大人の恋愛を描く漫画家、石田拓実とは

石田拓実の漫画家デビューはなんと17歳の時。関西大学の工学部を卒業し就職しましたが、のちに退職し専業漫画家となりました。

2013年12月から「kiss」で『カカフカカ』を不定期連載中です（2017年3月現在）。『カカフカカ』連載中に『かわいいかわいい女の子』、『トライボロジー』を出版しており、色々なストーリーを同時進行で考えられる石田拓実の柔軟性が伺えます。

彼女の漫画の特徴のひとつは、「切り口の斬新さ」です。王道の可愛い主人公やカッコイイ王子様のような男子ではなく、本来なら脇役のような女の子が主人公であることもしばしば。だからこそ、リアルなストーリー展開になるのかもしれません。

それから、少し変わった性についての描写が多いことも特徴です。性交に抵抗のない女の子や、一回り以上も年下の男子をお持ち帰りしてしまったアラサー女子、元気がなくなった元カレのお手伝いをする女子など、少し変わった角度からのキャラ設定も妙に現実味を帯びていて気になってしまいます。

他の王道なラブストーリーに飽きてしまった女子にも、石田拓実の一風変わった恋愛漫画をおすすめします！

5位：工学部女子、女装男子など特徴的な登場人物たちの恋物語『トライボロジー』

王道の学園ものと思いきや、珍しい理系女子、しかも理系の中でも最も女子が少ないであろう工学部のストーリー。タイトルの『トライボロジー』は摩擦学という意味です。タイトル通り、主人公の周りにぶっきら棒なイケメン、女装男子、プレイボーイな先輩など少し癖のあるキャラ達が登場し、恋の摩擦を起こしていく恋愛漫画です。

主人公のひなつは恋愛よりも鉄などの鉱物を溶かす「鋳込み」に夢中という一風変わった女子大生。所属ゼミを決める頃になり、楽なゼミやモテそうなゼミを探す女友達とは違い、ひなつは一心に鋳込みを求めてゼミを選びます。そこで最初に出会った院生・守屋の鋳込み姿に一目惚れをしまうのです。

トライボロジー 1 (マーガレットコミックス)

著者

石田 拓実

出版日

2015-01-23

このストーリーの魅力は、少しズレていて癖のあるキャラクター達の空回り感や、すれ違い、タイトル通り摩擦を起こしていくところでしょう。

例えば、「一目ぼれしたのなら、ちゃんとそこで相手（守屋）に名前を尋ねないと！ゼミ名も！」とツッコミたくなる恋愛経験ほぼゼロな主人公のひなつ、「あなたの言う好きってどういう意味なの？」と問いたくなる天真爛漫な女装男子・後岡、「え？それだけで元カノって思ってるの……？」と心配になる守屋など、ほっておけないキャラ達が登場します。一見変わった登場人物たちですが、感情移入しやすいキャラ設定になっているため、ドキドキしながら読み進めることができます。

恋愛面ではもちろん、守屋を追ってゼミに入ったひなつの想いを応援したいのですが、後岡の真っ直ぐひなつを求める姿にもきゅんとしてしまい、そちらも応援したくなります。憧れの先輩とくっつくのか、居心地よく楽しい時間を過ごせそうな同級生とくっつくのか。希望を織り交ぜつつ、どうぞ予想をしてみてください。予想外のラストからは目が離せない、そんな恋愛漫画です。

4位：読むと元気になれる！リアルさが癖になる読み切り短編集『かわいい かわいい 女の子』

女の子たちの恋のお話が4つ詰まった石田拓実の一冊です。可愛さに憧れを抱きつつもどこか自分を卑下し、それぞれ異なったコンプレックスを抱え、なかなか恋に奥手になってしまっている女の子たちが主人公。

第一話の主人公石川は、同じ研究室の男子に雑な扱いをされてしまっているボーイッシュな女の子です。石川は初めて付き合った彼氏から「お前とやっても、女とやってる気しねー」と言われフラれてしまったという苦い経験の持ち主。しかもそれがトラウマとなり、自暴自棄になっている様子。そしてもちろん次の恋なんて踏み出す勇気がありません。

自分と似たコンプレックスを持っている主人公が登場するかもしれない、リアルなシチュエーションとちょっぴり夢見がちな部分が混ざったストーリーに思わずきゅんとしてしまいます。登場人物の心の声をあまり書いていないので、あとから読み返すと「もしかしてこの時こう思ってたんじゃない？」と、新たな発見が出来る石田拓実の恋愛漫画です。 

かわいい かわいい 女の子 1(マーガレットコミックス)

2014年01月24日

石田 拓実

集英社

傷つかないために、最初から諦めてしまっている事はないですか？主人公の石川は女らしさや可愛らしさを諦め、それ故、自分の新たな恋心にも蓋をしてしまっています。そんな絶賛女子放棄中の石川が突然意中の先輩からキスされ、可愛いとまで言われ……！急展開に期待するのですが、石川はかたくなに自分の心に蓋をし続けます。

深読みしたくなる心理描写、ちょっと「痛い」キャラが主人公なホロ苦い設定に時折心が締めつけられるのがこの恋愛漫画の魅力です。ホロ苦い設定ですが、そのキャラらしいハッピーエンドが待っていて、ほっこりするのもこの作品の良さです。

サクッと短時間で読めるけれど、十分に浸れるのが短編集の魅力。隙間時間に、ちょっぴりほろ苦で切ない石田拓実が織りなす恋愛漫画はいかがですか？

3位：恋愛物語×SF！？斬新なストーリー展開から目が離せない！『パラパル』

石田拓実が描く本作は全9巻、SF交じりのストーリーが珍しい少女漫画です。パラサイトという脳に寄生する謎の宇宙人のハナが主人公・小牧の体内へと侵入するところから物語は始まります。

小牧に寄生した宇宙人・ハナの目的は、地球に亡命した他の仲間達を探し出すこと。ハナが寄生したことによって小牧は嗅覚がかなりよくなり、人の発情の臭いを感知できるようになります。他にも聴覚が優れた男子・鶴見や、誰とでも性交をしてしまう問題ありな女子・黒川、女子を手あたり次第妊娠させようとする超問題児・四条、一見癒し系なのに突然性格が豹変する教師・蓮沼など、驚く設定のキャラたちが登場します。

性的な描写が多めので、大人向けな漫画です。

パラパル 1 (りぼんマスコットコミックス クッキー)

著者

石田 拓実

出版日

2005-09-15

宇宙のどこかにもしもこんな世界があったらという、なかなか恋愛漫画には珍しいストーリー。ありえないキャラ設定や、少し謎解きのような感じもあり、普通の恋愛漫画に飽きた大人女子におすすめな恋愛漫画です。各キャラの背景が意外と複雑で読み応え抜群です。

ハナの影響によって嗅覚が発達してしまった小牧は、人間の発情、性交後、受精、着床などの匂いを嗅ぎ分けられるようになっています。そんな小牧はある日、自分の彼氏と親友から性交後の匂いを感じてしまいます。さらには嘘の匂いまで……。知りたくないことまで気づいてしまい、生きづらさを感じ始める主人公に同情してしまいます。

主人公以外にも特殊な能力の持ち主が出てきたり、新たな恋が芽生えたりと次から次へと気になる要素が出てきます。宇宙人は無事帰っていくのか、小牧の新たな恋は実るのか……一気に読みたくなる面白さです。
 

2位：優等生な女子の密かな趣味はエロい妄想でした『はしたなくてごめん』

本作は全7巻で完結している、じれったさが癖になるストーリーです。主人公は、明るく誰とでも気さくに話すことのできる優等生の女の子。恋……ではなく、妄想のお相手はクラスメイトの冷たい学級委員長。

男子がお目当ての女子を夜な夜な妄想する漫画は珍しくないかもしれませんが、この漫画の主人公は女の子。しかも、表向きは優等生な学級副委員長。シングルマザーの家庭で育ち、幼いころから家事と妹の面倒を完璧にこなしてきました。そんな良い子が、まさかの喫煙＆エロ漫画が趣味だったとは！

ひょんなことでその趣味が妄想相手にバレてしまい、更には一夜をともにすることに。

はしたなくてごめん 1 (りぼんマスコットコミックス クッキー)

著者

石田 拓実

出版日

2009-12-15

この恋愛漫画の魅力は、甘酸っぱさとじれったさ。なかなか進展しない状況にじれったさを感じますが、「高校の頃はこんな感じだったかも」と、懐かしい感じが魅力かもしれません。そしてそこに特徴のあるキャラ設定が加わります。

最初は与倉の元家庭教師への恋を面白がりつつ応援する真奈緒ですが、ハッキリしない与倉に真奈緒はジュースと称してお酒を勧めます。酔った勢いで真奈緒からキスしてしまい、そのまま一夜を共に。記憶が曖昧な真奈緒に対し、途中で行為を止めたことを打ち明けない与倉。「ハッキリ言えばいいのに！」と思いつつ、このギクシャクした関係が初々しくて可愛く感じます。

与倉が想いを寄せる女性には彼氏の存在が。叶わぬ恋と諦めたい与倉ですが、その先生がかなり思わせぶり……。先生からすると可愛い生徒を世話しているだけかもしれませんが、与倉の方は気が気ではありません。この二人の関係にもじれったさが。

相手を思ってこそ言わなかった言葉、それがかえって誤解を生んだりと、じれったさ満点です。そして話が進むと、真奈緒を横取りしようとする先輩まで現れ……果たして真奈緒は与倉とくっつくのか、先輩とくっついてしまうのか、そして与倉は家庭教師とくっついてしまうのか？

ハッキリしない、なかなか進展しない初々しい恋愛漫画、心の中であれこれ口出ししつつ読んでみては？

『はしたなくてごめん』について紹介した＜『はしたなくて ごめん』全巻の見所ラストまでネタバレ！リアルすぎ【無料】＞の記事もあわせてご覧ください。

1位：元カレにはある秘密が…？石田拓実の人気恋愛漫画『カカフカカ』

失恋、就活、挫折、シェアハウスでの生活、三角関係など、気になる要素が盛りだくさんな本作。引っ越し先のシェアハウスで運命のような再会を果たす、亜希と元カレの本行。しかも偶然体が密着した際、本行の固いものが亜希のおしりに当たります。

「おまえは思春期男子か！」と思う亜希ですが、実は本行には問題が。亜希と別れてから全く立たなくなってしまった、とのこと。しかも合コンで出会った女子とそういう状況になっても反応なし。さすがに落ち込んでいた本行ですが、なぜか亜希には即反応……。

「ヘンな意味じゃなく、協力してほしい」という本行の訴えに仕方なく応え、奇妙な添い寝生活が始まっていきます。

カカフカカ(1) (KC KISS)

著者

石田 拓実

出版日

2014-08-12

2017年3月現在連載中の、石田拓実の人気恋愛漫画です。最近の20代の悩みをぎゅっと詰め込んだようなリアル感にドハマりする読者が続出中。果たして主人公・亜希と元カレの奇妙な関係は可なのか不可なのか……。

強烈な設定に初めから惹き付けられるストーリーです。草食系男子や男の娘など、奥手な男子が増える現代にマッチした内容は、「もしかして実話から来ている？」と思うほどのリアルさです。何を考えているか分かりづらい本行の表情も、実際に居そうな感じがします。

他の石田拓実作品もそうですが、特徴は絶妙なリアルさ。漫画っぽいきゅんとしたシーンももちろんありますが、状況やキャラ設定がリアルなんです。そして、この『カカフカカ』は特に同情すらしてしまうキャラ設定の深さ。

亜希と本行とともに生活する、優しいお兄さんタイプの長谷や美人なあかりもそれぞれ悩みや訳ありな過去を抱えています。亜希に突然執着しだす長谷の過去に納得しつつも……「実は本当の本心は、これなんじゃないか？」と想像したり、なかなか深いキャラ設定、トラウマに心が締め付けられることも。

普通の少女漫画はもう卒業した、そんな大人女子にもオススメしたい、石田拓実の恋愛漫画です。

気になるものはありましたか？紹介したどのタイトルも、石田拓実ならではの少し斜めなキャラ設定や妙なリアル感がぎゅっと詰まっていて面白いです。ストーリー展開の読めそうな王道のラブストーリーに飽きた大人女子に是非読んでほしい！休日の現実逃避に、漫画をまとめ読みしてみては？