『ちいさいモモちゃん』のシリーズをご紹介。愛され続ける児童書

更新:2017.6.14

松谷みよ子の「モモちゃんとアカネちゃんの本」シリーズは1960年代『母の友』掲載作品として世に出たファンタジー作品です。以降、長きにわたり心に残るロングセラーとして親子に親しまれています。今回はモモちゃんとアカネちゃんの物語6冊を余すとこなくお伝えします。

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はじまりの物語『ちいさいモモちゃん』

モモちゃんが産まれた日から3歳になるまでを収録した1冊。

モモちゃんが産まれるとお祝いに来たのはにんじん、じゃがいも、たまねぎに、ガムやソフトクリームなどのファンタジックな仲間たちです。

すくすくと生長するモモちゃんの元にやってきたのは黒猫のプーや、プーが咥えてきた白ネズミのチュッチュ。そしてあかちゃんのうちで出来たお友達のコウちゃん。

モモちゃんは素敵な仲間たちと共にたくさんの経験をして、立派なお姉さんへと成長します。

著者
松谷 みよ子
出版日
1974-06-27

モモちゃんにはお父さん、お母さんがいます。お母さんは働いているので昼間過ごすのは"あかちゃんのうち"(保育園の乳児クラス)。オムツ外しもしますし、哺乳瓶も卒業しますし、水疱瘡にだってなるんです。

モモちゃんの本は現実とファンタジーが絶妙に入り乱れた世界です。よってモモちゃんは、黒猫のプーや白ネズミのチュッチュと話し、にんじんやたまねぎやじゃがいもと話し、ママとケンカをしたときには空に昇る電車にも乗ります。

このシリーズでは、現実の中にフッとあり得ないことがおこってくるのですが、あれ?と疑問に思う間もなくいつの間にか不思議な世界へと入り込んでしまいます。その世界観は、子どもにはもちろん、大人にとっても心地良いものでしょう。

モモちゃんの3歳から入学前を描く『モモちゃんとプー』

3歳になったモモちゃんが学校に入学する前までの物語です。

3歳になったモモちゃんはお友達のコウちゃんと遊ぶことが増えます。お手紙ごっこをしたり、テレビを見たり、すっかり子どもらしくなりました。

一方、プーにもジャムという仲良しの白猫ができます。ある晩、2匹はとある約束をしたようですが……。

そして何より、モモちゃんに"アカネちゃん"という妹が産まれます。モモちゃんだけでなく、お母さんやプーや周りのみんなも大活躍する1冊です。

著者
松谷 みよ子
出版日
1974-06-26

この本の主役は間違いなくモモちゃんです。しかしお母さんとプーを見逃せません。

まず、「かげをなめられたモモちゃん」のお母さん。ウシオニに影を食べられて病気になってしまったモモちゃんの為にスリッパのまま料理道具を持って追いかけ、とうとう見つけたウシオニのお尻をペンペンペンとたたきます。

そして「あなたはだいたいうしでしょう、うしというものは草食性なんですよ。」と影でなく川っぷちに生えている草を食べるように指示をし、ご丁寧に塩まで渡してくるのです。お母さんの圧倒的存在感はとても愉快で、思わず声に出して笑ってしまいますよ。

一方、黒ネコのプーと大の仲良しの白ネコジャムは夜な夜な原っぱでたくさんの語り合いをしています。2匹は人間の知らないところでとてもたくさんのお手伝いをしてくれているようですよ。人間の目から見ると、いたずらばかりしているように見える猫たちですが、実はモモちゃんよりもずっと大人なんです。

プーとジャムの恋愛模様は読みごたえのある素敵なシーンとなっています。

愉快で幸せになる物語の多い本作では、モモちゃんの妹となる赤ちゃんが誕生します。「モモちゃんとアカネちゃんの本」シリーズに欠かせないシーンです。ワーキングマザーであるモモちゃんのお母さんの苦労が如実に現れており、現実的で読み応えのある物語です。

小学生になったモモちゃんを描く『モモちゃんとアカネちゃん』

「モモちゃんとアカネちゃんの本」シリーズ3巻目。この本でモモちゃんはこの物語で小学校に入学します。そして、『モモちゃんとプー』で産まれたアカネちゃんも赤ちゃん時代のモモちゃんのように大活躍を始めます。

元気にすくすくと育つ子どもたちの一方で、アカネちゃんが産まれてからおかあさんの具合が良くないようです。お父さんの姿も見えません。ある日おかあさんのところに死神がやってきて……。

著者
松谷 みよ子
出版日
1974-06-28

小学1年生となりすっかりお姉さんらしくなったモモちゃんと、入れ替わるように色々な経験を積み始めたアカネちゃん。

アカネちゃんの1番のお友達は靴下の双子の兄弟タッタちゃんとタアタちゃんです。2人の声は1年生となったモモちゃんには聞こえません。赤ちゃんであるアカネちゃんとのみ会話が出来るのです。赤ちゃん時代、大人が首をかしげてしまうようなものに固執したことありませんか?もしかしたら、あなたにも物のお友達がいたのかもしれませんよ。

そして、前作でとても元気だったお母さんの様子が今作ではおかしいようです。お父さんも出てきません。死神に取りつかれてしまったお母さんは「森のおばあさん」に相談に行きます。

「あるく木とそだつ木が、ちいさなうえ鉢の中で、根っこがからまりあって、どっちもかれそうになるところへきているんだよ。」(『モモちゃんとアカネちゃん』より引用)

おばあさんのこの助言にドキッとする方もいらっしゃるでしょう。感情だけでなく、根柢にあるものを冷静に見据えて説明をする森のおばあさんとのシーンは子どもには少し難しい内容かもしれませんが、とても深いものとなっています。

おばあさんの助言により、お母さんはお父さんと離婚。お母さん、モモちゃん、アカネちゃんの3人は森の向こうへお引越しをすることとなります。引越し先では森の優しいクマさんがモモちゃんを助けてくれますよ。

母娘3人の新生活を描いた『ちいさいアカネちゃん』

お母さん、モモちゃん、アカネちゃんの新生活の物語。この本の中でアカネちゃんは2歳になり、モモちゃんのように"あかちゃんのうち"に通っています。

クマさんやプ―など心優しいお友達の手を借りながら元気に育つ子供たち。そして元気になったお母さん。生活が厳しくとも、子どもとのかけがえのない素敵な時間が味わえる1冊です。

著者
松谷 みよ子
出版日
1978-11-30

お父さんと別れ、母娘3人となった生活は決して楽なものではありません。お母さんは仕事を始めました。モモちゃんは一人で色々なことができるようになっていますが、好奇心旺盛、いたずら盛りのアカネちゃんからは相変わらず目が離せません。

そんな時、またあの死神と出会うこととなります。しかし今回のお母さんは負けてはいません。余計なことに別れたお父さんの話までする死神に対し、「でていかないと、ぶつわよ!」とほうきを手に追っ払うお母さん。元気なお母さんの様子に、きっとニコニコしてしまいますよ。

この本のラストでアカネちゃんはタッタちゃんとタアタちゃんと別れることに。悲しむアカネちゃんに対し、原因を作ったお母さんは気にも留めていない様子です。無意識に放ったアカネちゃんの逆襲にも注目です。

お留守番中に起こった事件とは?『アカネちゃんとお客さんのパパ』

「モモちゃんとアカネちゃんの本」シリーズ5作目。

アカネちゃんは相変わらず好奇心いっぱいの3歳になりました。モモちゃんはバレエの発表会やソフトボールの試合に勤しんでいるようです。お母さんは元気に働いています。海外に出張まで行きますよ。

3人の元にはパパだと言うおおかみや離婚する前にお母さんにとりついていた死神などがやってきます。そして今作はプーにまで何やら事件が起こって……。

著者
["松谷 みよ子", "伊勢 英子"]
出版日
1983-07-05

この本のタイトルは『アカネちゃんとお客さんのパパ』。今回は"パパ"にまつわる事件がたくさん起こります。

まず、"お客さんのパパ"。パパのいないアカネちゃんにつけ入るように付きまとう不気味なおおかみがやってきます。パパおおかみは一人でお留守番をするアカネちゃんとビールを飲んだり、折り紙をしたり、歌を歌ってあげたり……。優しい一面をのぞかせてくれます。

そして、プーがかわいい3匹の"パパ"になります。ジャムを守るため、入院するほどの怪我を負ってしまう今回の物語ですが、最後には親らしい立派な一面を見せてくれますよ。

最後に、離婚する前にお母さんやお父さんにとりついたことのある死神が登場します。今回は、別れたお父さんが重い病気だと聞き、お母さんが呼び出す形での登場です。お父さんの心臓に"シニガミ"というサインをいっぱい書いておいたという死神に、お母さんはもうやめるようお願いをしますが……。

何年経っても"パパ"のことを話すアカネちゃん。本当のパパに会える日は来るのでしょうか?

モモちゃんアカネちゃん最後の物語『アカネちゃんのなみだの海 』

「モモちゃんとアカネちゃんの本」シリーズ最終巻。モモちゃんは中学生、アカネちゃんは小学生になりました。

ずっと離れ離れだった靴下のタッタちゃんとタアタちゃんがアカネちゃんの元に戻ってきます。産まれたときからの大親友と嬉しい再会を果たす一方、モモちゃんとアカネちゃんにはお父さんの死という一番つらい出来事が待ち受けています。

著者
松谷 みよ子
出版日
1992-04-07

小学生になったアカネちゃんは学校でお父さんがいないという理由でいじめられます。子どもの残酷さがにじみ出ていて、心が苦しくなってくるようなシーンです。ここでアカネちゃんを助けるのがプー。自ら学校に乗り込み、凛とした態度でアカネちゃんにちょっかいを出してくるクラスメイト達を無言のうちに制圧していきます。

そして、この最終巻には辛い出来事がもう1つ。ずっと会いたかったお父さんの死です。モモちゃん、アカネちゃんそれぞれにお父さんの死を自分の中で消化し、埋葬するその姿には悲しさや辛さだけでなく2人の成長への感動をも感じることができるでしょう。

この物語はモモちゃんとアカネちゃんの成長を描いています。しかしそれと同時に2人をずっと見守るお母さん、そしてプーの成長も感じます。辛い出来事の先にこの家族には明るい未来が待っているようなそんな予感のする1冊です。

モモちゃんの誕生から妹のアカネちゃんが1年生になるまでの2人の可愛い成長のお話『ちいさいモモちゃん』のシリーズをご紹介しました。いかがでしたか?2人の成長の過程には楽しいことだけでなく、辛いこともたくさんあります。しかし、人生を前向きに普通に過ごしていく2人からは当たり前の日常がどれほど感動的で、すごいことなのかを学び取ることが出来るでしょう。ぜひ、子どもだけでなく、成長を遂げてしまった大人の方も手に取ってみてくださいね。

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