ヤマシタトモコのおすすめBL漫画ランキングベスト5!

更新:2021.12.16

シンプルなタッチの絵柄でありながらも、キャラクターの表情やセリフはもちろん、多様な視点から、人間の様々な感情をリアルに表現していると評される、ヤマシタトモコ。今回は、そんな作者の描く、人気BL漫画を紹介いたします。

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漫画家ヤマシタトモコとは

ヤマシタトモコは、同人活動を経て、2005年に漫画家として正式にデビューしました。その直後『ねこぜの夜明け前』にて、アフタヌーン四季賞(夏)を受賞。以後、主にボーイズラブのジャンルにおいて活躍し、2007年には『くいもの処 明楽』にて「このマンガがすごい!(BL部門)」の1位を獲得しています。

徐々にBL漫画に限らず、一般ジャンルでも頭角を表すようになり、「このマンガがすごい!2011 オンナ編」では第1位、第2位を独占するという快挙を成し遂げました。

ジャンルを問わず、シビアな現実や人間の本音といった、物事の本質をえぐり出すようなリアリティを描ききることで、多くの共感を集めています。

5位: 多彩なヤマシタトモコワールドが詰まったBL短編集『恋の心に黒い羽』

ヤマシタトモコの描くBL漫画なだけあり、追い詰められていく気持ちや葛藤といった、恋をしているとき特有の生々しい感情が描ききられています。

表題作「恋の心に黒い羽」は、主人公の二神が、サディスティックな性格の同僚中頭に恋をしています。しかしどうしても、自分の性癖であるM気質が邪魔をして、前に踏み出すことができないのです。もっと近付きたい、踏み込んでいきたいと思う反面、中頭に罵られ罵声を浴びせられることが快感で仕方がない二神。そんな二神の恋する気持ち、性癖の狭間で揺れ動く気持ちが克明に描かれたBL作品です。

著者
ヤマシタ トモコ
出版日
2008-01-17

その他、同級生に恋をする弟の姿を姉からの目線で描く「ベイビー、ハートに釘」、組長に恋心を抱くヤクザと組長の娘とのシリアスながらも軽快なやり取りが描かれる「悪党の歯」など、BL漫画でありながら、女性キャラクターを絶妙なポジションに配置し、既存の枠に囚われることのないヤマシタトモコの世界観を楽しめますよ。

4位: ヤマシタトモコのBL短編集『YES IT'S ME』

BL短編集である本作は、先に紹介した『恋の心に黒い羽』同様、笑いありシリアスさありの贅沢な内容となっています。中でも表題作「YES IT'S ME」と、続編「YES IT'S YOU」は、ヤマシタトモコの突き抜けた世界観を如実に表したBL作品といえます。

「自分とすれ違って、振り返りたい!他人が羨ましい!」と言うほど、自分が大好きなナルシスト東間(通称トーマス)。友達と遊ぶことよりも鏡を見ることがなによりも好きでした。そんな、ナルシスト過ぎて周りから敬遠されていたトーマスの傍にずっと居続けたのは、幼なじみの江城、通称キノコ。大人になった今でも同じ職場で働くという徹底ぶりです。

著者
ヤマシタ トモコ
出版日
2009-09-17

自分のことが何より一番好きなトーマスを、振り向かせるためにキノコが発した言葉は「おまえおれのこと好きなんだろ」。常に冷静で自分のことを誰よりも理解しているはずのキノコに、突然そんなことを言われたトーマスは、パニックに陥ります。キノコと過ごしてきたこれまでを振り返り、頭の中がキノコでいっぱいになるトーマス。そんな動揺するトーマスに引きずられるかのように、クールなキノコ自身も揺らいでいき……。

ついキュンとしてしまうような恋愛要素の魅力がつまった、ヤマシタトモコのBL作品。トーマスの数々のナルシストぶりももちろんですが、キノコがキノコカットをはじめとして徹底して植物のキノコを連想させるように描かれているという面白さもまた魅力的です。他にもトーマスとキノコのイケメンぶりや二人のファッションなど、登場人物たちのビジュアルに関しても大いに楽しめるBL漫画となっていますよ。

3位: ヤマシタトモコによる、エロス×ホラー『さんかく窓の外側は夜』

本作は、ホラーやサスペンス色の強い作品となっていますので、ヤマシタトモコのまた違った一面を垣間見ることができます。

書店員の三角は、死んだ人間が見えてしまうという体質。あるとき三角が勤務する書店が、除霊師冷川(ひやかわ)に仕事を依頼したことで、三角と冷川は出会います。冷川は即座に三角の特性を見抜き、半ば強引にコンビを結成します。というのも、霊を「ぶん投げる」ことができる冷川は、霊を見ることができる三角を介すことによって除霊が楽になり、効率的になるというのです。

怖がりな三角でしたが、自分の体を介して行われる除霊にとてつもない快感が伴うことを知り、さらにその破格の報酬や、流されやすい性格も手伝って冷川から離れられなくなってしまうのです。

著者
ヤマシタ トモコ
出版日
2014-02-10

三角と冷川のコミカルな会話やクスッと笑えるシーンを楽しめることはもちろん、ゾクッとするような霊の描かれ方など、サスペンスやホラー作品としての魅力が感じられる本作。とはいえやはりBL漫画ですので、エロティックさ溢れる三角と冷川の除霊シーンも忘れてはいけません。

また、時折冷川が発する「きみは私が見つけたんだから私のものですよ」といった三角に対する執着を表す台詞も見逃せませんよ。その台詞の裏に一体何があるのか、二人の関係にも注目したいBL漫画です。
 

2位: ヤマシタトモコの「このマンガがすごい!」1位作品!『くいもの処 明楽』

居酒屋の店長、明楽高志は32歳。元ヤンながらも、そこそこ順調で平和な日々を送っていました。しかしある日、年下で生意気なバイトの鳥原泰行に告白されて……。

明楽はそれまで同性愛者ではなく、クールな島原からの告白には戸惑いを隠せませんでした。島原と顔を合わせても、つい茶化すような態度を取ってしまいます。そんな明楽に対して島原は「もーなんかめんどくせぇな」と、いつも通りの生意気な態度を取りつつも、「…こう見えてもおれはマジなんでね あんたにもマジになって欲しいんスよ」と言い、ストレートに想いをぶつけるのでした。

著者
ヤマシタ トモコ
出版日
2007-03-15

訪れる、明楽の気持ちの変化。しかし元々は女好きで、軽いノリの明楽に不安を覚え、「おれのことちゃんと好きですか?」と尋ねてしまう島原など、随所に織り交ぜられた島原の恋に対する戸惑いや不安といった心情にも、ついつい感情移入してしまうBL漫画です。

明楽も島原も見目麗しい男性として描かれ、胸がときめくようなストレート過ぎる言葉も出てきますので、BL作品の楽しさを十分に堪能できることでしょう。さらに、明楽の幼なじみであり店のオーナーでもある牧やバイトの多香子など、居酒屋で働くサブキャラ達も皆個性的で、彼らの明楽や島原に対する絡みもまた絶妙ですよ。

ときめきと現実が最高のバランスでマッチした、ヤマシタトモコの大人なBL漫画を、是非お楽しみください。

1位: 好きな人がいる日常『恋の話がしたい』

1位として紹介させていただく本作には、特殊な設定もなく、個性の強いキャラクターが登場するわけではありません。しかしヤマシタトモコの表現力があってこその、じわりと胸に沁みわたるような静かな恋の物語を楽しめますよ。

主人公である美成は、ある日、上手くいくことなど微塵も期待せずに、年下でノンケの真川に告白。しかし意外にもその気持ちが受け入れられるのです。美成はゲイである自覚はあるものの、その世界に馴染めず、自分がゲイであることを知るきっかけとなった邑崎となんとなくの関係を持つだけでした。

著者
ヤマシタ トモコ
出版日
2008-11-18

「おれは誰も好きになれんし なられもせんだろうっつう」(『恋の話がしたい』から引用)

邑崎に対してこのようにボヤき、むしろ片思いに終止符を打つために告白した美成。いざ真川と気持ちが通じ合っても、どうしたらいいのかわかりません。そんな美成に対して真川は、素直に気持ちをぶつけ、時には美成を戸惑わせ、そして幸せを感じさせるのでした。徐々に心を開き合いながら、ちょっとしたことで不安になって、次第にお互いのことを理解していくという、恋が始まり発展していく過程がさりげなく、じっくりと描かれたヤマシタトモコのBL漫画です。

このBL作品では、二人の仲を揺るがすような大きな事件も起きなければ、邪魔者も現れません。初めての恋に戸惑う美成と、飾らずに直球で接する真川。不器用に二人の関係を作り上げていく姿は、冷静さや計算などは皆無の、恋愛の一番純粋な部分を思い起こさせてくれるでしょう。

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