センス・オブ・ジェンダー賞で特別賞を受賞した作家・寿たらこ。知る人ぞ知る有名な漫画家です。SFファンタジーはBL漫画の域を超えるほど!そんな寿たらこ作品をランキングでご紹介します。
寿たらこは千葉県出身の漫画家です。4月24日血液型はB型。海老ゆう太というペンネームでも活動していました。2007年に『SEX PISTOLS』でセンス・オブ・ジェンダー賞特別賞を受賞しています。
作風は多彩。ぶっ飛んでいるテンション高めのラブコメディから、哲学的なシリアス・ファンタジーやSF作品など多岐にわたります。しかも似ている設定の作品が一つもありません。
特におすすめなのは、巧みに計算されたファンタジーやSF作品です。作者のこだわり抜いた設定は読みごたえ十分!その世界観にぐっと引き込まれます。BL界でも新しいジャンルも創り上げており、コアなファンも多い作家です。
花咲家の末っ子・椿は、専門学校に通いながら長男・冬時の経営する動物病院で受付のバイトをしています。椿が最近気になっているのは、フレンチブルドックの飼い主で現役高校生の妙典忠義です。けれどその忠義は椿の兄・桜に気がある様子。美形な上、いつもキラキラしている桜に敵うはずもなく落ち込む椿でしたが、そんな彼を忠義の兄・正義が口説き始めます。
- 著者
- 寿 たらこ
- 出版日
- 2010-02-27
モテる男たちに囲まれた椿のお話です。初めは、全員が全員とも一方通行の恋なのかと思いますが、そこは寿たらこ、これでもかと凝った設定を盛り込んできます。そこに至る心情も描かれており、軽い男はそれなりに、深い愛情を持った男はそれに似合うくらいの心情で描かれており、読み応え十分です。
登場してくるワンちゃんの「心の声」も面白く、第3者的な立場から常にツッコみや疑問を投げつけています。もしかしたら一番冷静なのはペットたちかもしれません。そんなペットたちの心情も合わせて読んでいただきたい作品です。
学校一の色男・浅見と、その浅見に見初められてしまった男・駒崎の二人が繰り広げる、テンション高めのドタバタラブコメディです。浅見に振り回される駒崎の慌てぶりが笑えます。
ホテルで一人目を覚ました駒崎は、お尻の痛みで男と寝てしまったことを悟ります。その日を境に、なぜか学園一モテる色男・浅見に口説かれるようになり、「男を誘うフェロモン」が出ているのかと、混乱する毎日。押しの強い浅見に、流されまいと踏ん張る駒崎でしたが、まっすぐに気持ちを伝えてくる彼の意外な一面を見てしまい、少しずつ惹かれていき……。
- 著者
- 寿 たらこ
- 出版日
キャラクターが最初から最後まで生き生きしています。ちょっと下品な言葉も出てきますが、全体がギャグテイストなためか、全く気にならず、むしろ笑えます。始まりはBLの王道のような設定ですが、そこはさすが寿たらこ!個性が強いです。そのあとに続くストーリーと、上手く合わせて面白く仕上げています。流れは独特ではありますが、ギャグを散りばめながら、伏線を回収しまとめ上げているのがすごいところ。他の作品に比べ、変わったテイストではありますが、最後まで楽しく読んでいただけるお話です。
ここまで凝った作品はBL界でもなかなかありません。キリストをテーマに、細部に渡り、作者がこだわり抜いたお話です。読者にもその姿勢がぐっと伝わります。この漫画を読む際は、じっくりと腰を落ち着かせて、静かな場所で読まれることをおすすめします。
「ずっと待ち続けた この日を この機会を
逃げ出す素振りも見せずに 常に従順に息を潜めてずっと
生き残るために」(『Dogla + Magla』から引用)
- 著者
- 寿 たらこ
- 出版日
- 2003-08-05
クローン技術が発展した世界が舞台です。ある教団が力を入れているのは、キリストのクローンの創造。主人公・クリスは、教団にキリストのクローン部品として生かされ続けています。生き残るために逃亡を決意したクリスは、側近のアベルを連れ、教団からの脱出を試みるのです。二人が向かった先は日本。そこはクリスにとって特別な場所でした。
宗教とクローンを合わせたSFの物語です。彼女の作品の中でも、かなり凝られた設定なので、さらっとは読めないお話かと思います。大変読み応えのある作品であり、短編という少ないページの中、難しいテーマをきれいにまとめています。
1度だけではなく、2度3度と読み返してほしい作品。読めば読むほど、新しい発見があり、そしてより一層の理解を深めることができる作品です。
圧倒されるほど、巧妙に考えられた作品です。天使をテーマにしたSFファンタジーであり、シビアで残酷な世界の中、少年と天使の交流を描いています。
「始まりは 冗談まじりのお遊びだったんです」(『コンクリートガーデン』から引用)
- 著者
- 寿たらこ
- 出版日
- 2002-07-05
ある学者が天使の血を手入れました。その学者は、天使の血から細胞を取り出し、その細胞を未受精卵に移植します。面白半分で始めた実験で、オスの天使が生まれました。彼の名前は朱鷺(トキ)。
彼のために、一人の少年が友人として招かれます。少年の名前は樫井清春、朱鷺を創った学者の孫です。清春は、なぜ自分が友人に選ばれたのか疑問を感じつつも、朱鷺に会いに行きます。けれど、一つ問題がありました。清春は知らなかったのです。天使が「人を食べる生き物」だということを。
生きる上での残酷とは何か。人間が残酷と責めるものは、自然界の中で通用することなのか。自分の常識は、本当に常識なのかなど、色々考えさせられるお話です。じっくり練られた設定に、思わずため息が出てしまいます。作品を通じて訴えていることは何か、じっくり読み返すことで、より一層面白味が増す作品です。
センス・オブ・ジェンダー賞、特別賞受賞作品です。寿たらこと言えば『SEX PISTOLS』と言われるほど。「同性同士で子供ができる」という設定に加え、動物の階級を社会に反映しているなど、精密に練られた世界観へ、読者を一気に引き込みます。
始まりはコミカルで面白い内容ですが、複雑に絡んでくる大人たちの思惑や、それに振り回されていく主人公たちが描かれ、徐々にシリアスなお話が盛り込まれていきます。
- 著者
- 寿 たらこ
- 出版日
- 2007-06-01
事故にあった日から、周囲の人間が時々動物に見えるようになったノリ夫。その上、なぜか周囲から熱烈に愛される体質になってしまいます。混乱しっぱなしのノリ夫に対し、部活の先輩は鬼気迫る勢いで忠告します。「斑目国政」には気を付けろと。けれど、偶然にも二人は出会い……。
いけ好かない相手なのに、なぜか匂いを嗅いだだけで安心する自分もいて、ノリ夫の心は複雑に揺れていきます。
初めはノリ夫のハイテンションで、面白おかしく描かれたラブストーリー中心のお話ですが、少しずつ切ない部分が盛り込まれていき、現実に振り回されながらも、まっすぐに生きようとするキャラクターたちに胸が打たれます。
妊娠や、斑類の身分や特別な力など、かなり詳細に練られており、考え抜かれた設定に脱帽すること間違いなしの作品です。ぜひコミックで設定も合わせて、楽しんでいただきたいお話です。
寿たらこの作品をランキングでご紹介しましたが、いかがでしたか。ぜひこの機会に一度読んでいただきたいお話ばかりです。特におすすめは、やはり1位で紹介した『SEX PISTOLS』。これほど作者色が強く、よく練られたお話はなかなか出会えません。面白い、この一言に尽きます。常に斬新な設定で、読者を驚かせてくれる、そんな寿たらこの今後の活躍に大注目です!