佐野洋子のおすすめ絵本10選!名作『100万回生きた猫』作者

更新:2017.4.21

2010年に惜しまれつつも亡くなった作家の佐野洋子。有名な『100万回生きたねこ』だけでなく、他の絵本にも、温かいメッセージが込められています。特に深い話だなぁと感じる絵本をご紹介します。

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『100万回生きたねこ』を生み出した作家佐野洋子

佐野洋子は、1938年北京生まれ。9歳の時に、家族で日本に引き揚げてきました。武蔵野美術大学を卒業後、ベルリン造形大学でリトグラフを学び、1971年、33才の時に、初めての絵本『やぎさんのひっこし』を出版します。

生涯で、2度結婚しており、1度目の結婚で長男を出産。長男は、絵本作家の広瀬弦です。53才の時、詩人の谷川俊太郎と2度目の結婚をしますが、6年後に離婚しています。生涯にわたり、絵本、エッセイ、小説、舞台の戯曲と、精力的に作品を発表しました。2010年、惜しまれつつ永眠。72才。

エッセイストとしても有名ですが、辛辣なエッセイの作風とは違い、絵本の世界では、佐野洋子の純粋さ優しさを感じます。もちろん、オリジナルのユーモアもたっぷり。パステルカラーの鮮やかな色彩を使った、味わいある絵が印象的。佐野洋子の一生のテーマでもある、死というものを絵本に取り込んだパイオニアともいえる絵本作家です。

死について的確に美しく表現した名作

『100万回生きたねこ』は、絵本作家としての佐野洋子の代表作。1977年に出版されてから、通算200万部を超えるベストセラー作品。一匹の猫が、輪廻転生を繰り返すおはなしです。

王様の猫、サーカスの猫、小さな女の子の猫と、それぞれの場所で愛されて過ごすのですが、猫は、飼い主のことを愛せず、死んでは生き返りを繰り返してしまいます。

ある時、野良猫となった猫は一匹の白猫と出会い、子どもが生まれ、幸せに暮らします。時がたち、やがて白猫が永い眠りについたとき、猫は初めて愛することの意味を知り、愛する者の死に涙を流すのでした。
 

著者
佐野 洋子
出版日
1977-10-19

佐野洋子は子どものころ、兄と弟を病気で亡くしています。家族の死を幼いころに体験したことにより、死というものに対して、人より早い段階から考えてきたのではないでしょうか。

愛する白猫が亡くなったあと、大声で泣いた猫は、白猫のそばに横たわります。そして、2度と起きることがないのです。猫は、とうとう死を迎えます。死を迎えた猫に、読んだ人はみな、「よかったね」と声をかけたくなるはず。人生について悩んでいるときに、本当に大切なものは何なのかという疑問に、爽快な答えをくれる名作です。
 

雨の日に、傘をさすのが楽しみになる一冊

立派な傘を持っているのに、雨が降っても傘をささないおじさん。『おじさんのかさ』の主人公のおじさんのように、自分の傘に愛着を持ち、大事にしている人は多いですよね。お気に入りのものだったり、奮発して買ったものだったり、大切な人からの贈り物だったり、傘を大切にする理由は、いくつもあると思いますが、おじさんは立派な傘を自慢したいようにも見えます。

おじさんは、大事な傘を、頑なに使いません。雨が降ったらかさを大事に抱えたまま雨宿りし、子どもから、かさに入れてと言われても聞こえないふりをするんですよ!

そんながんこなおじさんが、傘を使う日がやってきます。

著者
佐野 洋子
出版日
1992-05-22

子どもが楽しそうに傘をさす姿を見て、つい自分の傘を開いてみたおじさん。新しい傘に雨があたる音のなんて楽しいこと!傘の本来の使い方の楽しさに目覚めたおじさんは、満足して家に帰ります。

頑なだったおじさんの心が開かれた瞬間を、佐野洋子のほのぼのとした絵で描いた温かいおはなしです。

「あら、かさをさしたんですか、あめがふっているのに」(『おじさんのかさ』から引用)

おじさんを家で迎えた奥さんの名言ですね。おじいさんと奥さんの関係性も、温かみがあって心が安らぎます。新しい傘を買って、雨の日に指すのが楽しみになる、そんな一冊です。
 

危険な冒険に出かけるくまを、送り出すねずみの本当の気持ちとは?

森の中にあるくまの家、そしてくまの家の床下に先祖代々住むねずみ。仲良しのくまとねずみは、一緒にピクニックに出かけたりもします。チーズのおいしさに喜び、天気が良いことに喜び、くまとピクニックができるという普通のことに喜ぶねずみ。

でも……くまは、ピクニックは楽しいと思いながらも、心のどこかで寂しくなります。くまは、夢をかなえる勇気を持たなきゃと思いながらも、踏み切れないでいるからです。

現状に満足していて、心の底から楽しむねずみと、満足できず夢を追いかけるくま。あれ?自分のことかもと思い当たる人はいませんか?
 

著者
佐野 洋子
出版日
1994-11-16

ある日、とうとうくまは決心して、夢をかなえに行きます。くまの夢は、先祖代々伝わる赤いじゅうたんで空を飛ぶこと。

『ふつうのくま』は小さな絵本ですが、人生のアドバイスをもらえるような、名言集のような絵本です。夢をかなえようと、一歩を踏み出す勇気。心配で涙を流してくれる人の存在の大切さ。信じて待ってくれる人の大切さ。そして本当の勇気とは?本当の幸せとは?

生きていれば、誰でも突き当たるような悩み。絵本『ふつうのくま』の中には、そんな苦悩に対する答えのヒントが詰まっています。くまは、夢をかなえて、ねずみのもとへ帰ってきます。その時に、ねずみがくまに語る、ほんとうの幸せとは?佐野洋子からのアドバイスだと思って読むとさらに感慨深いものがある一冊です。
 

空飛ぶやさしいライオンは、なぜ石になったのか?

この絵本にはたくさん猫が出てくるので、佐野洋子の描く猫のファンにはうれしい一冊です。

りっぱなライオンと猫たちは一緒に暮らしています。猫たちは、りっぱなライオンを美しいと褒め称え、餌を取ってきてくれるたくましさを褒め称えます。ライオンは、猫たちの期待に応えようと、つい頑張りすぎて、夜は泣くほど疲れてしまうのです。

人間関係の中で、つい頑張ってしまうという人には、身につまされる話です。ライオンを褒め称える猫たちにも、そこまでの悪気はないのですが、結果的にライオンを追い詰めてしまいます。
 

著者
佐野 洋子
出版日
1993-10-27

疲れ果てついに倒れてしまったライオンは、金色の石になってしまいます。そこで猫たちはようやく驚きますが、時すでに遅しです。何百年も石になったまま眠り続けるライオン。

頑張りすぎてしまうと、どこかにひずみが出てくるもの。ライオンのように眠り続けられればいいですが、人間だとそうもいきませんね。ライオンは最後に目覚めるのですが、なぜ目覚めたのか?目覚めたきっかけは何だったのか?ぜひ、じっくり考えてもらいたいです。頑張りすぎているあの人に、プレゼントしてもいいかもしれませんね。
 

98才のおばあさんの口癖、だってだってをポジティブに使うと……?

98才のおばあさんは、5才の元気な男の子の猫と一緒に住んでいます。元気な猫は、毎日釣りに出かけるのですが、おばあさんを誘っても、「だって わたしは 98だもの。」と、いつも断られてしまうのです。

99才のお誕生日においしそうなケーキを作ったおばあさんは、猫に、ろうそくを99本買いに行かせます。ところが、慌てて帰った猫は、川に落ちてしまい、残ったろうそくは5本だけ。それでもないよりましと、ケーキに5本のろうそくを立てます。

すると……おばあさんは、なんだか5才になった気分になり、釣りにも出かけ、川だって飛び越してしまうのです!

「5才ってなんだかとりみたい」(『だってだってのおばあさん』より引用)

著者
佐野 洋子
出版日

99才のおばあさんが、鳥になったように川を飛ぶ。そんな夢のような楽しい光景を、この目で見たようにうれしくなる場面です。本当に飛ぶのは危ないので辞めてもらいたいですが、そんな心持ちで年をとっていけたら素敵ですね。

○○だからできないと、理由をつけてあきらめるのではなく、〇〇だからできるかも?という発想の転換で物事を捉えてみると、新しい発見があるのかもしれません。だってだってという口癖も、考え方を変えれば、ポジティブに変身です。

日常生活の些細なことでも、不可能を可能にしていくというのは爽快ですね。

年長者のはずのおばあさんを優しく見守る猫の存在も、心強くて、うれしくなります。年長者も、若者も、チャレンジしなくちゃ人生面白くないよ!という佐野洋子のメッセージを感じる楽しい一冊。5才になったつもりで、街に出かけたら、愉快なことがあるかもしれませんよ!
 

佐野洋子が描くブラックユーモアを楽しむ

この物語の中では主人公の猫が、悪夢のような状況に追い込まれていきます。でもなぜか、はたから見ている読み手はクスクスと笑ってしまうような面白い物語なのです。

猫は魚が大好きで、なかでも大好物はサバでした。今日はサバを食べようと思いついた猫の頭上から、降ってくるはずのないサバが突然降ってくるのです。次から次へと猫に降りかかってくるサバが不気味で、猫は映画館に逃げ込みました。

ホッと一息ついた猫があたりを見回すと、周りに座っている観客がなんとすべてサバ! 猫は驚き逃げ惑いながらも、一段落してお腹が減ると、やっぱり好物のサバを食べようと心に決めるのです。

著者
佐野 洋子
出版日
1993-11-12

猫が見たサバの大群は、はたして幻覚なのか、亡霊なのか。アウトローな雰囲気の猫が大好物のサバに追いかけられて逃げ惑う姿は、読み手の笑いを誘います。

ストーリー展開もさることながら、空から猫めがけて降ってくるサバの表情が素晴らしいです。目をカっと見開き、絶叫しているかのように皆口を大きく開けています。猫が慌てて逃げ惑うその表情も必死の形相です。

どんなに怖い目に合わされても、結局猫は、自分の好きなものをあきらめません。その姿は猫の本質を表しているようでもあり、見習いたいと思う人もいることでしょう。コロコロと変わる猫の表情が最高に面白いので、猫の顔に注目して読んでみて欲しいと思います。

失ってから気づく大切な存在

この物語に登場するおじさんは、家のすぐそばに生えている大きな木に文句ばかり言っています。朝になると、小鳥たちがさえずってうるさいと怒鳴りつけ、木の幹を蹴り飛ばしたりするのです。

おじさんが大きな木の下でお茶を飲んでいると、木から落ちてきた鳥のフンがお茶の中に入ってしまいました。おじさんはまたまた大きな声で怒りを込めて「おぼえていろよ」と怒鳴りつけるのです。

秋にはいっぱいに実った実が子どもたちに盗まれてしまい、冬には雪かきをするおじさんの頭上に雪がドサっと落ちてきてしまいます。おじさんが再び大きな木を蹴飛ばして文句を言うと、大きな木に降り積もっていた雪がドサドサとおじさんの頭上から降ってくるのでした。

著者
佐野 洋子
出版日
1992-12-07

おじさんはついに我慢の限界を迎え、木を切り倒してしまいます。しかし翌朝、鳥たちの歌声が聞こえなかったおじさんは朝寝坊をしてしまい、自分の手で切ってしまった木を見て後悔し、涙を流すのです。

大きな木はおじさんの心の支えだったはずですが、おじさんは大きな木が与えてくれるポジティブな面を見ようとせず、ネガティブな部分ばかりを見て腹を立てていました。おじさんは自分の行いを振り返って後悔し、切り株から生えている新芽を大事に世話するようになります。

いつも側にいてくれる人をうっとおしいと思うことは誰にでもあることでしょう。しかし、そういった相手こそかけがえのない大切な人だったりして、失ってからその大切さに気づくこともあるのです。この物語はそんな教訓を読み手に与えようとしているのかもしれません。

親子の絆が描かれた、佐野洋子の絵本

最初から最後まで、子どもの父親へ対する愛情があふれている絵本です。長い間家にいなかったお父さんが帰ってくると、子グマは大喜び。お父さんの手を握って森へ散歩に出かけます。

散歩の途中、橋が流されていることに気づくと、お父さんは自分で大きな木を折って橋を作って見せるのです。その頼もしい姿を見た子グマは、お父さんを憧れのまなざしで見つめます。子グマがお父さんを褒めても、お父さんはただ、自分はクマだからクマらしいんだと言い、決して威張ったりしません。

著者
佐野 洋子
出版日
2001-10-01

強くて優しく、あるがままの姿を見せるお父さんクマと、その姿に心底憧れている子グマの姿がとてもほほえましく、理想の親子像とはこういうものではないかと感じさせられる作品です。

大きな事件や笑いを誘うコミカルなシーンはないけれど、この絵本には何度でも読み返したくなる幸せがぎっしり詰まっています。子グマがお父さんに対して、思ったことをストレートに口に出して伝えている姿を見れば、コミュニケーションの大切さを改めて思い知らされるのではないでしょうか。

ありのままの姿を認めあい、互いを思いやる親子がほほえましいこの物語は、父の日の前に子どもに読んであげると良いかもしれません。

夏の日が恋しくなる

暑い夏の日、お昼寝をしなさいとお母さんに言われた子猫は、どうしてもお昼寝をしたくないと思って、なんと家を抜け出してしまいます!

遊び相手を探す子猫でしたが、外で出会う友達はみんな眠たそう……みんなが眠そうにしていて、眠る場所を探す姿を見ているうちに子猫まで眠くなってくるのです。

物語の途中から、現実なのか、それとも夢の中なのか曖昧な雰囲気に包まれ始めます。大人はこの絵本を読めば子ども時代に過ごした夏休みを思い出すかもしれません。

著者
森山 京
出版日
2007-11-01

お昼寝の物語なので、夜の寝かしつけには向いていないと思う人もいるかもしれません。しかし、この絵本に登場する子猫の表情はとても豊かで、子どもは自然と感情移入できると思います。だんだんと眠気に負けていく子猫の顔を見ているうち、見ている方まで眠くなってしまうのではないでしょうか。昼寝の気持ちよさがページ全体から伝わってきて、うらやましい気持ちになるかもしれません。

昼寝から目が覚めた時に食べる、虹色のシャーベットも魅力的です。暑い日には気持ちよくお昼寝をして、目が覚めたら冷たくて美味しいおやつを食べる。子猫の贅沢な一日を見ていると、夏の日が待ち遠しく感じられることでしょう。

大人にこそ読んで欲しい、佐野洋子の童話

この物語の主人公はなんと、生まれたくなかったから、生まれなかったという男の子です。その表情はどこか寒々しく、生まれてきた女の子の生き生きとした表情とは対照的に描かれています。

女の子が男の子に挨拶しても、自分には関係ないとばかりに男の子は知らんぷりをするのです。でも、犬に噛みつかれた女の子が泣き出すと、女の子のお母さんがやってきて優しくばんそうこうを貼ってくれます。2人の姿を見た男の子の心に、変化が起きるのです……。

著者
佐野 洋子
出版日

男の子は、お母さんの愛に包まれて安心する女の子を見て、生まれる事を心に決めます。そして、男の子は自分のお母さんに初めて出会うことになるのです。

改めて、母親の存在が子どもにとって大きなものだと感じさせられる作品。子どもに読み聞かせるだけでなく、大人が自分で読むために選ぶ作品としてもおすすめです。

主人公の男の子の心の変化を感じ取りながら読み進めれば、自分の子どもをそれまでよりもっと深い愛情で包んであげたくなることでしょう。

佐野洋子の絵本から感じるメッセージ。何度も読み返し、人生の応援団として、本棚に飾っておくのもよし。悩んでいる人へのプレゼントにするのもよし。子どもと一緒に楽しんでもよし。絵本を開いて、読んでいると、佐野洋子がそばにいるようにも感じる、そんな心強い絵本ばかりです。