ジャック・ケルアックのおすすめ作品5選!名作『オン・ザ・ロード』など

更新:2021.11.6

当時、多くのアメリカの若者達が、物質文明を批判するジャック・ケルアックの考えに共感し、彼の生き方を真似て放浪生活へ飛び込んで行きました。その後のアメリカ文化に多大な影響を与えた”旅する小説家”ケルアックのおすすめ5作品を紹介します。

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放浪体験を描いた『オン・ザ・ロード』が代表作の作家、ジャック・ケルアック

ジャック・ケルアックは1922年、ローウェルというマサチューセッツ州の小さな町に生まれました。高校時代は、アメリカンフットボールの選手として活躍し、コロンビア大学への奨学金を得ています。ケルアックのような貧困層出身者にとって、奨学金は大学へ行く唯一の手段でした。

しかし大学とは反りが合わず、中退。その後、ニューヨークでアレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズらと知り合い、ビートジェネレーションと呼ばれる文学運動を展開します。物質主義、資本主義を否定するビート作家たちは、社会に疑問や不満を持った若者達から絶大な支持を獲得していくことになりました。

1957年に自身のアメリカ中の路上生活を描いた『オン・ザ・ロード』は、たちまちベストセラーになります。晩年はアルコール依存症に苦しみ、47歳で逝去。

ヒッピーの聖典にしてロード・ノベルの金字塔

舞台は1940年後半から50年代前半のアメリカです。

本作の語り手であるサル・パラダイスが、少年院から出てきたばかりのディーン・モリアーティと出会うところから始まる物語。彼らはニューヨークからデンヴァー、サンフランシスコ、そしてメキシコへと向かい、その破天荒な旅が描かれています。

道中では、ビートニクの仲間たちとジャズ、アルコール、ドラッグ、セックスなどの乱痴気騒ぎが繰り広げられます。終末観が漂う旅の終わりに彼らを待ち受けていたのは……。

著者
ジャック・ケルアック
出版日
2010-06-04

『オン・ザ・ロード』は1957年に発表されました。ケルアック自身の放浪生活と、実在の人物(アレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズ、ニール・キャサディら)をモデルにした自伝的要素が多く含まれています。

小説の中で読者が引き込まれるのは、ヒップスターであり、ビートニクの化身であったディーンの存在でしょう。洗練された知性と犯罪性をあわせ持つディーンの生き方は、語り手サルを熱狂させ、同時に読者をも熱狂させるのです。

この作品はヒッピーなどカウンターカルチャーの源流となり、その影響は文学のみならず、映画や音楽、ファッション、思想まで多岐に及んでいくことに。

3週間でこの作品を書き上げた、という逸話も残されています。

ビートニクの痙攣(けいれん)的な愛を描いた、ジャック・ケルアックの作品

この作品は、31歳の作家レオ・パースパイドと22歳の黒人女性マードゥ・フォックスの2ヶ月間におよぶ痙攣的な愛のはじまりと終わりを描いた作品です。

2人は「地下街の人びと」と呼ばれる仲間たちと、文学やジャズ、ドラッグ、セックスに溺れた享楽的な生活を送っています。しかし、2人の関係は、ユーゴスラビア出身の詩人ユーリの出現によって変わり始めるのでした。

著者
ジャック ケルアック
出版日
1997-03-27

「地下街の人びと」はもちろんビートニクたちを指しています。

この小説を特徴づけているのは、ジェイムズ・ジョイスの「意識の流れ」手法とジャズのビバップから大きな影響を受けたという文体。意識的にダッシュを多用し、巧みに韻を踏みながら、独特のリズムを生み出しています。

ベンゼドリン(麻薬鎮痛剤)を使用しながら、3日間でこの小説を書き上げたという逸話も残っていますが、実際には長い年月の考察を経て執筆に至ったようです。

詩的な散文体で語られる放浪生活の断片

『孤独な旅人』は1960年に発表された短編集で、アメリカ、メキシコ、モロッコ、イギリス、フランスへのケルアック自身の旅行記を編集したものです。

この作品では、ケルアックにおける他作品同様の問題、つまり路上生活における人間関係や仕事などについて描かれています。数編は、雑誌の記事として発表されました。

著者
ジャック・ケルアック
出版日
2004-09-04

この短編集は、ケルアックの生み出した「自然発生的散文体」という技法を用いて書かれました。これは、意識せずに心の赴くまま、情景や感覚をつなぎ合わせて、時間をかけずに物語を描くというもの。特に「メキシコの農民達」や「鉄道の大地」に、文体的特徴が見てとれます。

「山上の孤独」では、のちに紹介する『ザ・ダルマ・バムズ』や『荒涼天使たち』でも登場する、孤独な山火事監視員として3ヶ月デソレーション・ピークに滞在した経験が描かれます。

それぞれの作品は不道徳なものでありながらも、印象的に仕上がっているケルアックらしい作品です。

東洋思想に魅了されたビートニクの探求と友情

本作では、登場人物が孤独を歩み、物質的なものに支配されず、ひたすら法(ダルマ)を求め、瞑想を通して学んでいく過程が描かれています。

語り手のスミスが、友人ジェフィとカルフォルニアの山を登り、ノースカロライナの森で瞑想し、ジェフィのキャビンでパーティをする日々を語ります。そして、ワシントンでは、ジェフィから山火事監視員という孤独な仕事を引き継ぐことに。

スミスは、敬虔な仏教徒の生活様式を実践していると信じているのですが、かなりアルコールを飲んでいるのが面白いところです。

著者
ジャック・ケルアック
出版日
2007-09-10

この作品は、1958年に発表されました。他のケルアック作品同様に自伝的要素を多く含み、『オン・ザ・ロード』の数年後に起こった出来事を描きます。

主要人物はレイ・スミスとジェフィ・ライダーです。それぞれ、ケルアック自身とゲーリー・スナイダーが投影されています。ゲーリー・スナイダーは1950年代にケルアックに仏教を紹介した詩人で、1956年には来日し、京都の大徳寺などで修行を積みました。

ケルアック自身の経験と結びつく、主人公の仏教への探求が、物語を通して回想されます。語り手レイ・スミスの物語を駆り立てるのは、ジェフィの生き方や考え方です。それは、質素な生活や禅への傾倒であり、『オン・ザ・ロード』での成功後、ケルアックが一時的に魅了されたものでした。

ジャック・ケルアックの自伝的小説。放浪生活と自然を求める心の葛藤を描く

ジャック・ドゥルーズは、デソレーション・ピークの山火事監視員をしています。静かでいられ、物を書き、宇宙の真理について考えるため、ドゥルーズ自身が選択した仕事でした。

火事の時期が過ぎると、ドゥルーズはビート運動や詩人仲間の居住地であるサンフランシスコへ帰ります。ドゥルーズは仲間たちと再び絆を深め、一行はメキシコへ旅行をすることに。

詩人のアーウィンは、ニューヨークへ戻ったドゥルーズに書き溜めたものを発表するよう勧めます。ドゥルーズはついに納得し、彼の処女作『オン・ザ・ロード』が出版されることになったのでした。

著者
ジャック ケルアック
出版日

『荒涼天使たち』は、ケルアックの自伝的小説であり、彼の「ドゥルーズ伝」の一部を成しています。「ドゥルーズ伝」とは、彼のライフワークとして目標に掲げていたもので、初期作品を含んだ壮大な自叙伝のことです。「ドゥルーズ伝」に登場する人物たちは、実際の友人達がモデルとなりました。

この作品は1956年に出版されましたが、実際に書かれたのは『オン・ザ・ロード』の出版中の時期でした。最初の章は、デソレーション・ピークの山火事見張りをしていたときの日記から、ほぼそのままの形で掲載されています。ケルアックは、第2章を単行本として出版したかったようです。

主人公ジャック・ドゥルーズが悩んでいる問題には、以前ケルアックが魅了された仏教哲学への幻滅が反映されています。

ケルアックを読むと、無性に旅へ出たくなります。フィッツジェラルドやサリンジャー同様、若いうちに必ず読んでおきたい作家の一人です。

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