ジェイムズ・ジョイスのおすすめ4選!名作『ユリシーズ』著者

更新:2021.12.16

ジェイムズ・ジョイスは文学的に重要な『ユリシーズ』を残しており、20世紀の最も重要な作家のひとりとして知られています。娯楽的とは言い難いですが、文学の表現に面白さを求める人は一読しておきたい作家。 そんな彼のおすすめ4作品を紹介します。

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世界を旅して地元を愛した文学作家、ジェイムズ・ジョイス

ギリシャ神話のパロディとして書かれた『ユリシーズ』を残したジェイムズ・ジョイスはアイルランドのダブリンで若い時を過ごしています。そこで経験した町の暮らしぶりや知人たちをのちの作品のモデルにしていることは有名な話です。

厳格なカトリック家に生まれたジョイスは母親から神の恐ろしさを教えられ、雷雨などを恐れるようになりました。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンでは英語、フランス語、イタリア語などの語学を学んでいます。そんな大学時代に書評などを書いたり、戯曲に触れたりして文学の才能を培ってきました。

大学卒業後にパリに留学していたジョイスでしたが、母親の死をきっかけに帰国、その後は定職に就かずに放浪することになります。そして駆け落ちを気にアイルランドを離れ、外国での生活を転々としています。そんな転々とした生活のなかでジョイスは『ユリシーズ』の執筆をはじめました。

英雄の冒険になぞらえた人々の生活

ジェイムズ・ジョイスの代表的小説といえば、この『ユリシーズ』です。『フィネガンズ・ウェイク』と並び、難解な作品と言われています。

学校の先生をしているスティーヴン・ディーダラスはふらふらと物思いにふけりながら新聞社へ、一方広告取りの仕事をしているブルームは知人の葬儀に出席したあとに、同じく新聞社へ向かいます。出会いそうで出会わないふたり。他にも断片的な日常風景が幻想と交錯し、一日の中の町全体を映しだします。

著者
ジェイムズ・ジョイス
出版日


本書最大の特徴はジェイムズ・ジョイスが随所で古典文学などを模倣しているという点です。特に有名なのは物語全体がギリシャ神話の『オデュッセイア』の物語に当てはめられているという点。ブルーム夫妻がオデュッセウスとペネロペ、主人公のスティーヴン・ディーダラスがその息子のテレマコスに当てはめられています。

引用や模倣が多い『ユリシーズ』を読むにはギリシャ神話や古典文学の知識など、事前に知っておきたいことがたくさんあります。予備知識なしには理解できない部分があるので、難解だと言われているのです。文学の道を志したり教養を増やしたいのなら、ギリシャ神話と共にこの『ユリシーズ』に挑戦してみると良いかもしれません。

引用の多い作品ですので、注釈なしにはわからないことが多いです。幸い日本にはわかりやすい注釈が添えられており、それらを読むことで多少なりとも理解に近づくことができますのでぜひ挑戦してみてください。

芸術家を目指した青年、ジェイムズ ジョイスの苦悩

『若い芸術家の肖像』では『ユリシーズ』の数年前までが描かれています。『ユリシーズ』の主人公でもあるスティーヴン・ディーダラスの成長を綴った物語です。全5章からなっており、1章では幼児期を、最後の5章では大学時代を、と主人公の成長が描かれています。そんなスティーヴン・ディーダラスの半生を蝋の翼で空を飛ぼうとして堕ちたイカロスの物語になぞらえた物語で展開される小説です。

著者
ジェイムズ ジョイス
出版日
1994-02-25


本書ではジェイムズ・ジョイスが文体表現に挑戦するさまが見られます。主人公の成長に合わせて、文体を変えており、幼少期の時は幼児語の文体で書かれ、大学時代になると聖書を引用するなどお堅い文章になっていくなどと、年齢とともに変化する文体がリアルに表現されています。

もうひとつの魅力は主人公のスティーヴン・ディーダラスを作者自身に、ストーリーをイカロスの物語に当てはめて書かれていることです。これにより自由奔放に太陽のような理想に近づこうとした主人公が行き着く先は輝きか堕落か、物語の意図を読みながら楽しめる文学作品となっています。

難解すぎる内容に脱落者続出の問題作

『フィネガンズ・ウェイク』はジェイムズ・ジョイスが多くの雑誌に連載として載せていた作品です。「進行中の作品」という仮題を付けられたプロジェクトは、ジョイスの死後に『フィネガンズ・ウェイク』として1冊の本に完成されました。

本書は難解であるとして世間で賛否両論の嵐を巻き起こしました。作者と同じアイルランド人でさえ、読むことは難しいのです。

著者
ジェイムズ ジョイス
出版日


本書が超難関だと言われている理由は使われている言葉にあります。ジェイムズ・ジョイスによる造語から、日本語を含むあらゆる言語、そして英語表現による二重含意などの言葉遊びが散りばめられているからです。これにより1文ですら意味を理解することが難しくなっています。

また難解な文章構成により、物語として理解することも難しいがゆえに多くの脱落者を輩出しています。原文では小文字からはじまり「the」の文字で終わらせることにより、冒頭と巻末が繋ぎ合わされループするという試みがなされていて、小説において言葉遊びをしているかのような試みは興味深いもの。文学好きなら挑戦してみたい骨太純文学となっています。

ダブリンの生活と時代背景を映しだす

ジェイムズ・ジョイスが『ユリシーズ』以前に執筆を進めていた『ダブリンの人びと』は作者が青春時代を過ごしたダブリンでのできごとを描いた短編集です。死んだ神父と家族の交流や、恋をした友人の姉にプレゼントを買う少年など、ダブリンで暮らす人々の生活を浮き彫りにする物語が紡がれています。

著者
ジェイムズ ジョイス
出版日
2008-02-06


人びとの暮らしを描くことで時代背景を映しだすという、当時としてはめずらしい手法を用いています。派手でドラマチックな展開はないのですが、人々の素朴な生活がリアルに覗き見ることができる手法です。また盗みや変質者との遭遇など、当時の暗い一面も浮き彫りになっています。ジェイムズ・ジョイスの小説の中では非常に読みやすい内容となっているのも魅力のひとつです。

また、人々の生活に神話や聖書の引用を絡めるなど、ジョイス節が炸裂しています。わかりやすい日本語訳でジェイムズ・ジョイスが楽しめる『ダブリンの人びと』注釈が多いのもありがたいです。ダブリンの地図なども載っていたりして、当時のダブリンを知るうえで貴重な資料としても読むことができます。

ジェイムズ・ジョイスは20世紀を代表する作家として知られ、彼の本を読みたいと思っている人は多いです。ですが難解な内容により脱落者を生み出しているのも事実。娯楽小説ではなく文学を勉強したいと思うのであれば、挑戦する価値のある作家と言えるでしょう。

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