椹野道流のおすすめ作品5選!BL作品も手掛ける作家

更新:2021.12.22

和風ファンタジーからBLまで幅広い作品を、個性豊かで鮮やかなキャラクターと共に展開していく人気作家、椹野道流。ここでは人気の和風ファンタジーや、作者の経験が活きた「K医大」シリーズなど今すぐ読みたくなる5作品をご紹介します。

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椹野道流とは

椹野道流は兵庫県生まれの女性で、1996年講談社のホワイトハート大賞エンタテイメント小説部門に「人買奇談」で佳作に入選、翌年講談社X文庫ホワイトハートより同作デビューしました。

法務医の資格も持っており、デビュー後も医科大学の法医学教室に籍を置いて非常勤の監察医として勤務していた、という異色の経歴を持つ法医学者・作家です。また、「春眠洞」というサークルで、自著のシリーズを含めた同人活動も作家活動と並行してやっていて、イベント参加や同人誌ショップでの委託販売も行うなど、活動幅の広さも伺えます。

ご自身のTwitterでは、ご自宅で猫やヤモリなど小動物をこよなく愛し、たくさんの猫を愛情込めて育てる様子などを紹介されていますが、作品に通じる生き物への愛情は、こういった私生活が影響していると言えるでしょう。

人間の生・食・死にまつわる物語を著作全体の大きなテーマとして掲げており、作品はもちろん日々の丁寧な暮らしぶりからもそうしたテーマが伝わってきます。

隠れSと純情新米医師のほっこりストーリー

アメリカ留学から帰国し、K医科大学附属病院の新米医師となった京橋は、自身の憩いの場所である病院の売店で働いている茨木と親しくなります。柔らかく包み込むような温かい雰囲気の茨木の態度に、京橋は今まで話したことのないプライベートを話し急接近します。

京橋は、日々の忙しい業務の合間に売店に行って茨木と話すことに癒しを得て、次に茨城と会える機会を待ち遠しく思ってしまう自分の気持ちに戸惑うのでした。

対する茨木は、終業後の病院でとても落ち込んだ様子で京橋に抱きつき慰めを乞い、この夜のことは忘れてほしいと頼みますが京橋は忘れることができません。

2人の揺れ動く気持ち距離が必見のほっこりラブストーリーです。

著者
椹野 道流
出版日
2008-03-27

勤勉で純情な京橋が、大人っぽくて優しくて余裕たっぷり茨木の手のひらで、うまいこと転がされて手中に堕ちていく様を楽しむことが出来ます。2人の生い立ちや背景などにはシリアスなものがありながらも、お互いを思いあう温かい気持ちの応酬は、思わず読者の方が照れてしまうほどの初々しさです。

職場恋愛ものですが、医者と医者ではなく、医者と売店のお兄さんなところにもリアリティがあり読みやすく、段々とSな部分を見せながらまっすぐ京橋に向かっていく茨木に、読みながらドキドキして、ほっこり出来ること間違いなしの作品です。

美少年探偵の織りなす英国風ファンタジー

大国アングレの由緒正しい貴族の家柄、グラッドストーン家の末子として生まれたエドワードは、守り役のシーヴァとともに自由気ままかつ優秀にパブリックスクールでの青春を過ごし、幼いころからの夢であった私立探偵になることを決意しました。

エドワードは家を飛び出し下町に事務所を構えたものの、依頼もあまりないのでのんびり優雅に暮らしていると、この間卒業したパブリックスクールの校長より幽霊騒ぎがあり困っているという依頼がやってきます。

シーヴァを引き連れエドワードが向かった学校では、幽霊の傷害事件とその原因と疑われている黒髪黒目の少年トーマが待ち受けていました。

トーマはいったい何者で、どうしてこんな騒ぎが起きているのでしょうか……ミステリアスファンタジーストーリーです。

著者
椹野 道流
出版日
2005-10-29

美形で、優秀で、家柄も良く、ともすれば嫌な奴になってしまいそうなのに誠実なエドワード。そんな主を誇りに思い優しく見守るシーヴァに、不遇な境遇を嘆きながらも優しさを忘れないトーマ。主要登場人物3人がそれぞれ個性豊かで魅力的な作品です。

とりわけエドワードとシーヴァの決して驕らず、それでいて相手を認め合う様は見ていて気持ちよく言葉が胸に響きます。

探偵ものですが、つじつま合わせの推理をするのではなく、ファンタジックな要素や英国貴族風の暮らしぶりなどを全編を通じて楽しんでいくような雰囲気のお話なので、ミステリー小説を普段読まない方にもおすすめです。
 

友達以上になれないジレンマ、椹野道流の青春ストーリー

K医科大学の入学式で出席番号がたまたま隣だった、ということをきっかけに知り合った篤臣と江南は、なんとなく気も合って授業や実習もいつでも一緒にいるようになりました。

年月をかけ、頼りになる江南と友達としての距離を縮めじゃれつく篤臣に対し、江南は篤臣への友達では留められない心に秘めた思いが育っていきます。しかし当の篤臣本人は全然それに気が付くことが出来ず、それが後の大変な事態へとつながっていってしまうのでした。

著者
椹野 道流
出版日
2000-10-01

男女ともに認める男前できっぱりした態度の江南と、細身で大人しいイメージの篤臣の2人の、目的は違えど医者になるという同じ夢に向かって、共に頑張り夢をかなえて就職していくまでの約9年間が描かれています。

篤臣視点で淡々と進む物語がベースですが、その節々に友達以上の思いで篤臣を見ている江南の視線や気持ちがわかってしまい、読んでいてとても切なくなることでしょう。

まっすぐな気持ちが溢れて篤臣を傷つけてしまう江南、それに対して悩みながらも、自分の気持ちにまっすぐに向き合い、許し認めていく篤臣。2人が時間をかけて本当の意味で結ばれるまでの9年間が、甘酸っぱく描かれたところが見どころの青春ボーイズラブストーリーです。

他の椹野道流作品と違い攻めのキャラクターが関西弁なのも新鮮で、特に2人が結ばれた後のラブラブムードで繰り出される江南の関西弁は必見!是非読んでみてください。

年下包容力攻めが思う存分甘やかす

主人公で整形外科医師の甫は、期限付きという条件でリハビリテーション科へ出向しました。自分にも他人にも厳しい甫は、出向先でも手加減せずに古い体制を改革し、リハビリテーション科をより充実させようと奮闘します。

甫が周りにかまわず体制改革に邁進すればするほど、スタッフへの負担も大きく、不満が膨らんでいきました。同じころ、溺愛していた弟が医大を中退しパン屋になってしまい、しかも自分の部下と付き合っているという事実を知ってしまう甫。

公私ともにうまくいかずさすがに落ち込む甫に対し、病院に出入りする花屋の夕焼が甫を甘やかす権利をくれないかと申し入れてきますが……。

著者
椹野 道流
出版日
2010-01-08

真面目で厳格すぎるあまり敵を多く作ってしまう超不器用な医師の甫が、仕事も最愛の弟ともうまくいかず、まさに四面楚歌になってしまうシーンは、読者の心に痛みを広げるでしょう。

不器用ながらも懸命に頑張る甫に一目ぼれし、弱っている甫に漬け込むことで甘やかす権利を手に入れる夕焼は、包容力抜群で余裕があって8歳も年下とは思えないほどの大人の魅力が溢れています。

小さい頃から大人であることを求められ続け、素直な気持ちや思いやりの表し方を知らずに育ってきた甫が、意地を張りながらも少しずつ夕焼によって、人の温かさに気づいていく過程が丁寧に暖かく描かれており、読後はとってもほっこりした気持ちになれますよ。
 

椹野道流が描く、ちょっと不思議な村での暮らし

東京で料理人として忙しく働くゴータがある日、20年前に会ったきりだった祖母の訃報を知らせる手紙と祖母の家の鍵を受け取るところから話が始まります。長年会っていなかった罪悪感もあり、せめて49日の法要には出席しようと手紙と家の鍵を持って祖母の住んでいた村、銀杏村へと向かうゴータ。

そこにあったのはどこか懐かしく、ちょっと不思議で、豊かな日々でした。そんな村に移住したゴータが「にゃんこ亭」をオープンし、村の人と触れ合いながら成長していく温かい物語です。

著者
椹野 道流
出版日
2004-09-02

今作は先述のBL3作品とは一味違い、妖しや人魂の登場する和風ファンタジー作品です。

東京で淡々と料理人として働いていたゴータですが、祖母の住んでいた銀杏村を訪れ、どこかなつかしいその村の雰囲気と丁寧な暮らしぶりを目の当たりにし、「呼ばれている」と確信し銀杏村への移住を決意します。

おきつねさま、管狐など妖しがいたるところにいる少し不思議で温かいまなざし溢れる村での暮らしの中で、信頼できる食材を自力で手に入れながら真面目に毎日を生きるゴータと、そんな彼に惹かれてやってくるパティシエのサトルの食べることにまっすぐ向き合う姿に心温まりました。

さらに、作中に出てくる料理はどれも丁寧に作られている感じがしておいしそうで、読んだ後大切な誰かにご飯を作ってあげたくなるようなお話です。

和・洋問わないファンタジーからBLまで様々な作品を展開している椹野道流作品から、5作おすすめを紹介させていただきました。

どれも読後感が爽やかで、読んだ後前向きな気持ちになれる作品です。椹野道流作品は作品同士がクロスオーバーするものもあり、知っている人物が他の作品で出てくる楽しみなどもあります。ぜひ興味のある方は読んでみてください。

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