ファンタジーと一言でいっても、その世界は実に様々です。自由な発想や設定ができるからこそ、現実を舞台にした作品とは違う人間ドラマが生まれることもあります。ここでは特にオススメの名作ファンタジー漫画をご紹介します。
大国バルスの王子・アルスラーンは、偉大な父と比較されては頼りないと周りから言われる少年でした。しかし、アルスラーンの近くに仕える臣下達は、彼の素直で心優しい性格を認め、慕っています。
そんなアルスラーンは、14歳の時、初陣に臨むことになります。相手はより豊かな土地と信仰の違いから対立しているルシタニア国の軍隊。最強国として栄華を誇るバルスにとっては負けるはずのない戦いでしたが、思いもかけない事態に連続して見舞われたバルス軍は絶体絶命の危機に陥ってしまい……!?
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
- 2014-04-09
本作は、小説家・田中芳樹の同名小説を原作にした漫画化作品です。原作は1986年に第一巻が発売されて以来、根強い人気を誇っており、2013年より、「別冊マガジン」で漫画化作品が連載されるようになりました。
原作はありますが、全くの原作通りというわけではなく、漫画化するにあたって必要な変更が施されている点は、原作ファンの方にしてみると好みが分かれることもあるかもしれません。しかし、作品としてはマイナスになっていることはありません。それによって生み出されたスピード感や躍動感は、読者を序盤から物語へと引き込んでくれるでしょう。
主人公のアルスラーンは、偉大な父の功績もあり、王子でありながら周りから頼りないと言われてしまうほど大人しく、気性の優しい人物です。そんな彼が、物語が進むにつれて苦境に立たされ、しかし仲間と共に様々な困難を乗り越えていく様は、まさに成長物語で、読者を感動させてくれるでしょう。同時に、タイトルにある通り、戦記ものらしく戦のシーンはとても迫力があります。早く先を知りたくなってしまうハラハラする展開の戦記物語を読みたい方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
1600年、関ケ原鳥頭坂(うとうざか)で、最強と名高い徳川井伊と衝突した島津豊久は、御義父(おやじ)を薩摩の地へと逃がす時を稼ぐため、命を捨てる覚悟で井伊へと向かっていきます。
鬼のような強さで敵陣を突破し、井伊直政と対峙する豊久は、命を捨てる戦法で直政に銃弾を撃ち込みますが、首をとることはできませんでした。ひん死の怪我を負ったまま森の中を彷徨っていた豊久が辿り着いたのは、見たこともない異界の土地。しかもそこにいたのは織田信長を名乗る男で……!?
- 著者
- 平野 耕太
- 出版日
- 2010-07-07
タイトルの『ドリフターズ』は「漂流物」という意味であり、その名前の通り、日本の侍をはじめ、源平合戦で有名な那須与一、さらには紀元前の戦術家であるハンニバル・バルカなどがファンタジーの世界に飛ばされる、すなわち漂流してしまうという召喚系の作品になっています。
織田信長は遺体が見つかっていないことで有名ですが、同様に島津豊久も遺体が見つかっていないとされています。史実でも、もしかしたら死んでいないかもしれない2人が異世界に飛んでいることで、ファンタジーにちょっとしたリアリティを与え、物語をより深いものにしてくれています。
異世界に召喚された豊久達は、そこで更なる戦いに巻き込まれていくことになるのですが、その戦闘シーンはとても迫力があり、思わず目が離せなくなってしまうことは間違いありません。やや残酷な描写もありますが、それが躍動感あふれる迫力を生み出す一因にもなっています。
また、豊久や信長はもちろん、ハンニバルや那須与一など、登場するキャラクターの多くは実在する人物達です。歴史ものではないのでそれらの人物達の史実を知らなくてももちろん楽しめますが、歴史好きの方だとよりキャラクターに親しみを持て、作品を深く楽しく読むことができるでしょう。迫力のある戦いの行方は、ぜひ手に取って確認してみてください。
アラジンは、ウーゴという名前の不思議な笛と共に、宝物を探して砂漠を旅しています。ある日、アラジンはオアシス都市ウータンで、隊商(キャラバン)の馬車に置いてあった果物を食べてしまい、代金の代わりに3日間のタダ働きを命じられてしまいました。
そこで出会った隊商(キャラバン)長の娘・サアサと隊商の一員であるライラは、とても仲の良い友達同士です。特にライラは、砂漠で行き倒れていたところをサアサに助けられて以来、初めての友達としてサアサと、そして隊商のことをとても大切に思っていました。しかし、そんなライラにはある秘密があって……。
- 著者
- 大高 忍
- 出版日
- 2009-12-18
少年向け漫画雑誌「週刊少年サンデー」に連載されている作品で、コミックスは累計2300万部を超えるなど、高い人気を誇っています。アラジンなどの名前からも察せられるように、モチーフは「千夜一夜物語」で、物語の世界観もアラビアンナイトのような雰囲気になっており、小学館漫画賞の少年向け部門を受賞するなど、人気と評価を兼ね備えて作品です。
ポップにも見える絵柄は可愛らしい印象を持ちますが、ストーリーは骨太で、特に物語が進んでいくと現実社会の問題を意識した風刺的な内容も登場します。とはいえ、小難しいことが書いてあるわけではありません。基本的には少年漫画らしく、魔法を交えたバトルがあるなど大人も子供も楽しく読める構成になっています。その中でさらにメッセージ性があったり、読み終えた時につい考えさせられてしまったりすることは、物語の奥深さを証明するものとも言えるでしょう。
序盤から中盤へと物語が進んでいくと、作品の雰囲気も少しずつ変化していくので、読み進めていくうちに予想を裏切られたと感じる方も多いかもしれません。序盤がややスロースターターな進み具合になっていますが、進めば進むほど面白くなる作品なので、読み始めた方はぜひ、まずは読み進めていただくことをオススメします。
天空を泳ぐ龍を捕らえる捕龍船「クィン・ザザ号」。その船に乗り込む人達は、捕らえた龍の肉や油を売りながら旅を続けていました。しかし、今は捕龍船の数は少なく、さらにかつてはその船乗りの多くが囚人や荒くれ者だったことから、龍の肉は買っても捕龍船や船乗り達を忌み嫌う人達も多くいます。
ある日、龍を捕らえたクィン・ザザ号は町の近くに船を下ろしました。しかし、町の人々は船乗り達が町に入ってくることを良しとせず、立ち入りを拒否します。険悪な雰囲気になった船乗り達でしたが、そんな中で、ヌボーっとした風貌のミカはマイペースに龍の肉を調理し始めて……。
- 著者
- 桑原 太矩
- 出版日
- 2016-11-07
捕龍船クィン・ザザ号の乗組員を中心に描かれるドラゴン・ファンタジーですが、彼らがドラゴンを狩るのは、RPGや他ファンタジー作品のように敵モンスターだからではなく、「食べる」ためです。船乗り達は狩ったドラゴンを売る他、自分達でも料理をして食べます。
龍の肉を使った料理シーンはグルメ漫画のような魅力もありますが、材料があくまでも龍の肉であることもあり、グルメ漫画というよりも、作中で「龍捕り(おろちとり)」と表現されるドラゴンとのバトルや共生、その中で描かれる人間ドラマがメインになっていきます。
空を進む船での生活は、日常感がありながらもファンタジーな雰囲気が全面に出ており、ファンタジー世界での日常を楽しむことができます。一方で、船乗り達が他の人々から偏見の目で見られるなど、ストーリーには骨太さを感じることができ、さらにそれらがテンポ良く描かれているので重くなり過ぎず読むことができるのもポイントです。ファンタジー感溢れる重厚な物語を読みたい方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
男子高校生の多華宮仄。彼の隣の席には、学校で大人気の女子高生である火々里綾火が座っていました。しかし多華宮は綾火と離れたくて、早く席替えを望んでいます。なぜなら綾火の人気はアイドル級で、多華宮が落とした消しゴムを彼女が拾ってくれただけで、嫉妬した彼女の親衛隊が多華宮に暴力を振るうほどだったから。
そんな多華宮はある日、焼却炉にゴミを捨てに行く途中、ゴミの中に兎のぬいぐるみを見つけます。そのぬいぐるみには「今日の天気 晴れ 時々 校舎 が、降るでしょう」と書かれた布が縫い付けてあり……。
- 著者
- 水薙 竜
- 出版日
- 2010-11-05
ファンタジーの世界では、儚げな女の子がかっこいい男の子に守られながら困難を乗り超えていくという設定がよくありますが、この物語は真逆。魔女の戦いに巻き込まれていく大人しめな男子が、美貌はもちろんのこと全てに秀でた学園の人気者の女子に助けられていくのです。
本作のように平凡な日常を送っていたのに、突然校舎が降ってきていきなり炎で燃えだすなんてことが起こったら、世間はどうなってしまうのでしょうか? 同じクラスの隣の席の子が綾火のように、実は魔法使いだとわかったら私たちの平凡な生活は、どのように変わってしまうのでしょうか?
多華宮の場合は環境が変わった後、自分の中に、白姫という、とてつもない力を宿していることを知りました。しかし無条件でその力を発揮できるのではありません。その力を発揮するには、自らも成長していく必要があったのです。
空想が好きな人は、ファンタジーの世界と学校がつながっていたら楽しいと思うかもしれません。そんな現実では考えられない不思議な出来事も、漫画の世界では違和感なく思う存分楽しめますよ。日常の煩わしさから少し離れて、ファンタジーの世界にどっぷりと浸かりたい方におすすめしたい作品です。
森に住む暖炉の妖精ポーリーンを主人公にして巻き起こる、キュートでちょっぴりおそろしい世界観で描き出されるファンタジー漫画です。
大食いで、いつも怒鳴り散らしてばかりいる魔女のバーバと2人で暮らしているポーリンが、魔女の食べ物を探す日常の風景から、物語は展開していきます。
- 著者
- つばな
- 出版日
- 2015-12-24
毎日バーバのために食べ物を探しているポーリーンは、同じホブゴブリンのイモ―ジェンと仲良くなったり、不思議なでき事に遭遇したりしながら日々を暮らしていました。
そんなある日、魔女を探して王国からの使いがやってきます。実は王女が呪いにかかってしまい、その呪いを解くために魔女の力が必要だというのです。
ほんわかとした日常の中に、どこか不条理でダークな部分が見え隠れする仕立てで話は展開し、終盤には魔女の正体が判明します。いったい誰なのでしょうか?自分を知り、生きるためにどうすればよいのか、ファンタジーに散りばめた人間の在り方に心を掴まれます。
かわいらしくてファンシーな世界に突然現れる、おそろしいもの、不可解なものというコントラスト。そのカタルシスが物語を盛り上げる、ダークミステリーを満喫できる作品です。大人も楽しめる童話を上質なファンタジー作品として昇華した物語を、ぜひ1度手に取ってみてください。
大剣を背負い旅をする剣士・ガッツは、訪れた町の酒場で、エルフを捕まえ玩んでいる盗賊を目撃します。その盗賊達はコカ城の盗賊と呼ばれる者達で、町の領主は彼らの頭とある取引をすることで町を襲わないという約束を取り付けていたのでした。
そのため、町で暴れる盗賊達に手を出せない町人達だったのですが、ガッツはあっさりとその盗賊達を一掃してしまいます。そして生き残った盗賊の1人に、黒い剣士が来たと頭に伝えるようにと言い、店を後にしました。
結果として助けることになったエルフのパックから、盗賊は元より取引をしている領主にも気を付けろと忠告を受けるのですが、その矢先、ガッツの前には領主の手の者達が現れ……。
- 著者
- 三浦 建太郎
- 出版日
1989年から青年向け漫画雑誌「ヤングアニマル」で連載されている長編漫画で、いわゆる剣と魔法の世界を舞台にした重厚なダーク・ファンタジーです。その作りこまれたストーリーやキャラクターの造作は日本だけでなく、世界からの人気も高く、手塚治虫文化賞マンガ優秀賞を受賞するなど実力と人気を兼ね備えた作品です。
主人公のガッツは、「それは剣と言うにはあまりにも大きすぎた。(中略)それはまさに鉄塊だった」と説明されるような大剣を担いでいるのが特徴で、大剣以外にも、まるで武器庫のように様々な武器を隠し持っています。性格も荒々しく、ある理由から復讐に燃えているのですが、そんな雰囲気が絵柄にも表れており、どこか無骨で荒々しい絵はとても迫力があります。
内容も、痛々しく残酷な表現やエロティックな描写もあり、人によっては苦手意識を持たれる方もいるかもしれませんが、それらも含めてダーク・ファンタジーとしての魅力があり、読者は思わず引き込まれてしまうでしょう。長期作品なのでいくつかの大きなシリーズがありますが、初期のシリーズはインパクトも含め特に人気があるので、まずは序盤のシリーズを終えるまで読み進めてみることがオススメ。そうすれば本作の魅力をより感じることができるはずです。
いかがでしたか? ファンタジーだからこそ、枠にとらわれない自由な作品がたくさんあります。ぜひ自分のお気に入りの1冊を見つけてみてください。