BUNBUNは日本の男性イラストレーター。アニメのようなくっきりはっきりした作画が特徴で、特に女の子を描いたイラストの人気です。
彼がイラストを手掛けた作品は『薔薇のマリア』など主にライトノベルが多く、そのほか個人名義での画集も発売されています。本の挿画だけでなく、テレビアニメ『結城友奈は勇者である』『終末のイゼッタ』などのキャラクター原案を担当することもあります。
では、そんなBUNBUNがイラストを担当したライトノベルをご紹介していきましょう。
右足に大きな怪我を負った白銀雪子。医者にも匙を投げられた彼女を助けるため、水瀬遊矢は悪魔を召喚して彼女の右足を治すように願います。
しかし、やってきた悪魔のリールゥは遊矢に対し、雪子の右足を治す代償を要求します。それは、彼の「恐怖」と「緊張」の感覚でした。
この2つを感じなくなってしまった遊矢は、身近な危険を察知できなくなってしまいます。おかげで、普通に生活をしているだけで命の危険にさらされることがしばしばです。
なんとかして彼の感覚を取り戻したいと願う雪子。奪われた感覚は、遊矢の半径5キロメートル以内に隠れているリールゥを見つけ出さないと戻ってきません。悪魔とのかくれんぼを、遊矢と雪子の2人は制することができるのでしょうか?
- 著者
- 上月 司
- 出版日
「恐怖」がないため常にフラットなたたずまいの遊矢と、喜怒哀楽が激しい雪子の2人が対照的に描かれています。思考回路が違う彼らの会話はおかしみがあり、理性的な遊矢のセリフに翻弄される雪子はかわいく、許せないことに怒ったり暴れたりする態度にはすがすがしささえ覚えますよ。
ひとつ屋根の下で、常に一緒にいる2人。幼馴染に過ぎなかった彼に対し、雪子が恋心を自覚していく過程は、この作品の見どころであり、ときめきポイントです。
この作品では雪子のほかに、文字通り「悪魔」なリールゥ、2巻以降から登場する「天使」セーレウスなど、属性が違うさまざまなヒロインが登場します。彼女たちのかわいらしいしぐさや表情豊かな挿画は、本文で描かれる雰囲気とぴったり。動きのあるイラストが素敵です。
主人公のマリアローズは、深紅の髪で、繊細な美しい容姿をもっています。しかしその正体は、異界生物(フリークス)が闊歩する地下空間(アンダーグラウンド)にもぐり、そこにある財宝を求めて冒険をする侵入者(クラッカー)でした。
ZOOという集団の一員であるマリアローズは、個性豊かな仲間たちと財宝を求めてアンダーグラウンドに潜ります。ZOOのメンバーひとりひとりのワケありな過去が見どころです。
- 著者
- 十文字 青
- 出版日
- 2004-11-29
赤と黒が印象的な表紙ですよね。1巻以降のシリーズも全て「薔薇」をモチーフにした美しいビジュアルで描かれており、それが本作の魅力のひとつになっています。
主人公のマリアローズは性別不明で、なんと戦闘力は低め。バトルシーンをメインに描かれる作品だけに、そんな主人公で大丈夫?と思いがちですが、マリアの持ち味は戦闘力でなく統率力。チームを組んで冒険するスタイルのなかで、マリアが飛ばす的確な指示は読んでいて小気味いいものを感じます。
しかしそんなマリアも、BUNBUNのイラストを見るとかわいらしい表情が満載。シリアスなムードに沈みがちな作品をなごませてくれるのが挿し絵の存在です。本文中では「半魚人」「瀕死の病人みたい」「派手」などさんざんな言われようのキャラクターたちですが、そんなメンバーたちのかっこいい一面を躍動感あるイラストで楽しむことができます。
また味方だけでなく、文章だけではどうしても想像しにくいグロテスクな異界生物も描かれているので、読んで想像した脳内映像をさらに鮮明に上書きしてくれること間違いなしです。
本作の舞台は、音楽を仲立ちにして精霊と人が共存する世界。とある老人が被害者となった殺人事件を担当することになった、デコボコ刑事のコンビが描かれています。
容疑者は老人の長年の相棒だった精霊。彼女の潔白を、主人公たちは証明できるのでしょうか。
- 著者
- 大迫 純一
- 出版日
- 2006-06-14
冒頭から犯人の独白が始まり、読者は犯人の正体を知った状態から物語を読むことになるわけです。彼を追いかける刑事2人組の行動を見つめる気持ちは、推理小説というよりは刑事小説に近いものがあります。作風も全体的にハードボイルドで、異能が入り乱れるライトノベルにしては大人向けでクールな印象です。
そして、そんな読み心地をさらに増幅してくれるのが、BUNBUNのCGテイストなイラストたち。濡れ衣を着せられた女性と犯人が手を取り合うシーンや精霊が武器を持つシーンなど、映画のワンシーンを見ているかのような場面が描かれています。
また本作のメインキャラクターは、少女と刑事の「おじさん」。女の子を描くイメージが強いBUNBUNですが、かわいいものだけでなく、頼りがいのあるおじさんまで魅力的に描かれていますよ。黒い涙を流す彼の過去も明かされていくので、気になった人はぜひシリーズを読んでみてください。
小学6年生の鷲尾須美と、同い年の少女、乃木園子と三ノ輪銀の3人は、人類滅亡を食い止めるべく勇者として戦います。
表紙の通り、選ばれた者である彼女たちが懸命に闘う姿と、切ないラストが持ち味。2014年に放送されたテレビアニメ『結城友奈は勇者である』の前日譚でもあります。
- 著者
- タカヒロ(みなとそふと)
- 出版日
- 2014-12-19
通常のライトノベルよりもイラストが多めに含まれており、まさにビジュアルと文章で物語を楽しむことができる一冊です。
死のウイルスが蔓延した世界の中で、「神樹」によって守られている四国地方。鷲尾須美をはじめとした少女たちは、その神樹を破壊しようとする敵、バーテックスを撃退するべく勇者として戦います。
しかし単なる戦闘ものではなく、苦手意識を持った状態から徐々に仲良くなっていく彼女らの友情関係や、ひとりひとりが抱える事情なども丁寧に描写されています。彼女たちの人柄がよく分かるからこそ、読み進めるにつれて共感する部分が増え、やがてやってくる結末が胸に刺さるのです。
読み終わってから表紙を見返して、思わず涙腺が緩んでしまう読者も多いでしょう。このなんともいえない優しく切ないまなざしは、本作の象徴ともいえます。あらすじを読まずとも、「切なく儚い物語」を連想させるイラストですよね。
時系列はテレビアニメ『結城友奈は勇者である』の2年前のお話なので、アニメを知っている方はより楽しむことができますよ。
古代から復活した英雄、カエサルにより事実上支配された日本。彼の支配から脱するべく、ひとりの美少女がとある少年の手を借りて立ち上がります。
この美少女、藤宮志緒理が腹心の部下に選んだのは、橘征継。何の変哲もない高校生に見える征継でしたが、彼は実はカエサルと同様、復活者でした。しかし彼は記憶喪失のため、自分が誰なのかがわかりません。果たして彼の正体は?
- 著者
- 丈月 城
- 出版日
- 2014-11-21
実際に存在した歴史上の人物が復活しているという、群雄割拠の世を舞台にくり広げられる戦記ものです。大国に隷属せざるをえない日本という立場から、登場人物たちが最善手を考えてくり出し、状況をひっくり返していく展開が痛快です。
表紙からも見て取れるように、服装のイラストが見事。設定上、中華風や古代ローマ風など、時代や国が別々なキャラクターたちが登場するのですが、そのどれもが魅力的に描かれています。特に軍服や民族衣装が好きな人にはたまらない一冊ですよ。
美しいイラストに表紙買いしてしまったという声も多い、BUNBUNがイラストを手掛けるライトノベルたち。書店で見かけたら、ぜひ手に取ってみてくださいね。