ブラジル人作家パウロ・コエーリョの作品は、51の言語に翻訳され、150以上の国々で年齢、性別を問わず愛されています。今回はそんな幅広い層に愛されるパウロ・コエーリョのおすすめ作品を4冊ご紹介します!
パウロ・コエーリョは1947年にブラジルのリオデジャネイロに生まれた作家です。作家と知られる以前は、ブラジル国内のポップスの作詞家として名声を得ていました。
その後ジャーナリスト、TV脚本家として活躍をした後、小説を書く決心をします。そして自らの巡礼の経験を小説化したのがデビュー作『星の巡礼』。ただこの処女作はあまり成功したとは言えず、コエーリョの名前を不動のものにしたのはこの巡礼の道と同じ名前の主人公の冒険を描いた『アルケミスト』です。
近年スキャンダラスなテーマにも積極的に取り組んでいるコエーリョですが、基本的に彼の小説のテーマは全ての人の心の中にある子供、あらゆる種類の愛、そして再生なのです。
今回は、彼の初期の4作品を通してコエーリョの「魂の旅」を紹介します。
パウロ・コエーリョにとって小説家になると決心するにあたり、この道を通り、聖ヤコブの祝福を受けることは、重要な意味を持つことでした。この道とはスペイン北部の巡礼道、サンチャゴへの道のことです。そしてその道を彼が禊ながら歩き、産み出されたのが本作『星の巡礼』。
コエーリョ(本文中では私)はひとりのミステリアスなガイドと共に彼が指導する「RAMの修業」を実践しながら旅を進めていきます。そしてこの修行によりコエーリョは艱難辛苦のこの旅で、現実とも、非現実ともつかない不思議な経験をすることになるのです。
- 著者
- パウロ・コエーリョ
- 出版日
毎年世界中から、何十日もかけて、日に照らされ、雨にぬれ、足を引きずりながら、ひたすら歩き続ける人々がこの道を訪れます。目的地はサンチャゴ・デ・コンポステーラの大聖堂。そしてコエーリョにとってこの巡礼の経験は、その後の創作活動の隅々にまで影響を与えるものになります。
日々仕事を抱える社会人にとって何十日もかかる巡礼は実行不可能な贅沢です。そんな贅沢な体験がこの本を読むと擬似的に体験できます。スピリチュアルな旅は現実の世界を離れた不思議な現象を読者に届けてくれます。
コエーリョは旅好きが高じて、羊飼いとなったサンチャゴ青年をほとんどすべて知り尽くしてしまったアンダルシアの地から離れて、未知の世界へと旅立たせます。そこで異なる言語、様々な人々、初めて体験する気候、風土、習慣、危機、などと出合いながら夢を追い続けるのです。『アルケミスト』はそんなストーリー。
そんなサンチャゴ青年の最終目的地はエジプトのピラミッド。でもそこへたどり着くためにはアフリカの砂漠を超えなければなりません。さらにどうしても不老不死の薬を発見した有名なアラブ人のアルケミストの助けを借りる必要があります。しかしそのために旅は次第に困難になっていくのです。
- 著者
- パウロ コエーリョ
- 出版日
サンチャゴ青年はその困難を乗り越えるためにどのような知恵を絞って自分の夢を実現させるのでしょうか。
意外な展開で終わる結末は「夢をかなえられるのは選ばれた少数の人々ではなく、すべての夢追い人に与えられた権利なのだ。」という言葉を表しているようなもの。
「一人の人間が実際に何かを望むとき、その夢をかなえるために全宇宙が手を結ぶ。」(『アルケミスト』より引用)
そしてこれこそが本作のテーマと言えるでしょう。つまり、本気で夢をかなえようと一生懸命な人には必ず強力な後押しがあるということです。
旅の過程で成長してゆくサンチャゴ青年の姿は、夢を実現させるためのヒントを読者に与えてくれるはずです。
「もし人間があの山に特別な一人の神の名を与えたなら、他の神々が怒り狂い、我々の土地を破壊しただろうとこの国の伝説は語っているの」(『第五の山』より引用)
あの山はなぜ第五の山と呼ばれるのかと質問するエリアスに、彼の愛した女はこう答えます。文字通り城壁から数えて五番目の山です。
- 著者
- パウロ コエーリョ
- 出版日
- 2001-06-22
紀元前9世紀ころ、預言者だという理由でイスラエルを追放された若きエリアスは、アクバルという何百年もの間平和を享受してきた国にたどり着きます。その国で人々は、それは第五の山に住む神々の怒りをかわず、変化を拒否してきたからだと信じていました。
しかしとうとうアッシリア軍の巧みな戦術で、ある日突然国全体が焼き討ちに遭ってしまいます。この悲劇により、エリアスは生涯でたった一度愛した女を失います。しかし残された少数の弱者たちと共にアクバルの再建を果たすのです。その原動力となったのが彼女の最後の言葉「わたしはアクバル」でした。
美しく聡明な女の子、ベロニカが自分で命を絶とうと決心をします。特に決定的な理由はないのに人生に絶望していたのです。まさにタイトル『ベロニカは死ぬことにした』の通りに物語は始まります。
ベロニカの自殺は結局未遂に終わり、最終的に小さな精神病院へ入れられます。死んだはずの自分が激しい痛みや吐き気という肉体的苦痛を感じている、そんな受け入れがたい現実の中、再び絶望が彼女を襲ってきます。
- 著者
- パウロ コエーリョ
- 出版日
- 2003-04-25
精神病院で、自分は生き延びた(死に損ねた)という事実を受け入れながら過ごすうちに、ベロニカはそこで自分の人生に意味を与えてくれる何人かの人たちと出会います。そして自分の命が限りあるものであることも知るのです。
死に魅せられて、死の入り口までたどり着いた者が、自分の命が期限付きなのだと知った時、人生への渇望を抑えきれなくなるということを読者は目の当たりにします。そしてこの物語は『第五の山』と同じく絶望からの再生、希望の始まりで締めくくられるのです。
人生を歩き続けることに少し疲れた時、ベロニカの物語は時に立ち止まりながらも歩き続けることの大切さ、そして人生ほど素晴らしいものはないということを教えてくれます。
パウロ・コエーリョほど世代を超えて、人種を超えて影響を与え続けている作家はあまりいないのではないでしょう。そして新作を発表するたびに読者にサプライズを与えることも忘れません。一度、コエーリョの魔法にかかってみませんか?