イェーツは詩人として活動しながら、ケルト神話や伝承に魅せられ、秘密主義に没頭した作家です。オカルトにまで傾倒した彼が紡ぎ出す詩の世界観はまさに幻想で溢れています。今回はそんな彼の魅力をたっぷり楽しめる書籍を5冊、紹介していきます。
ウィリアム・バトラー・イェーツはアイルランド出身の詩人です。地元のケルト文化に魅入られ、アイルランドの古い伝説や民謡などを作風に取り入れています。「黄金の夜明け団」という秘密結社のメンバーとしても知られており、神秘主義に傾倒していました。精力的にアイルランド文芸の復興に尽力した人物です。
1865年にダブリンで生まれたイェーツは、画家であった父親の影響もあり、画家を目指し始めます。しかし2年の修行後、詩人になることを決意。1889年には『アシーンの放浪』を刊行します。その後もケルトの神話や民謡などに影響された詩を書き続けました。
また『キャスリーン伯爵夫人』という詩劇を書いたり、アイルランド文芸座を組織したりと、アイルランドの文化発展に尽力もしています。1923年にはノーベル文学賞を受賞しました。
『対訳イェイツ詩集』はジェイムズ・ジョイスなどの翻訳で有名な英文学者の高松雄一よって対訳された、イェーツの全集です。多くのジャンルや文体で書かれることで有名な彼の全詩集から54編もの詩が厳選され、イェーツの魅力が余すことなくなく網羅された1冊です。
- 著者
- イェイツ
- 出版日
- 2009-07-16
ロマン主義、神秘主義、モダニズムなど幅広いジャンルで詩をを網羅する本作は、『アシーンの放浪』に収められている作品に始まり、晩年の作品までカバー。恋愛を描いていたり、自然に潜む妖精の不思議な力が描かれていたりと、様々なジャンルに挑戦して変化していくスタイルを楽しめることができる詩集です。
また日本語訳では表現できない、原文ならではの韻が楽しめるようになっています。色々な角度からイェーツについて知りたい人におすすめです。
ケルトの文化が根付くアイルランドには妖精伝説が多数存在しています。本書『ケルトの薄明』では、イェーツ自身が集めて回ったケルトに伝わる民謡が楽しめますよ。
- 著者
- ウィリアム・バトラー イエイツ
- 出版日
伝承を集めたということで、幽霊や妖精といった類の不思議なものが登場します。巧みな語り口によって、はてなんだろうと興味を惹かれることでしょう。そして読者は、現実世界と幻想世界が区別できなくなるような貴重な体験をすることになるのです。
またアイルランド独自の妖精たち、それらに対する人間の関わり方にも気づきを与えてくれる1冊になっていますよ。
『薔薇-イェイツ詩集』にはイェーツの代表作となっている詩集『薔薇』から、晩年に発表された『最後の詩集』に至るまでの12の詩集から142もの詩を選りすぐって掲載した1冊です。完成された作風を楽しむことができますよ。
- 著者
- W.B. イェイツ
- 出版日
イェーツの選び抜かれた言葉によって、紡ぎ出される世界観が美しいです。言葉が世界や空間を作り出しているのです。さらに日本語訳としても美しい言葉が選ばれており、日本語ならではの綺麗な漢字を選び、詩の世界にマッチした語感に近づけようとしていることも本書を楽しめる要素となっています。
またオカルトへの造詣が深いイェーツの魅力が楽しめるのも本書の魅力です。ケルト神話に登場する妖精や妖異の類をテーマにした詩が多く、神秘的な雰囲気を楽しめますよ。
『赤毛のハンラハンと葦間の風』では、妖精物語で「赤毛のハンラハン物語」と詩集『葦間の風』から18編の詩が楽しめます。前者は日本語としては初めての翻訳となります。
- 著者
- W.B. イェイツ
- 出版日
- 2015-03-16
「赤毛のハンラハン物語」ではそのタイトルにもある通り、ハンラハンという登場人物が主人公。物語は彼がある日、魔王の書を手に入れるところから始まっていきます。6話から構成される同作は、幻想文学ファンにはたまらない幕開けですよね。後半からは、ケルト神話独特の自然信仰が生み出す言葉が表現された詩が楽しめます。「赤毛のハンラハン物語」に関連した詩がピックアップされているのもありがたいですね。
さらに訳者による解説も読み応えたっぷりです。また詩という象徴的な言葉には想像力が必要になってきますが、写真や絵によって読者の想像力が補われる点も魅力的な1冊です。
アイルランドで伝えられてきたケルト民族の伝承や民謡から、妖精が登場する物語のみを集めた本書『ケルト妖精物語』。様々な種類の妖精を網羅され、イェーツによる「アイルランドの妖精の分類」も収められており、妖精辞典のように読むこともできる1冊です。
- 著者
- 出版日
妖精が出てくる物語はファンタジー要素も強く、娯楽としても読みやすい内容になっている点も魅力的です。また現代のファンタジー作品にも登場し、世界中に知れ渡っているバンシーなどの妖精たちも登場する点も、興味を誘います。たとえばファンタジー小説やゲームなどが好きな方にとっては、そこに登場する幻想生物たちの元ネタを詳しく知るのに便利な1冊になることでしょう。
なお出てくる妖精は、可愛らしいものばかりではありませんよ。本書でぜひお気に入りの妖精を見つけてみてください。
イェーツは詩を書きながら、地方に散らばるアイルランドの伝承や民話を集めてまとめ上げました。文学だけでなく、民俗学にまで貢献していたのです。そんな彼のアイルランド文化愛に満ちた書籍はどれも傑作ばかりです。