12歳の子に贈りたい、おすすめの絵本〜児童書5選!【6年生向け】

更新:2021.12.20

ユニークなものから考えさせられるもの、感動するものから、心が温かくなるもの。本を通してわくわくしてもらうため。本っておもしろいんだ!と思ってもらうため。よりよい読書との出会いのために、色んな本をご紹介します。

ブックカルテ リンク

荒野を越えて世界を運ぶ。

砂漠を抜けるラクダには、満載にされた本。本屋も図書館も無い場所で待つ子供のために、ラクダだけでなく、船やトレーラーなどの乗り物はもちろん、ゾウやロバといった動物達も、世界中で活躍をしています。

著者
マーグリート ルアーズ
出版日

この本は様々な環境に合わせた移動図書館、子供達へ本を届ける活動を紹介する写真絵本です。

社会情勢、厳しい環境、本に触れる事すらできない理由は様々です。そんなところへ持ち込んだ本は、子供達を新たな世界に触れさせる事でしょう。

本に触れられない理由、移動図書館を適応させる形などから、困難な地理だけでなく、その国の人の暮らしぶりやその国の抱える問題などにも触れる事ができます。道が無いから動物に運んでもらう、いくつもの島に分かれているから船で運ぶ、必要があって形を変えたユニークな移動図書館は写真を見てもよく風景にマッチすることでしょう。形をおもしろさを感じるという事は、異国との差をポジティブに感じられている、という事なのですから。

写真絵本だからこそ、人々の表情はみずみずしく伝わります。届いた本に集まる人々、本を開いた笑顔。多くの工夫や労力を払って本を運んだ意義は、そこに現れています。

本を届けるということは、新しい世界に触れる感動を届けるという事です。道を拓き世界をつなげる工夫と熱意に出会える、そんな絵本となっています。
 

お願い見てよ、お母さん!

お小遣いを上げてほしい男の子が、お母さんにお願いした方法とは?

周りから見ればほほえましい、本人にとっては切実な思いから、主人公の少年、優太くんは絵くんとことばくんの力を借りて、いろいろな主張をします。ことばくんで伝えたり、絵くんで楽しく見てもらったり。お母さんは果たして、お願いを聞いてくれるでしょうか?
 

著者
天野 祐吉
出版日
2006-01-20

人に伝える事の難しさや楽しさを、様々なポスターを通して伝えるユーモラスな絵本です。どう言えば伝わるのか、どうすれば聞いてもらえるのか。大人だって難しい事だから、子供にだってもちろん難しい事です。

ポスターという形にして絵と文字を組み合わせ、絵で見た時の楽しさやわかりやすさを、文字で読ませる事で何を伝えたいのかをきちんと伝わるように。それぞれの特性を生かして優太くんはお願いを盛り込みます。

絵で伝えられる事、言葉で伝えられる事。絵くんとことばくんと話し合って、それぞれと向き合う事で、新鮮な気持ちでその難しさとおもしろさに出会います。

手を変え品を変えて重ねた試行錯誤の数々も、辿り着いた一枚も、おもしろみを感じる事でしょう。どれも優太くんの真剣な一枚で、切実なお願いなのですから。
 

獣と出会い、運命を知り、その命と向き合う

母を失いながらも懸命に日々を重ねる少女エリンは、ある日、天を横切る王獣の姿に心を奪われます。その姿を追い求める内に、彼女は、王獣が強いられる境遇や運命を目の当たりにしました。

それは王国の運命をも左右する大きなものにつながりました。迷い、傷つきながら、エリンはその運命と向き合っていきます。

著者
["上橋 菜穂子", "武本 糸会"]
出版日
2008-11-14

しっかりと細部まで作り込まれた世界観に、一歩一歩積み重ねるようなストーリー。ファンタジー作品でありながら、派手な魔法や奇跡は出てきません。特別な動物と、それに真摯に向き合う少女。話の核にいるのは、そんな平凡にも見えるキャラクターです。

それを退屈に感じさせないのは、エリンに課せられた過酷な運命と、その中での成長です。王獣の医術師を目指したエリンが日々重ねた努力は、その命に触れる大きな力となっていきます。話の中でもその力は感じられる事でしょう。エリンの生き方は一歩一歩、強く踏み出すように描かれているのですから。

現実とは違うファンタジーという世界に馴染みにくさを感じる事もあると思いますが、『獣の奏者』で描かれる世界はしっかりと地に足のついた、確かにそこに人が生活しているのだと思わせてくれるものです。異世界を読む、というよりも、異国を読むくらいの感覚で接する事が出来るでしょう。

一つの事を一心に願い、それが大きなものへつながっていく。エリンはその大きさにも負けず、最後まで自分の意思を通していきます。

本を閉じる頃には、その強さに圧倒されていることでしょう。
 

いろんな"おもしろい"を詰め込んだ、ショートショートのおもちゃ箱

独特の魅力で多くの人から愛される星新一のショートショート。言葉通り短くさっくりと読めるお話は、どれも斬新でユーモラス。時にはびっくりするほどあっさりと残酷な事が書かれていたりする、おもちゃ箱のようなオムニバスです。

著者
星 新一
出版日

ロボットや宇宙人が活躍するSFショートショートが多く収録されています。

しかし、ロボットと聞いて想像するロボット、宇宙人と聞いて想像する宇宙人とは、どれもちょっと違うものだと感じる事でしょう。想像とはちょっとずれたそういうものを、あっさりとした文章でさらりと書き上げてしまう。あまり説明をしたり、細かに描写したりはしない。どれもとっても軽く読めるのに、心に残る話となっています。

その残り方は、感動だとか、笑えた、というものでは無いかもしれません。驚くほどあっさりと書かれているのは、とてもブラックな結末なのかもしれないんです。

1冊に詰め込まれているお話は19篇。アイデアにダイレクトに触れるように読み進めることが出来るでしょう。

その驚きをどう心に残しているのか。同じ本を読んだ人同士で、話し合ってみるのもおもしろいかもしれません。
 

花に触れるように、柔らかく心を拓く

人嫌いのおじに引き取られた少女メアリ。少しとげとげした彼女はうっそうとした屋敷の中で見つけた花園を、友人とともに整備していくようになります。

花園に花の美しさを取り戻していくように、メアリはその心にも美しさをともしていくようになります。

著者
バーネット
出版日

キャラクターの多くは、人との接し方に難を抱えています。気むずかしかったり、人嫌いだったり、わがまま放題していたり。それを変えていくのが、花、植物とのふれあいです。

導いた人物ももちろん居ましたが、メアリは自分から変わっていきます。手を引かれる事でなく、自分から歩く事で、少女らしく成長する姿が描かれています。

使い切れないほどの部屋がある屋敷や、庭に隠された花園の探索。どれもなじみの薄いものでしょうし、メアリが屋敷を冒険する時は、一緒に未知の場所へ踏み込むわくわく感を味わえることでしょう。

見つけ出した花園は、いわば宝物のようなもの。メアリは自分で見つけ出した宝物を、自分も変えてしまう本当の宝物へ育てていくのです。一人では無く、いろんな人の力を借りて。

彼女へと感じる柔らかい変化は、きっと読者にも影響を与えるものでしょう。
 

新しい知識やアイデア、世界との出会いに対するわくわく感は、何にも代えがたいものです。種類の違ういろんなわくわくに出会える本であれば、きっとこれからの大きな財産に出来るでしょう。

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