三秋縋のおすすめ小説4選!いま注目の若手作家の魅力に迫る!

更新:2021.12.18

三秋縋という作家をご存知でしょうか?まだご存じない方も多いかもしれませんが、その独特な物語の切り口と世界観にすでに魅了されている読者の方も少なくないはずです。今回は、そんな若手作家三秋縋の魅力をたっぷりお伝えします!

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三秋縋とは

まずは作家三秋縋についてご紹介したいと思います。ネット社会が生んだ、今までにないような発想を持った、若手の作家です。

「2ちゃんねる」というサイトの中で、「げんふうけい」という名前で作品を発表したのが始まりでした。2011年からサイト内での発表を続け、2013年9月にメディアワークス文庫から複数の作品を発表し、作家としてデビューしました。

作風としては、一言でいえば「男女の甘く切ない恋」をメインに描いています。登場人物の男女は、必ずと言って良いほど「闇」を持っており、その「闇」のせいで、世間から疎まれたり、人に嫌われたり、社会になじめなかったりしています。そんな彼らの暗い人生に一筋の明るさをもたらしてくれるのが「愛」なのです。

単なるラブストーリーだと思って読み始めることはあまりおすすめしません。ですが、覚悟をもって作品のページをめくると、今まで見えなかったことや、感じられなかったことに気付くきっかけを得ることができるのではないでしょうか。
 

『スターティング・オーヴァー』ある日突然、自分の人生が10年巻き戻っていた……

主人公「僕」は、時間が巻き戻る前、それなりに順調な人生を送っていました。それだけに、時間が10年巻き戻ってしまったことが悔しく、その10年より「もっと良い人生」ではなく「全く同じ人生」を歩んでやる、と決心します。しかし、本人は「1周目」と全く同じ行動をしていると思っていても、ほんの少しの違いで、「2周目」は「1周目」のようにはうまくいかなくなってしまったのです……。

著者
三秋縋
出版日
2013-09-25

この作品は、三秋縋としてデビューする前、「げんふうけい」としてネット上で公開していたものを、加筆・修正するなどして書籍化されました。

この作品は、いわゆる一般的にありがちなストーリーの真逆を突いてきます。誰もが「良い人生」を歩みたいと思っているはずなのに、敢えて「全く同じ」な人生、むしろ「悪い人生」を歩んでしまう主人公。

ストーリー自体の設定も独創的ですが、さらに、「僕」だけでなく「僕の恋人」「僕の妹」など周囲の人々も絡んできます。

この作品を読むと、思わず、自分の人生を振り返ってしまいます。自分では、自分がどの時点で、どういった行動をして、人生のターニングポイントを迎えていたのか、後からでないと分かりません。でも、だからこそ、自分がいまやっていることを大切にして、のちに振り返った時に後悔しない人生を送りたいな、と思わせてくれる作品です。

『三日間の幸福』寿命を買い取ってもらった。

主人公クスノキは、幼少期から周囲に好かれない、孤立した存在でしたが、同じく周囲から嫌われ、同じ境遇にいたヒメノと、お互い将来うまくいかなかったら結婚する、という約束をしていました。案の定、大学生になっても冴えない人生を送っていたクスノキですが、お金に困り、なんと「寿命」を売って生活費を得ることにしたのです。「寿命」を売ったクスノキの残りの人生やヒメノとの約束はどうなってしまうのでしょうか……?

著者
三秋縋
出版日
2013-12-25

この作品も、三秋縋としてデビューする前、「げんふうけい」時代のものが書籍化されました。

まず、寿命を売ってお金を得る、という設定に度肝を抜かれます。クスノキの寿命が売られる際、その価値を「査定」されるのですが、読んでいる方も、「もし私の寿命が査定されたらいくらの価値があるのだろう……?」とドキリとさせられます。

また、一見クスノキとヒメノの恋愛が描かれるのでは?と思われますが、そこも見事に裏切ってきます。

人生のはかなさ、時間の価値、自分にとっての「幸福」とは何なのか、など、私たちが考えなければならないのについ目をそらしてしまうような現実を扱った、決して「軽い」作品ではありません。しかし、現実逃避している私たちに、もう一度、考えるべきことを考えるチャンスを与えてくれる、そんな大事な作品なのではないかと思います。

『いたいのいたいの、とんでゆけ』殺めたはずの少女との再会

主人公湯上瑞穂は、小学校を転校する前日に、日隅霧子から文通をしないかと持ち掛けられ、それから約5年間、お互いに少し浮世離れした価値観を共有しながら文通を続けていました。文通開始から5年目に、瑞穂の方から一方的に霧子との文通を切り上げてしまいますが、自殺した親友進藤の言葉を受け、瑞穂は、霧子に直接会いたいと手紙を書きます。

そして、22歳の秋、瑞穂は殺人犯になります。しかし、瑞穂は、彼が殺してしまったはずの少女と再び出会い、彼女の復讐に手を貸すことになるのです……

著者
三秋縋
出版日
2014-11-21

この作品は、他の三秋縋作品に比べ、圧倒的に「悲惨」なストーリーになっています。「悲惨」というのは、もちろん登場人物が悲惨な目に遭う、という意味でもありますが、さらに、その「悲惨」な状況の描写が「悲惨」なのです。とにかく描写が生々しく、思わず目をそむけたくなるようなシーンがありますが、こういったシーンが凄惨に描かれているからこそ、ラストはこの上なく美しいものとなっています。

『恋する寄生虫』それは、操人形の恋

「社会に適応できない」という共通点を持った失業した青年高崎賢吾と不登校の少女佐薙ひじりは、出会ってから、ともに社会復帰に向けてリハビリを始めます。

高崎賢吾は極度の潔癖症、佐薙ひじりはいわゆる対人恐怖症。2人とも社会に適合できない状態となっていたのですが、そんな2人が、社会復帰に向けたリハビリを通して、互いに惹かれ合っていきます。しかし、「虫」の存在が2人の恋に暗い影を落としていき、ラストは……。

著者
三秋 縋
出版日
2016-09-24

この作品は、他の作品に比べて少しSF要素が強いものになっており、ヒトに寄生する「虫」に寄生されてしまった人がたどる運命までもが描かれています。

また、三秋縋作品には、「時間」がキーワードになる作品も目立つのですが、この作品には「時間」はあまり関わってきません。しかし、その代わりに、高坂からの視点で描かれた語り口だけではなく、佐薙からの視点で描かれているシーンもあります。

ネット上の「げんふうけい」としてではなく、三秋縋として書き下ろした作品となっており、今までの三秋作品とは一味違ったテイストになっているのではないでしょうか。

三秋縋ワールド、いかがでしたでしょうか?

ご紹介した4作品以外にも、素敵な作品がまだ残っています。ご自分のお気に入りの一冊を探してみるのも面白いかもしれませんね!

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