小さな子どもから見た日常を描いた「くんちゃん」シリーズ。大人には何でもないことでも、くんちゃんには驚きや発見の連続です。細い線と柔らかい色合いで描かれたこのシリーズは全部で7作品、その中で特におすすめの5作品を選んでみました。
ある朝、くんちゃんは早起きしました。お母さんと一緒に、初めて学校に行くからです。
途中で出会った動物たちに「ぼく がっこうへ いくんだよ。」と嬉しそうに話すのですが、学校へ着くとお母さんは、くんちゃんだけ座らせて帰ってしまいます。
すぐに授業が始まりましたが、読み書きができる大きな子たちと違って、くんちゃんは文字を読むことも書くこともできません。
椅子の上で小さくなっていたくんちゃんですが、どんどん不安になり、ついに……。
- 著者
- ドロシー・マリノ
- 出版日
くんちゃんには不安と緊張の連続で、ついには教室を抜け出してしまいますが、先生は叱らず戻るようにも言わず、自分の名前と「同じ字」ではなく「同じ音」で始まるものの絵を描かせるだけです。
字が読めなくても、書けなくても、絵なら描ける。これなら大丈夫!
こうしてくんちゃんの最初の一日は、安心した気持ちで終わることができます。
小学校は楽しみだけど、でもちょっと怖い……そんな新一年生に読んで、安心させてあげたくなる作品です。
夏のある日。くんちゃんは従兄のアレックと、二人でキャンプにでかけます。
道中で、こまどりが巣をつくっていたり、あひるが泳いでいたり、かわせみが魚を獲っていたりするところに出会ったくんちゃん。
キャンプ地に着くと、「こまどりに教わったから」と木の上で寝ようとし、「あひるに教わったから」と水鳥のように泳ごうとし、「かわせみに教わったから」と魚を獲ろうとしますが、どれも上手くいきません。
アレックから「熊には熊のやり方がある」と教わりますが、帰り道で……。
- 著者
- ドロシー・マリノ
- 出版日
パパやママと離れて、従兄と二人だけでおでかけするくんちゃん。
初めての体験に失敗はつきもの。くんちゃんは途中で出会った動物たちの真似をして頑張りますが、どれも上手くできません。
熊には熊のやり方があるとアレックに教えられますが、くんちゃんの疑うことのない素直さは、小さな子どもならではかもしれません。
帰り道ではアレックに「そっちじゃないよ」と言われながら歩きますが、実は道を覚えていたのはアレックではなく、くんちゃんの方。来るときにいろんな動物たちをお話していて、それで道を覚えていたのです!
家に帰って、ママとパパに嬉しそうに「帰り道を覚えていたのは僕」と誇らしく言う姿が、とても可愛らしいです。
ある日の朝、目を覚ましたくんちゃんは、今日は何もすることがない退屈な一日だと思います。
自分では何をしたらいいか思い浮かばないくんちゃんは、ママに「何したらいい?」と尋ねます。
初めはアドバイスをしていたママですが、おうちのことで忙しいので、くんちゃんの相手ばかりもしていられません。
するとくんちゃんは外へ出て、洗濯物や落ち葉など、見付けたもので遊び始めます。
やがてお昼ご飯の時間になって、くんちゃんは……。
- 著者
- ドロシー・マリノ
- 出版日
翻訳者のあとがきによると、このお話はシリーズの最初、くんちゃんがまだ幼稚園にも通っていないくらい小さい頃のお話だそうです。
朝はお母さんに「何したらいい?」と尋ねてばかりだったのに、自分で面白いことを次々に見つけていき、ついには「忙しいから」とお昼ご飯を急いで食べるほどになるくんちゃん。
くんちゃんが床につけてしまった絵の具を拭くお母さんや、急いでごはんを食べる姿を見守るお父さんの眼差しが、とても優しいです。
「子供にこんな発展が起こるには最低3時間必要」「何もない3時間以上の時間が現代の子供にたっぷり与えられますように」(『くんちゃんはおおいそがし』後書きから引用)
大人には何でもない日常でも、子どもは時間があれば次々と遊びを発見するものなのだと気付かされる作品です。
冬になる前に暖かい南の国へ飛んで行く渡り鳥を見たくんちゃんは、自分も南の国へ行ってみたいとママとパパにお願いします。
OKをもらい鳥たちの後を追って丘を駆け上ったくんちゃんですが、出かけるときにママにキスをしてこなかったことを思い出して、丘を駆け下りて家に戻ります。
ママにキスをしたら、また、丘を駆け上がっていくのですが、空を飛んでいく鳥たちを見ているうちに、双眼鏡が必要だと思ってまた丘を下りて家へ。
すると今度は……。
- 著者
- ドロシー・マリノ
- 出版日
- 1986-05-26
くんちゃんの「行ってみたい」と思う気持ちと、それを否定せず「やらせてみなさい」と送り出してあげるパパ。
くんちゃんは自分で旅行を支度をして出かけるのですが、あれを忘れたこれが必要だと、家に戻ってまた行ってということを何度も繰り返します。
子どもの好奇心を理解して受け止めるパパとママがとても素敵。実際にやったら親はフォローすることばかり増えて大変だろうと予測できるのですが、でも自分もこうありたいなと思う作品です。
熊は冬になると冬眠するのですが、雪を見たことがないくんちゃんは、もう少し起きていたいとパパにお願いします。
しばらくして雪が降り、くんちゃんは初めての雪が嬉しくて、足跡をつけたりママと雪だるま(雪熊)をつくったりして、大喜びではしゃぎまわります。
そんな楽しい雪の日ですが、くんちゃんは他の動物から、雪が降る季節は食べ物がなくて困るということを教わります。
そこでくんちゃんはみんなのために、家にある食べ物でパーティーを開こうと考えて……。
- 著者
- ドロシー・マリノ
- 出版日
冬眠の前なのに、子どもの「知りたい」という欲求を理解してまだ眠らないことを許し、「みんなを喜ばせたい」という行動を否定せず、家にある食べ物をあげてしまうくんちゃんを見守るパパとママに感服!
ごはんを食べて眠ってしまったくんちゃんは、“冬は動物には厳しい季節”で、“熊は冬眠する”ということを教えてくれます。
クリスマスという言葉は作品の中で使われていませんが、冬・雪・ツリー・パパが持ってきた大きな袋とくれば、やっぱり連想するのはクリスマスでしょう。
クリスマスの頃に読んであげたい、子どもをもつ親に読んでほしい作品です。