だけでなく、大剣を振り回すアルティーナたちの戦闘も見所の1つ。美しい女性が戦場で舞う姿には惚れ惚れしますね。
頭脳戦ストーリーによくある主人公最強感を味わいたい方にはおすすめです。1巻完結でなく複数巻続いているので1巻読んで面白かったら続きを読むことを勧めます。頭脳戦が魅力でありながら王道を行くライトノベルで、漫画を読むように楽しめると思いますよ。
この本から読み始めて読書家への一歩を踏み出せば、レジスのような読書狂になり頭脳戦ができるようになるかもしれません。
アウトニア王国奮戦記 でたまか―問答無用篇 (角川スニーカー文庫)
2001年03月29日
『でたまか』は、『時空のクロス・ロード』でも知られる鷹見一幸のラノベのシリーズ。イラストは、スーパーロボット大戦シリーズのイラストレーター・Chiyokoが描いています。
「アウトニア王国奮闘記」シリーズ全3巻、「アウトニア王国再興録」シリーズ全5巻「アウトニア王国人類戦記録」シリーズ全5巻、「アウトニア王国拾遺録」シリーズ全3巻と本編13巻で短編集3巻の合計16巻刊行。強敵相手に、頭脳戦を繰り広げるスペースオペラです。
帝国のビンボー貴族マイド・ガーナッシュ。優秀な成績を収め士官学校を卒業した彼は、なぜか宇宙の果ての果ての果て、惑星国家アウトニアに配属されてしまいます。そんな彼は最弱艦隊を指揮しなければならないことに。
「アウトニア王国奮闘記」では、宗教国・ローデスによるアウトニアへの策略を阻止することが目的。戦争自体の経験がない新米がどうローデスを攻略するかが焦点です。
「アウトニア王国再興録」では、なんと主人公であるマイドが重要犯罪人として帝国に追われるという事態に。そこから滅んでしまったアウトニアを再興せんとする物語が紡がれていきます。
「アウトニア王国人類戦記録」は、初めて人類が異種知的生命体に遭遇し、一報的な攻撃を開始するエイリアンにどのような立ち向かえばよいかという物語。人類の総力を尽くした最終決戦を、犠牲を払いながら知力で切り抜けていきます。
「アウトニア王国拾遺録」は短編集で、メインのストーリーからは離れた物語が展開されます。番外編だと思って読んでみてください。
シリーズそれぞれの中での頭脳戦のみならず、物語にテーマがあったりして考えさせられる展開も見所の1つ。そして主人公とヒロインがどんな恋愛を育んでいくのかといったラブコメ要素もあります。
最初は一地方星系の話でスペースオペラであるのにも関わらず全体的にほのぼのとした語り口で物語が進んでいきます。しかし巻を進むに連れて文章自体固くなり、テーマもより重いものとなっていくのです。
続編を予定して製作されたラノベであり、第1巻は導入編の物語なので1巻だけでも読んでみるといいでしょう。
- 著者
- 宇野朴人
- 出版日
- 2012-06-08
テレビアニメ化もされたファンタジー戦記ラノベです。
隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国、カトヴァーナ帝国。そんな国に日々を怠けながら過ごす少年イクタ・ソロークは昔馴染みの少女ヤトリシノ・イグセムと、交換条件の約束を交わし、嫌々高等士官試験を受験しようとしていました。そしてなんと図らずも試験は合格してしまいます。そんな、戦争を嫌い怠け者で女好きなイクタが、後世にて名将と名を残すまでの物語です。
試験会場へ向かうはずだった船が沈没、その先で帝国第三皇女シャミーユ、旧軍閥の名家出身で狙撃の天才トルウェイ・レミオン、からかられやすいが上昇志向が強いマシュー・テトジリチ、優しく天然な衛生兵ハローマ・ベッケル、という歴史に名を残すような面々と出会うのです。
様々な敵軍との頭脳戦を繰り広げながら、運命に導かれるようにあれよあれよと上り詰めていくイクタやその仲間たち。帝国一の科学者アナライの弟子にもなり、「常怠常勝の智将」とも呼ばれ、そして若くして出世していくイクタの才能には羨むものがありますね。
「炎」「水」「風」「光」の四大精霊が存在し、人間と共に生きている世界が舞台。四大精霊をどう使っていくかとか、様々な戦術を駆使してイクタが英雄になっていくまでの軌跡を描いたこの作品は、1人の男とその周辺に迫った伝記のような作品になっています。
アニメ化されるほどの面白さを持った作品なので、一度手にとってみるといいでしょう。
- 著者
- 田中 芳樹
- 出版日
- 2007-02-21
田中芳樹によるSF小説と、これを原作とするアニメや漫画、ゲームなどの関連作品のことを言います。
ここで紹介するのは原作である「SF小説」のことですが、現代にあるライトノベルの先駆けと言っていいもので、ラノベかそうじゃないかで揉めることもあります。そしてこの原作は、なんと累計発行部数1500万部を超える大ベストセラー作品となっているのです。
物語は銀河系を舞台にした英雄たちにの逸話を、ふたりの主人公ラインハルトとヤンを軸に描きます。
未来。科学技術が進歩し、銀河進出にまで至った人類は、大きく2つの陣営に分かれて戦っていました。皇帝や貴族が支配する銀河帝国、そして銀河帝国から脱出した人々による自由惑星同盟。150年の戦争が続く中、ラインハルトとヤン、2人の若き英雄が生まれ活躍していくことにより、その戦争の歴史は終結へと向かっていきます……。
この作品ではそんな悲劇的な運命を背負い、戦った若者たちの姿が描かれます。「後世の歴史家による記述」のという、様々な視点を切り替えて描かれる三人称神視点で物語が紡がれていきます。史実として本当にあったような語り口で「未来の歴史」を見せてくれます。
よくあるSFのような科学技術を全面に押し出したような話は少なく、対立する陣営の「イデオロギー」「権謀術数」「人間関係」などを、歴史小説のようなドラマチックな物語に仕上がっています。
頭脳戦と言った要素においては、地上戦で実際にある戦術・戦略をもとに、未来の科学技術の結晶である「超光速通信」や「ビーム兵器」などを使った新しい戦術・戦略を構築し、物語に投入しています。まだ存在しない兵器を使っての戦いを、想像によって作り上げた田中芳樹の才能が光りますね。
ちなみに作者である田中芳樹は、『鋼の錬金術師』の荒川弘が作画を担当し漫画・アニメ化もされた架空の歴史小説『アルスラーン戦記』の原作者でもあります。
ラノベだと言われながらも、その内容は重く濃いものとなっています。軽いラノベに飽きたら『銀河英雄伝説』のことを思い出し、手にとってみてはいかがでしょうか?
長く人に愛され、様々なジャンルで展開しているこの作品は第一級の名作小説と言えるでしょう。
頭脳戦と言っても色々なジャンルがあり、頭を使って未来を切り開いていく物語がどれも魅力的なものです。
読んでいるだけで頭が良くなりそうな物語の数々を一度読んでみては?