高樹のぶ子のおすすめ文庫小説5選!数多くの受賞歴を持つ作家

更新:2017.7.21

1980年のデビュー以来、洗練された作品を発表し続けてきた小説家、高樹のぶ子。芥川賞をはじめとして、数々の文学賞に輝いているほか、アニメ映画化を果たした話題作も手掛け、第一線で活躍している女流作家です。

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芥川賞の選考員としても活躍する高樹のぶ子

高樹のぶ子は、1980年に『その細き道』でデビューを果たした小説家です。それまでも「文學界」に作品を投稿して新人賞の最終候補にも残ったこともあり、彼女の実力は当時から素晴らしいものとして知られていました。

その後もコンスタントに執筆を続け、『寒雷のように』や『波光きらめく果て』などを発表していきます。デビューから4年後『光抱く友よ』で芥川賞を受賞し、『蔦燃』で島清恋愛文学賞を受賞、『水脈』で女流文学賞、『透光の樹』で谷崎潤一郎賞を受賞するなど、多くの文学賞を受賞しています。映画化された作品も多く、『霧の子午線』や『透光の樹』は実写映画、『マイマイ新子』はアニメ映画になり話題を呼びました。

また、自身も受賞した芥川賞をはじめとして、日経小説大賞や朝日賞などの選考委員としても活躍し、新しい才能の開拓や他作品の講評にも尽力しています。今回は、そんな高樹のぶ子の作品の中から、特に手にとっておきたい5冊をピックアップして紹介しましょう。

芥川賞受賞の高樹のぶ子代表作

表題作「光抱く友よ」のほか2編を収録した短編集となっています。「光抱く友よ」の主人公、相馬涼子は優等生。彼女が奔放な不良のクラスメイトと出会うところからから物語がはじまります。アル中の母を持ち、異性を知っている1歳年上の彼女との出会いは、涼子が人生で初めて触れた闇でした。ある約束を巡り、2人の関係が少しずつ変わっていく様子に注目です。

「揺れる髪」では、夫の遺伝子を強く受けた気丈な娘に対し、理解できずに苦悩する主婦の姿が描かれています。「春まだ浅く」では、主人公の女子短大生が、肉体と精神の両方から、恋人との繋がりについて悩みはじめるストーリーとなっています。

著者
高樹 のぶ子
出版日
1987-05-27

本作は芥川賞を受賞し、高樹のぶ子の代表作のひとつともいえるでしょう。

山口県のある街を舞台に繰り広げられる、正反対に見える2人の女子高生の関係。血がつながっているはずなのに、理解し合えずすれ違ってしまう母娘。恋人との肉体関係を持たずに過ごしてきた女性など、3つの作品とも主人公は女性。「一般的」といえるものにどこか馴染めない人々についてが描かれています。著者ならではの洗練された視点が特徴の作品です。

高樹のぶ子自身がモデルの、アニメ映画化もされた大人気作品

本作は高樹のぶ子が、自らの少女時代をモデルにして描いた自伝的な小説で、主人公の名前も著者の旧姓から取られています。実際の経験を活かしたからこそ醸し出されるリアリティが、本作の大きな魅力のひとつだといえるでしょう。

時代背景を詳細に描き出しながら、登場人物ひとりひとりの特長も丁寧に描いた作品となっています。2009年には、『マイマイ新子と千年の魔法』というタイトルで、アニメ映画になりました。

著者
髙樹 のぶ子
出版日
2017-06-07

物語の舞台は1955年、高度経済成長の直前です。主人公の新子は、気になる同級生を自宅までつけて行ってしまうような9歳の女の子。テレビも電話も冷蔵庫もなかった時代ですが、自然や環境の豊かさに恵まれ、のびのびと生活しています。

タイトルにある「マイマイ」とは、新子が持っている2つのつむじのこと。季節が移り変わっていく様子や、家族との絆など、一見何の変哲もない大切な日々のなかで、彼女が子どもらしく成長していくストーリーとなっています。

名画の盗難事件を巡るミステリー作品

京都国立近代美術館で開催されていたロートレック展の最終日、高額の損害保険がかけられていた名画のひとつ、「マルセル」が盗まれる事件が発生しました。事件から3日後、額縁と謎の靴跡のみが発見され、さらにその数日後、事件当日に宿直をしていた守衛が謎の自殺を遂げてしまうという、大事件に発展します。

この事件に関する数々の資料を、父の遺品から見つけ出した千晶。遺品の中には、犯人と思わしき人物からの勝利宣言まで残されていました。事件の謎に隠された、驚きの真実とは?

著者
高樹 のぶ子
出版日
2015-05-08

島清恋愛文学賞を受賞し選考委員を務めた経歴もあるほど、高樹のぶ子は恋愛小説に特化した作家です。高樹自身も、自らの恋愛による離婚を経験しているほど、愛にかける情熱がとても強い女性でもあります。そんな彼女が手がける、絵画をめぐる独自のミステリー小説が本作です。

盗難事件を取り扱った推理ストーリーであると同時に、登場人物の感情の揺れ動きや、パリを舞台にしたロマンスがあります。作者の得意なジャンルを大いに活かしながら、新たな世界を開拓した新天地の一冊だといえるでしょう。

実写映画化もされた谷崎潤一郎賞受賞作

舞台は金沢のとある町。主人公の千桐は、元刀鍛冶の老父の面倒をみながら、この町でつつましく暮らしています。離婚をして実家に身を寄せており、娘もいる彼女の生活は決して楽なものではありません。そんなとき、かつて父が出演したドキュメンタリー番組のアシスタントだった郷と再会し、やがて愛人関係となっていきます。

恋を燃え上がらせていく2人でしたが、そんな幸せな日々も長くは続きませんでした。郷に癌が見つかるのです。2人の愛の行き着く先は、どうなってしまうのでしょうか。

著者
高樹 のぶ子
出版日
2002-05-01

本作は、1999年に谷崎潤一郎賞を受賞し、2004年には実写映画化されるなど、世間からも高い評価を受けた作品です。中年男女の恋愛と生活、感情の揺れ動きなどを、丹念に追っていて、思わず心を掴まれてしまうでしょう。

大人の恋愛の色気を描きながらも、決して下品に仕立てず美しさを押し出せるのは、恋愛小説の名手である高樹のぶ子ならでは。25年の歳月を経て、再び出会う2人の運命の切ない行く末に注目してください。

時空を超える謎に迫る、高樹のぶ子が描く大長編

物語は、1986年のウィーンで、駐在外交官の真賀木奏と、バイオリニストの走馬充子の2人が出会ったことではじまります。妻が理由の分からない自殺を遂げた奏と、自らの情熱にどこまでも素直な充子は、やがて惹かれあうようになります。

愛し合う2人の元には、100年前に練られたという謎の楽譜や、ルーマニアからの亡命者など様々な謎やハプニングが舞い込んでくるのです。

著者
高樹 のぶ子
出版日

熟年の男女が異国の地で出会い、数多くの謎に包まれながらもお互いを想い合っていく姿が、絶対的な筆力で描写されています。時を超える謎を抱え、サスペンスやミステリーの一面を持ちながらも、高樹のぶ子ならではの恋愛色がしっかり押し出されているといえるでしょう。

当時、新聞に連載をされていた本作は、恋愛小説ファンからはもちろん、サスペンス好きや音楽好きからも高い評価を集めていました。楽譜を利用している凝った暗号や、それに立ち向かう意外な解決策など、臨場感のある作風も魅力のひとつとなっています。

東ヨーロッパの革命を目前にした時代の、恋愛あり、スリルありの大長編です。

いかがでしたか?高樹のぶ子の作品は、どれも彼女ならでの魅力がふんだんに込められています。ぜひ気になった作品から読んでみてください。

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