櫛木理宇おすすめ作品5選!人気のホラー小説「ホーンテッド・キャンパス」他

更新:2021.11.8

映画化された人気ホラー小説『ホーンテッド・キャンパス』の生みの親、櫛木理宇。独特の人間模様の描き方やキャッチーな設定が多くの読者に愛される人気作家です。今回は櫛木理宇の魅力が伝わるおすすめ小説をご紹介します。

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小説家・櫛木理宇とは

櫛木理宇は『ホーンテッド・キャンパス』をはじめとし、ジャンルを横断するタイプの小説を得意とする作家です。精神的な恐怖を描いたホラー・ミステリ小説から、キャッチーな登場人物を描いた青春小説まで、幅広い作品を執筆してきました。
 

櫛木理宇の描く作品の舞台は主に現代の日本であり、登場する人物もごく平凡な女子高校生や少年がほとんど。ですが、彼らを取り巻くちょっとしたエッセンスや些細な出来事がきっかけで、何の変哲も無かった日常生活が大きく変わっていきます。

そのリアルとファンタジーのバランスが絶妙だからこそ、読者に「ひょっとしたらあるかも」という期待や恐怖などの感情を呼び起こすことができるのでしょう。

キャンパスライフにちょっとのホラーと恋愛模様

八神森司は心霊が見えてしまう体質の大学生。特にこれといって自分に自信もなく、しがない平坦な大学生活を送っています。そんな森司の元に現れた、高校時代に恋い焦がれていた美少女、こよみ。彼女は森司の大学で、なぜかオカルト研究会に参加していました。

もともと森司は怖いものは極力避ける生活を送っていますが、こよみへの想いからオカルト研究会に参加。研究会には、様々な心霊現象にまつわる事件や相談がやってきます。こよみは森司とは違う形で霊に近く、霊にとりつかれてしまいがちです。

そんなこよみを守るべく、森司は自身の心霊体質を用いて心霊現象を解決していくことにしました。

著者
櫛木 理宇
出版日
2012-10-25

大人気シリーズであり、櫛木理宇の代表作である本作は、日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しました。心霊現象を、コミカルかつ推理要素も含めた軽快なタッチで描きます。そのドキドキ感が森司とこよみの恋愛模様にも重なってくる、魅力的な作品です。

森司とこよみはお互い惹かれあいながらも、なかなかそれが伝わらない、ムズキュンな関係を続けていきます。心霊現象との対峙を重ねることで、わずかずつですがその距離は縮まっていくのです。また、森司の不甲斐ない性格が徐々にこよみへの恋心によって成長していくプロセスも楽しめます。

爽快でリズム良く楽しめるホラー恋愛青春小説といえばこの一冊。他に類を見ない傑作です。

閉鎖された田舎の女子高校生に芽生える狂気

新潟の雪に閉ざされた小さな町。友人同士の女子高生、弥子と小柚子はそれぞれ鬱屈した思いを抱いていました。

弥子は引きこもりの叔父という重りを人生にかけられており、小柚子は過去に母親の恋人から強姦された経験があります。彼女たちはそれぞれ親からの愛を感じることのできない環境にあり、彼女たちの孤独や不安を受け入れてくれる存在は誰一人いませんでした。

そんな2人の元へ、過去に転校していった京香が現れます。京香は臓器に疾患を持った兄のドナーとして生まれた双子の片割れで、彼女の姉は兄に臓器を提供したことで寝たきりになったというエピソードが語られました。

自分の存在価値を見出せない京香に共感した弥子は仲良くなっていき、小柚子は同級生の苺美とつるむことになりながらも疎外感を否めません。苺美は片思いする男性と仲の良い京香に嫉妬し、ストーキングに溺れていきます。そんな4人の少女たちの行く末には、悲しい結末が……。

著者
櫛木 理宇
出版日
2015-12-17

本作は小説すばる新人賞を受賞した櫛木理宇の代表作です。櫛木は新潟に生まれており、本作も彼女が高校時代に感じた雪国の閉塞感をもとに作られた作品であると言われています。

とにかく救いようのない4人の少女の顛末が描かれており、不幸に不幸が重なるバッドエンドの極みのような物語です。だからこそ、読者はわずかでも希望を見出したくて読み進めてしまいます。もしかしたらこんな少女が実際にいるのかもしれない、と思わせるリアルな感覚も忘れられません。

読後感が悪いという意見もあり賛否両論の作品ですが、読者に強い印象を与えるということは変わりありません。特に同年代の読者には多くの共感を得た傑作です。

すぐそこにある恐怖と家族の崩壊

平凡な女子高校生、皆川美海。一つ違うことといえば、過去に弟を事故で亡くしているということ。家族はその癒えない傷を抱えつつも、なんとか支え合って生きてきました。

ある日、亡くした弟と同じ名前を名乗る少年が現れます。その少年の来訪に驚きを隠せず、母親は身寄りのない少年を家に招き入れます。欠けたもの、失ったものをなんとか見ないように過ごしてきた家族にとって、まるで弟の再来かのように映ったのです。

しかし、少年の母を名乗る厚塗り化粧の女、山口葉月が後日現れます。葉月は家族に寄生し始め、やがて家族の過去や脆い思い出を突き、家族の関係性を崩壊させていくのでした。

著者
櫛木 理宇
出版日
2016-06-18

『ホーンテッド・マンション』よりは『赤と白』に近い、精神的に追い込まれるタイプのホラー小説です。もともと「寄生虫女」というタイトルだった本作は、寄生というスタイルで人を洗脳していく葉月を主軸に、自分の大切だったものが大切ではなくなってしまう恐怖や、人の心理のもろさを描いています。

なすすべもなく精神崩壊に追いやられる家族の最後は、家族思いの読者には堪えるものがあるかもしれません。救われない結末にノンストップで進む中で、緻密に情景を描いていく櫛木理宇ならではのじっとりとした感触が家族像を壊していきます。

夢と現実を行き来する青春恋愛ファンタジー

長身美人の女子高生、晶水にはある悩みがありました。それは日々訪れる悪夢。彼女はかつてはバスケ部の主将で人気者だったのに、あることがきっかけでクラスで孤立しています。むしろ人を寄せ付けないようにしていました。

そんな彼女の壁はどこ吹く風で彼女にまとわりつくクラスのお調子者、壱。彼は実は人の夢に潜る能力を持っていました。壱は晶水のことを気にかけ、彼女の夢に潜ります。そこでは、晶水が忘れたい過去の記憶が悪夢へと変貌していました。

夢が次々と壱の周囲に事件を巻き起こしたり、夢の中の登場人物に恋をしてしまったりなど、一筋縄ではいきませんが、壱は晶水を悪夢から救うべく奔走します。

著者
櫛木 理宇
出版日
2014-05-15

『ホーンテッド・キャンパス』同様の青春に少しのスパイスを取り入れた傑作シリーズです。まっすぐで純粋な壱は、最近の著作では珍しいタイプの男の子。まっすぐすぎるがゆえに恋愛のほうは一向に前進しませんが……。素直になれないけれど、ひそやかに壱に想いを抱き始める晶水も可愛らしいです。

読みやすく一気に世界に入り込めるライトな作品です。一方、悪夢の描写や、精神的に犯される恐怖、過去の持つ引力などのテーマは『赤と白』などに描かれた独特のじわじわとくる恐怖に近いものがあります。

少年たちの止まらない報復劇

中学3年生の緒方櫂は、いじめによって大切な従兄妹を傷つけられます。必ず加害者に対して復讐してやると思いながらも、まとまらない行動。そんな櫂の前に現れたのは、高橋文稀という少年です。彼は見たものを石にする『邪眼』を左目に持っており、15歳の誕生日には自ら死のうと決意していました。

文稀と櫂は手を組み、文稀が死ぬ前まで櫂の報復に協力することになります。幼くも復讐心というエネルギーを持つ少年たちは、いじめという、裁けない方法で人を傷つけた加害者たちに様々な罰を与えていきます。その方法は次第にエスカレートしていき、もはやお互いを止められないところまで進展していくのでした。

著者
櫛木 理宇
出版日
2016-01-19

櫛木理宇の作品は女性目線のものがほとんどですが、本作では徹頭徹尾少年の視点に立った物語が進みます。ホラーというよりはバイオレンスに近い作風です。

 

罪は誰が裁くものなのか、という問いを本作は投げかけており、おそらく思春期の男子の多くが通る「どいつもこいつも悪ばっかり」という歪んだ視点が上手に描かれています。現実社会の中高生はそれを胸の内に秘めて大人になっていくのですが、もし秘めることなく爆発させたら、こんな事件が怒るのかもしれない……。そんな想像をさせる作品です。

このようなジャンルを横断した作風を活かしたエンターテイメント作品を生み出す作家、櫛木理宇。彼女はライトな楽しめる作品からヘビーな考えさせられる作品まで、読者の心を捉えてやまない世界を描きます。おすすめの作品から、ぜひあなたにぴったりの作品を選んでみてくださいね。

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