純愛漫画からサスペンス、異国情緒漂うものまで多種多様な題材で描かれる赤石路代作品。その中からとくにおすすめの5作品をご紹介します。
赤石路代は1959年生まれの埼玉県出身の漫画家です。武蔵野美術大学で学び、1979年小学館新人コミック大賞入賞。1980年にデビューを果たし、以後、数々の作品を生み出しています。
作品はジャンルに捉われません。輝く才能や驚くべき能力を秘めている主人公が、夢や困難に立ちむかって行く様子が物語の世界観とともに専門的な知識を交えながら軽快に描かれる作品が多くあります。
幸せな家族に囲まれて生きてきた主人公美緒は、火事で家族を亡くしてしまいます。奇跡的に助かった美緒は、同時に自分の不思議な水の力が目覚めた事に気がつくのですが、恐ろしいとしか思えない力を自分自身認めることができません。
美緒は初めて会ういとこの四条忠臣の家にひきとられます。その後、暴漢に襲われ、殺人事件にまで発展するなど、美緒を不幸が襲います。そんな中、絶体絶命なピンチを空から助けてくれた青年に、美緒は心惹かれていくのですが、そこには因縁と運命が渦巻き、美緒もその中に飲み込まれていくのです。
- 著者
- 赤石 路代
- 出版日
- 2008-11-15
なぜ、命を狙われるのか。不思議な力の正体は。自分の前世は何だったのか。ごく普通に暮らしてきた主人公美緒は、その謎を解くため、自分のルーツを探すことになるのですが、その中で運命の愛をみつけます。
「どこにいるの。ねえどこにいるの。どうして会えないの!?もう会えないの!?」(『天よりも星よりも』より引用)
たった一人に出会うために生まれ変わるなんて、そこまで人を愛せる、愛される事はできるのでしょうか?愛について、運命とは?ロマンティックな気持ちを思い出せる作品です。
モーツァルトのあると。そんな名前の由来に恥じないほど、ピアノが大好きなあるとは、母一人子一人の母子家庭。病気療養中の母を気遣い音楽学校への進学を諦めようとした矢先、母の友人である有名な指揮者・千家宣威の推薦で東京の有名音楽学校への入学が決まり上京します。
千家先生の家に下宿することになりますが、特別推薦での入学者に周りは好奇な視線で前途多難の様子。それでも大好きなピアノとなら乗り越えていこうと決意します。忘れられなかった思い出の男の子、さえぐさしょう君。そして口は悪いが心優しい、千家北斗。二人と出会い、あるとを含む三人の人生は交わっていくことになります。
- 著者
- 赤石 路代
- 出版日
「4月の晴れた草原できくモーツァルトみたいだ」(『「あると」の「あ」』より引用)
そんな風に表現されるあるとのピアノ。あるとのモーツァルト奏鳴曲イ長調の演奏がはじまると風がふき、草花の香りが漂っているような空間に引き込まれます。他にも北斗の弾くまばゆいラフマニノフ。三枝勝が奏でる透き通るような深いバッハのバルティータ。クラシック未経験者も一度本物の音を聞きたくなるはずです。
運命の悪戯ともよべる出会いを機に明かされる真実。音楽を通じ育まれる愛。赤石路代の描くラブ・シンフォニーをぜひご覧下さい。
日本映画界に帝国を築いている北斗シネマグループ。その北斗家で使用人として暮らす花王莉は左目に沖縄の巫女ユタの瞳を持ち、人の運命を見通す力を持っています。その力を使い北斗グループの繁栄を支えてきましたが、その秘密を唯一知っていた総帥北斗良造が急死し、残された遺言が波紋を起こします。
遺言には、ふたりの息子のうち「花王莉と結婚しない方にグループを継がせること」と「両方とも結婚意志がない場合、ライバル会社と合併させること」が書かれていました。
北斗兄弟の兄青矢か弟陽平。どちらかを選ばなくてはならなくなった花王莉は、青矢と愛し合っていましたが、青矢は会社の為自分を選ぶなと花王莉に別れを告げるのです。映画監督を目指す陽平と婚姻した花王莉に待ち受ける運命とは。
- 著者
- 赤石 路代
- 出版日
- 2008-01-16
陽平の作る映画も見逃せないポイントですが、それに関わる人々の人間ドラマも丁寧に描かれ注目です。女優、監督など日頃目にする人以外にも、記録係、美術など色々な役割を果たす多くの人の手により映画は作られ、その一人一人に物語が溢れています。
結婚してもなお、消すことのできない青矢への気持ち。二人の間で揺れ動く花王莉の思いが切なすぎます。気持ちが離れたわけではない恋人同士の別れは狂おしいです。
推理作家、遠山京介の名で活躍する、妻でもあり、一児の母でもある遠山京香が夫・遠山康平の亡き父・前華浜市長遠山康造氏の跡を引き継ぐかたちで華浜市長選に立候補。見事、当選を果たした事により、市長・遠山京香が誕生します。
日本屈指の巨大都市華浜市。日本で4人目の女性市長京香が女性として、子を持つ親として、主婦としての感覚と亡き養父から受け継いだ地元華浜市への熱い想いを胸に市政を動かしていきます。
そんな中、わき起こる数々の問題を政治家としては新人の京香が、鋭い推理力と大胆な行動力を武器に悪や不正に戦いを挑む姿は必見です!!
- 著者
- 赤石 路代
- 出版日
- 2012-07-14
若い世代を筆頭に政治離れが進む時代、京香のような市長がいれば政治に希望を持てるのかもしれません。
作中に登場する権威を振りかざす議員や、ずさんな仕事をする役人。利益追求の業者や、偏見や差別をするたくさんの人々。これは現実にいる人たちです。京香が直面する数々の問題も、大なり小なりどこの地域も抱えているのではないでしょうか?
無関心。それが多くの問題の解決を阻む大きな壁ではないかと京香は訴えます。命懸けで市長として職務を全うする姿をみて、自分を振り返るきっかけにしてみてはいかがですか。
お嬢様学校に通う、女子高生・小早川志緒。校内では清楚なお嬢様を演じ、病弱を装いたびたび早退・欠席を繰り返しているのですが、実はそれはP.A.プライベートアクトレスというアルバイトの為だったのです。
P.A.とは個人的な依頼で現実社会で役を演じるというもの。母親が大女優でその隠し子である志緒は、決して表舞台に立つことができません。志緒は天才的な演技力を持ちながらも、現実社会で演じる道を選んで生きています。
依頼のほとんどはエキストラや結婚式の友人役などですが、演技力を見込まれた志緒の元には、難しい依頼が次々に持ち込まれます。
- 著者
- 赤石 路代
- 出版日
完璧に役を演じ、時には本物と錯覚させるほどの演技力。複雑な家庭に育ちながらも、明るくさっぱりとした性格の美人。誰もが憧れる志緒が依頼の背景にある様々な愛憎劇を垣間見ながら成長するサクセスシンデレラストーリーです。
1998年には榎本加奈子主演でドラマ化されていますが、「こんな天才的な女優いないよ」とつっこまずにはいられません。性格から年齢までも偽り演技で別人になりきる志緒のような女優が、出てくる日はあるのだろうか?それとも、もうすでにそんな女優がいるのかも知れませんね。
ジャンルの違う5作品を紹介しましたが、赤石路代作品はどれも人間的な感情の色の濃いものばかりです。どの主人公の人生からのぞき見してみますか?