『天使の3P!』の魅力を全巻ネタバレ紹介!【アニメ化】

更新:2021.11.7

女子小学生のスポコンを描いた『ロウきゅーぶ!』の作者が送る、前人未踏のロリポップコメディ『天使の3P!』。スリーピース・ガールズバンドの織りなす若さと青春と可愛さのすべてが詰まっているこの作品。美味しいところを各巻ぎゅぎゅっとご紹介します!

ブックカルテ リンク

うまれたてのガールズバンド『天使の3P!』1巻

「さ、入って。本当はマスター以外ダンシキンセーなんだけど、特別に許してあげるわ」
(『天使の3P!』1巻より引用)

インターネットで知り合った相手と会うことになった主人公の「ひびきP」こと貫井響。動画サイトに自作の曲をアップロードしている高校1年生の彼は、意図せずして小学生の女の子を人気のない松林に呼び出していました。

通報されたくなかったらウチに来て、と迫る少女に押し切られた響が足を踏み入れたのは、住宅地の一角に建つ古ぼけた小さな教会。

児童養護施設リトルウイングで暮らす少女3人が響にした願いとは――?

著者
蒼山 サグ
出版日
2012-06-08

小学5年生の女の子3人。彼女たちは響に、礼拝堂で響の作った曲でライブをやりたいと願い出ます。それは、施設が規模縮小のために教会を手放すことになったため、思い出作りをしたいという理由からでした。

礼拝堂の聖壇奥、聖者の像の先に隠された楽器。小学生の時に「ポエマー」呼ばわりされたことで中学1年から引きこもりとなっていた響が、少女たちの熱意に動かされ、協力を始めます。

そんな『天使の3P!』1巻の魅力は、初対面の男子高校生相手にズバズバと交渉をしていく希美の勇ましさ。お願いを聞いてもらうには弱みを握るのが一番だと言ってはばからず、施設と仲間のために懸命に動く姿は背伸びした可愛らしさをも感じさせます。

施設を悪く言われることをおそれて小学校で馴染めていなかった少女3人が、ライブ成功のためにクラスメイトたちとの距離を縮めようとするところや、それに触発された響が引きこもりをやめて高校に復学し、ライブの宣伝をするところは胸が熱くなります。

お泊りは小学生祭り『天使の3P!』2巻

「響にー響にー。ここも、おさわりしてほしい」
(『天使の3P!』2巻より引用)

お昼寝好きで「はむはむ」が口癖のそら。彼女は響の左手首をにぎると頭を撫でるよう誘導します。

児童養護施設リトルウイング。その一部である教会をイベントスペースとして活用することで存続させようとする響たちの試みは、着実に前へと進んでいるように見えたのですが……。
 

著者
蒼山 サグ
出版日
2013-10-10

実は、知り合いにはお金の心配なくライブに来てほしい、という響の考えもあり、リトルウイングの教会存続のための収益化は進んでいませんでした。その中でリトルウイングでの姉役である女子高生の桜花は効果的なプロモーション方法があると響に話します。

それは、3人のライブ映像を動画サイトにアップして集客を増やすというものでした。

まだ小学5年生である彼女たちをインターネット上に露出させることに躊躇する響。しかし、リトルウイング責任者や、響の曲のイメージイラストを描いているネット絵師の霧夢の後押しにより、響はミュージックビデオを作ることを決めます。

1泊2日の撮影キャンプ旅行に、いたずら心満載の少女たち。セリフだけ取り出すとちょっぴりどころかとても危ない一種の叙述トリックに、可愛いとドキドキがいっぱいです。

そんな『天使の3P!』2巻ですが、可愛らしいばかりでなく、シリアスなシーンも。なんと、希美の祖父が、インターネット上に公開されたライブ映像を発見し、希美をイギリスへ引き取りたいと申し出てきたのです。

希美の幸せのため、彼女の選択に委ねる少女たちと響。お互いが相手のことを思うばかりに、言いたいことを言えずにいる場面はやきもきします。そこに一石を投じたのが響きの妹、くるみです。

言いたいことは言わなきゃいけない、と兄の背中を押すくるみ。彼女がただの兄好きな一緒に風呂に入っているだけの少女ではなかったのだと知らしめます。

ただ楽しいだけの小学生ガールズバンドじゃない。それぞれの人生の選び取り方と、意思の伝え方に注目です。

孤島と水着と生贄の少女『天使の3P!』3巻

響プロデュースの小学生ガールズバンド「リヤン・ド・ファミユ」。彼女たちに一通の招待状が届きます。

それは、双龍島という孤島の島おこしイベントへのライブ出演の依頼でした。

怪しむ響に対し、島の場所を確認したリトルウイングのマスターと桜花は魚がたくさん釣れそうだという理由で参加を勧めます。

優しくあたたかい島の人々。しかし同時に、孤島独特の闇が響たちの前に姿を現したのです。
 

著者
蒼山 サグ
出版日
2014-06-10

島と言えば海。海と言えば水着。今回もリトルウイングの少女たちや桜花がお決まりの大暴れをしてくれます。

とはいっても、まがりなりにも依頼を受けた身。響たちは遊びながらも順調にイベントの準備を進めます。しかしある晩、枕元に「今すぐ帰れ」という警告文が置かれていたことで空気が一気にサスペンス調へと変化します。

島おこしイベントのオファーの後ろで糸を引いていた霧夢。ネット上でしか活動しない、謎に包まれたイラストレーター霧夢の正体が徐々に明らかになります。

代々受け継がれている伝統と、一人の人間としての人生。どちらを優先させるべきか悩んだ結果、霧夢を助けることにした響は、音楽と絵を融合させた新しいスタイルのライブを構成します。

シリアスシーンだけでなく、真面目に魚釣りをするメンバーや詳細な釣り描写も必見です。

夏休みは初デート日和『天使の3P!』4巻

「教えてやりなさい、明日からお風呂は私と入るって!」
(『天使の3P!』4巻より引用)

響の朝はくるみと霧夢の喧嘩から始まります。くるみは霧夢が響と風呂に入ろうとすることを阻止するために奮闘し、霧夢はくるみを小姑と呼んで響との結婚生活を邪魔するなと言い放つなど、場は混沌の極み。

結婚した覚えなどさらさらない響は霧夢にどうやって家に入ってきたのかを尋ね、霧夢は響の部屋の窓からだとしれっと答えます。果たして響は押しかけ女房霧夢から逃れることが出来るのでしょうか?!
 

著者
蒼山 サグ
出版日
2014-10-10

響たちの住む町に引っ越してきた霧夢と、霧夢のお世話係の家系に生まれた小学生の柚葉。彼女たちが都会での生活に馴染んでいく中で、霧夢はリヤン・ド・ファミユに対抗するべくバンドの結成を計画します。

柚葉とくるみを仲間に引き込んだ霧夢。そんな霧夢に頼まれるまま、響はリヤン・ド・ファミユに加えてその新結成バンドの面倒も見ることになります。

『天使の3P!』4巻の魅力は、楽器と音楽、そして曲作りについて細かく描写がされていることでしょう。作曲作業を通して描写される各キャラクターの性格や魅力はテンポが良く、音楽を作ることとは無縁の読者であってもわかりやすく楽しめるようになっています。

そんな少女たちが生み出すラストシーン。感動間違いなしです。

2つの告白の行方は……『天使の3P!』5巻

無事に夏休みが終わり、始まった二学期。帰宅部の響は文化祭のクラス展示委員を押し付けられてしまいます。

なんとか頑張ろうとする響に、桜花は響に人生経験が足りないことを指摘します。

「何度も関係を持った相手、小学生に偏りすぎ」
(『天使の3P!』5巻より引用)

引きこもり生活3年間のブランクを響は埋めることが出来るのでしょうか。
 

著者
蒼山サグ
出版日
2015-02-10

『天使の3P!』5巻は2つのイベントがメインテーマになっています。その1つが響の高校の文化祭であり、もう一つがキッズロックフェスティバルという音楽イベントです。

桜花の漏らした響への想いと、それによりぎくしゃくしてしまっていた響と桜花。2人が文化祭の準備を通じて関係を深め、自分たちが互いに惹かれ合っていることを自覚していく姿はこの作品がただの小学生愛好文学ではないことを思い出させてくれます。

一方「リヤン・ド・ファミユ」はキッズロックフェスティバルに出場するべく準備に取り掛かります。そして霧夢たちも、キッズロックフェスティバルでミニライブの再戦をするのだと士気は高まるばかり。

「好き」という感情と向き合うことを余儀なくされる高校生2人と、外に向けて動き出す2つのバンドから目を離せません。

クリスマスに知った喜び『天使の3P!』6巻

キッズロックフェスティバルにデモムービーで応募した潤・希美・そらの「リヤン・ド・ファミユ」と、霧夢・柚葉・くるみの「Dragon≒Nuts」。

しかし、両方とも書類選考で落選してしまいます。審査員からの選評は中々の酷評。落ち込む少女たちに響は過去の本選のダイジェスト映像を見せます。

自分たちの技術の未熟さを思い知った少女たち。彼女たちは再び前を向くことが出来るのか――。
 

著者
蒼山サグ
出版日
2015-10-10

これまで挫折をしてこなかった「リヤン・ド・ファミユ」のメンバーたち。彼女たちがバンド生活の中で初めてぶち当たったのが、書類選考落ちという現実と、他のバンドとのレベル差でした。

心ここにあらずの状態が続く「リヤン・ド・ファミユ」のメンバーたちは、練習でも気がそぞろでバンドの雰囲気も悪くなっていってしまいます。そんな中、響はバンドメンバーに明確な目標がないことがモチベーション低下の原因であると気付きます。

教会を守りたいという目標がかなえられた今、新たな目標を必要としていた彼女たち。そのとき奇しくも、リトルウイングでのクリスマスイベントが近づいてきていたのです。

そして、今作の響の見所は下の台詞です。

「ずっとそばにいる。みんなの事を幸せに出来るように努力する」
(『天使の3P!』6巻より引用)

スランプからの脱出へ向かうメンバーに向け、響が告げたこの台詞はまさにお兄さんらしく、頼もしさを感じさせます。

バンドメンバーと響の成長がしっかりと感じられる今作。クリスマスイベントらしくサンタコスチュームやラッキーハプニングも盛りだくさんです。

この過激さ、衝撃。『天使の3P!』7巻

「ほ、本当にそんな太くて大きいのが……入るの? こ、壊れちゃうんじゃない?」
(『天使の3P!』7巻より引用)

立てつけが悪かった床を補修することにした響たち。太くまっすぐな釘をもつ響に、こういうの初めてで、と頬を染める少女たち。相変わらずの過激な言葉遊びに読者は翻弄させられ通しです。

シリーズとしては初の短編集である『天使の3P!』7巻は、全5篇収録。描き下ろしは6巻直後のお正月エピソードです。
 

著者
蒼山サグ
出版日
2016-04-09

今回はとにかく、可愛い女の子と、積極的な女の子と、言葉遊びとで、ドキドキの止まらない一冊になっています。

練習合間のストレッチで思わぬ体勢になってしまったり、快感に身を委ねてしまったりと少女たちの一挙手一投足に目が離せません。少女の着ぐるみ依存という新たな病も登場します。

もちろん響の同級生である女子高生桜花との話もあり、さらになんと最後の短編には貫井家の両親が登場します。

いままで気配すらなかった貫井家両親。この親にしてこの子あり、と納得の展開となっています。

冬こそセクシーすぎる!『天使の3P!』8巻

お正月と言えば振袖。リトルウイングの4人とくるみはそれぞれに振袖をまとい、華やかそのもの。そんな中、寒くないかと聞かれたそらは、すーすーすると答えます。

その理由がこちら。

「はむ。ぱんつはいてないから」
(『天使の3P!』8巻)

振袖の着付けの総指揮をした桜花、彼女は着物を着るときは下着をつけないと思っていた模様。不存在を認識することによってうまれる存在……と響が哲学を始める『天使の3P!』8巻です。
 

著者
蒼山 サグ
出版日
2016-10-08

お正月にバレンタイン、スキー旅行。年明けの冬のイベントをすべてこなす勢いの今作は、どれもほのぼのした日常でありながら、しっかりとギャグが挟み込まれてきます。

しかし日常だけで終わらないのが『天使の3P!』。これまでは「リヤン・ド・ファミユ」のメンバー中心で動いていた音楽活動について、響個人にスポットタイトが当たります。

潤たちに出会うまでは1人で曲を作り、歌唱ソフトのデジタルボーカルで曲を完成させていた響。響は、少女たちと出会い、セッションを重ねる中でその音楽性が変化してきたことに気づきます。

響には何が出来るのか、これからどう進んでゆくべきか。響個人の人生がどう動くのか、それによってバンド活動がどうなるのか、気になる展開となっています。

それぞれの色の魅せ方『天使の3P!』9巻

スランプを脱したと言えど、「リヤン・ド・ファミユ」のメンバーたちはまだ小学5年生。経験値の足りない彼女たちを支えるため、響はライブハウスで短期アルバイトを始めます。

そこで起きる事件に、「タランチュラホーク」や様々なバンドとの出会い。そして、遭難?! 

さらにバンド対決に向けて盛り上がる熱量。今回、読み逃し厳禁です。
 

著者
蒼山 サグ
出版日
2017-03-10

フェスの選評でのパフォーマンス評価が最低評価だった「リヤン・ド・ファミユ」。響は魅力的なバンドとはどういうものをいうのかを、ライブハウスでのアルバイトを通じて体感してゆきます。

それはこれまでの響の作曲スタイルでは経験を積むことのできなかった、リアルさや観客を巻き込むことの重要性、観客に見せ、観客を魅せることの経験の補完でもありました。

そんな中、霧夢たちの「Dragon≒Nuts」をタランチュラホークが演出サポートし、響率いる「リヤン・ド・ファミユ」とライブ対決することになります。

妹くるみによる実妹検定に、双龍島での危険なお祭り、響と桜花の渓流釣りでの急接近と、バンドも可愛い女の子もたくさんの1冊です。

融合のための適材適所『天使の3P!』10巻

小学生バンド「ラインホルト」からの対バンの申し出。これまで内輪での活動になりがちだった「リヤン・ド・ファミユ」と「Dragon≒Nuts」が、活動拠点のことなるバンドと競演することが決まります。

「ラインホルト」と合同練習をすることになった「リヤン・ド・ファミユ」。2バンド6人がセッションをした瞬間、化学反応が起こります。

潤たちとのセッションの虜になる「ラインホルト」のピアノボーカル、サリー。しかしそれが悲劇を生むことになるのです。
 

著者
蒼山 サグ
出版日
2017-07-07

7巻以降、連作短編集の形式だった『天使の3P!』ですが、最初の方の長編らしさを取り戻し、ガッツリ音楽をするのがこの10巻。

普段一緒に演奏しないメンバーと演奏をし、褒め合う楽しさが前面に押し出されてきます。しかし、「ラインホルト」でリズム隊であるドラムとベースを担っている菜奈子と実里はどうも消極的。

その理由は読者や響にはわからないのですが、「リヤン・ド・ファミユ」でリズムを支える希美とそらだけはその理由に気づいていたのです。

それぞれの役割を、それぞれに果たす。「ラインホルト」の崩壊を食い止めた響たちは、また1つ、バンドとして必要なものを体得します。

そして最後、キッズロックフェスティバルへの再挑戦のため、「リヤン・ド・ファミユ」と「Dragon≒Nuts」の6人が手を組みます。問題は『天使の3P!』史上最悪のピンチが訪れることですが……どんなピンチなのかは、是非お手に取ってご確認ください。

アニメ化もあり勢いの止まらない『天使の3P!』。彼女たちが辿りつく先に何があるのか、完結まで目が離せません。

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