フランソワーズ・サガンおすすめ作品4選!メランコリックさが良い

更新:2021.12.16

自分の生まれ育った上流階級の恋愛模様を描き続けたフランソワーズ・サガン。早熟だった彼女が感じていたように、小説の中の世界は退屈や不安感による憂鬱、いわゆるメランコリーであふれています。

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波乱万丈な人生を歩んだ作家、フランソワーズ・サガンとは?

フランソワーズ・サガンは若くして富を得てしまったため、波乱と破滅に満ちた生活を送ることになってしまった悲劇の作家です。それは彼女の活発で早熟な性格ゆえでした。しかしその早熟さがまだ少女と呼べるような年齢だったサガンが書いた『悲しみよこんにちは』での繊細で物悲しい描写に繋がっていると言えます。

中等教育時代のサガンは文学に夢中で、学業はおろそかにしていました。問題行動も目立ち、学校生活にも馴染めなかったサガンはこの頃に学校を転々としています。ソルボンヌ大学に入学すると、18歳という若さで『悲しみよこんにちは』を書きあげます。同書はたちどころに売れ、莫大な印税を手に入れることになりますが、それが悲劇の始まりでした。

莫大な印税を手に入れたことにより、彼女の周りには悪い大人たちが群がってきたのです。そこで彼女は酒とドラッグを覚え、死に急ぐように騒々しい毎日を過ごしていました。そんな私生活はスキャンダルの恰好の的となってしまいます。バイセクシャルを公言しており、夫がいながらも多くの男女と関係を持っていたことも有名です。

そんなフランソワーズ・サガンが描く物語は彼女が生まれ育った上流界の安定的で物静かな生活が舞台です。そしてその文体にはいつも孤独というテーマがあり、メランコリーな情緒が含まれています。

フランソワーズ・サガンのデビュー作

フランソワーズ・サガンという少女の人生を良くも悪くも変えてしまった『悲しみよこんにちは』は、1954年に発表されると、3年後の1957年にはジーン・セバーグ主演で映画化されるほどの人気となりました。少女が父とその愛人と過ごした一夏のできごとが描かれています。

18歳になるセシルは母親を亡くし、父レエモンとふたりで暮らしていました。父親にべったりのセシルでしたが、レエモンには愛人がいます。セシルとレエモン、そしてその愛人であるエルザの3人はコート・ダジュールの別荘の夏を過ごしていました。そこへやってきた亡き母の友人だったアンヌと父レエモンは意気投合して婚約することになります。父親を盗られると感じ始めたセシルは結婚を阻止する計画を立てはじめるのでした。

著者
フランソワーズ サガン
出版日
2008-12-20


本書は作者と同じ18歳の少女の心情が物悲しく語られています。自由を愛するセシルに対して、母親のように接しようとするアンヌは規範を重んじる女性。そんな自分とは正反対な女性に対する尊敬と憎しみが入り混じるセシルの心が発する不安感と寂しさに引き込まれる一品です。

大人の女が抱く心の揺れ

1957年に自動車事故を起こして瀕死の怪我を負ったフランソワーズ・サガンでしたが、1959年に『ブラームスはお好き』を発表。『悲しみよこんにちは』に次ぐ大ヒットとなりました。

主人公は離婚経験のある39歳のポールという女性です。彼女は、「お互いに束縛しない」という約束を交わした中年男性のロジェと恋仲にありました。浮気ばかりしているロジェに悩まされているところ、ポールは若くて綺麗な顔立ちのシモンと出会い……。

著者
フランソワーズ サガン
出版日
1961-05-12


ポールは自分を年だと思っており、このままの状況で年を取っていくことを恐れています。それゆえに若いシモンに対して青春の憧れを抱いています。それはシモンがポールを口説く時に使った「ブラームスはお好きですか?」の一文に表されています。ポールは学生時代に男の子たちが同じような手法を使っていたなと懐かしさを感じるのです。

またポールはロジェと浮気相手のシモンとの間でも心を揺らします。本当はロジェのことを愛してはいないのではないか。そう感じながら、ポールはシモンにのめり込んでいくのです。それでも心の隅では自分の相手は苦しい時も一緒にいたロジェなのではないかと感じているのでした。

こうした心の揺れがメランコリックに語られており、ポールに感情移入しやすい作品となっています。

背伸びした恋が少女を成長させる

『悲しみよこんいちは』で痛烈なデビューを飾ったフランソワーズ・サガンが、1956年に発表した待望の2作目『ある微笑』もまた絶賛され、1958年には映画化もされました。

本作の主人公で20歳の大学生ドミニックには、ベルトランという同年代の恋人がいました。しかし早熟な彼女は日々を退屈に感じています。そこへ、ベルトランの叔父であるリュックから「後腐れのない体だけの関係で遊んでみないか」と誘われます。自分も遊びのつもりでしたが、遊び慣れしているリュックに次第に心惹かれていき……。

著者
フランソワーズ サガン
出版日
1958-05-05


大人びた少女時代を過ごしたサガンらしい、早熟な少女が主人公の作品です。ドミニックは退屈な日々に憂鬱すら感じていました。そんな彼女は背伸びして一時だけ燃えあがった大人の恋を経験し、その後に喪失感に苛まれます。しかしそんなメランコリックな感情の中で大人になったと実感するのです。ちょっぴりほろ苦い恋愛小説です。

フランソワーズ・サガンが描く、上流階級の色恋沙汰

1957年に発表された『一年ののち』では複数の人間による恋愛模様が描かれています。

舞台は上流階級の夫婦で若い人たちとの交流が好きなマリグラス夫婦の開くパーティーです。そこに集まるのは主人公の女性ジョゼ、彼女に恋する作家のベルナールや、女優として成功を収めたいベアトリスなど多種多様な人物でした。彼らはお互いに恋をしたりして過ごしながら、やがて一年が過ぎるのでした。

著者
フランソワーズ サガン
出版日


本書は多数の人物たちによる恋愛模様が描かれています。ドラマチックに展開されるわけではなく、ある者は成就したり、ある者は破れたりと、リアルな展開が繰り広げられるのが特徴です。しかし登場人物たちはみな恋愛偏差値の低い変わり者ばかりで、そんな人たちが真剣に恋愛に取り込む姿を楽しめる1冊になっています。

フランソワーズ・サガンの小説はすべて上流階級の恋愛を描いています。そのことでいつも同じことばかり書いているという批判もあります。ですが自分の知っていること、自分の感じたことだけを書いているサガンだからこそ、作品からリアルが伝わってくるのです。

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