漫画家西原理恵子と整形外科医高須克弥が付き合っている。その事実に多くの人が衝撃を受けました。ビッグカップルだけど、何て面白いふたり。その日常を描いた漫画は、発売後即売り切れ、重版の大ヒット。その『ダーリンは70歳、71歳』の人気の秘訣とは?
- 著者
- 西原 理恵子
- 出版日
- 2016-01-20
『ダーリンは70歳』は2016年1月に、『ダーリンは71歳』は2017年1月に発売されました。内容は西原理恵子と高須克弥カップルの日常を描いたおのろけコミックエッセイです。
西原理恵子の作品はギャグを主体にした無頼派と、ノスタルジックに泣ける叙情派に分けられます。本作はそんな彼女の振り幅ある作風と、実際にふたりの日常を1年ごとに追いかけて描いたライブ感が楽しめる作品。今回は彼女たちの規格外のエピソードをいくつかネタバレしてご紹介します!
出典:『ダーリンは71歳』
ふたりの馴れ初めは高須がまだ結婚していた時代。「下品な高須克弥と友達になりたい」と雑誌で西原が発言し、そのあと彼女がファンレターを送ったことで始まりました。
意外にもその時の手紙の内容は丁寧なもの。作品のネタにさせてくれるだけでいい、お金も美貌もいらない、ネタにする時は必ずFAXを送って許可を得ます、という内容だったのたとか。作品を読めば分かるのですが、ほぼ詐欺まがいの手紙です。しかし高須は「嘘ばっかり」とけろりと笑って振り返ります。なかなか最初からフルギアな関係のスタートです。
そしてその後恋人関係になる馴れ初めが漫画に描かれています。奥さんを亡くしてうつ状態になってしまった高須。友人関係だったふたりですが、西原が週に1回外に連れ出すうちに関係は少しずつ深まっていきます。
ある日、体力のない高須が早めに部屋に戻りたいと、住んでいるホテルに行くことになります。そこで西原はルームサービスのシャンパンを飲みながら、つまみがないからと高須の乳首をつまもうとするのですが……。
続きは『ダーリンは70歳』巻末のおまけ漫画でどうぞ。女性としてはこんな迫り方もあるのだなぁと勉強になります。男性陣は自分の身は自分で守れるようにこれを読んで備えておきましょう。ちなみにこの画像は別のお話のものですが、西原が高須に迫る様子は作中に何度も出てきて、毎度笑わせられるものとなっています。
高須克弥は2016年 で御年70歳(このエピソードが入っているのは『ダーリンは70歳』)。世界美容外科学会会長であり、日本の整形業界で様々な偉業を成し遂げた人物です。しかし、女心に関してはなかなかのトリッキーな考えをお持ちの方です。様々な迷言を生み出しています。
おそろいの指輪を買おうと言う西原に「二個買いなさい。それを自分の両手につければ」
手を握られそうになり、「げぇっ」と振り払う。
「豚みたいに可愛いその出たお腹」
成田のホテルに取材クルーと秘書が待っているから別行動にしてほしいと言う高須「だって恥ずかしいじゃん仕事なのにキミと一緒って」
なかなかストレートに乙女心を切り裂く発言ばかりですね。しかし、西原もそこは作家脳。ネタを収集する冷めた目を持ち合わせています。それは高須が手術後に麻酔薬で意識朦朧としている時。優しくキスをする西原にこう言うのです。
「雑菌だらけのきったねぇ口とかおしつけてくんじゃねぇよ このバカ女が」
しかしそれに対する西原のツッコミも「こいつ薬でラリって本心がだだ漏れしてやがる」と怒りながらも冷静。本当にいいカップルです……。
出典:『ダーリンは71歳』
西原がなかなか強力な性欲を発揮しているので、良かれと思ってか高須はよく脱ぎます。ある時はホテルの部屋で脅かそうと思って下半身をさらしてばぁ!FAXを届けに来たコンシェルジュに冷静に対応されます。
ある時は仕事で1ヶ月会えないと拗ねる西原を元気付けようと上着のボタンを外し、新幹線の中から窓に肌をペタリ。乗務員に取り押さえられます。
そして最終形態は『ダーリンは71歳』でのエピソード、西原理恵子の51歳の誕生日のことです。横浜アリーナの歌謡祭のスペシャルゲストととして仕事が入った高須に怒り心頭の西原。彼は西原をなだめるためにこう言います
「キミのために キミのためにっ 脱ぐ」
怒りながらもどうしてこうなったのか考えてる西原。
「ねぇ許可して キミの許可がないと脱げないし ほら早く言って言って ねぇねぇ」
そしてなぜか8000人を前にして脱ぎ、その夜風邪を引くのです。どうして?とりあえず愛だけは伝わってきます。たしかに一番大事なのは気持ちなんですが、なぜ脱ぐ。西原は誕生日に71歳のおじいさんの看病をします……。それも愛ですね。
出典:『ダーリンは71歳』
しかし、なんだかんだ言ってもふたりは仲良し。ある時、西原の携帯に知らない番号から電話がかかってきます。電話の主は高須でした。彼はいつも持っている携帯を新しくするのに6時間かかるということをわざわざ他の電話からかけてきてくれたのです。
「だから6時間だけ連絡とれないからね 心配しないでね」
自分が心配しないように心配してくれる。そんな優しさをかみしめて西原は仕事を続けます。優しいですね。そしてその優しさに気づけることも恋愛関係では重要になってくるもの。ふたりは本当にお似合いのカップルです。
しかし、1時間も経たないうちに再び高須から電話がかかってきます。「テレビつけてー」そこにはゴミ屋敷をレポートする記者と野次馬たち。そしてその野次馬たちの中に見慣れた金髪の男性が……。高須です。ピースをしながら楽しそうにカメラに写っています。これには西原も呆れ顔。
「ダーリンは恋人の数時間を心配してくれるが
70歳にもなって基本やってる事が小学生」
ギャグと見せかけて叙情的な展開を織り交ぜてまたギャグ。彼女のごちゃまぜの画風のように、面白いものがめいっぱいつめこまれている展開です。下世話に面白かったり、下ネタ満載だったりする彼女の作品は内容や文字が詰め込まれているので読後はお腹いっぱい!
それでもやっぱり叙情的なシーンがほっこりと心に残るのは、それが彼女の経験からくる本物の言葉で描かれているからでしょう。優しい展開こそ彼女の作品の本質なのではないでしょうか。
- 著者
- 西原 理恵子
- 出版日
- 2017-01-19
このほかにも高須が加入する秘密結社フリーメーソンの昇進試験の話や、「お金をまいて大きなお友達をがっかりさせるのが大好き」な高須がお台場のガンダムに高須クリニックのたすき掛けをつけさせたことなど、ワールドワイドだったり、規模が大きすぎたりするネタが多数出てきます。
そしてそのギャグの間に挟まれる西原理恵子の叙情派テイストが感じられる場面はついほろりときてしまいそうなもの。年を重ねたからこそ言える言葉や関係性は学ぶところが多くあります。ぜひ本書でその良さを存分に味わってみてください!