ヴィクトル・ユーゴーのおすすめ作品3選!『レ・ミゼラブル』他傑作多数

更新:2021.12.20

『レ・ミゼラブル』の作者として、世界中で有名なヴィクトル・ユーゴー。19世紀フランス、そしてロマン主義を代表する作家です。彼の描く鮮やかな人間ドラマを読んでみませんか?

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まさに19世紀を代表する天才文学者、ヴィクトル・ユーゴー

ヴィクトル・ユーゴー(1802-1885)は、ロマン主義文学を代表するフランスの作家です。

彼の文学の才能は、若い時に開花しました。17歳のときにはもう、自ら「コンセルヴァトゥール・リテレール」という詩の雑誌を創刊しています。1822年に、『オードと雑詠集』を発表して、詩人としての名声を確立しました。1823年には、『ハン・ディスランド』という純愛小説を匿名で出版しています。

精力的に文学活動を行うユーゴーの周りには、自然と新しい文学・芸術の担い手たちが集まり、「セナークル」という集団ができました。作家のデュマ、バルザックやミュッセ、画家のドラクロワなど、19世紀フランスを代表する面々がおり、ここからユーゴーを中心にして、ロマン主義が発達していきます。

ロマン主義は、よく人間の自我の開放を目指している、と言われています。それまでの芸術は、細かくルールが決まっていて、描く対象が制限されていたり、ジャンルによって優劣が付けられたりしていました。要するにそういった規範を打ち破り、芸術家や読者の個性・感性・主観を最も重要視しようとしたのがロマン派の考え方です。

ユーゴーはロマン主義の中心人物として活動する一方で、ユーゴーは今でこそ小説のイメージが強いので驚かれるかもしれませんが、小説だけではなく、多くの優れた詩や戯曲も発表し続けました。また、1845年には爵位を授けられ、19世紀という激動の時代の中、貴族として政治活動にも参加していくようになります。

変化に満ちた19世紀を生きる中で、熱心に文学、社会と向き合い続け、ロマン派を確立したユーゴーは、まさに19世紀フランスを代表する作家です。そんなユーゴーが書いたおすすめの小説をご紹介します。

ヴィクトル・ユーゴーの代表作。時代に翻弄されながらも生きる

主人公のジャン・ヴァルジャンは、貧困にあえぎ、わずか一片のパンを盗んだために、19年間を監獄生活で過ごしました。どこに行っても受け入れられなかった彼は、1815年のある日、ミリエル司教にあたたかく迎え入れられます。司教の人柄に感銘を受けたジャンは改心し、罪を懺悔し、正直な人間として生きていく決意をしました。

その後、ジャンは事業を興して富を得て、人柄も評判となり、市長にまでなります。ですが、一人の困窮した元従業員の姿を知ったジャンは彼女を助けようと奮起し……。

著者
ヴィクトル ユーゴー
出版日
1987-04-16

「レ・ミゼラブル」とは「哀れな人々」という意味です。1862年に出版された本書は、ジャン・ヴァルジャンをはじめとした、善良だけどもそれゆえに翻弄される人々の生き様を描いています。

岩波文庫にして全4巻と、大変長い物語であり、最後まで読むのはけっこうな根気がいるかもしれません。人物の描写や戦争の描写にページ数を割いており、物語が進まないために、冗長に感じる箇所も多々あるでしょう。しかし、読み進めていけば、そういった箇所も「哀れな人々」が生きた時代であったり、経験してきたことを深く理解するために必要だったと感じられるのです。最後まで「哀れな人々」の生き様を見守っていただきたい作品です。

理不尽な目に遭い多くの苦労をしながらも、自らの愛や美徳、誠実を貫く「哀れな人々」の姿は、読者の胸を打ちます。『レ・ミゼラブル』は激動の時代に翻弄されながらも生きていく人々への賛歌であり、愛や人情という普遍的なテーマを描き切った作品だからこそ、世界文学屈指の名作として、人々に愛され続けているのではないでしょうか。

恋にまつわる様々な感情を描いた、ヴィクトル・ユーゴーの作品

15世紀のパリ。ノートルダム大聖堂の前に、一人の醜い赤子が捨てられていました。司教補佐であるフロロに拾われ、カジモドと名づけられ、大聖堂から外に出ずに育ち、大聖堂の鐘番になります。

ある日、パリに美しいジプシーの踊り子・エスメラルダがやってきました。彼女に恋をしてしまったフロロは、信仰心と恋心の間で揺れながらも、結局はカジモドを利用して彼女を誘拐しようとします。その後、エスメラルダの優しさに触れたカジモドは、彼女を慕うようになりますが、彼女は不誠実ながらかっこいい衛兵フェビュスに夢中で……。

著者
ユゴー
出版日
2016-05-18

1831年に出版された『ノートル=ダム・ド・パリ』は、『レ・ミゼラブル』と並んでユーゴーの最もよく知られている作品です。この作品を元にしたディズニーアニメ『ノートルダムの鐘』を観たことがある方も多いのではないでしょうか。

この作品で、エスメラルダはカジモド、フロロ、フェビュスという3人の男性から思いを寄せられます。しかし、その思いの様相は大きく異なるものです。カジモドはエスメラルダの心の美しさに感銘を受け、純粋な心で彼女を愛しますが、フロロは聖職者ながら恋の情熱を抑えきれずに誘拐をたくらみ、フェビュスにいたっては自身に婚約者がいるにも関わらず、エスメラルダと遊びの関係を築こうとします。

三者三様の恋模様が存在する中で、恋の喜び、悲しみ、嫉妬といった様々な感情が鮮やかに描かれ、物語から目を離せません。また、印象的なのはエスメラルダがカジモドの心の美しさを認めながらも、彼の外見の醜さのために、彼と目を合わせることができないシーン。愛や恋における美しさとはなにか、ということを考えさせられます。

生と死や死刑について考えさせられる一冊

1829年に出版された、ユーゴーの異色作です。死刑の判決を受けた主人公が、死刑執行にいたるまでの心境を書き記した手記という形をとっています。主人公は、最初は死刑を受け入れていたものの、次第に苦悩するようになり……。

著者
ヴィクトル・ユーゴー
出版日
1982-06-16

議員として政治に参加したり、作品に細かい社会や政治に関する描写を取り入れたりしていることからもわかるように、ユーゴーの政治に対する関心はとても強いものでした。彼が強く反発していたものの一つは、死刑制度。『死刑囚最後の日』は、死刑撤廃への思いをこめて書かれた作品として有名です。

死刑に反対する立場で書かれている作品とはいえど、死刑反対を直接声高に叫ぶような作品ではありません。ユーゴーの反対する気持ちは垣間見えながらも、あくまでもある一人の死刑囚の心情を克明に描き出して、読者に問題提起してくるような一冊です。

この作品を読んでいると、一刻一刻と死へと向かっていく恐怖が、まるで自分のことのように感じられます。死刑制度に関することを抜きにしても、死という人間が避けては通れないものへ向かっていく人間の心情を描いた作品として、とても価値のある作品です。

生と死について考えたい方や、死刑制度や社会問題に関心のある方に強くおすすめします。

19世紀フランス、そしてロマン派を代表するユーゴーの作品を紹介させていただきました!彼の作品の根底にあるのは、人間への愛情であったり、社会に対する問題意識であったりすると思います。文学の巨匠が描く人間・社会の物語を、ぜひ味わってみてください。

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