2017年夏に3度目のアニメ化が決定した『魔法陣グルグル』。名言?いや、迷言?満載のファンタジーギャグ漫画です。今回はそんなしょっぱすぎる言葉たちをキャラ別にご紹介します!ネタバレを含むのでご注意ください。
物語は現実と魔法の領域、ふたつの均衡から成り立つ世界が舞台。長い間平和が訪れていましたが、近頃魔王ギリが不穏な動きを見せ始めていると言われています。噂によると彼は「闇の世界」に足を踏み入れ、そこから力を引き出してこの世界を支配しようとしているのです……。
と、ここまで聞くとまるでこれからハラハラドキドキのファンタジーストーリーが始まるのかと思われるでしょうが、本作の見所はギャグ。ゆる〜い画風にぴったりなやる気のない勇者・ニケと、夢見がちすぎて頭の中がお花畑チックな魔法少女・ククリが主人公です。
物語の核はククリの使う魔法陣グルグルの謎を解き明かすところにあるのですが、その秘密は生みの親を知らない彼女本人も未知の領域。だからと言ってその謎への探究心は全くなく、旅もそんな感じで進んでいくのです。
しかしちょいちょい伏線のような箇所がありつつも、ゆるいギャグ漫画なのだろうと読者が油断しているところに本格的なファンタジー要素が詰め込まれていきます。特に終盤のスピード感溢れる展開は見もの。今までの伏線を回収して一気に物語が進んでいきます。
王道の設定、からのギャグ、からの本格ファンタジー要素と飽きることなく楽しめる作品です。
いつも肩の力が抜けていて、エッチなことに目がない普通の少年、ニケ。ストーリー上メインで戦うのはククリですが、彼も回を追うごとにレベルアップしていき、徐々に勇者らしくなっていきます。
- 著者
- 衛藤 ヒロユキ
- 出版日
彼の特徴はなんといってもゆるいところ。例えばククリがグルグルで出した「長い声のネコ」という魔法は間の抜けた声で鳴き続けるもので、すべての魔法を無効化するもの。
しかしその声によって人間のやる気も奪ってしまいます。魔物の魔法を無効化したのはいいものの、戦えないと困っている場面で活躍するのが勇者ニケです。なぜ彼は戦えるのでしょうか?
「あっ勇様!勇者様は平気だ
ふだんから気が抜けてるからっ」
さすがゆるすぎる勇者様、ニケです。
そんな彼はところどころで勇者らしい発言をキめ、ククリをうっとりとさせるのですが、クサい雰囲気に敏感に反応する風の精霊ギップルによって雰囲気を台無しにされます。
例えば初めてギリ側に勇者たちの存在を知られてしまった時のこと。これからますます敵の襲来が増えるだろうな、と心配しつつもこう言います。
「ま 来るなら来い!
おもしろくなってきそうだな!」
少年誌の主人公らしいセリフでバンダナを巻き直している姿にククリは何もいわずに頬を染めますが、遠くにいるはずなのになぜかその空気を感じとったギップルのコマによって台無しに。かっこいいのになかなかキマらない残念勇者です。
ミグモグ族という魔法使いの一族最後の末裔、ククリ。ミグミグ族だけが使いこなすことのできる古代の魔術、グルグルと彼女の出生にストーリーの鍵がある重要なキャラクターです。
- 著者
- 衛藤 ヒロユキ
- 出版日
- 2014-02-22
彼女はいつも夢見がちな少女。今まで慣れ親しんだ王国を離れる時も、モンスターがいるという恐ろしい世界に旅立っていくというのにこんなことを言います。
「これからいよいよあたしたち世界を冒険するのね!(中略)
どんな世界が待っているのかしら……」
頭の中はストーリーの山場だけを集めたような、でも全く突拍子もない妄想でいっぱい。なぜか魔法の呪文が「焼芋(スイートポテト)!!」だったり、謎のキーアイテム「ムーンストーン」が出てきたりと、確かにとても楽しそう。
しかしそんな憧れの気持ちだけでいいのか冒険の始まり……。実はこの一連の妄想はただのギャグに見せかけてのちのちの伏線になってくるので、注意して読んでみてください。
ククリの人気の理由のひとつはニケを心から信じる可愛らしい性格です。ある日ニケはこんな普通で取り柄のない自分が本当に勇者でいいのかと自問自答します。そんなときに彼女がこう励ますのです。
「あの…勇者様はいつも通りに今できることを自由にやればいいと思うの
ククリが一番すごいなって思うのはおこったり笑ったりしてるいつもの勇者様よ!」
まっすぐな言葉が可愛いらしいですね。しかし話しかけているのはニケとは似ても似つかぬ謎の物体……。
抜けていて夢見がちな天然キャラですが、あざとさや嫌味さがなく、ほのぼのと癒されるヒロインです。
ニケたちが旅したゲル二大陸で最も信じられているプラトー教の司祭の娘、ジュジュ。彼女はこの宗教の巫女で、神のお告げを聞く預言者であり、また神に捧げる祈りによって魔力を利用して戦うこともできる、通称「戦う神官」です。
- 著者
- 衛藤 ヒロユキ
- 出版日
- 2014-03-22
普段は無表情で何を考えているかわからないジュジュですが、ストーリーを追うにつれて徐々に変わっていきます。そして巫女としてずっと守られてきた故郷の村を離れ、「自由な鳥」に憧れて旅に出るのです。
そんなジュジュの願いを旅の終盤で思い出したククリは、彼女にグルグルで召喚できる空飛ぶ幻獣、ヨンヨンを見せ、「ちょっとかっこわるいけどククリの鳥だよ!」と言ってそれで最後の大陸に渡ることを提案します。それを見てジュジュは満足げに頷き、こう考えるのです。
「鳥に憧れて旅に出たけどクーちゃんの自由なきもち自由な魔法が
わたしにとっての『鳥』だったよ
ありがとうクーちゃん」
しかしすぐに次のページでククリの魔力が尽きてヨンヨンは海に沈没。さすがククリ、いい場面だけでは終わらせません。
あせる一行ですが、ジュジュは落ち着いてこう言います。
「だいじょうぶよ 沈ませないわ
わたしの鳥だもの!!」
そう言って呪文を唱え、ククリのグルグルとジュジュの魔力でヨンヨンが進化するのです。かっこいいですね。この物語で唯一、能力がちゃんとキメシーンになるキャラクターです。
神秘的な力で窮地をさらっと助けてしまう、もしかするとストーリー上最強のポジションかもしれないキャラクターです。
キタキタ踊りという気味の悪い踊りだけに情熱を注ぎ、周囲にその良さゴリ押しするおっさん、キタキタおやじ。紹介についてはそれだけで十分なほど、ただただずっと踊っています。
- 著者
- 衛藤ヒロユキ
- 出版日
- 2014-05-22
うざったい親父ですが、そのキタキタ踊りへの愛は本物!ストーリーのクライマックスで、魔王ギリが潜む闇の中に入れるのは本来ニケとククリだけなのですが、そこにむりやり乱入!
「あなたが魔王ギリですか こんなところで会えるとは奇遇ですなぁ!
世界征服なんてそんなことよりキタキタ踊りを!!」
世界征服よりキタキタ踊りの方が大きいとは、おやじの考えることは本当にいかれています。しかもクライマックスのハラハラ感まで台無し。
ギリはそんな彼を見て何も言わずに圧倒的な力で吹き飛ばします。さすがにギリはギャグ部分はなく、ちゃんと最後のシーンはハラハラできるものに戻るのでご安心を。
強い衝撃で地面に叩きつけられたものの、最強の防具という高レベルのアイテムをつけていたおかげで生きていたキタキタおやじ。防具がこわれてしまいましたな、と言うだけで全く物怖じしていません。
それを見たジュジュは「本当にギリに教えに行くとは悔しいけどあんた男だよ」と心で思うのです。ジュジュをも納得させるキタキタ踊りへの情熱。キモくてうざいけどいないと寂しいキャラクターです。
本作の魅力はギャグと可愛らしいファンタジーの世界観なのですが、それを引き立てるのはやはり衛藤ヒロユキの作画。世界観とぴったりはまっていてなんだか癖になる作風です。
すごく変わった設定があるという訳ではないのになんだか惹かれてしまうキャラクターたちを、ぜひ作品でご覧ください!キタキタおやじだけは別物ですが。