『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』で知られる伏見つかさとかんざきひろのコンビが贈る新シリーズ「エロマンガ先生」シリーズ。今回は、本作の魅力を2017年4月現在刊行されている8巻まで紹介していきます。
主人公の高校生兼ラノベ作家の和泉正宗には、「エロマンガ先生」という、エッチなイラストで有名な凄腕の担当イラストレーターがいました。その正体は、驚いたことに、なんとまったく部屋から出てこない、12歳の妹の和泉紗霧なのです。
まさか、ひとつ屋根の下でずっと引き籠っている妹が、いかがわしいペンネームで、エッチなイラストを描いていたとは……。
主人公の和泉正宗は、ペンネーム「和泉マサムネ」として高校に通いながらラノベ作家として執筆活動をしていました。そんな彼には、和泉紗霧という血の繋がらないひとりの妹がいました。彼女は重度と言っても過言ではないほどの引き籠もりで、兄も含めた他人が家の中にいると部屋から出られません。そればかりか、このように、顎ではなく足で兄を使う一面もあるのです。
四月のある日。台所で夕食を作っていると、どん! と、天井が揺れた。
「もうちょい待ってろって」
どんどんどんどん!
上の部屋に向かって応えたら、余計にひどい返事が来やがった。
「はいはいはいはい! わかったわかった!」
俺は充分に熱くなったフライパンを構え、片手でたまごを割り落とす。
じゅう、ぱちぱち……美味そうに焼けていくたまごを眺めながら、俺は「はぁ……」と溜め息を吐く。(『エロマンガ先生』1巻より引用』)
そんな、足ドンで食事を作らせて部屋の前まで持ってこさせる紗霧に、兄は頭を抱える毎日を送っていました。
- 著者
- 伏見 つかさ
- 出版日
- 2013-12-10
悩みながらも今日もラノベ作家として仕事に精を出す正宗には、相棒の凄腕担当イラストレーターがいました。それがタイトルにもある「エロマンガ先生」なのです。手掛けるイラストもそのペンネームの通り、遠慮がないと言っていいほどとにかくエロい。でも腕は確かで、正宗の書く作品を見事に彩り、サイン会まで開催されるほどの人気を叩き出してくれるのです。
引き籠もりを決め込み続ける妹と、その妹との床ドンの関係に悩むラノベ作家の兄。そんな、どこにでもいそうな訳あり兄妹とその日々に最初は微笑ましく感じながらページを捲る手が進んでいきます。しかし、「エロマンガ先生」の正体が明らかになった時から、ライバル作家の登場など波乱を巻き起こす展開が多発して、気になるあまり一気読みしてしまうでしょう。一見ほんわかとした感じだけど、思わぬ展開があちこちで待っているため、ドキドキワクワクさせられる兄妹ラブコメディ。そんな『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』コンビが新たに生み出す本作を、全力でおすすめさせていただきます。
書くのはエッチなイラストばかりだけど、腕は確かだということで信頼していたイラストレーターが妹だったことに衝撃を受けた正宗。兄に自分の引き籠もりの理由である自分の仕事場を見られたことに気まずく、きまりが悪くなる紗霧。しかし、今まで自分の仕事を陰から手伝ってくれていた妹に、正宗が改めて感謝の気持ちを伝えることで和解し、二人三脚のラノベ作家活動を続けることを決意します。
そして、「兄妹の夢」として「妹小説(仮)」の出版を目指そうとした矢先、正宗の携帯に助けを求める二通のメールが届きます。メールの送信者のひとりは、お隣に住んでいるライバルの売れっ子大作家・山田エルフ。最初は無視しようとした正宗ですが、もう一方の紗霧からの助けを求めるメールを見て彼女の部屋へ駆けつけると、お隣からエルフが玩具の矢を打ち込んでまで助けを求めてきていました。しかもその理由が、これまたしょうもないものなのです。
- 著者
- 伏見 つかさ
- 出版日
- 2014-05-10
「……奴等は悪魔よ! かよわいわたしに向かって、ちゃんと仕事するかどうか監視するって……新刊の原稿を書くまでゲームをやらせないっていうのよ!」
「よし! 山田エルフ先生、家に戻って仕事しようか!」
俺は、よっこらしょとソファから立ち上がった。
がしっ! エルフは俺のシャツを力いっぱいつかみ、涙目で取りすがる。
「突き出さないで! マサムネ先生! お願いします! かくまってください!」
(『エロマンガ先生』2巻より引用)
このように、締め切りから匿ってほしいというしょうもない理由でライバルに泣きついてくるエルフの他にも、和泉兄妹には次々と厄介事を持ちかけてくる人物が現れます。妹小説(仮)の出版を目指している矢先に「発売日は一年後です」と、容赦なく現実を突きつけてくる担当編集者。ラノベを「キモオタ小説」と言い捨てバカにしている紗霧のクラスメイト・神野めぐみ。そのラノベを巡って彼女と喧嘩してばかりで「やつをラノベにはめる」と鼻息を荒くする、正宗の同級生で本屋の娘・高砂智恵。そんなエルフや彼らに振り回され、ハチャメチャなやり取りを繰り広げる和泉兄妹。
しかし、兄妹の夢を叶えるためにも、どうしても妹小説を今年のうちに出版したい正宗は、四苦八苦しながらも奔走し続けます。そして、優勝者に出版枠が提供される一大プロジェクト「ラノベ天下一武闘会」に参加することになりましたが、そこには因縁深い同レーベルの年下の先輩作家・千寿ムラマサも参加していたのです! 和泉兄妹は、念願の妹小説を出版できるのでしょうか……?
無事に妹小説こと新作の『世界で一番可愛い妹』を完成させ、9月の出版枠を確保することに成功した正宗と紗霧。しかし、彼らにホッと一息をつく暇すら与えないかのように、エルフやムラマサと共に打ち上げを行っている最中、
「『夏の取材&執筆合宿』! あんたたちの夢を叶えるためには、必須のイベントよ!」(『エロマンガ先生』3巻より引用)
と、突然そう宣言したエルフに引っ張られる形で、夏休み、彼女が別荘として所有する南の島での「夏の取材&執筆合宿」に参加することになります。
- 著者
- 伏見 つかさ
- 出版日
- 2014-10-10
あまりにも強引すぎるエルフの誘いであることと、未だ引き籠もりを脱することができないでいる紗霧のこともあり、最初、正宗はあまりこの合宿に乗り気ではありませんでした。しかし、作家として向上してほしい、他ならぬ妹の兄思いの後押しもあって、参加を決意。この合宿を有意義なものにしようと意気込みます。しかし、言い出しっぺのエルフは水着に着替えるやいなや仕事そっちのけで遊び始め、さらにムラマサはエルフにハメられて、際どい水着を披露することになってしまいます。まさに水着がよく映える南の島で繰り広げられるドタバタ合宿。
そして、お菓子作りが趣味な新人作家・獅童国光や、妹のサボり癖に悩むイケメンの編集者・山田クリスなど、様々な新キャラが登場するのも注目どころです。果たして、正宗初めての執筆合宿はどうなってしまうのでしょうか?
「よーっく聞けよーーニセモノ野郎。オレ様が“本物”の『エロマンガ先生』だ」(『エロマンガ先生』4巻より引用)
大胆不敵にも、『開かずの間』こと紗霧の作業場のモニター越しにそう言い放ってきたその謎の人物「エロマンガ先生G(グレート)」。「エロマンガ先生」の正当後継者を自称する謎の人物に動揺する紗霧ですが、驚く暇も与えられることなく、その「エロマンガ先生G」とペンネームを賭けて勝負することになります。
- 著者
- 伏見つかさ
- 出版日
- 2015-03-10
第4巻の見所は、題名にもある通り、「エロマンガ先生」こと紗霧と、「エロマンガ先生G」の対決にあります。正当後継者を自称するだけあって、「エロマンガ先生G」の技量も伊達ではなく、えっちなイラストの描写もかなりのものです。そんな思わぬライバルの出現に更に動揺しながらも、持てる限りの力を注ぎ込む紗霧の姿と、二人が繰り広げる冗談抜きの真剣勝負に、今までの巻にはないシリアスさが感じられます。
また、和泉兄妹の新作に新たなる展開が起き、さらには「エロマンガ先生」という恥ずかしいペンネームの秘密が明らかになるという、もうひとつの驚きの展開が待っています。次々と巻き起こる波乱の展開の第4巻のメインとなる真剣勝負の行方、そして紗霧を圧倒する技量を誇る「エロマンガ先生G」。その正体は、一体何者なのでしょうか?
「おにーさんっ、クリスマスパーティやりましょうよ!」(『エロマンガ先生』5巻より引用)
12月になり、めぐみの提案で、正宗はクリスマスパーティを開くことになります。しかし、めぐみと智恵のエルフとの初顔合わせや、クリスマスパーティにおいてエルフが“隠し球”と称する取っておきの出し物。はては紗霧の可愛い企みなど、とにかくクリスマスもドタバタのハチャメチャな展開連発です。
そして、1月になって、紗霧からのチョコが欲しい正宗は、同じくチョコが欲しい国光ら作家仲間たちと共に「バレンタイン作家会議」を開き、そこでバレンタインデーに向けた自分への想いを武器に、ああでもないこうでもないととにかく激論を交わします。
- 著者
- 伏見つかさ
- 出版日
- 2015-09-10
このように、クリスマスとバレンタインデー、立て続けにドタバタのハチャメチャで笑いありな展開が続きますが、楽しい時間は長続きはしません。それこそが、第5巻でのもうひとつの見所、和泉兄妹の保護者である和泉京香が帰ってくるところです。硬い表情と厳しめな口調でいつもふたりに接してくることから、和泉兄妹から恐れられている彼女は、和泉兄妹が二人暮らしを続ける条件である「定期テスト」を出してきます。しかもこの「定期テスト」は、乗り越えることができなければ、和泉兄妹は今後別々に暮らさなければならないというものなのです。
別居ということになれば、仕事だけでなく、兄妹としての関係にもピンチが入ることになります。今まで以上と言っていいほどのこの試練を、和泉兄妹は乗り越えられることができるのでしょうか。前半のイベント盛り沢山な展開に加え、後半のこのシリアス感満載な展開も、この5巻において目が離せないところとなっています。
京香から出された「定期テスト」という最大の試練を乗り越え、そして自身で「開かずの間」からも出られるようになるなど、関係においてある程度の進展も見られた和泉兄妹。ところが、一難去ってまた一難。それでも彼らに一息つく暇も与えられないのです。
「『エロマンガ先生、ステージイベントで初顔出し! なんとその正体は美少女だった!』って企画書に書いちゃったので説得よろしくでーす♪」
「アホか!」
ぱぁん! 俺は、信頼の握手を引き千切った。(『エロマンガ先生』6巻より引用)
なんと、春のレーベルの祭典において、「世界で一番可愛い妹」の開催が決定した矢先、担当編集の神楽坂あやめが独断でエロマンガ先生、つまり紗霧の初顔出しをステージイベントで決定してしまったのです。この初顔出しで目に見えているのは、紗霧の名誉の危機。正宗は妹を守るため、なんと京香に「エロマンガ先生」の代役をお願いするという苦肉の策に打って出たのです。
- 著者
- 伏見つかさ
- 出版日
- 2016-03-10
かくして苦肉の策は成功し、妹への危機は去り、同時に京香との関係においても進展が見られたのですが、今度は正宗にさらなる災難が降りかかってきます。それこそがこの巻の題名にもある「山田エルフちゃんと結婚すべき十の理由」。なんと、エルフ本人から熱烈にして怒涛のレクチャーを受けることになります。
しかもめぐみたちとの合コンや、ムラマサ家の訪問で明らかになるムラマサの秘密など、紗霧以外の他ヒロインたちの猛アプローチが始まるのです。妹を救えたはいいものの、エルフをはじめとした、自分に好意を寄せる他ヒロインたちの攻勢を、マサムネはどう乗り越えていくのでしょうか?
七月二日、十七時十四分。出版社の大会議室にて。
「やぁっ、初めまして、和泉マサムネ先生ーー」
「『世界で一番可愛い妹』アニメ化決定、おめでとうございます」(『エロマンガ先生』7巻より引用)
出版社に行って早々、ついに自作の小説のアニメ化が伝えられた正宗。驚きを隠せないながらも、また一歩近づけた「兄妹の夢」実現への喜びを噛み締めながら、和泉兄妹は2人で小説のアニメを手掛けるスタッフの作品である「星くず☆うぃっちメルル」を見ます。そんな中で期待を膨らませつつ、アニメの脚本会議に臨む正宗ですが、そこでハードルとして立ち塞がったのが、アニメの脚本担当として任命された葵真希奈。これがかなりの怠け癖持ちという曲者で、なかなか脚本を提出せず、一時は担当変更という危機に瀕します。
- 著者
- 伏見つかさ
- 出版日
- 2016-08-10
正宗と担当プロデューサーである赤坂透子の懸命な説得で、やっとやる気を出した真希奈ですが、なんとアニメ制作中に和泉兄妹に取材するべく、和泉家に居候を決め込んできたのです。そしてここからが、題名にもある『アニメで始まる同棲生活』。真希奈の居候とアニメ化の話を聞きつけて、ムラマサがアシスタントとして押しかけてきたり、さらにはエルフや京香までもが乗り込んできたりと、一夜にして和泉家は賑やかな場へと様変わりします。そして、アニメ化に伴って嵐のように大量の仕事が舞い込んできて、仕事、学業、家事、そして恋愛沙汰で正宗も不眠不休の生活を強いられるようになります。
そんな日に日に疲労困憊となっていく兄を見て、心配に思った紗霧もある決断に踏み切り、ヒロインたちとの同棲の場となった和泉家はさらに混沌を極めていきます。仕事と色恋の板挟みとなってしまった正宗は、この局面をどう乗り越えていくのでしょうか? 第6巻に引き続いてのヒロインたちの正宗へのアプローチと繰り広げられる恋の駆け引きにも注目です。
「今日から兄さんは、私と同棲するの」
俺の無茶に勘付いた紗霧が、とんでも無いことを口走った。
わざわざここーー『開かずの間』の鍵を閉めた上でだ。
「な、なに言ってんの!? おまえと俺は、いままでだってずっと一緒に暮らしていただろ!」
「ちがう。同じところで暮らさないと、同棲とはいわない」
「だから同じ家で暮らしてたじゃないか!」
「ここ」
紗霧は、首を横に振る。
「今日からこの部屋で、一緒に暮らす」(『エロマンガ先生』8巻より引用)
先ほどの第7巻の紹介にも挙げた、紗霧の決断。それはなんと、今まで自分の仕事場で世界にしてきた『開かずの間』での“同棲”だったのです。困惑を隠しきれない正宗ですが、有無を言わさぬ勢いで紗霧に押し切られてしまい、結局『開かずの間』での同棲を余儀なくさせられてしまいます。面白くないのは、エルフやムラマサら他のヒロイン一同。同棲初日から兄妹で添い寝してしまったところを目撃したのをいいことに「家庭裁判」を始め、しまいには自分たちも同棲すると言いだしてきてーー!?
- 著者
- 伏見 つかさ
- 出版日
- 2017-01-10
そんな、第7巻から引き続いてのヒロインたちの同棲兼アプローチが、この第8巻でもこれでもかとばかりに繰り広げられます。そして、恋に仕事の二重の修羅場をなんとか乗りきった正宗は、束の間の休日に、これまでの思い出を回想していきます。しかもその中には、正宗が小説を書き始めたきっかけや、今まで語られることのなかった和泉兄妹の過去までもが……。
正宗と紗霧は、どのような理由で巡り合い、血の繋がらない兄妹となることになったのでしょうか。そして、それまでのふたりとは、いったいどんな様子だったのでしょうか。この第8巻では、シリーズ最大の謎となる和泉兄妹の過去が今明かされるというところに注目です。
いかがでしたでしょうか。「エロマンガ先生」シリーズは、2017年4月にアニメ化という新たな展開を迎えています。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の伏見つかさ&かんざきひろが送る可愛らしく面白い兄妹ラブコメディ、皆さんも興味が湧きましたら、第1巻『妹と開かずの間』から始めてみてください。